ダンジョン深層住みです、いつからかは忘れました   作:蓮太郎

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第71話 追加能力を得よう

 

「見るがいい下っ端、これが例のブツよ」

 

「これが?まるいやつが?」

 

「そうだ、しっかし綺麗に磨かれてるなぁ」

 

 ダンジョンボスとキメラはダンジョンの奥底、ダンジョンボスが引きこもっていた部屋である物を眺めていた。

 

 それは人型の身長が2メートルを超える2人の手のひらにすっぽり収まる宝石であった。

 

 見た目だけ綺麗な宝石ならこのダンジョンでも採ることは可能だ。

 

 わざわざ色々と偽装工作して深層の落とし物ボックスに入れろと指定までした甲斐があるのかと疑問に思うが、実際に苦労に似合うだけのものであるという事をダンジョンボスは知っている。

 

「これが残ってるのは奇跡よ。この土地では出来なかったのが死ぬほど悔しくて夜の8時間しか眠れてなかったけど、外部から少しとは言え手に入れられるのは僥倖よ」

 

 事の発端は端末を弄り倒していた時に気づいたことであった。

 

 キメラに教育番組として幼稚園児用の動画を流していたのだが、そこで流れるCMが目につくことが多々あった。

 

 それに加えて外の世界にそこまで興味を示していなかったものの、端末に映っている動画に興味を示すことは多々あった。

 

 その多々あった、という言葉の積み重なりによって二人の悪知恵が活性化することになる。

 

 偶に流れる通販番組、そこから発想を得て外部の物を取り寄せることは出来ないかと考えたのだ。

 

「ここまでたどり着くのは長かった…………私が人間の言葉を覚えていなければこれを手に入れることは出来なかった」

 

 実際、すぐに帰ると思いきや日乃本よりも海外で売りに出されている宝石の方がダンジョンボスにとって貴重であり、しかも言語形態が違うため発注に四苦八苦したりしたのだ。

 

 幸いにも住所は検索ですぐに出た上にゲーム知識から外国語もある程度学べていたので発注することはできたのだ。

 

「それを、あーん」

 

「あ、ずるい!」

 

「ごっくん、ふん、私が買ったから私の物よ」

 

 なお、この時点で料金は全て坂神あかねが強制的に支払っている。

 

 ダンジョンボスが宝石を飲み込み、少しした後にパチパチと身体に電流が走る。

 

「んー、ちょっと外れだったかしら?」

 

「なにがおきた?」

 

「こういうことよ」

 

 ダンジョンボスが人間態のキメラの豊満な乳(一つの重量1t)を思いっきり鷲掴みにする。

 

 重量だけで言うなら恐ろしいものであるが、指が簡単に埋まってしまうほどの柔らかさを誇る。

 

 捕食の為に皮膚から吸収できるようにしているのと衝撃吸収のための防御機構となっているのは別のお話。

 

 そんな乳を鷲掴みにしたダンジョンボスの手から突如、青白い光が放たれる。

 

「おお、おおお?」

 

 ピリピリとキメラの乳から全身へと伝わっていくが、キメラからしたら大したダメージでもなく少しかゆくなるかもと言った具合であった。

 

「うーん、これはもっと食べて強化する必要があるタイプのスキルね」

 

「すきる?」

 

「覚えはない?下っ端ならその再生能力がスキルだと思うけど?」

 

「しらない」

 

「…………ちょっと知識すら失われてない?」

 

 パチパチと静電気が全身から放ちながら首をかしげるキメラであった。

 

 これ以上、電撃を浴びせても無意味だと判断したダンジョンボスは手を離し、キメラに劣るものの豊満な乳の下で腕を組み頷く

 

「正直な所、もうちょっと弱めな感じになるカモとは思っていたのだけれど、やっぱり加工の仕方で性能は変わるのかしら?」

 

「これも人間のおかげ?」

 

「ある意味ね。やっぱり喰うよりも飼うが適切ね」

 

「ああ、俺もそう思うな」

 

 人間に対する扱いを改めて再認識したダンジョンボスに相槌が入る。

 

 キメラの声は確かに低めではあるが、基本ベースは女性であるため低い声で常時喋る訳ではない。

 

 その証拠に、声はダンジョンボスの後ろから聞こえたのにキメラは目の前に居るし、ダンジョンボスの角ががっちりと掴まれているのだ。

 

「よくもまあ逃げられると思ったな?」

 

「えへ、えへへへへ、冗談じゃないですかぁ?だってほら、ドラゴンって光るものに目がないって言うし?財宝とか集めたいというか」

 

「じゃあ宝石はどこにやった?」

 

「……………………」

 

 勝手に人の金を使っておいて逃げ出したペットを捕まえるために角を掴まれ逃げられないことを悟ったダンジョンボスは手でごまをすりながらへりくだりひきつった笑みで即座に媚を売り始めた。

 

 キメラはダンジョンボスを囮としてあっという間に逃げ出し、2人の視界の外へと消えていった。

 

「あ、あの野郎…………!」

 

「で、言い訳はそれでいいか?」

 

「え、えっとぉ、その、どうしたら許してくれます?」

 

「物が物だからな、お前の臓器を売って返済に充てさせてもらおう」

 

「やだやだやだ!死にたくない!じにだぐないっ!」

 

「大丈夫だ、肝臓とかだったら一部切り取っても再生する」

 

「私の物は私の物なの!いや、そもそもどうやって内臓取り出す気なのおおおおおおっ!?」

 

 それはもうとんでもない怪力で角を掴まれてしまっているため逃げ出すことは敵わず、じたばたと醜く足掻き続ける。

 

「そりゃあまあ、掻っ捌いてだな」

 

「私の皮膚を捌ける刃物なんてお腹に受けたら死んじゃう!」

 

「仮にもダンジョンで大ボスを務めるドラゴンが腹を裂かれたくらいで死ぬな」

 

「そう言う貴方だってお腹を裂かれたら死んじゃうでしょ!?」

 

「悪いな、今まで何をしようと一度も傷を負ったことがないんだ」

 

「基準が高すぎる!修正!認識の修正を求める!」

 

「はいはい、分かったから代替案を拠点に戻るまでに絞り出せ。じゃなかったら臓器だからな」

 

「やだあああああああああああああああ!」

 

 無慈悲な宣告、そう思われるがケンもダンジョンボスの内臓は欲しくはない。

 

 むしろ、今このダンジョンを管理しているダンジョンボスが居なくなった際に制御が効くモンスターが次に現れる保証もないのだ。

 

 このまま扱いやすいダンジョンボスことドラゴンクイーンが居座っていた方が今後が楽になる。

 

 それに金に関してはハッキリ言って何の問題もない。

 

 何故ならここはダンジョン深層、常人が命を懸け全て失うと分かっていたとしてもリスクをはるかに超えるリターンが大量に埋まっているのだ。

 

 それこそ宝石の金額を簡単に払えるほどの、いわば鉱脈なのだ。

 

 人類はそれを分かっているため危険を冒してダンジョンに潜る。

 

 そのことに気づきさえすれば内臓を売りさばく必要もないのだ。

 

 泣きじゃくりながら命乞いばかりするダンジョンボスがそのことに気づくのか。

 

 資源管理すら手中にあるにもかかわらず、チートを通り越してバグの存在に気を取られ過ぎているダンジョンボスは、恐怖で頭がいっぱいであっても何とか生きながらえようと必死に考える。

 

 先ほど捕食した宝石から手に入れた力も通用するはずがない。キメラですら微妙な反応だった電撃が

 

 涙も汗も鼻水も垂れ流しながら、角を掴まれズルズルと引きずられていくのであった。

 

 

 




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