実習に参加する生徒がMSハンガーに集められた。かなり広いハンガーには100機以上の〈デミトレーナー〉が並んでいた。
「本実習では〈デミトレーナー〉を使用した実戦形式の試験を実施する。各自任意の〈デミトレーナー〉に搭乗し、生き残れ。ルールは決闘と同じだ。味方はペアのみ。それ以外は全員敵だ。怪我及び事故に気をつけ、搭乗を開始せよ。成績は後日生徒手帳に送信する」
試験官が拡声器で全員に聞こえるようにそう告げると若きパイロット達は走り出した。それぞれお気に入りの機体があるのだ。個体特有の癖や関節の摩耗具合や製造ロットによって操縦特性が変わるためだ。その為、お気に入りの機体が被ると喧嘩になったり、口論になったりする。
そんなことを全く知らないアムロとスレッタは空いている機体を探してハンガーを彷徨った。アムロはスレッタもりも一足早く空いている機体を見つけた。
「スレッタ、見つけたかい?」
「は、はい!見つけました!」
スレッタとアムロが合流し、MSコンテナへと歩いていく。MSコンテナ積み込み区画の前にある武装支給所で前で大量の〈デミトレーナー〉が渋滞を起こしていた。
「スレッタ、僕は近距離仕様で行く。君はどうする?」
「わ、私は遠距離仕様で行きます!い、い、生き残りましょう!」
「ああ。その意気だ」
アムロはビームライフルとコンバットナイフを受領するとMSコンテナに乗り込んだ。〈デミトレーナー〉がアームで固定される。
スレッタ機も同じようにMSコンテナにロックされ、2人は一緒にどこかの戦術試験区域に運び込まれた。
「全機の配置を確認した。試験開始と同時に固定を解除する。カウント3で試験を開始する。……開始まで、3、2、1、実習開始!」
MSコンテナのロックが外され、150機以上の〈デミトレーナー〉が解放された。モニターには普段の決闘ではあまり使うことがないキルログ欄が表示されていた。
美しい緑の草原と山々、青空で構成された巨大なフィルードに立っていた。周りにはスレッタ機しかいない。
アムロはビームライフルを構えて索敵を開始した。スレッタ機とはデータリンクで繋がっており、広い範囲を共有して捜索することが可能だ。
「スレッタ、敵が来ている。お互いに協力して乗り切ろう」
「は、はい!頑張り、ます」
アムロは早速ビームライフルを構えて稜線の少し上に照準を合わせた。〈デミトレーナー〉のブレードアンテナが見えた瞬間に発砲した。反応が〈Hi-ν〉に比べてかなり遅い。相手のデミトレーナーのアンテナの少し下にあるバイザー部分に命中し、ブレードアンテナが根本から溶け落ちた。
━━━反応が遅い!ブレードアンテナの根本を狙ったのに!邪魔だ!
アムロはどんどん名前が流れてくるキルログ欄の表示を切った。
アムロやスレッタを倒そうと多数の機体が集まってくる。さらにそれらを狩るためにまた別の機体も集まってきた。
アムロとスレッタは他者を凌駕する圧倒的な実力とセンスでそれらを捌いていた。
「アムロぉ!!」「水星女ぁ!」
面倒な奴らがやってきた。シャアとフェルシーだ。アムロはビームライフルをシャアとフェルシーに連射するがシャアはひらりとそれらを躱し、シャアもアムロにビームライフルを連射した。フェルシー機はビームが左足を掠ったが行動に問題は無かった。
「スレッタ!フェルシーがそっちに行った!僕はシャアの相手をする」
「は、はい!頑張ってください!」
アムロが後ろに飛ぶとシャアもそれを追って、バーニアを吹かし、シールドを構えてコンバットナイフを装備した。
アムロの後ろから誰かの機体が飛び出してきた。その機体はアムロ機を掴もうとしたが、その行動を先に読んだアムロはその機体を踏み台にしてさらにシャアとの距離を取った。
「ええい!邪魔をするな!」
シャアはその機体の頭部にシールドを叩きつけ、アンテナを潰し、地面に叩きつけた。あの機体のせいで少し距離を取られた。
「ちょこまかと!」
シャアは牽制のためにビームライフルを躱される前提で撃った。アムロは盾で防いだり、左右にそれらを避けて反撃でビームライフルを撃った。
「今だニック!撃て!」
「あいよ!」
ニックと呼ばれたシャアの相方はアムロがキルゾーンにやってくるのをひたすら待っていた。ニックはアムロ機に大型ビームライフルを向け、発砲した。太く長いビームがアムロに迫った。
━━━どうする!?前からはシャアが来ている!やるしかない!
アムロはバーニアを吹かして急制動をかけた。激しいGがアムロの全身を襲い、血液が下半身に集まり、意識が朦朧とする。頭部への直撃は逃れたものの、右脚が破壊された。ビームライフルも落としてしまった。今あるのはコンバットナイフのみだ。
「大丈夫ですかアムロさん!?加勢します!」
スレッタがやってきた。スレッタ機はビームガトリングを持っており、ニックに光弾を浴びせ、ニックの大型ビームライフルを破壊した。シャアはスレッタにビームライフルを撃つがシールドで防がれた。
「スレッタ、ありがとう。助かった。僕はシャアの相手をする。君はあっちのやつを頼む」
「分かりました!」
「他人を気にかけている場合か!?」
シャアは地面に座り込んでいるアムロ機に近付いた。アムロは推進剤のチェックを行なった。
━━━行ける!
アムロはバーニアを吹かして飛び上がった。コンバットナイフをヒートモードに切り替えた。超音波振動によって刃が熱され赤く光る。
シャアは勝利を確信した。アムロ機のブレードアンテナに照準を合わせようとした時、アムロの思念を感じた。
「まずい!」
アムロはコンバットナイフを落ちていたビームライフルのエネルギータンク部分を狙って放り投げた。エネルギータンクに突き刺さったナイフは激しい爆発を引き起こした。
シャアはすんでのところで飛び上がったが、両脚を吹き飛ばされてしまった。
「なかなかやる!アムロ!」
「すまんシャア!やられた!」
ニックから通信が入った。
いけるか?!もうアムロの武装はない!
シャアはビームライフルを構え直し、空を舞っているアムロに照準をつけた。
「やめなさい!」
スレッタが乱入してきた。スレッタはシャア機のビームライフルをコンバットナイフで切り裂き、抱き抱えた。
「ホルダーか!私とアムロの邪魔をするな!」
「アムロさん!お願いします!」
踠くシャアがスレッタ機のブレードアンテナを折ろうとしている。
「このぉぉぉ!」
アムロは加速してシャア機の頭部にパンチを加えた。シャア機のブレードアンテナが折れ、飛んでいった。アムロ機もそれで推進剤を使い尽くし、そのまま地面に落下した。コンソールからエアバッグが展開され、アムロはそこに顔を押し付けた。
「……ロさん!アムロさん!」
アムロが目を覚ました。少し気を失っていたようだ。
「やりましたよ!私たちが最後まで生き残りました!」
アムロが生徒手帳を確認すると生存表示がついているのは自分とスレッタだけだった。
「アムロさんのおかげ、です!ありがとうございます!」
「いや、スレッタのおかげだよ!あの時シャアを抑えてくれなかったら僕はやられていた。感謝するよ」