ソードアート・オンライン ~紺野夕里~   作: ふーみん

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ロストソング発売されたが買っていない。
愛が足りないんじゃない。金と俺の学力が足りないんだ。


第4話 不思議な少女

 俺は人をよく観察するようになった。

 

 そして騙されるということはなくなった。

 

 けれどそんなもの何も意味をなさなかった。

 

 妹達がHIVキャリアなのがばれた。

 

 今まで仲良くしていたクラスメイト達が汚いものを見るような目で妹達を見るようになった。

 

 俺は妹達を必死に助けた。小学生ながら頭を使って、かんせんしない、二人はなにもしてない、そうみんなに毎日言った。

 

 けれどある日を境に俺もHIVキャリアなんじゃないかと疑われはじめた。

 

 俺もいじめられるようになった。

 

 その時、俺はわかった。人は騙したりするだけじゃない。変わっていくんだ。じゃあ疑っても意味がない。

 

 そんな時、俺は従兄弟の家に迎えられ、関西のほうに行くことになった。

 

 俺がいじめられるのを防ぐためらしい。

 

 始め、俺は反対したが妹達も俺がいじめられるのは嫌だと言ってきたので、俺は従うことにした。

 

 結局、誰も死ななかったが、裏切られた。妹達が傷つけられた。俺は何もできなかった。

 

 なら、もう誰も信用しなければいい。どれだけ楽しくても仲が良くても裏切られる覚悟さえしていれば、やっぱりか、とこちらがつらくなることなんてない。

 

 そして強くなろう。誰からも逃げず、妹達を、家族を、まだ裏切ってきていない人を守るために。

 

 

 

 

 

 □ □ □

 

 

 

 

 

 赤色の熊、目測で5mくらい、顔の横に目をこらせば《Red skin's bear》とある。

 

 赤皮の熊、だな。固有名詞ではないのでそこまで強いわけではないのであろうが大きさから見れば中ボスレベルだ。

 

 普通は中ボスレベルならソロでやるものではないだろうが、俺のステータスはSAOのときのを引き継いでいるからプレイヤーの身体能力依存のこのゲームにおいてはチート並のはずだ。問題ない。

 

 そう思いながら俺は牽制用に一発ぶん殴りながら熊と腰をぬかしている女性プレイヤーの間に入った。

 

「え!?」

 

「悪いけど苦戦してるっぽいからこいつもらうぜ。それとも一緒にやるか?」

 

「い、いえ!ど、どうぞ」

 

 近くで見ると女性プレイヤーは水色の髪をしているのがわかる。俺と同じウンディーネだ。

 

 と、それより戦闘だ。

 

 先程あびせた一発にしっかりとしたダメージがあったらしく、タグはすでに俺に向いている。

 

 俺はウンディーネの女性を巻き添えにしないよう女性から距離をとった。よし、ちゃんと熊はついてきてる。

 

 ある程度女性から離れたのを確認して、俺は一旦止まって、熊に向かってつっこんだ。

 

 俺を追いかけるために四足歩行になっていた熊は俺が目の前まで来ると前足を両方ともあげると、鋭い爪を振り下ろしてきた。

 

 俺はバックステップをしてそれを回避。振り下ろしをした熊は前のめりになったのですかさず近づき、ソードスキルは5月から実装されているらしいがナックルのソードスキルなど使えないので吹き飛ばすつもりで左足を踏み込み、しっかり右腕を振りかぶって顔面に拳を入れた。

 

「はあっ」

 

 吹き飛ばすことはかなわなかったが少しばかり後退させることはできた。

 

 HPバーがないのでどれほどのダメージかはわからんが後8割ってとこか?

 

 後退した熊は今の一発で怒ったのか「ぎあああ!」と熊らしくない叫びをあげながら空気を吸い込むような動作を始め、毛皮は逆立ちだした。

 

 火炎ブレスか……だが、この大きさならそこまででかくないはず。

 

 そう予想した俺は熊に近づき、吸い込みが終わったのと同時に左前にとんだ。

 

 次の瞬間、俺がいたところはもちろん、俺が一度立ち止まったあたりまで紅蓮の炎が広がった。左右にも広がってきたが俺の位置は熊のすぐ右前。予想通り炎の範囲外である。

 

 ブレスは一秒ほどであったが発動直後は硬直があり動かないので俺は熊に向かって左右の拳を数回交互に振った。

 

 だが、次の瞬間両の手のナックルが砕けちった。

 

「…は?」

 

 耐久値低っ!いや初期武器だし、ここまでずっと振り回したり投げたり変な使い方ばっかしてたし仕方ないのか?

 

「ぎあああ!」

 

 ブレス前と同じ叫び声で思考の波から戻ると熊の逆立っていた毛が元に戻っていた硬直終了のようだ。

 

 次に右前足を横ナギにしてきたが、近づきすぎて避けることはできず、手を体の横で交差させて受け止めた。

 

「くっ」

 

 俺は横ナギの勢いを止めきれず軽く数m飛ばされた。

 

 一回転してから着地をして、HPバーを見ると、4割程度減っていた。意外とやばいか?

 

 そんなことを思っていると熊が突進してきた。

 

 四本の足で地面をけり、かなりの勢いで突っ込んでくる。

 

 仕方ない。別の武器を使おう。

 

 俺は熊が突っ込んでくるのもお構い無しに左手をふり、ウィンドウを出し新しい武器を選択した。腰に重さがかかる。

 

 俺は腰から()を抜いて目をつむり、一度深呼吸をしてから目を開け、刀身を左腰あたりに持ってきた。

 

 その瞬間刀が淡い青色に輝きだした。

 

 目の前に熊が来た瞬間、俺は左下に構えた刀を振り上げた。

 

 刀単発技『辻風』

 

 元々この世界にはソードスキルはなかったが5月のアップデートの時に取り入れられたそうだ。

 

 青い軌跡を描きながら振り上げられた刀は突進してきた熊のあごを斬りつけながらうちあげた。

 

 辻風には弱いがスタン効果があり、熊の動きを少しの間だけ止めた。

 

 その間に俺は追撃せず数歩さがり、再度目を閉じた。

 

 さっきよりも思い出せ。あの世界で刀使いはどんな風に刀を振っていた?

 

「……」

 

 俺はまた深呼吸をすると目を開け、右足を前に左足を後ろにして左足のかかとを少し浮かし、右手が上、左手が下になるよう柄を持ち、刀の切っ先を人の鼻ぐらいの高さにした。

 

「来い」

 

 俺の声を聞き取ったのかはわからないが熊はこちらに向かってきた。

 

「ぎあああ!」

 

 相変わらず熊っぽくない叫びをあげながら前足を振ってきた。

 

 俺は後ろ向きに地面をするように動いてかわし、すぐに前に戻って顔を斬ることはできないので振り下ろされた前足に刀を振った。

 

 その後も攻撃をかわしては斬りつけ、かわしては斬りつけを繰り返した。

 

 何度目かはわからないが熊がまた「ぎあああ!」と叫び、空気を吸い込むような動作を始め、毛が逆立ち始めた。

 

 来た。ブレスだ。

 

 俺は刀を地面に垂直にさして、一気に後ろに下がり、全力で走り出した。

 

 そしてブレスが出される前に刀に跳びのり、走ってきた勢いのまま、もう一度跳んで熊の頭上を飛び越えた。

 

 ブレスは俺の位置が熊の頭上あたりの時に元いたところに出された。

 

 俺は熊の後ろに着地すると、左手を振ってウィンドウを出し、刀を装備し直した。

 

 ブレス攻撃はすでに終わっているが硬直時間がある。

 

 これで決める!

 

 刀を抜き上段に構える。刀身が濃い青色の輝きを放ち出した。

 

 二連撃技『幻月』

 

 一撃目が熊の背中を左上から右下に大きく斬りつけた。そのまま一撃目の勢いを使い俺は時計回りに回転する。その時に振り下ろした刀をもう一度上段に構え直す。正面を向いた俺は一撃目とクロスするように右上から刀を振り下ろした。

 

「はあああ!」

 

 雄叫びをあげながら振り下ろされた二撃目が熊を斬りつけ終えたとき、その巨体は背中に大きな十字傷を作り、細かい粒子のように四散した。

 

 一撃の威力がやばいやつだった。SAOの時のステータスがなければやばかった。

 

「…はぁ…ふぅ」

 

 一度深呼吸をして気合いを入れ直して俺は近くで闘ってるはずのインプの少女を探した。

 

 少女は思っていたより近くで闘っていたようですぐに見つかった。

 

 二足歩行サイのかなりのスピードで斧を振り下ろしている。こちらにいた熊をパワー型とするならあちらのサイはスピード型だな。

 

 少女は的確に斧を避けながら剣で切りつけている。俺と同じくらい、いや俺以上にこの世界に、フルダイブに慣れている感じがする。フルダイブに慣れているものといえばSAO生還者なんじゃないだろうか?

 

 だが、おかしい。動きは俺より複雑だが、やっていることは避けて攻撃するという俺と変わらないこと。なんでまだ倒せていない?

 

「はあああ!」

 

 俺の疑問はすぐに解決された。

 

 サイに決定的な隙ができ、そこを少女は当然狙ったがそれはソードスキルでではなく普通に斬りつけてであった。

 

 ソードスキルを知らないのか?

 

「……手伝うか」

 

 あいつのことを考えるのはやめよう。それよりもあのサイを倒すことのほうが先決だ。

 

 俺は少女のもとへ走り出した。ソードスキルを使わないままそこらへんにいるフィールドモンスターを倒す感覚でやっていたらいつ終わるかわからない。早急に片付けてこの世界の人々を観察しなければ。情報を集めるためにきたのだから。

 

「あれ?お兄さん、そっち終わっちゃった?」

 

「ああ。そんで悪いけどゆっくりやってる暇がないから手伝わせてもらうぞ。その代わり1つレクチャーしてやるから」

 

「レクチャー?」

 

「よく見とけ」

 

 本日二度目の辻風を発動させ、近づいてきた敵の動きを止めた。

 

「おお!刀が光った!」

 

「さっき言った通り時間がないんで闘いながら説明する」

 

「了解!」

 

 少女の元気良い声を背中に聞きながらスタンからとけたサイの斧を刀身に左手をそえながら刀で受け止める。

 

「まずさっきのはソードスキルっていう、簡単にいえば必殺技なんだけど知らなかったみたいだな」

 

「いや~、さっきこのゲーム始めたばっかでさ~、マニュアルも何も見ずにただフィールド走り回ってたんだよね」

 

「こいつは使わなかったのか?」

 

「こいつ?一回も斧は光らなかったよ」

 

 俺が斧をはじくと、俺とサイの間にできたわずかな隙間に少女は体を滑り込ませ、剣を振るった。

 

「敵も使うからスキルについてとかなんでもマニュアルみてからやったほうがいいぞ。で、このソードスキルはさっき見せたみたいに『ピタッ、ピユーン、ズバーン!』って感じだ。最初の構え方はスキル説明に書いてあるから下がってウィンドウを開いてみろ」

 

「うん」

 

 少女は後ろへ、俺は前に出てサイの斧を連続でかわした。

 

「読めたよ!」

 

「よし、俺がこいつの斧をはじいたらぶちこめ!」

 

 声をあげながら俺は斧をかわし、1歩さがり、次に振り下ろされた斧を上にはじいた。

 

「今!」

 

 次の瞬間、隣を紫の閃光がかけぬけた。目を見開いてみれば先程の少女が剣を輝かせながらサイを突き抜けていた。

 

「んだよ、それ」

 

 少女の動きが止まると少女の背後、俺の目の前でガラスがくだけ散るような音がし、敵が消えた。

 

「よっしゃー!できたー!」

 

 少女はぴょんぴょん跳ねながら喜びを表していた。

 

 まさか一撃で決めれるとは思わなかった。俺と同じようにステータスがかなり高いはずがない。なんてやつだ。

 

「ねえ、お兄さん!どうだった?」

 

 気がつけば目の前まで少女が来ていた。別に感想とか聞きにこなくていいのに。

 

「ああ。すごかった。俺はあれができるまでかなり練習したのに一発でできるとはな。ホントはできないって泣き言言われると思ってた」

 

「えへへ~」

 

 嬉しそうに笑う姿が妹とかぶったからかいつの間にか少女の頭を撫でていた。

 

 撫でた俺も当然撫でられた方の少女も目をパチクリとさせたが特に嫌な感じや違和感を感じなかったので俺はそのまま撫で、少女も嬉しそうな顔に戻った。

 

「ふふ。仲がよろしいのですね」

 

 少女の頭から手をはなし、声の方に目を向けると襲われてた女性がいた。

 

「あの…先程は助けていただきありがとうございました」

 

「気にしなくていい。こっちこそ獲物取っちまってすまん」

 

「いえ、あのままだとやられていましたし。他のメンバーがインするまで一人で森に入ろうと思った私が悪いのです」

 

「飛んで逃げたらよかったんじゃないの?」

 

 あ、飛べることは知ってんだな。

 

「まだ飛行するのに慣れていなくて」

 

「あはっ。僕はまだ飛んだことすらないよ」

 

「俺も」

 

 女性はさっきの俺達のように目をパチクリさせた。

 

「あんなに強いのに初心者(ニュービー)だったんですか!」

 

「ああ。俺ウンディーネだけど魔法なんか使えねえぜ」

 

「じゃ、じゃあお二人はお知り合いじゃないんですか?」

 

「ここで会ったばっかだ」

 

「……てっきりご兄妹かと思っていました」

 

「今の俺には妹はいねえよ」

 

「僕も今はお兄ちゃんいないよ」

 

「……悪いが話は終わりでいいか?先を急ぐんで」

 

「はい。本当にありがとうございました」

 

「じゃあな」

 

 俺は二人に手をふり、虹の谷に向かった。

 

 

 

 

 

 

 俺は一人、虹の谷を歩いている。いるはずだった。

 

「何でついてくんだよ」

 

 先程出会った少女がなぜか俺の後をついてくるのだった。

 

「特に行きたいとこもないしまだ教えて欲しいことたくさんあるしお兄さんについていくのが楽しいと思って」

 

「なら残念だったな。特にお前へのレクチャーはあれだけだし楽しいことはないからどっか行け」

 

「それより空飛ぼうよ!」

 

「それよりじゃねえよ。後飛ぶ気はない」

 

「何で?きっと楽しいよ」

 

「楽しむためにやってんじゃねーよ」

 

「ふ~ん。あ、お兄さん、名前なんていうの?」

 

「……ヨウ」

 

俺は少し悩んでからそう答えた。なぜかユウと答えるのが怖かった。

 

「ヨウさんか!僕はユウキ。」

 

 思わず足が止めて振り返った。

 

「…ユウキ?」

 

「?…なに?」

 

 よくわからんと言っている無垢なその顔は小さいころよく見ていた顔だった。

 

「何でもない……教えるっていっても大層なことできねえぞ。お前は十分すごいやつだからな」

 

「ってことはついてっていいの?」

 

「勝手にしろ。後呼び捨てでいい」

 

「イエーイ!それじゃあ改めてよろしく!」

 

 いつの間にか俺の中にこいつをつっぱねる気持ちがなくなっていた。




戦闘描写下手すぎでなんもいえねえ。

なんかアドバイスあったら欲しいです。こうしたほうが読みやすいとか。

感想募集中。批判遠慮中。誤字あれば教えてください。

今度は予告通りになるようがんばります。

予告

ユウキと虹の谷を進んでいると七人のギルドと出会う。話し合ってみるとこれがクエストだとわかるが…。

次回 七色の妖精

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