漠たる死に安らぎなし
曲折の果てに其は訪れん
リリィに非ずとも ヒュージに非ずとも
2050年9月18日
突然だが、今日から暇をみては日記をつけることにした。
甲州撤退戦においてヒュージの攻撃により死にかけたことがきっかけで
自分が転生者だったことに気がついたが、
同じく死にかけたことがきっかけでG.E.H.E.N.A.の研究施設にぶち込まれ、
こうして連中のモルモットとして生きる日々が続いている……
これまではそんな自らの境遇に絶望していたが、それも今日ついに終わりを迎えた。
なぜなら、この世界が本当にわたしの知っているアサルトリリィの世界であるとすれば、
ひとつの希望が存在するということに気づいたからだ。
「百合」。
前世において魅了された、リリィたちによるキャッキャウフフな至高の光景……
それがこの世界には間違いなく実在している!
そう。わたしはその事実に今日気がついたのである!
そうとわかれば生きる気力も湧いてくるというもの。
この施設でクソオブクソな生活を今後も強いられ続けるとしても
明日を、未来を信じ、希望を胸に抱いて生きていける。
それは大変すばらしいことだ。
前世のことはそのほとんどがおぼろげで、
かつての自分がどんな人間であったのか、
どのような生涯を送っていたのか、
そもそも現世同様女だったのか……
などといったことはまったくといっていいほど覚えていないし思い出せないのだが、
まあ特に重要なことではないだろうから気にせずに置いておこう。
……というわけで、
リリィたちによる至高の「百合」をこの目に焼きつけるその日まで
わたしはこの厳しい現実と戦い続けることを誓い
こうして日記を書いていくことをここに決心したわけである。
2050年9月19日
せっかくだから今後この世界で生きていくうえでの目標をいくつか用意しようと思う。
リリィたちによる至高の「百合」をこの目に焼きつけるというのは
今後も変わることがない不動不変の最大目標であるが、
それ以外にも目標があったほうがこれからの人生、より楽しいものになるはずだ。
いわば前世でプレイしていたソシャゲにおけるクエストのような感じである。
……そういえば、前世ではアサルトリリィのアプリはプレイしていなかった気がする。
確かガチャゲーを嫌っていたからだったような……
アニメにはあれだけ心を奪われていたというのに
そっち方面にまでは手を出さなかったとは我ながらニワカなものだ。
まあしょうがないよね。命も大事だけどお金も大事だし。
閑話休題。
さて、ではまずはどんな目標にしようか……
いや、考えるまでもなかった。
まずはこの施設を出ないと話にならないじゃないか。
ひとまずはここを出て再び外の世界で生きることを目標にがんばっていこう。
2050年9月25日
悲報。
わたし、来月はじめに2つ目のブーステッドスキルを付与する手術を行われることが決定。
ちなみに現時点で保有している(というか付けられた)のはリジェネレーター。
「実験」だの「テスト」だのと称して毎度毎度切られたり撃たれたりしてマジ死ぬほど痛い。
ファックユー。くたばれクソG.E.H.E.N.A.。
……でもこのスキル付与されていなかったら今頃わたしは生きていなかっただろうから
そう思うとちょっと複雑なんだよね。
なお、付与する予定のブーステッドスキルがなんであるかは教えてもらえなかった。
死ね!
2050年10月1日
手術もとい2つ目のブーステッドスキル付与実験はなんとか無事に終わった。
ちなみに付与されたのはアルケミートレースというものだった。
なんでも血液を武器にすることができるスキルらしい。
……嫌な予感がする。
2050年10月14日
今日わたしのアルケミートレースの実証実験が行われた。
嫌な予感的中。これまで以上に痛めつけられた。
……自分の体からこんなに血が流れるんだ、なんて思ってしまった。
いや、ふざけんなボケ!
あ。血液はちゃんと武器もとい疑似CHARMにすることができた。
自分の血だからか、はじめて手にしたのに妙に手になじんだ。
リジェネレーターのおかげで傷はもうないが、いまだに体中がすっごく痛い。
今日はもう寝ることにする。
2050年10月23日
とんでもない事実に気がついた。
今年もとい甲州撤退戦の時点でわたしは中学2年生だ。
(現在はご覧のとおりこの施設にぶち込まれているので強制的に休学状態だが)
つまり、2年後には高校1年生ということになる。
わたし梨璃ちゃんたちと同級生ってことじゃん!
マジか!?
これはアレか!?
転生特典ってやつか!?
だとしたら神様に感謝するしかない!
普段は神様なんてまったく信じてないけど。
もうね。本当にこのことに気づいた瞬間、喜びのあまりその場で飛び跳ねたよ。
その時周りにいた施設の連中、きっとわたしのこと気が狂ったと思ってただろうね。
狂ってるのはテメーらのほうだよクソッたれマッドサイエンティストども。
わたしは正常だ。
ともかく、これで生きる希望がさらに湧いてきた。
この施設を出ることが第一目標とするなら、
百合ヶ丘女学院に編入することを第二目標としよう。
運よく2年後までにこのふたつを達成できたら
わたしの知るアニメでのあのシーンやこのシーンを生で拝めるかもしれない……
やっば。そう考えると興奮してきた。
ニヤニヤが止まらない。
今夜はいい夢が見れそうだ。
2050年10月24日
昨日あれだけ喜んだのもつかの間、ひとつの問題にぶち当たった。
……この施設って日本のいったいどこにあるんだろう?
施設内にいるG.E.H.E.N.A.の連中は見たところ日本人だけだから日本国内だとは思うが……
甲州撤退戦で死にかけて意識を失い、
意識が戻った時にはもうここにぶち込まれていたので、
ここの住所だけが本当にわからない……
マジで困った。
もし本州じゃなくて四国とか九州、はてには北海道だったら
仮にこの施設から出ることができてもどうやって鎌倉府まで行けばいい?
わたしお金ないぞ?
……ここが本州、運がよければ関東であることを祈るばかりだ。
2050年11月2日
今日施設の連中がわたしのことを話しているのを偶然耳にした。
なんでもわたしは優秀らしい。
奴らのモルモットという意味でだが。
正直嬉しくないが、これはなにか利用できないだろうか?
たとえば、連中にとってわたしが有益な存在であるとアピールする。
そうしてあいつらの御眼鏡にかなうことができたらここを出られるかもしれない。
ワンチャンG.E.H.E.N.A.が関わっているガーデンに編入され復学できる可能性もある。
……明日からはちょっと今まで以上に奴らに従順なフリをしてみよう。
2050年11月20日
あれから連中にごますって従順なフリをしてきた効果が早速表れたようだ。
来月の頭に3つ目のブーステッドスキルを付与する手術が行われることが決まった。
HAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!
バカじゃねえの!?
バーカ! バーカ! バーカ! バーカ!
もう絶対テメーらに媚びたりなんてしないからな!
2050年12月5日
3つ目のブーステッドスキルの付与が終わった。
……が、なんか前回と違って施術後から妙にだるいというか体が重い感じがする。
頭もやけにボーっとするし、どうなってんの?
今日はもう寝よう。
2050年12月18日
いまだに全身から疲れのようななだるさが消えない。
ここ最近それに引っ張られるように精神的にもかなり疲れている。
2050年
12月25日
だるい。
つらい。
2050年12月29日
ようやくだるさや疲労感が消えた。
これで少なくとも寝正月を迎えることはなさそうだ。
今のわたしに年末年始の休みなんてなさそうだけどね!
泣きたい。
……それにしても、最後の数日は本当にキツかった。
正直生理痛とは別のベクトルで苦しさが半端なかったと思う。
2050年12月31日
先日から施設内がすごく静かになった。
もとから静かではあるが、それよりもさらに静かだ。
どうやらG.E.H.E.N.A.の連中には年末年始の休みがあるらしい。
呪われろ。
あと10分ほどで2050年も終わる。
来年は今よりは少しはマシな1年になってくれることを祈ろう。
……そういえば、付与された3つ目のブーステッドスキルってなんだったんだろう?
本作の甲州撤退戦が起きた時期は、アニメ版と漫画版LoGの描写から2050年7月中旬~下旬という設定です。