宮本武蔵の子孫が行くDr.STONE   作:全智一皆

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剣聖の愛刀造り

■  ■

 日本刀。それ即ち、世界が絶賛する最高の近接武器。

 日本固有の鍛冶製法によって造られるその武器は、その時代―――主に鎌倉や戦国―――において最強の武器と言えるだろう。

 その身は硬く、折れず曲がらず。刃はよく切れる鋭利さを保つ。

 このストーンワールドにおいて、日本刀は最高の武器。

 司帝国側が石槍やら石斧やらの原始的武器しか持たぬというのなら、科学王国側は日本刀で以て打ち返す。

 何より、その日本刀こそが、剣聖たる宮本武流を手に入れる為の短く、しかし難しいロードマップなのだ。

 

「武流ちゃんの武器に関する愛は相当でね。多分だけど、生半可な武器じゃ味方にはならない。だから日本刀が必要なんだよね」

「現時点で造れる最高傑作を二つ造る。それが、最強の剣聖サマを手に入れるロードマップだが…クソ難しい事言ってくれるじゃねぇか」

 

 日本刀の製作が出来ない事はない。寧ろ、決戦に備えて造ろうと思っていた武器である為に準備は出来ている。

 だが―――問題なのは、その完成度だ。

 ゲンが言うに、宮本武流の武器への愛は半端なものではないらしい。

 曰く、『使えればそれで良いのは確かだ。しかし、それは使えなければ意味はないという事でもある。故に、俺は半端な武器を武器とは認めん。全身全霊を込めた至高の傑作、それを武器と呼ぶのだ』と。

 まさしく剣士と言うべきか。実に死合を行う者らしい思考だ。

 殺し合いをする者からすれば、勝つ事こそが全て。どんな手段を使っても、勝ちを得られるのならばそれで良い。

 だが、その為には武器が必要不可欠であり、剣士であるならば剣が何よりも重要だ。

 故に、宮本武流は半端な武器を決して許さない。彼を仲間にする為には、相応の完成度を誇る武器が必要となる。

 だから、難しいと千空は言ったのだ。

 司帝国の少数精鋭が来る日までに―――つまり、客人が来る残り僅かな時間で、最高傑作を二つも作らなければならないのだから。

 

「宮本武蔵の愛刀と言えや、無銘金重と和泉守兼重だが…今の俺らにあんな名刀を造れる材料は無ぇ」

「めいとう…? 千空、めいとうって何じゃ?」

 

 名刀という言葉を知らないのか、首を傾げながらカセキが千空に問い掛ける。

 その瞬間、千空は良い事を思いついたと言わんばかりの凶悪な笑みを浮かべた。

 全員が察した。あ、これは悪い事を考えたな、と。

 

「名刀ってのはなー、俺たちの世界じゃマジで優れた刀の事でなー。雷切丸っつー雷を切ったとかいう刀とか、鬼切丸っつー鬼を切った刀とかが有んだよ」

「雷を、切った刀…!?」

「鬼を切った、だと…!?」

 

 その場に居る全員(千空とゲンを除く)に、雷の様な衝撃が迸る。

 雷を切った? あの誰の目にも捉えられない速度で天から振る最強の刃を?

 鬼を切った? 怪力無双の如き力を容赦無しに振るう御伽噺の怪物を?

 そんな刀が、存在したというのか? そんな刀を造れる人物が、存在したというのか?

 

「宮本武蔵の刀にそんな逸話はねぇが、剣聖サマはそれで百人を倒してる。いくら剣聖サマの腕が良くても、百人を斬るのは普通の刀じゃ決して出来ねぇ(ま、実際はんな事はねぇが)…となりゃ、俺たちが造るのもそれ相応の代物じゃねぇとダメなんだが、カセキの爺に作れっかなー?」

(あぁ、また鍛冶屋精神を焚かしつけるのね…)

「何それ、燃えてくるじゃないの! 職人として腕がなるわい!」

 

 やる気を出せば服が弾け飛ぶ。いつものカセキであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同時刻、司帝国の森林地区にて。

 

「さて…何用、と尋ねるは野暮か、氷月」

「えぇ。石神村に行く前に、かの剣聖に、僕の槍を見てもらいたく思いまして」

「筒付きの槍……尾張の貫流槍術か。思えば、槍術との“試合”は碌に経験してこなかった」

 

 嵐が息吹く。

 自然が、大きく叫んでいる。

 戦え、と。今ここで、剣と槍を交えて、血潮を流しながら戦え―――と。

 現代を生きた最強の剣聖に矛を向けんとするは、司帝国のナンバーツーに君臨する槍使い。

 強者と強者。剣士と槍士。互いに強き者同士が、戦おうとしているのだ。

 

「そんな細い木刀で、大丈夫ですか?」

「細身であれ、流せはする。速さがあれば、肉をも断つ。剣とは、そういう武器(モノ)だ」

 

 細く、されど鋭い流麗な刀身を持った、木製の刀。

 それは、剣聖が自らの腕と知識で鍛えた最高の駄作。

 木刀という武器の根底から大きく逸れた、実戦向きの手作り殺人包丁。

 木刀とは素振りの練習、形稽古で使用されるもの。

 木製による分厚さと重さが合わさった鈍器を、正しい体制で何度も振るう事によって筋力や体幹を強める代物だ。

 だが、彼が持っているモノは決してそんな優しいモノなどではない。

 日本刀の様に細く、鋭い刀身と鋒を持った木製の真剣。

 耐久性はほぼ皆無。石斧や棍棒を刀身で防ぐだけで、砂の城の様に呆気なく崩れ去ってしまう脆刃。

 素人では碌に扱えぬそれだが―――剣聖が振るうならば、話しは別だ。

 

「一刀にて充分。久々の試合だ、呆気なく殺られてくれるなよ」

 

 鋭い殺気が荒立つ。

 ぞくり、と氷月の体に僅かな死と恐れが駆け抜ける。

 剣聖との試合。下手すれば死合となる闘い。命のやり取りと化すかもしれない剣士との矛の交え合い。

 あぁ―――なんて強い。これぞまさしく剣聖。

 

「行きますよ――!」

「来てみろ」

 

 剣と槍が―――更地となった森林で交差した。

 

 

 嵐が息吹くその先で、遂ぞ彼らは剣聖と邂逅を果たす。

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