東方聖酒杯 〜The Lost Dreams of Her Ideals.   作:ハシブトガラス

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五日目、放課後――ハルピュイアの止まり木

「土足ですか、屋内ですよ」

 

「洋風建築だし多目に見てよ、あんたの友人の同級生なんだし」

 

「繋がりが浅すぎると、そうは思いませんか? 情状酌量の余地は無いですね」

 

 古明地さとりは椅子に腰掛け、悠々と構えていた。

 呆れる程の胆力だと、霊夢は感じた。刀を二振りも構えた不審者に、突然家に上り込まれ、こうも平然としているのだから。

 テーブルの上の小さい盆に、クッキーが何枚か並んでいる。その内の一枚をつまみ、口へ運び――年齢からは想像も出来ない、奇妙な貫禄を、さとりは見せつけていた。

 

「……それで、用件は? まさか白昼堂々、盗人の真似も無いでしょう」

 

「私に会いに来たんだよね? お姉ちゃんたち?」

 

 一方で古明地こいしは、床にぺたりと、脚を開いて座っていた。

 霊夢の顔を見るや、丸い目を更に見開き立ち上がり――セイバーを見て、僅かに眉を動かす。然し、結局は白い顔に、底抜けの明るい笑顔を浮かべたままだ。

 鍔の広い帽子を被って、薄暗い部屋に居て――だが、彼女の口は赤々と、裂けた様な笑みを見せている。口の周りについているのは、さとりがつまんでいるのと同じクッキーの食べかすだろう。

 

「そう、あんたによ。ただ……さとり、どういうつもり?」

 

「どういうつもり、とは?」

 

 さとりが椅子から立ち上がる。霊夢は軽く身構えたが、セイバーは動こうとしなかった。実際、さとりは荒事に出ようとした訳ではなく、台所へ向かおうとしただけだった。

 

「あんた、一人暮らしだって言ってたじゃない。つまらない嘘を吐いて、何人を殺すつもり?」

 

「私の家族構成を、先輩に教える必要はないじゃないですか……仰る意味が分かりませんよ」

 

「とぼけないで」

 

 その背を追い掛け、霊夢も歩く。

 流し台には、現れていない皿が、幾つも幾つも重ねられている。何枚かの皿には罅が入り、今にも砕けて散りそうだ。蛇口を最大に開くと、水が平らな皿に打ち付けられ、ぱしゃぱしゃと飛沫を上げた。

 跳ね上がる水をコップに受けて、さとりはぐいと飲み干す。それから、振り向きもせずに霊夢に言った。

 

「とぼけてなんていませんよ。私ほど無害な学生はいません。……にとり先輩に対しては例外ですが。私が誰かを殺すなんてこと――」

 

「知らないなんて、言うんじゃないわよね?」

 

「――ええ、まあ」

 

 続けてさとりは、コップに水を満たし、霊夢についと差し出した。霊夢はそれを受け取って、その場でコップをひっくり返す。水が床を濡らしたが、さとりは表情も変えずに眺めるばかりだった。

 

「……妹のしている事くらい、姉は理解しているものですよ。けれど、あれこれ口出しする事でも無いでしょう?

 私は妹の自由を尊重します。それがどういう結果を齎そうと、私には関係ない」

 

「大した身勝手じゃないの。それじゃ、あんたの――妹? そいつがやってる事の意味も、十分に理解してるって事よね」

 

 流し場の直ぐ下、棚を開ければ、戸の裏側には包丁置き。そこから一本、霊夢は無作為に引き抜いた。

 選んだのは肉切包丁、使われた形跡は薄く、刃毀れ一つ無い。鋭利な切っ先は冷たく白く――すうと、さとりの首に向けられた。

 

「強盗の真似事ですか、霊夢先輩?」

 

「あんたの妹を止めて、サーヴァントを自害させなさい。そしたら素直に帰ってあげる」

 

「嫌だと言ったら?」

 

 霊夢が一歩、足を踏み出す。きっかり歩幅と同じ分だけ、包丁の切っ先がさとりに近づく。

 言葉による答えは不要。霊夢の目に温情は無く、否を通せば刺すと、視線で雄弁に語っていた。

 

「……〝博麗の巫女〟でしたね、そういえば」

 

「異変は早急に解決する。人妖を問わず、異変の原因は断つ。あんたが余計な事をしなきゃ、あんたは無事に居られるのよ」

 

「つまり、自分の為にこいしの自由を奪えと、先輩はそういうんですね?」

 

「安い買い物じゃないの」

 

 もう一歩。更に切っ先が、さとりの喉に近づく。

 細く白い首。掴めば容易く圧し折れそうな、野菊の茎の様な首。その皮膚を掠めるまで近づいた包丁の背を、さとりに劣らず白い手が掴んだ。

 古明地こいしの、小さな手だった。

 

「もー、お姉ちゃん、遊ぶのは私! 怒っちゃうよ? 私、本当だよ? 本当に怒っちゃうよ!」

 

「……いいや、あんたじゃないわ」

 

 霊夢は己の手に、恐ろしい程の重さを感じていた。

 僅か数センチを進めるだけで、肉を貫くだろう包丁の刃。それが、柄にいくら力を込めても、僅かにも進まないのだ。

 然し、その事に、何の違和感も抱かなかった――抱けなかった。

 

「ん? 私じゃないのー? だってだって、お姉ちゃん、私のサーヴァントが邪魔なんでしょ?」

 

「ええ、邪魔ね。だからさっさと消えて貰いたい、その為に来たのよ。だけど……あんた達、これはどういう事?」

 

 霊夢の問いは、具体性を欠いていた。

 包丁を持つ手の力を抜くと、こいしも刃から手を放す。霊夢が一歩引き下がれば、こいしは、さとりと霊夢の間に割り込んで――その正面に、セイバーが向かい合った。

 

「霊夢。貴女が前に出る事は無いわ……こんな陰気な場所では。

 貴女の考えは良く分かる。けれど、古明地さとりはもう、貴女の〝日常〟の一部では無いのよ」

 

「そうですね、何を今更。私は出来る限り、静かに暮らしていた筈ですから。

 親も親戚も誰もいない。友人だって作らない。ただ、妹と――こいしと二人で、平穏な暮らしが出来れば良い。

 そこに霊夢先輩は要らない、割り込む場所は無いんです。だからもう、帰ってください」

 

「うん、うん。だよね、お姉ちゃん! 私にはお姉ちゃんだけ居ればいいの、ねっ!」

 

 さとりは、自分の前に立ちはだかるこいしを、逆に自分の背後に庇おうとした。

 然し、こいしは両手を広げて動かない。あたかも自分は壁であり、さとりを守るものだと主張する様に。

 

「だから、えーと……霊夢さんと、そっちのサーヴァントさん。今日はもう、バイバイしようよ!

 お姉ちゃんが居るんだもん、私だってそっちだって、一杯遊んじゃ駄目でしょ?

 そんな事、本当は霊夢さんだってしたくないって、きっとそう思ってるよね?」

 

 奇妙だった――保護者の如き口振りで守られるさとりが。狂気を〝演じる〟声が、次第に明朗に成り行くこいしが。

 姉妹は何れも、己の有り方から離れて壊れ始め、そして二人で均整を取り続けていた。

 

「……あんたの言う通りよ、悔しいけどね」

 

「じゃあ、今日はこれまでにして――」

 

「いいや、そうはいかないわ」

 

 古明地こいしの言葉は――霊夢の真意の一点を、正しく突いていた。

 霊夢の生活に、古明地さとりという妖怪の存在は、殆ど影響を及ぼさない。だが彼女は、同級生の友人である。

 発明癖が祟り、興味本位の接触は有れど、友人という友人は少ない河城にとり。その近くに何時も立つ、小柄で淡々として辛辣な、少し生意気な所のある後輩。決して、嫌いではなかった。

 叶うならば霊夢は、彼女を無事に退場させたかった――偽らぬ本心である。

 

「〝私〟の考えなんてどうでもいいでしょ? 必要なのは、『病結界異変』を迅速に解決する事。

 その為だったら、犯人を〝匿う〟奴の一人や二人、死なせたって構わない」

 

 然し一方で、霊夢は〝博麗の巫女〟である。

 人の侭、全ての人妖と対峙し、全ての異変を解決する。そこに一切の例外は無く、そこに一辺の慈悲も無い。

 幻想郷のシステムとして、霊夢は自分を認識し、駆動させている。行動理念に感情など、無用の長物でしかない――筈、なのだ。

 

「……こいし、それに霊夢先輩? 何の話をしてるんですか? そこの人、何とか言って……」

 

 いつしか、こいしの顔から笑顔が消えていた。さとりは不安げな――年よりも更に幼く見える――表情で、居合わせた三人の顔をかわるがわる見ていた。

 

「お姉ちゃんを苛めないで、帰って!」

 

 こいしは、小さな手足を精一杯に広げ、さとりの体を僅かにでも隠そうとするかの様に立つ。

 丸く大きな瞳に、既に狂気は感じられない。浮かぶのは理知と、溢れんばかりの怒りである。

 

「いいえ、帰らないわ。……さとり、そいつに言いなさい! あんたにサーヴァントなんか要らないって!」

 

「霊夢! 躊躇わないで、早く!」

 

 怒鳴る様に――或いは懇願する様に、霊夢が叫んだ。

 こいしと睨み合いながら、霊夢を背に庇いながら、セイバーが行動を促した。

 

「……え? え、ぇと。え……? あの、霊夢先輩……?」

 

「良いからさっさと! 〝サーヴァントを捨て〟て、〝聖杯戦争から手を引〟かせなさい!

 そうしたら命は助けてやるって言ってんのよ!」

 

「霊夢!」

 

 流し台に積まれた皿が、騒音を上げて砕ける。戦闘態勢に入ったセイバーの、抑えきれず溢れた僅かな魔力が、物的な衝撃となって周囲を叩いたのだ。

 家鳴りがぎぃぎぃと喧しい。だが、誰もその音に、耳を貸すなどしなかった。

 

「……やだ。やだ、この子は――こいしは、もう我慢なんて、しなくても」

 

「分からず屋……! 〝古明地こいし〟なんて、〝どこにもいない〟のよっ!」

 

 霊夢の手から、包丁が放たれた。

 刃を先に、真っ直ぐに。十分な速度を以て――こいしの顔面へと。

 こいしが避ければ、さとりが刃の餌食になる。いや、そもそも――3mも無い距離からの投擲だ、近すぎる。

 頭蓋の強度が有れば、致命傷にはならないだろうか? いや、眼球から脳にまで届けば、死に至らしめる事は容易い筈だ。

 

「……言ったな、お前は」

 

 包丁の刃は、〝こいし〟の小さな手に〝握り砕かれ〟た。

 飛来する刃を掴みとり、金属の刀身を素手で握り、造作も無く砕く。

 常軌を逸した技――いや、力だった。とても、小柄な少女がやってのける事では無かった。

 ――〝こいし〟の声には、並みならぬ憎悪が込められていた。

 

 

 

 

「……こいし? 駄目じゃない、そんな事しちゃ……手が、手が、ああ、なんで」

 

 古明地さとりは、白い顔を更に青白く染め、幽鬼の如き様であった。

 〝こいし〟の手を取り、そこに傷が無い事を見て取り――怯え、震える。

 

「ねえ、なんで、こんな事しちゃ――こいし、貴女はなんで、」

 

 気付いてはならぬ事であった。

 何れは気付いてしまう事であった。

 気付かぬ様にカーテンを閉ざし、光から逃れて暮らしても――窓から差し込む光は、無情に鏡像を映す。

 砕け散った刃の破片に、映った顔は酷く臆病そうで――

 

「何処、なの?」

 

 いない。いなくなってしまった。

 

「あの子は、何処?」

 

 いる。今もその瞳は、泣き出しそうな顔を見つめている。

 

「こいしは、何処にいったの……?」

 

 ――〝古明地こいし〟は〝どこにもいない〟。

 

 

 

 

 

 人の悪意は、何時の世も変わらない。

 数千年前も、数百年前も。きっと数百年後も、数千年後もそうだろう。

 些細な欲望を堪え切れず、他者を虐げて己を満たす。つまる所、それが進歩の原動力でもあったのだから。

 

 だが――欲望の発露は、一つの形で留まらない。

 人は所詮、自分の常識から大きく外れた発想を生み出せない。

 だから、他者に触れぬ人間の欲望は、些細なこじんまりとしたものとなるのだ。

 

 然し、知識は伝播する。

 言葉に乗って、紙に乗って、電波に乗って、人の欲望の形は流布される。

 それは例えば、文学という形式であったり、劇画という形式であったり、映画という形式であったり――

 何れにせよ人間は、己の到底思いつかぬ欲の形に、容易く触れられる様になったのだ。

 

 

 古明地さとり、古明地こいし――彼女達二人は、他者の思考を読む事が出来た。

 飽く迄も見えるのは、その瞬間の思考のみ。然し、心の内の声を、余さず聞き取る事が出来たのだ。

 ならば――必然、無数の悪意からも、目を逸らす事は出来ない。

 

 聞くまいと思えども聞こえてくる。後ろを歩く誰かが、隣に座る誰かが、何を考えているのか。

 単純な害意であれば、身を守れば良いだけ、寧ろ気楽であった。

 彼女達が苦しんだのは、〝理性で押さえようとしている〟悪意だったのだから。

 

 理由も無く殴りたい、殴ってはいけない。言葉の限りに詰りたい、そんな事をしてはいけない。

 蹴り、踏みつけ、踏みにじりたい。そんな事をしてはいけない。いけないけれど、襤褸切れの様に扱いたい。

 あの首を絞めたらどんな顔をするだろう。あの腹の中に詰まっているのは、赤い臓器かそれとも黒いのか。

 小さな手足、細い体。組み伏せればどうにでも出来るだろう。そうだ、何時でもそう出来る。

 してはいけない。でもそうしたい。すれば犯罪だ。犯罪じゃなければ。ばれなければ。でも止めておこう。

 ○○したい。○○に○を開け、思うが侭に○○したい。○を○○○とし、その○で○○したい。

 二人は日夜、方向性さえ定まらぬ悪意の渦に、心を削られていた。

 

 そして――古明地こいしは少しだけ、姉より心が弱かった。

 他者への無関心を貫ける程、一人でいる事に慣れていなかった。

 誰かに嫌われていても、笑っていられる程の逞しさが無かった。

 自分に向けられた悪意の渦を、乗り切るだけの力が無かった。

 

 古明地さとりの心に、鮮明に焼きついた一つの光景。

 洗面所から廊下を通り、階段を上り、二人の寝室まで、刷毛で広げたかの如く続いた血痕。

 ベッドの上でこの上なく幸せそうに息絶えていた妹を、その手に握られた彼女自身の眼球を――

 

 

 

 

 

「あ、あああ、ああああ……!」

 

 壊れてしまった。

 家庭も、幸せも、そして心も。

 

「ああああああぁ、あ、嘘よ、そんな……私が、嘘、いや」

 

 それを、取り戻したかった。

 たったそれだけの願いは――もう、思い出せない。

 

「いや、嫌だ嫌だ嫌だ、やだ……そんなの、やだぁっ!! ぁあああ、あああああぁあぁああっっ!!」

 

 泣き狂いながら、さとりは何故か笑っていた。

 窓ガラスに映った自分の顔が、誰よりも愛した妹に良く似ていたからだった。

 

「……セイバー、ごめん、お願い」

 

「仰せの侭に、マスター」

 

 霊夢はもはや、〝古明地さとり〟と言葉を交わす事など出来ないと知った。

 ここに居るのは――もはやさとりでもこいしでもない。人格さえ入り混じった、壊れた妖怪である。

 セイバーは殊更に無表情を繕い、二刀を振りかざした。

 

 ギン、と鋭い音は、その刀が受け止められた証拠。

 〝こいし〟は――いや、暗殺者(アサシン)は己の本性、痩せた女の姿に戻っていた。

 両手に掴むのは、杭にも似た短い金属。二対一組の凶器は、セイバーの一撃を防いで、損傷は見られない。

 腕は衝撃に痺れている筈だが――目に浮かぶ怨念の濃さは、如何なる凶器よりも強く、セイバーの足を止めた。

 

「ああ、こいし、ああ……そうだ、私は……!」

 

「マスター……――さとり! 何も思うな、忘れな! そうりゃあたしらは……ずっと、続けていけるんだ!」

 

 泣き喚きながら、さとりは少しずつ、己の目的を思い出していく。

 そうだ、彼女が聖杯戦争に身を投じたのは、妹の幻影と『家族ごっこ』をする為ではない。

 例えアサシンが、さとりの幸福はこれだと信じようと、さとり自身はそう考えない。

 

 霊夢は、左手の甲に熱を感じた。

 マスター同士が近づけば発する、疼きの様な感覚――それが、一際強くなった。

 直感的に霊夢は、セイバーの後ろに完全に隠れ、自分自身の周囲に結界を張り巡らせた。

 簡易な防御結界――サーヴァントの攻撃に対しては、如何程の効果も無いかも知れないが。

 

 さとりの両目に浮かび上がる赤い文様――鋭角的な花弁の如き形状、それぞれに一画ずつ。

 残る一画は何処に現れたものか、それは霊夢の知る所では無かったが――

 

 ――古明地さとりは、己の両手で持って、二つの眼球を抉り出した。

 

「っ、マスター、何やってんのさぁ!?」

 

「アサシン……令呪を以て命ずる……! 〝法具を開帳し〟〝私を連れて巣へ潜れ〟……さあ!」

 

 言葉が途切れるか否かの折に、セイバーが指示を待たず飛び出した。

 彼女が振るう二つの刀は、内側からガラス窓を破る程の衝撃を以て、アサシンの体に――背から出現した四つの脚に叩き付けられた。

 本来の力の差であれば、一撃で肉片にも成りかねぬ程の斬。受け止めたは令呪の力と、アサシンの本質たる〝異形〟の怪力が為。

 

「……お前が、お前達が悪いんだ! あたしはこのままでも……悪くないと、そう思ってたんだ! なのに……!」

 

 アサシンの魔力が――魔術を用いぬサーヴァントでありながら、如何なる魔術師にも備え得ぬ程に、力が膨れ上がる。

 圧倒的な暴を身に纏って、だがアサシンは悲痛に叫び、床に手を触れさせた。

 十指の内、両手の親指を除いた八本から、床を這って広がる魔力の糸。拡散速度は恐らく、音を超える。

 

「逆らえない、もう止められない……呪うぞ、地上の人間。呪うぞ、博麗の巫女!」

 

 伝承の具現――宝具。今こそその真名が、令呪という最大のブーストを受けて解き放たれる。

 

 

瘴気満つ(ゲエンナ)――大窯の底(フィルドミアズマ)!!』

 

 

 臓腑を溶かす蜘蛛の毒が、獲物を喰らわんと蠢き始めた。




【ステータス情報が更新されました】

【クラス】アサシン
【真名】黒谷ヤマメ
【マスター】古明地さとり
【属性】混沌・善
【身長】154cm
【体重】38kg

【パラメータ】
 筋力B  耐久D  敏捷D
 魔力B  幸運C  宝具C++

【クラス別能力】
 気配遮断:A+
 サーヴァントとしての気配を遮断する。完全に気配を絶てば発見することは不可能になる。
 ただし、自ら攻撃を仕掛けると気配遮断のランクが低下する。

【保有スキル】
 怪力:B
 一時的に筋力を増幅させる、魔物・魔獣が保有する能力。使用中は筋力をワンランク上昇させる。
 英霊としての格は低いアサシンだが、反面怪物・反英霊としての適性は高い。

 変化:C
 自分の姿を変化させる。ただし、姿形が変わろうとその能力は変化しない。
 老人に変化しようが幼子に変化しようが、アサシンの筋力や耐久が低下する事はない。
 あまりにかけ離れた存在への変化は不可能。

 蜘蛛の巣:A+
 潜伏期間に比例して攻撃の命中率が上昇する。低ランクの陣地作成を兼ねる特殊スキル。

【宝具】
『瘴気満つ大窯の底(ゲエンナ・フィルドミアズマ)』:ランクC++ 対軍宝具
 黒谷ヤマメの蜘蛛としての霊性が、病気を操る程度の能力と合わさったもの。
 大規模な結界術にも似た宝具であり。8つの魔法陣で取り囲んだ空間が効果範囲となる。
 結界は発動前でも周辺の生物から魔力を吸い上げ、自動的に術式を維持。
 一度発動すれば、結界内の生物の臓腑を溶かし、死に至らしめる呪いを撒き散らす。
 この呪いで殺害された者は、魔力と魂が散逸する事がなく、死体に暫くの間留められる。
 液状になった臓腑を啜る事で、黒谷ヤマメは最高の効率で、魔力と魂を喰らう事が出来るのだ。
 また、魔法陣は簡易の警報装置の様な役目も果たし、周囲で魔力の変動が起こるか、陣が破壊された場合、
 即座に術者である黒谷ヤマメがそれを知る事が出来る。
 この呪いへの対抗手段は強い魔力を持つ事であり、基本的にサーヴァントに有効な宝具ではない。
 寧ろこの宝具を用いて自らを強化する事こそが、英霊の中では弱い部類に入る黒谷ヤマメの基本戦術である。


『服わぬ八握脛(アレネ・ドゥ・シャトー・ディフ)』:ランクC 対人宝具
 あまりに雑多な特性を併せ持つ黒谷ヤマメの、〝病〟と〝土蜘蛛〟の要素が具現化したもの。
 両腕両足とは別に、背から合計四本、巨大な爪を備えた蜘蛛脚を出現させる。
 黒谷ヤマメは、この爪に触れた『非生物かつ固体』を、無条件で通過する事が可能になる。
 これは、その物体の所有権に左右されない効果であり、つまり他者の所有する武器であろうが、或いは鎧であろうが貫通する。
 爪で刃を受け止めることさえ出来れば、黒谷ヤマメは武器による攻撃を全て〝擦り抜けて〟回避するのだ。

 また、魔術的な結界が施されていない空間に対しては、あらゆる壁を無為に帰して侵入を可能とする。
 病が忍び寄るが如く敵マスターの枕元に現れ首を狩る――暗殺者の名に相応しい宝具である。
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