仮面ライダーウィッシュ   作:火野ミライ

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 ようみんな、コロクだ。みんなは「カラス」と言われたら何を思いつく?
 黒い鳥?それとも鳴き声?もしかしたら黄昏時のふるさとを想像する人もいるのかもな。様々な特徴を持つこの鳥だけど、元来の頭の良さからさまざまな神話や伝承に登場する。
 神の使いから死や厄災の兆しを告げるなど、様々な形で登場するカラス。中には水汲みの途中で道草をし、主の元へと戻った際に遅れた理由に噓を付いた事で怒られたなんて物もあるんだぜ。
 話は変わるが前回、夢が戦ったカラスソニオ怪人は一見すると自己中心的な願いで暴れていたが、自分が不利になると逃走を選ぶ頭脳を持っていた。これはソニオ怪人の行動としてはあり得ない事なんだ。
 ……………そんな辛気臭い話は置いておいて、今回は戦闘の無いちょっと幸福なひと時だぜ!


第4話.新年は現状確認を!

「新年、あけましておめでとうございます。2021年もよろしくお願いします」

 

冬の寒さに負けずに青々とした葉を実らす木々の中、大きく存在感を放つ鳥居が一つ。朝早い時間だと言うのに晴れ着に身を包んだ人が笑みを浮かべながら鳥居の向こうに伸びる階段を上がっていく。そんな人々の様子と日の出を背に45度ぐらい腰を深々と曲げた綺麗な姿勢で小波家の面々にお辞儀をする夢。

 

「いやいや、固いよ夢君!? 今年もよろしくね」

 

そんな夢の姿に苦笑いを浮かべながらも新年のあいさつをする春菜。その衣装は純粋無垢で活発な彼女の様を現したような純白の和服。新年のやり取りをする少年少女を見守る小波夫妻は温かな洋服に実を包んではいるが、初詣と言う事もあってか煌びやかな印象を受ける。

 

「ところで夢君、その恰好は……………?」

 

一方の夢の格好はと言うと水色を中心とした色合いに白のフリルのワンピース、足を隠す長い靴下といつもの古びたシューズ。乱雑に切りそろえらてた白髪はカチューシャで留められ、肩からは無骨な緑の鞄をぶら下げ中からケルス達が顔を出している。

 

「__不思議の国のアリス」

 

神楽の捨てた新品同様の煌びやか衣装に身を包み、自室の奥底に眠っていた祖父の戦時時代に使用してた鞄とアンバランスな恰好。しかし中性的な顔立ちをしアルビノの夢だからこそ着こなしている。真冬の北風に晒され靡くスカートから目をそらし春菜が苦笑いを浮かべた。

 


 

小波一家と共に鳥居を超え神社の階段を上っていく。既に眼前には多くの人が並んでおり、ゆっくりっと列が進んでいた。風柴町内にある雄一の神社は今年も初詣の参拝客で賑わっているようだ。

 

___今年が紫吹夢の人生で初の初詣だけど…………

 

『えらい人がおるなぁ~~』

 

「この町は特にね。この神社に風福と言う神様が祭られているから」

 

風福(かぜさいわ)】、街の成り立ちにも関わっている神。都会と田舎の中間みたいな町だからこそ、伝承などが色濃く残っている。それ故に幼少期から住んでいる者達ほど風福に感謝してる人が多い。それこそ家庭的に。

 

『風福?』

 

「あ、私もソレ知らない」

 

コロクの疑問に春菜先輩も同意する。しばらく並ぶみたいだし、知ってる分を語ってみる。

 

 

 

むかし、むかし、風柴町がまだ名無き小さな集落だった頃…

周囲を覆い囲う山々により外との交流が無かった。それは同時に外からの侵略防ぐ自然の城壁となり、山の采を得て人々は平穏に暮らしていた。

 

だがそれもかつての話。その頃の集落では不作は続き、川も干上がり、いつ餓死で滅びてもおかしくは無かった。そんな時、集落を未曽有の強風が襲ったのだ。一夜が明け強風が過ぎ去った早朝、集落の広場には米と言った食糧から少し古びた服が置かれていた。

 

その日を境に強風は度々吹き荒れ人々に福を運び、厄を吹き飛ばしていきました。そんな日々が続く中、人々は強風を神の使いがやって来た証だと信じ、いつしか風福様と崇め始めました。

 

ですが風福様はある日を境に来なくなりました。集落に平穏が戻ったからです。

集落を襲っていた不幸を吹き飛ばし人々の生活を支えてくれた風福様の事を忘れない様に、そして感謝の意味を込めて風福様が福を置いて去った場所、つまり当時の広場に祀り場としお礼の品を置くようになっていきました。その場所が現代で風祀(かぜまつり)神社と呼ばれる場所なのです。

 

 

 

『パチパチパチパチ………』

 

語り終え、最後の一段を登ると周囲から響き渡る拍手。周囲を見渡すと誰もが僕の方を見つめ手を叩いていた。どうやら周りの人々も話を聞いてくれていたようだ。

 

「なんか、夢君って音読得意そうだね!」

 

音読? 読み聞かせが得意そうと言いたいのかな? 感情や生気が乗ってない語りのどこが良かったのだろうか? 本人である僕は良く分からず、周囲の視線から気をそらすため今だ薄暗い空を眺める。

 

____注目されるのは嫌い。

【失感情症】と医師に診断された僕がそう思えるぐらいには嫌いだ。【アレキシサイミア】とよ呼ばれるこの症状だが、正確には心身症の説明に使われる概念。自分の感情を説明できなくなったり、想像力が制限されていたりと。

 

ただ感情そのものが無くなったりするわけではないので、この前みたいにトラウマで動けなくなるとか、時たま自分の感情を言語化できる。だからまぁ、僕の中ではどうでもいい症状だ。周りから邪険される理由の一つだけど。

 


 

「夢君! こっちこっち!」

 

あの後無事に初詣を終え、小波一家へとお邪魔している僕達。おせち料理を準備している小波夫妻を他所に春菜先輩に手を引かれ、やって来たのは部屋の中心にグランドピアノ?が置かれた一室。両腕を大きく広げ宝物を自慢するかのように胸を張る彼女。

 

辺りを見回してみると壁沿いの棚には春菜先輩が手にした栄光の証が飾られており、音楽室の様に二重窓や壁などに防音対策がしっかりとしてある事から、ある程度は近所の人々に配慮せずにピアノを演奏できるようになっているのが判る。

 

トロフィーやメダルをまじかで見るのは前世含めても初めて。じっくりと眺めている僕を他所に鞄からケルスとコロクが飛び出し床に降り立つ(コロクは背中の羽で飛んでいるけど)。

 

『あぁ~~~~っ! やっと外に出れた~~~』

 

猫のように全身を伸ばすケルス、一方のコロクは近くに置かれていた机に座りこんだ。

 

『それにしても良いのか春菜? 今ならただの子供に引き返せるぞ』

 

「うん、大丈夫。私に何ができるか分からないけど、夢君の力になりたいから」

 

その言葉を受け、少し悩んだそぶりを見せながらも僕らに現状分かっている事の説明を始めた。

 

『事の始まりは俺達のいた世界でソニオ結晶を運搬している乗り物…… こっちの世界で言うとトラックの様な物が反政府組織の襲撃にあい、詰まれていた数個がこちらの並行世界へと流れ込んだ事だ。いったい幾つ流れ込んだのか当初は不明だったんだが、こちらの世界についておおよそラーニングを終えた後に調査した事で判明した』

 

「はいはいー! 質問なんだけどそもそも、そにおけっしょう?って何なの?」

 

コロクの言葉を遮り春菜先輩が疑問を尋ねる。確かに言われ見れば今までソニオ結晶について尋ねた記憶がない。僕の中で人を怪人に変える地球の記憶が込められたメモリや宇宙エネルギーを開放する為のスイッチの様な物だと解釈してたのもあって、気にも留めてなかったと言うべきか。

 

『俺達の世界でも詳しく分かって無んだが、極稀に発掘される宝石の一種であり、途轍もないエネルギーを秘めている危険なオーパーツなんだ。知的生命体が持つ夢や願いと言った感情に呼応して生物を取り込んで生物の様な実態を手に入れ、取り込んだ生命体の目的を果たさんと見境なしに暴れる危険物質。発見しだい保管する為の専用施設へと運び出されるんだ、事故で10個のソニオ結晶がこの世界、さらに言えばその全てがこの町に降り注いだ』

 

「…………ねぇ夢君、コロっちが何言ってるのか分かる?」

 

「なんとなく」

 

小学生には難しい…… いや大人でも理解できないかもしれない。まぁ、大体わかればいい話だ。コロクもそれは分かっているのか、かみ砕いて説明してくれる。

 

『何故だか不明だが、この世界の住人とソニオ結晶は相性が良い傾向にあるらしく、ほぼ100%の確率でソニオ怪人へと融合…… ようは怪人に変身すると思う。正直に言って想定外の現象だ』

 

『だけどオイラと夢なら大丈夫だ!』

 

『あぁ、俺達を作った科学者は長年の研究でソニオ結晶と正反対の物質により完全に消去する事が可能な事を発見した。その研究データを元に開発され新エネルギーそれが………!』

 

「_____イネインエネルギー」

 

『あぁ! イネインエネルギーを使えばソニオ結晶に取り込まれた生物は影響なく救い出す事が出来る。それを可能にするのがソニオ結晶の生物を取りこむプレセスから発送得た犬っころもとい、ケルベロスに搭載されたウィッシュシステムだ!』

 

「………よ、良く分からないけどケルスってすごいんだね!」

 

『おぅ♪』

 

コロクの話についていけなくなった春菜先輩が拍手と共にケルスを称える。その言葉に三つの顔に笑みを浮かべながら身体を揺らす。そんなホンワカした様子を他所にコロクが翼を広部机から飛び立つと腰のトライデントを手に取る。

 

『夢、これを』

 

矛先を机に向けると先端から淡い緑色の閃光が放たれる。その光は机の上で徐々に形を作っていき、少し分厚い茶色のスマホに。

 

『それはソニオ結晶が活性化した時に知らせてくれるデバイスであると同時に、俺や犬っころを即座に呼び出すためのアイテムだ。見た目はこの世界に広く普及している通信デバイスを元としており、互換機能もあるから普段使いも可能だ』

 

「えぇ~~~っと、どういう事?」

 

『つまりは他のスマートフォンと電話やメールもできるし、メモやゲームにネットも可能って事だ』

 

「本当!? だったら夢君、今から電話番号を交換しようよ! スマホ取って来るから待っててね」

 

コロクの説明を聞いた春菜先輩は一方的に言葉を紡ぐとすぐさま部屋の外へと消えて行った。その行動力に背中を見つめる事しか出来ずにいると静かにコロクが声を掛けてくる。

 

『夢、前にも言ったがウィッシュシステムはお前の身体にどんな影響を与えるか分からない。それでも俺達はウィッシュシステムと適合したお前を頼る事しかできない。サポートはできる限りする、だからこれからも命を守護する為に力を貸してくれ』

 

「うん、よろしく」

 

真剣な眼差しを向けてるコロクに短く返答。今は僕も仮面ライダーなのだ。その名を名乗っているのだから、戦士としてソニオ結晶と戦っていこう。

 

_____残るソニオ結晶は7個




 WAREコラム 

【仮面ライダーウィッシュ】
 「紫吹夢」がウィッシュドライバーを用いて変身する仮面ライダー。
 アンチヒーローじみた見た目とは裏腹に「風柴町」で暴れる怪人から人々のために戦う正義のヒーロー。ライダーキック「イネッシュストライク」が必殺技だ。

【ソニオ怪人】
 ソニオ結晶が夢や願いなどの感情を持つ生物を取り込む事で実態を得る。なぁ地球の生物のような特徴が出るかは不明であり、ソニオ結晶が自然生成される世界では確認されていない論文のみの存在であった。
 戦闘能力は取り込まれた生物に依存し上下するが、元の生物が持たない特殊な力を発現・使いこなす事が可能。その身体は銃弾では傷をつける事は不可能であり、現状は仮面ライダーウィッシュのみが対処可能だ。
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