仮面ライダーウィッシュ   作:火野ミライ

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第1話.始まりは突然に(A)

僕が住んでいる町、【風紫町(ふうしちょう)】。

都会の様なショッピングモールやオフィスビルが有り、田舎の様に自然が広がり隣人同士付き合いが多い。ただ電車やバスと言った公共の交通機関は1時間に1本あればいい方、タクシーはタクシー会社に直接電話してきてもらうシステム。まぁ、この町では20歳を超えたら車の免許は持っているのが当たり前だから。

 

山々に囲まれたこの地では畑仕事を代々している家系も少なくないし、昔からの言い伝えや伝統を大事とする文化もある。外から来た人はそう言うのどかな雰囲気が好かれ、この町の子供や若者は嫌い都会へと上京する事も少なくない。

 

どちらかと言えば田舎な風紫町も近年の少子高齢化の影響を受けて、若者向けの施設ができにくいのも若もの離れの原因だろう。周囲が山で囲われている影響か、天候はよく変わるし、風向きもよく変わる。良くも悪くもこの町は、都会と田舎の要素を混ぜ合わせた町なんだ。

 

この町の中心の区域に建設された【風紫小学校】。広いようで狭いこの町には教育施設が小・中・高と一つしかなく、実質的な一貫校となっている。一つしかない原因は町に住む子供の数。そして中心の地区と言うのはお偉いさんの言い方で【生活地区】と【仕事・娯楽地区】のちょうど中間区域。【教育地区】と呼ばれる場所に建っている。

 

生活地区は普通の家族が住まう地域。基本的にどの家族もその地域に一軒家を建てて住んでいる。無論その地区にはアパートやシェアハウスと言った、実家以外で暮らす人の為の施設も。

 

仕事・娯楽地区、社会人や学生のアルバイトなど働く会社が立ち並ぶビル街。中高生の遊び場でもあり、スーパーやホームセンターもこの地区にある。そのためこの地区へ向かうためのバスが一番多い。

 

教育地区はこども園を始めとした、こどもを育てるための多くの施設が建築された区域。学生寮や部活用スポーツ施設などもちろん。図書館や美術館・音楽堂など、子供の成長につながる何がとにかく多い。ただし近年では高校生や中学生の不良生徒による年下へのカツアゲ・虐めが問題となっている。

 

他にも畑や田んぼが所狭しとある【農業地区】。第二次世界大戦時に兵器の製造の為に建てられ、今は使われてない廃墟が並ぶ【ゴースト地区】。お金持ちの家族や歴史がある由緒正しき家系の人達が住み、その地に住んでいると言うだけで自慢できる馬鹿馬鹿しい風習が残っている【聖地】。この区別名はあくまで、ステータスを気にする人達や町長がなにか行動する際に使われる程度の名称で、一般的では無いとだけ補足しとく。

 

今の人達からするれば聖地とかまさしく外面を意識した人達がつけたと思われるが、昔はとっても大事だったのも確か。変えようにも今更変えられないのが現状らしい……… 伝統を優先するとこう言う所にも慎重にならざる終えない。まぁ、僕には関係ない話だ。

 

閑話休題(話を戻して)、風紫小学校の校門をたぶん誰よりも遅く潜り抜ける。遅刻ギリギリだし、それを咎める教員もいない。今年の新入生として入学した僕だったが、友達一人いないボッチだ。その原因は僕にも有るんだろうが、一番の原因は容姿だろう。

 

校舎玄関のガラスに映る自身の姿。日本人らしからぬ赤い瞳に白い髪。【先天性白皮症】、紫外線から肌や目を守る役割を持つメラニンの生成能力が常人より低い障害。今着ている長袖パーカーの下には真っ白の名皮膚……… 血液が薄っすら透けてピンク色の肌。

 

【アルビノ・白子】とも呼ばれる奇病で現代の医療では治すことは不可能。そんな病気を持つ僕を周囲にの人は気味悪がり、根も葉もない事を言われる生活。大人でそれなら子供はもっとそうだ。ただ陰口にとどまって、被害は無いから問題なし。被害で言うと家族らが一番ひどかったりはするけど……

 

校舎内に入ってすぐにやる事はパーカーのフードをとる事。メラニン生成能力がない僕は太陽の光に含まれる紫外線を防ぐ機能が無いため、年がら年中パーカーなどの長袖を服を着て防ぐしかない。本当ならば校舎内でもフードを被っていた方がいい(窓から太陽光が入って来るから)。

 

今の僕の名前が印刷されてたが、誰かの手によって黒く塗りつぶされた名札が付いたロッカーの中から取り出した赤色の上靴へと履き替える。僕はそのまま1年生のクラスへとは向かわず、保健室へと向かう。理由はいくつかあるけど一番大きな理由はやはり、双子の妹が同じクラスにいる事かな?

 

妹の名前は【紫吹 神楽(しぶき かぐら)】。一言で神楽を語るなら、文武両道の天才児。努力せずともなんでも瞬時のこなす為か、飽き性で服とかなんでも飽きたらすぐに捨てる。趣味はコスプレ、嫌いなものはピーマン・暗い所・お兄ちゃん。

 

そう見事に嫌われているのである。たぶん母親の影響が大きい。あの人は神楽に甘いからなぁ~

いや、単純にあの人は僕と言う人間を生んだと思いたく無いだけだろうけど。

 

「失礼します」

 

誰もいない保健室に3回ノックしてから入る。ランドセル代わりに使っているパステルパープルのリュックを肩からおろてベットのそばに置き、そのまま横になる。仕切り用のカーテンもあるからここが一番、日の光が当たらない場所なんだ。もちろん他の生徒がここを使う時はすぐに退く。

 

それでも寝るか寝ないか別問題。寝心地の良いクッションと布団に包み込まれ、瞼を閉じるとすぐに思考がフワフワしていき、僕を眠りへと誘う。

 


 

【夢】と言う言葉には様々な意味がある。

将来なりたい職業。今やっている事を成功させる。気になる子へ話しかける。目標や求める結果の事を夢と言うだろう。人が眠り、脳が情報(きおく)を整理する際に無意識に見る光景もまた夢だ。

 

そして僕はよく、前世の事を夢見る。

前世(むかし)は、ヒーローに憧れていた。どんな凶悪・凶暴な怪物を前にどんなにボロボロになっても、大切なモノを戦いの中で失ってもなお、今ある大切な(もの)を守るために立ち上がるその姿に憧れた。彼らの様になりたいと思っていた。

 

けど現実は勧善懲悪では無い。自分の信じる正義と相手の正義がかみ合わず争い、弱い方が悪として蹴落とされる。どんだけ苦しい状況の中にいても、決して都合よく助けに来てくれるもの好きはいない。

 

周りと違う、その一つだけで軽蔑の眼差しを向けられる世界。それでも彼らへのあこがれは消えず心に残り続け、子供っぽいと言われようといつまでも好きで追いかけていた。彼らの様な行動は出来なくて、それでも近づこうと無い頭を振り絞ってなんとかバイクの免許を取った気は達成感でいっぱいだった。

 

でも長くは続かなかった。何もない自由な時間、それを利用して少し遠くの場所までバイクでツーリングをしてた時、突然と視界に現れるボール。その直後、3歳ぐらいの幼児がボールを追いかけて道路へと飛び出してきた。

 

咄嗟にブレーキを入れ、幼児とぶつからぬように車体を傾けた。この時、ハンドルも一緒に切ってしまったのか、想定よりも大きくそれて僕の体はバイクと電柱に挟まれる事になる。柱にぶつけた衝撃で砕けたヘルメットの残骸が、頭部に突き刺さる痛みで助からない事を察し、流れる血で赤く染まる視界の中でなんとか視線を動かし幼児が無事な様子に目視、その事に安堵を覚えながら身を襲う睡魔に任せて意識(いのち)を落とした。

 

ー元気な双子ですよ!ー

 

次に聞いたのは看護師が新たに生誕した二つの命を祝福する言葉。あまりに唐突な出来事に、第二人生の産声を上げたのは懐かしい。その後、【転生】した事実を理解した時には逆に頭が真っ白になった。

 

生涯を終え、生まれ変わって第二の人生を過ごす。そういう創作物は前世でも現世でも流行りの物。それを知って頭を抱えた。あと関係ないけど死因が死因の為かバイクに対して少し、なんて言うか、う~ん……… トラウマになっている。多分この表現であっているはず。

 

でもちゃんと生きているし、深く考えるのは辞めた。今は成り行き任せに第二の人生を過ごしている。前世と違いに悩む時もあるけど。

 


 

「さよなら」

 

保健室の先生【宮崎桜(みやざき さくら)】の声を背に受け、保健室を去る。廊下には会話をするグループや走る男子生徒、それを注意する教員とありふれた光景。そのそばを通りぬけると生徒からは小さな声で、中には指を差しながら僕の悪口を言う声が聞こえてくる。

 

「なぁ、あいつの髪が白いのは他人の血を浴びた時に目立つようにらしいぜ」

 

「オレも見たことある。窓の外から目を細めてジーっと誰を殺すか考えてるの」

 

「よせ、本人は隠してるつもりなんだから」

 

本人たちにとっては(恐らく)聞こえない様に喋っているので黙っておく。いちいち反応したら逆に悪化するし、逆に無反応を貫いて悪化した時は、その時に考えればいいと思う。けれど一応弁明をしておくと、目を細めて外を眺めていたのは目が悪いから。その理由はアルビノの影響で、網膜での光の受容が不十分と言う医学的理由。子供に言っても仕方ないけど……

 

すれ違う教員も、嫌な顔を隠さずにこちらを横目で見る。直視しないのは大人だからなのか、それとも……… 結局のところ、生徒からも教員からも邪険に思われているのが僕だ。

 

教員からの視線も気づいていないフリをして、上履きに履き替えてフード出来る限り深く被り外へ。スクールバスや迎え人を待っている生徒を横目に校門を潜り抜け学校をあとにする。

 

基本的に学校の登下校は保護者の車かスクールバスのこの町で、徒歩帰宅の僕は異常だ。いや、異常と言うより異端かな? 一応、僕と同じく校門を潜り抜ける生徒は要るけど、その殆どは近くにある図書館などの施設へ向かう為であり、僕と同じく帰宅の為に歩いている生徒はいない。

 

そもそも生活区との距離が自転車で1時間20分弱かかるらしい(自転車好きの高2調べ)。その為、学校の登下校ははスクールバスか親の車が常だ。その道のりを歩くのだから、奇抜な動物を見る視線を向けられても仕方は無いだろう。

 


 

機械的な模様が浮かび、不思議な光が導くように壁になる、SFとファンタジーを合わせたかの様な幾何学模様のトンネル中を二つの影が進む。トンネルの大きさギリギリ影と少し小さな影、まるで激流に逆らう鯉のように震えながらもしっかりと前進し、やがて出口を抜ける。

 

トンネルの先、そこは青空の中だった。二つの影は重力に導かれるまま地上へ向けて落下していく。落下地点には人気がない公園…………と言っても芝生とトイレ、東屋しか無い、人の気配がしない寂しい公園へと一直線に落下。小さなクレーターを生み出す。

 

そこに近づく公園の唯一の利用者。ボロィ…………………使い古された服に身を包むは淡白な白髪を腰まで伸ばし、中性的な顔立ちをしたおとぎ話の雪女の想起させる少女、いや少年が東屋から顔を出す。これが彼らの運命の出会いであり、世界の命運の分岐点である!

 

同時刻、風紫町の大型病院の一室にて__

 

「も、もう一度言ってください先生………」

 

動揺を隠せずにうろたえる男性。顔立ちは整っており、ファッション雑誌の表紙になっても可笑しくはない程の美貌を持つイケメン。そんな彼に医師は残酷な言葉を言い放つ。

 

「あなたの血液はかなり特殊な物でして、当病院にこの数値の血液パックはなく残念ですがすぐに手術は不可能です。今、血液を探しておりますがすぐに入手するのは不可能でしょう。よその病院に無いか問い合わせますので、見つかるまで自宅で大人しくしといてください」

 

出来るだけ完結に説明された男性は力なく立ち上がり診断室を出る。

 

(せっかく曲がヒットしてこれからだというのに、こんなのありかよ……)

 

病院を出た男性の内心は穏やかでなく、やっと夢に近づいて矢先、これまでの無茶により病に侵さる。その治療には自身の血液と同種類の血液が必要であり、その血液が希少な代物であり直ぐに治療が不可能。このままでは自身に来ていた音楽関連のお仕事をキャンセル必要が出てきたことに苛立ちを隠せない。

 

そんな彼の感情に反応するかのように、彼のズボンのポケットが怪しく輝く。その輝きに気が付いた者はいない………

 


 

人通りの少ない道に設置された公園の東屋で渡された提出物(課題込み)に記入して時間をつぶしていた時、空から2つの影が落ちて来た。片方は首が3つあり犬の様な顔、腹部には赤く煌めく鉱石に銀色のライン。もう一方はコウモリの様な赤い翼を背中から生やし、どこか紳士服思わせるデザインの服(?)を着こなしている。

 

共通しているのはメカっぽさもありながら、ぬいぐるみで再現すると絶対にマスコットキャラとして売れそう。(クレーター)から拾い出し脇に抱え、東屋の中に置かれた机の上に置く。先に紙などをリュックの中に仕舞い、表面に付着した土を払う。

 

机の上に並べてみて気が付いたが紳士服の方が2回りほど小さく、腰の部分にトライデント様な三つ槍が装着されている。三つ首の方には目立たないようになっているが明らかに、関節部分以外の場所にヒンジなどがあり、動物戦隊ロボよろしく変形しそう。

 

爪で突くように音を鳴らしてみると金属音が響く。現状だとそれ以外の情報がない。普通なら手に持った時の重さや表面の温度が分かるのだが、僕は分からないのでどうしようもない。手の中でいじくりながら観察してみるけどネジ穴や電源スイッチらしきものは見当たらないし、何処で作られたか分かるような表記も無い。分からない事だらけだ。

 

唯一分かるのは強度だろう。いったいどのぐらい高さから落ちて来たかは分からないが、クレーターが出来る程の高所から落ちて凹みや傷一つついてない。大型の重機ですら高所から落とされたら凹むよ(多分)

 

「___う~~~ん……… 可愛い見た目なのに何にも分からない」

 

ペットロボットとして売れば人気出るかな? なんて機械に詳しくない僕はさじを投げ、手に持つ三つ首のロボットを机の上に戻し勉強に戻ろうとしたその時……

 

『おいらに向かって、可愛いとはなんだ!!』

 

その6つの瞳を輝かせ、関西弁よりの訛り口調で抗議してくる。更に机の上では独りでに悪魔にのロボットが動き出して、呆れたように肩をかすめる。その様はまるでSF映画のようだ。

 

「喋った………」

 

予想もしてなかった事に様子見にってする中、僕の手の中から抜け出した三つ首のロボットが悪魔のロボット横にひらりと降り立つ。赤く輝く6つの瞳をこちらに向け中央の口が開く。

 

『オイラはカッコイイ、ケルベロスだ!』

 

カッコイイを強調した簡潔な自己紹介。心成しか、表情?の方もキリっとしているというか、ドヤ顔寄りになっている。

 

『はぁ~…… 俺は悪魔型ガジェットのコロクだ』

 

自己紹介を終えた悪魔が緑に輝く瞳をこちらに向け、口にはしないが「次はお前が名乗れ」と見つめてくる。会話の流れ的にも普通だし名乗ろうとして一瞬、どっちの名を言うか悩んで結局今の僕を示す名を言う。

 

「__【紫吹 夢(しぶき ゆめ)】。見ての通り、普通じゃない小学生」

 

普通に死ぬことも、普通の第2の人生を送る事も出来ない青年だった少年の名だ。

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