前回戦ったソニオ怪人の毒と違い攻撃の為に使うんじゃなくて、捕食や自衛に使うんや。一部のクモの唾に毒があって、基本的に人間の様な生物には効かないんだ。だけど一部のクモ毒は人間にも効くから注意しろよ!
3時間目の音楽の授業が始まるまで友達と音楽室で会話をしていた時だった。突然として鳴り響く頭にキーンと来るベルの音が鳴り響いたのは…
「落ち着いて」
その音を聞いて泣き出す女の子や訳分からない事を喋りだす男の子を何とか落ち着かせようとする音楽の先生。
「キャーーーッ!!」
落ち着きを取り戻し始めたクラスの皆。だけどすぐに廊下の方から聞こえてきたよく私達のクラスに遊びに来る頼りになる5年生のお姉さんの叫び声を聞いて私も含めて皆が恐怖で身を寄せ合う。
「ねぇちゃん!」
「大丈夫よたかと君! 他の先生が君のお姉ちゃんを守ってくれるから」
だけど一人だけ、自分のお姉ちゃんの悲鳴を聞いた【たかと】君がお姉さんの元へと走り出そうとする。普段は教室の隅で本を読んで、体育では女の子よりも運動が苦手なたかと君からは考えられなかった速度で走る。
そんなたかと君を抱きしめる形でとめた先生。よく見れば、先制の身体は震えている。それでもお姉さんの所のに向かおうと暴れ涙を流すたかと君の姿にクラスの皆は落ち着きを取り戻していた。
『生徒の皆さんは先生の指示に従って避難してください!』
スピーカーから流れる校内放送。それに従い避難しようとした時、初めて廊下の方が騒がしい事に気が付いた私達。先生の外に出るのは外に出るのは危ないの判断で扉の前に机を積み上げ、音楽室の隅に集まる。
だけどそれは意とも容易く無へと化した。一人の先生がドアと机を吹き飛ばしながら音楽室を転がる。反射的に先生の近くへと寄って行った私達。
「キャーーーッ!!」
誰かが悲鳴を上げる。無理もないだろう先生の腕は曲がらない方向に曲がり、頭から血を流していたから。
「__ッヒイ!?」
皆して好奇心に負けたのか、一斉に廊下の方へと視線を向ける。そこに立っていたのは蜘蛛の怪物だった。誰かが悲鳴をがる中、怪物は気にせずこちらに近づいてくる。音楽の先生が顔を悪させながらも男の先生と一緒に転がってきていた鉄の棒を怪物に振るう。
だけど怪物には一切聞いて無くて、先生の振り下ろした鉄の棒を掴み先生ごと後ろに投げ飛ばした。先生が動かなくなるのを見ている事しかできなかった私達に怪物は距離を詰めていく。
「来ないで!」
誰かが怪物に向受けて叫ぶ。その声が気に入らなかったのか、口から去年やった綱引きの縄ぐらいの太さの糸を伸ばす。その糸は狙ったのか偶然だったのか私に巻き付き、糸で動けない私を怪物は抱え壁ごと窓を突き破り外へと出る。
それから空の上を右へ、左へと運ばれて怖くて目をとじる。そして大きく揺れたと思ったら赤い目の黒い人に抱きかかえられてた。何故だか不思議と安心感を感じる中、黒い仮面の人は私を優しく卸して赤い目を蜘蛛の怪物へ。その後ろ姿はまるで正義の
『ピピピ!ピピピ!ピピピ!………』
そんな事を思っていると視界が真っ白となり、アラームの音が響き渡る。
「__ぅう~~~ん…… ゆめ?」
モソモソと布団から起き上がりながら両腕を天井に向けて伸ばす。最近は怪物と仮面の人の夢をよく見る。まぁ、あの日の出来事は一生忘れろと言われても忘れられない。ちなみにあの後、何が起こったかは気絶していたので分からないだけどね。それにあの仮面の人にお礼を言いたいな…
多分なんだけど仮面の人は私の通う学校の人なんだと思う。なんでって聞かれたら仮面の人の声が学校で聞いた事があるから。そして私は多分、その正体の子と友達になれた。確かは分からないけど、合っていたら絶対にお礼を言おう!そんな決意をしながら私は学校の制服に袖を通した。
西暦2020年12月24日。本日の午前中に終業式を終え、世間の学生にとって実質的に冬休み初日とも言えるこの日はクリスマスイブ。町は活気にあふれアベックが楽し気に談笑する一方、誰かにとっての特別な日にとなるかもの知れない今日を縁の下の力持ちである労働者が忙しなく動く。
そんな賑やかお祭り状態の世間とはかけ離れた、廃れた道沿いにある遊具も無い公園の東屋で桜先生経由で出題させた冬休みの宿題に取り組んでいる。今日は北風が強くそこら辺に落ちていた石を文鎮代わりにし、飛ばないようにしながら筆を動かす。
『なぁ、前から気になっていたんだが学校ってなんだ?』
そう尋ねてくるのは教科書のページを前足で押さえてくれているケルス。右が顔をこちらに向けて首をかしげるケルスの言葉に筆を机が代わりにしているベンチに置き、顔ごと視線を向ける。
「___将来に向けて勉強したり、人間関係の構築を学ぶ場所」
『ふ~ん… こっちの人間はそんな事するんだな』
「ケルス達の世界は違うの?」
『まぁな。オイラが作られた世界の人間は生きてるだけで何もしなくていいらしいし…… オイラは詳しくないしコロクに聞いてくれよ~』
匙を投げたケルスは右顔も再び教科書へと向けた。そんな姿を見つめながら僕も課題へ視線を戻し筆を握る。___小1の国語ならまだ前世の記憶が役に立つ。
暗室と言うには少し明るい部屋の中で無数の機械が独りでに動く。レーザーの様な輝きが金属の様な物体を3Dプリンターの様に生成。作られた大小さまざまな部品を精密な動きでアームが迷いなく組み立ててゆく。
やがてあまたのパーツは二つの物体へと形を整えられていった。ひとつはスムーズに組みあがる大の大人2人が余裕に乗れるであろう2輪の乗り物。無骨でありながらどこか有機的なデザインをしているソレは瞬く間に色を塗られていく。
一方のもう片方は試行錯誤しているのかパーツをはめては外し、新たに製作したパーツをはめるを繰り返す。人にもよるが片手で扱えそうな小さな何かを完成に向けて機械アームは働く。
完成が見えない掌サイズのアイテムを他所に乗り物の方は既に仮組を終え、アームが引っ込んでいき、先端が違う別の種類のアームが作業を始める。先端の穴から放たれるは塗料。やがて塗装を終えた乗り物に無数のコードが接続され、設置されていたディスプレイに様々な文字が浮かび上がりっては上に流れていく。
最後の仕上げが始まった乗り物の横では掌サイズのアイテムが一度バラされ、フレームとなるであろう天面が空いた箱が新たに机の上へと運ばれいた。
場面は戻り夢が冬休みの宿題に取り組んでいる東屋。現在は教科書を必要としないプリントをしているためケルスを膝に乗せて筆を動かす。風が吹く音と紙に字が書かれる音をBGMにし、3つの顔を別々のリズムで揺らすケルスの器用な光景を他所に最後の文字を刻み1つ宿題を終わらせた。
「おぉ~~い!!」
そこに響き渡る元気一杯の声。プリントをリュックの中へしまっていた夢は声の元へ振り替える。そこには公園の道沿いに停車した車の窓から顔を出し、夢に向けて手を振る一人の少女の姿が。風に揺られる黒髪、夢を見つめる黒い眼差しは純粋無垢な性格を表しているかのように輝く彼女の名は小波春菜。
「…先輩?」
「こんな所で奇遇だね、夢君」
車から出て身体を寒さで震わせながら夢の元へと歩み寄る春菜。
今から1週間ほど前、スパイダーソニオ怪人戦翌日の出会いから夢と春菜の交流は続いていた。それこそ夢が前世の感覚で春菜の事を先輩と呼ぶほどには親交を育んでいる。
「………って、膝の上に乗せてるのはクリスマスプレゼント!?」
「____うん」
春菜の指差す先にあるのはケルスだった。変に誤魔化すより彼女の勘違いを肯定する事でこの場をやり過ごすことにした夢。動き出そうとするケルスを咄嗟にリュックの中へとしまい、改めて春奈へと身体を向ける。
「そっか~! ところで…………」
夢の言葉を信じ切った春菜の関心はケルスから夢の格好へと移った。
現在の夢の服装は普段から着用しているパーカーは修行式だった事もあり着用しておらず、白を基調とし水色の指し色が爽やかさを醸し出す夏用のセーラー服。
「その服、寒くない……?」
いくら地肌を出さない長袖長ズボンの物だと言っても元が神楽の捨てたコスプレ衣装。冬のこの時期に着るには通気性が良く、身体の体温調節の助けには向いていない。またパーカーのフードと比べ帽子は日光の遮断を一切してない。夢の身体を蝕む病気の事を知らない春菜ではあるが、あまりに軽装な姿に心配の声をかける。
「寒さ感じない………」
「夢君って冬でも半袖のタイプか……」
夢の返答を受け、クラスの男子を思い浮かべたのか苦笑いを浮かべる春菜。だが実際には言葉通り夢は寒さを感じていない。と言うのも夢を蝕む病気の一つに【先天性無痛無汗症】と言うがある。
【指定難病130】の肩書を持ち遺伝子の異常からくる病気。症状としては全身の体温や痛みが消失し、発汗が低下する。これにより夢は外気の変化を感じず、怪我をしたとしても自分では判断が付かない。更には汗をかかない事で体温調節がうまくいかずに痙攣や低体温症を発する事も。
しかしながらこの症状あるからこそ夢はウィッシュとして戦う事が出来る。例えば高所から落下しながらの変身やソニオ怪人との戦闘で見せた捨て身の戦法。これらは生物が持つ痛みからの恐怖に故にかかる無意識のブレーキが無いからこそ迷いなく実施できるのだ。
それ程までに痛みを感じないが食事などの際に舌を噛み切らない事は、夢を診断した先生も奇跡と言わんばかりに驚いていた。当の本人は前世で成人を超えた経験を持つからと思っている。
「っあ、そうだ! 今日、家でクリスマスパーティするんだけど夢君来ない? 泊りでさ!」
両手をパンと合わせ名案と言わんばかりに夢に尋ねる春菜。そんな娘の姿に運転席から様子を見守っていた春菜の母親が手を額に乗せ呆れている。
「友達を誘ってみたんだけどみんな、それぞれの家でやるって言っててさ、誰も来てくれなかったから夢君が家に来てくれたら嬉しいな~」
「…………」
春菜の無邪気な笑みを受け、表情を一切動かさずに思案する夢。そんな彼の様子に不安な表情を浮かべる春菜だった。
(家にいるよりかはマシか……)
「うん、行くよ。先輩の家に」
だがそれは憂鬱だった。夢の返答を聞き満面の笑みを再び咲かせ小さくガッツポーズを作る。その喜びを噛みしめたまま、夢の背中を押し車へと向かっていく。
「……荷物」
「__っあ! ごめん………」
そんな少年少女の姿をや柴げな目で見つめる小波母であった。
窓の端から端へと流れていく建物や歩いている人達。植木には色鮮やかなイルミネーションがされており、キラキラと輝いてクリスマスを盛り上げる。
「ねぇ、紫吹君はお父さんやお母さんに友達の家に泊まる事連絡しなくて良いの?」
「家は放任主義だから」
もう何度目かのやり取りをするお母さんと夢君。膝に犬の様な三つの顔を持つロボットを乗せ、私よりも細い右手で撫でている。窓枠に肘を乗せて窓の外を見つめるその姿は友達の言葉を借りるなら絵になるだったかな?
窓から入って来る夕日が夢君の白い髪を薄く染め、赤い瞳の横顔が何を考えているのかいつもの様に分からない表情をしている。ピンク色にも見える白い肌が現実感をなくし、まるで夢君が漫画やアニメの世界の人みたい。
吸血鬼なんて学校中で恐れられている夢君だけど、確かにこれはヤバい。男の子とも女の子と言える見た目の夢君がオシャレして何気ない仕草をするだけで何かが変わっちゃう。それに加え年下の1年生とは思えない発言。
今は恐怖の対象だけど夢君の本当の魅力に学校の皆が気が付いたら、軽く学校中の女子を恋に落としちゃいそうだ。う~ん、風柴小学校に通ってて夢君の事をちゃんと知らないのは損してると思う。 ……今度、友達に夢君を紹介してみような?