パイロット科に所属する2年生全員が講堂に集められた。そこには編入生のアムロ・レイや現ホルダーのスレッタ・マーキュリー、グエルの取り巻きその1ことフェルシー・ロロ、ジオニック寮のシャア・アズナブルがいた。
「早速だが諸君らには2人1組のペアを作ってもらう。15分後に本実習の目的を説明するのでそれまでにペアを作って前に腕章を取りに来い。では始め」
当たり前だが殆どが同じ寮の人間と組む。アムロはどうにかして誰かと組もうとするが、なかなか見つからなかった。
スレッタも同じようにペアを探していたが声をかけても遠慮されるか、逃げられてしまっていた。
「どどど、どうしよう!このままじゃ試験を受けられない……」
スレッタは焦燥感に駆られながら辺りを見渡した。
その時、アムロとスレッタの目があった。アムロはつかつかとスレッタに歩み寄った。
「君は1人かい?僕はアムロ、アムロ・レイだ。よろしく」
「よよよよろし、くお願いしします!スス、スレッタ・マーキュ、リーです……」
スレッタは突然話しかけてきたアムロに驚きながらも挨拶を返した。彼女の焦点はなかなかアムロに定まらず、かなり緊張しているようだった。
「腕章を取りに行かないか?」
「は、はひ!行くます!」
アムロとスレッタは歩き出した。腕章待ちの列は思っていた以上に早く進み、腕章を受け取るまでそう長くなかった。
「2人の学生番号は?」
「LP-042、アムロ・レイと」
「ええLP-041スレッタ・マーキュリーです!」
試験官がデータをパソコンに入力した後、腕章を2人に渡した。
「えっ、えーと。見ました。この前の決闘……」
2人の間にあった重い沈黙を先にスレッタが壊した。
「あ、アムロさんのモビルスーツ、凄いです。アムロさんの、MS、何て言うんですか?」
「〈Hi-ν〉って名前。父さんが作ったんだ。今は修理中だけどな」
アムロが笑いながらそう言った。スレッタもそれを見てアムロに少し心を開いた。
「わ、私の〈エアリアル〉もお母さんが作ってくれました。お母さんと〈エアリアル〉のお、お陰で私はホルダーになれたし、ミオリネさんとも出会えました!」
太陽のような笑顔でスレッタはアムロにそう告げた。彼女は「お母さん」の事となると口数が多くなり、内向気味ではなくなるのだ。
「いいお母さんなんだな」
アムロがそう言うと、何かを言おうとしたスレッタは突然笑顔をやめ、おどおどし出した。
「ひ、ひぃぃ〜!」
そう言うとスレッタは飛び上がってアムロの影に隠れた。アムロがどうしたんだと思っていると近づいてくる気配を感じた。
「おい水星女!」
背の小さな明るい茶髪の女の子と無口そうな男が立っていた。スレッタは怖がって自分より小さなアムロの影に隠れている。
「いきなりその呼び方はないんじゃないですか?失礼ですよ」
アムロはその女の子に言った。彼女はフェルシー・ロロ。ジェターク寮のパイロットだ。
「うっせぇ!月面人!ワタシはそのスレッタ・マーキュリーに用があるんだ!」
フェルシーはそう叫ぶとアムロを無視してスレッタの方へ駆け寄った。
「このバトルロワイヤルでワタシはあんたを撃墜して、グエル先輩の仇をとってやる!あんたのせいでグエル先輩は決闘を禁止されたんだ!」
フェルシーは大声でスレッタに罵声を浴びせる。スレッタはそれに対して情けない声で悲鳴を上げることしかできない。
「……さっきから聞いていれば、あなた達の先輩が負けたのでしょう?決闘は結果のみが真実のはず。彼が負けたのが悪い」
アムロが冷静にそう言うと、フェルシーは更に激怒した。アムロに掴みかかろうとするが同行していた男に掴まれた。
「やめろ、フェルシー!今騒ぎを起こすのはまずい」
「あとで覚えてろ〜!水星女と月面人!あたしとこいつでボコボコにしてやる!」
フェルシーはそう言いながら同行の男に抱き抱えられて視界から消えた。スレッタはアムロの肩から顔を出してフェルシーが去るのを見届けた。
「た、助かった〜」
スレッタが大きなため息をついた。アムロはやれやれという表情でスレッタを見た。そこへちょうどシャアがやってきた。
「やあ、アムロくん。ペアは見つかったのかな」
相変わらず怪しい仮面を着けているシャアがアムロに気軽に話しかけた。シャアの隣には彼のペアであろう男が静かに立っていた。
「勿論。僕はスレッタと組むよ」
シャアはアムロの肩から顔を出しているスレッタを見た。スレッタはシャアと目が合うとおどおどしながらアムロの影から出てきた。
「君がスレッタ・マーキュリーか。私はジオニック寮のシャア・アズナブルだ。ホルダー就任おめでとう。ぜひ握手してくれ」
シャアは白い手袋を外して手をスレッタに差し出した。
「ス、ススレッタ・マーキュリー、です。よろろしくお願いします……」
スレッタもシャアに手を伸ばして握手を交わした。シャアの手は冷たかった。