仮面ライダーウィッシュ   作:火野ミライ

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 ようみんな、俺はコロクだ。前回夢が戦ったソニオ怪人の元になった「カマキリ」について、みんなはどのくらい知っている?
 その前脚は鎌状に進化した昆虫で木や葉っぱ、種類によっては花びらに擬態して獲物をじっと持ち構える肉食の生物だ。そんなカマキリの鎌だが切り裂く為じゃなくて、獲物が逃げられない様に押さえつける為に使われるんだ。
 ちなみにカマキリはその羽ではあまり飛べなく、種類によっては完全に意味のない物になっているのもいるらしいぞ。


第6話.狂気が狂った。(A)

リハビリを終え、普段の生活へと戻った夢。骨折していた左腕も今はギブスも外れ、日常生活を過ごすには何不自由も無い。そん彼は現在、いつもの東屋にて中央に置かれた正方形のベンチを机代わりにし、入院中に溜まっていたプリントと対峙していた。

 

記憶から抜け落ちている所をリアで調べ記入していく夢。そのそばではケルスが日向で寝そべり、コロクは夢の右肩に座りプリントを興味深そうに見つめている。やがて筆を置き、そよ風が揺らすパッションパープルのリュックの中から取り出したバ○ダイのロゴが印刷されたクリアファイルにプリントをしまう。

 

「ふぅ、やっと終わった」

 

目の前に積まれていたプリントをすべて終えたゆっくりと息を吐き、両腕を高く上げ軽く身体を動かしていく。そんな彼の様子を後目に背中の翼を羽ばたかせながら空を飛び、器用にファイルをリュックの中へとしまうコロク。

 

いくら前世の記憶がある夢とは言っても、かつてとは違う教育内容や忘れているところ、更には歴史の僅かな差異による細かな違いがあるため、決して油断できない現状。今はまだ小学1年生の範囲だからなんとかなっているが、そのうち成績は見るも絶えない物になるのだろう。まぁ、当の夢本人は元来の勉強嫌いな事もあり気にしてないようだが……

 

「もうこんな時間か…」

 

筆記用具をしまい、リアの画面に映る時間に小さく言葉を零した夢。どうやら珍しくこの後に予定があるようだ。

 

「ケルス、起きて」

 

『うぅ~、終わったのかぁ~ゆめぇ』

 

中央の顔は大きな欠伸をし、左の顔が夢に話しかけ、右の顔はいまだに瞳を閉じたまま。そんなケルスの様子にコロクが呆れて溜息を吐く。

 

『とっとと起きろよバカ犬っころ!』

 

『オイラは犬じゃ… バカッ!? ねぇ、今バカって言った?言ったよな!!』

 

『さぁ~~?』

 

『ちゃんとオイラの目を見て話せよ!ガルルルル____ッ!』

 

言い争う仲間の姿を放置しフードを深くかぶる夢。そのままリアをパーカーのポケットへ入れると、筆箱をリュックの中に収納しファスナーを閉じると背中に背負う。手をズボンのポケットの中へ入れ太陽の光に触れる素肌をできるだけ少なくすると、目的地へと歩み始める。

 

『っあ!ちょっと待ってよ夢!』

 

慌てて口論をやめた両者は肩や大地を蹴り、肩や風を切り去り夢の後を追うのだった。

 


 

「た、たすけて……くれ…」

 

風柴町のどこかにある路地裏。そこでスキンヘッドの男性が血まみれで倒れていた。身体中に無数の傷が刻まれており、顔は恐怖に歪んでいる。動く事すら既にままならない彼に近づく影。

 

「あっは!」

 

「ま__」

 

影は筋肉質の男性に何度も刃を振り下ろし、新たな傷を刻んでは歪んで笑みを浮かべている。声すらも奪われた男性の肉体を切り裂くその様は、善悪の区別も付かない無邪気な子供が発泡スチロールを何度も千切るかのようだった。

 

「アハハハハハハハハ…………ッ!!!」

 

既に事切れた男性の死体の前で狂気の笑い声をあげる影。その近くには男性が流した血を被った群青色の宝石が不気味に虹色の輝きを放っていた……

 


 

「おぉ~~い!夢く~~~~ん!!」

 

出来る限り日影の下を歩いていると前方から春菜先輩の元気な声が聞こえてくる。視線を上げて見れば大きくこちらに手を振る春菜先輩の姿がそこにあった。隣にいた友人に怒られる彼女に手を軽く振り、駆け足で側に向かう。

 

彼女達との待ち合わせ場所に指定されたのは最近話題らしい喫茶店【FAIRY】。フェアリーの名の通りファンタジーな内装でSNS映えする上に、出される商品の美味しさと値段の安さから男女共に人気のお店となっているようだ。

 

普段の僕なら断っているが今は小波夫妻から頂いたお年玉が残っているうえに、今回の目的は春菜先輩の友人との顔合わせである事から断れなかった。そんな猪突猛進……と言うか思いったらすぐ行動する勢い任せな性格はある意味、誰かを引っ張る才能の塊と言えるだろう。

 

「君が夢君だよね。初めまして村山灯花です」

 

横で起きてる二人のじゃれ合いを他所に鞄ではなくスケッチブックを首から下げた【村山 灯花(むらやま とうか)】先輩が自己紹介をしてくれた。彼女は学校の至る所で絵を描いている姿を見かける。

 

「まったく…… それにしても春菜の言う通り、女の子みたいな子だな。私は春月真奈だ、よろしくな!」

 

村山先輩に続いて健康的な日焼けをしている少女【春月 真奈(はるつき まな)】先輩が名乗った。こちらの彼女は同年代の中では身体能力が高く様で、時たま保健室の窓から聞こえてくる体育の授業で頼りにされている声を聞いている。

 

「僕は紫吹夢です。よろしくお願いします、村山先輩、春月先輩」

 

彼女達の後に続き自己紹介をすると、フードの端から流れる髪を揺らしながら腰を曲げ礼をする。まぁ、悪い意味で僕の噂は学校中に広がっているからしなくても良いかもだけど……

 

「自己紹介はそこまでにして早く店に入ろ! 寒いし、お腹すいたし!!」

 

「春菜はそっちが本音だろ」

 

「っあ、ばれた」

 

「春菜ちゃん、ここに食べに来るの楽しみにしていたからね」

 

「うん!」

 

和気あいあいとした三人の会話を足元に来たケルスを抱きかかえ見つめる。その様子から彼女達が気の知れた中なのは見て取れた。春菜先輩を先頭に店の入り口へ向かう僕ら。

 


 

赤黒い血が付いた刃を手に持ちながらフラフラと歩く男性。彼の側にサイレンを鳴らしながら一台のパトカーが止まると二人の警官が銃口を向ける。

 

「連続怪奇殺人事件の指名手配犯、影山勉! 大人しくお縄に付け!!」

 

「アハハハハハハハハ!!」

 

銃口を向けられる男性が狂気的な高笑いを上げ、手に持つ刃物を投擲。弧を描き警官Aの首元を切り裂く。地面に滴る血、傷口を押さえながら倒れる警官Aの前に立ち銃口を向け続ける警官Bだったが、奇怪な光景を目にする。

 

「ハハハハハ___解体解体解体ィィィ!」

 

髪をかき上げ光の無い血走った瞳が露になると男性の身体が虹色の光に包まれ、皮膚から群青色の宝石を生やしていく。

 

「な、なんだよ!ガァ…………ッ!」

 

警官Bが事態を呑み込むよりも早く、畏敬の怪物となった男性の変貌した腕が、警官Bの胸部を装甲ごと切り裂いた。地面に倒れ込んだ警官の背中を踏みつけ何処かへと立ち去って行った……

 


 

「ご注文は以上でよろしでしょうか?」

 

「はい!」

 

「ではごゆっくりどうぞ」

 

チョコパフェを店員から受け取った春菜先輩が元気よく返事する。そんな彼女の様子に微笑みを浮かべると店員さんは一礼し、厨房の中へ。目の前に置かれたパンケーキから食欲をそそりそうなほんのり甘い香りを嗅ぎながらフォークとナイフを手に取る。

 

「「「いただきます!」」」

 

「___いただきます」

 

店内に流れる仇やかなBGMを聞きながら先輩方の後に続き食前の挨拶を済ますと、白い湯気が上がるパンケーキを小皿に切り分け一口食べると皿ごと手を膝の上に置く。すると春菜先輩と机の影に潜みケルスとコロクがパンケーキに元気よくかぶり付いた。

 

今の環境的に食べきれる訳もないからケルス達に自分の分のパンケーキを手伝ってもらいながら、先輩達の話に相槌をうちながら穏やかな時間を過ごす。

 

「そう言えばね!職員室の前を通った時にね、2-3の先生が結婚するって話を聞いたの!」

 

「マジで!?」

 

「マジマジ!」

 

「それで帰りの会の時に3組の方が盛り上がっていたんだ…」

 

知らない人のめでたい話を聞きながらふと窓の方へ視線を向ける。そこに反射して写る僕の姿は楽しくなさそうに無表情に日本人離れした赤い瞳でこちらを見つめながら瞬きをしていた。感情が無い上に人と関わる機会がないから、取り繕う事なくありのままで過ごした結果、表情筋が死んでいるのかもしれない。

 

浮いているな、僕……

そんな考えが頭の中でよぎる中でボーっと外の景色を眺めていて時、けたたましいアラートの音色に合わせてポケットの中のリアが震える。それと同時にひざ元でケルスがパンケーキを咥えたまま固まり、コロクが手に持っていたフォークを手放す。

 

「_____」

 

「夢君……?」

 

小皿を机の上に置くと取り出したリアの画面を見ると地図が映し出されており、赤い点でソニオ怪人の出現位置が記されていた。

 

「すいません、ちょっと急用が出来たので帰ります」

 

お金を置いて立ち上がるとリュックを背負い、困惑する村山先輩と春月先輩、そして心配げにこちらを見つめる春菜先輩の視線を一身に受けながら早歩きで店の外へ。手に持つリアをアニマルモードへ変形させ、ソニオ怪人の場所まで先行してもらう。

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