白い悪魔と赤い彗星   作:ガミ2199

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フライトユニット

「ガルマじゃん」

 

 暇そうにソファーでロウジの端末で映画を見ていたセセリアがエレベーターから出てきたガルマに気がついた。

 

「シャアから聞いたよ。本社に戻ってたんだってね」

 

 シャディクもガルマに気づいて笑顔を向けた。

 

「そうなんだよ!急に議会連合と交渉する事になったらしくてお父様の隣で見てたんだよ!内容は言えないけどね。それくらい次期CEOになるんだから参加しないと」

 

 議会連合(セツルメント国家議会連合)はL3宙域にあるフロントに本部を置く公的機関であり、ドローン戦争で崩壊した地球連邦政府の後継組織だ。シャディクは議会連合という単語を聞いて一瞬笑みを消したが何事も無かったかのように普段の表情に戻した。

 

「ボウヤにCEOって出来るのかな〜?大変だよーCEOって」

 

 暇を持て余したセセリアが子供を諭すような口調でガルマのことをイジった。ガルマは事あるごとに自慢をする事や垢抜けていないその見た目から「ボウヤ」と言われている。表立って言えるのはセセリアぐらいしか居ないが。

 

「その口調はやめろ!ボクはボウヤなんかじゃない!」

 

 ガルマは顔を少し赤くして反論した。セセリアは狙った通りの反応が返ってきて喜んだ。シャディクもそれに釣られて笑った。

 

「フフそうかい。それは大変だったね。聞いたかい?グエルがまた負けた」

 

「ああ。シャアから聞いたさ。エランだろ?」

 

 シャディクは黙って頷いた。

 

「エラン!どうやってグエルに勝ったんだい?」

 

 ガルマはソファーの端で静かに本を読んでいるエラン・ケレスに話しかけた。

 

「……」

 

 エランは視線を上げる事なくただ黙って読書を続けた。

 

「今日は機嫌悪いみたいだな」

 

 エランの様子を見たシャディクが呟いた。無視されたガルマは少し落ち込んだ。

 

「昔はこんなんじゃなかったような……」

 

「ガルマ、帰ってきてすぐに任せて悪いんだが次の決闘の立ち合い人をしないか?」

 

「立ち合い人?!やる!誰と誰が決闘するんだい?!」

 

「エランと水星ちゃんさ」

 

「水星ちゃん?……あぁスレッタ・マーキュリーか」

 

「来たみたいだね」

 

 ガルマがエレベーターの方に顔を向けると自信が無さげの赤髪の少女がゆっくりと歩いてきていた。グエルが求婚している動画やバトルロワイヤルでの動画で何度か見たことはあったが対面で会うのは初めてだった。

 

「す、スレッタ・マーキュリー、です!」

 

 スレッタはそう言いながらラウンジにいる人間の中からエランを探した。エランは本を静かに閉じてソファから立ち上がった。

 

「ガルマ・ザビ、場所はフロント外宙域で頼む」

 

 エランはガルマにそう耳打ちすると決闘条件を取り決めるために窓の前に立った。窓が閉まり、モニターに切り替わってアスティカシアの校章が映された。

 

「ボウヤさーん出番だよ〜」

 

「やめろって言ってるだろ」

 

 ガルマはセセリアを睨みつけたあと、エランとスレッタの間に立った。

 

「本決闘の立ち合い人はジオニック寮寮長ガルマ・ザビが務める。双方、魂の代償をリーブラに。決闘者は2名。決闘は一対一の個人戦を採用。場所はフロント外宙域。双方、異論はないか?」

 

 ガルマはスレッタとエランの顔を見た。

 

「エラン・ケレス、君はこの決闘に何を懸ける?」

 

「僕が勝ったらスレッタ・マーキュリーのエアリアルを貰う」

 

「スレッタ・マーキュリー、君はこの決闘に何を懸ける?」

 

 スレッタは俯いて考えこみだした。ガルマは右手で髪の毛を弄りながら見ていた。

 

「どうしたんだい?」

 

「懸けるもの、まだ考えれてなくて……」

 

「なんだそんな事か。別に今じゃなくてもいいさ。当日までに決めればいいよ。じゃあAlea jacta est(賽は投げられた)!決闘を承認する」

 

 シャディクの真似をして手を叩いた。シャディクの様に気持ちの良い音は鳴らなかったが。

 

 

 決闘委員会ラウンジから帰ってきたスレッタを地球寮の皆が出迎えた。

 

「フロント外宙域?!」

 

「不味いよぉ!ペイル社のモビルスーツは機動性が売りなんだ!しかもそこにミサイルなんて加わったら……」

 

 マルタンが頭を抱えた。

 

「お前フライトユニットなんて持ってんの?」

 

 ヌーノが尋ねた。

 

「持ってないです……」

 

 追加装備なしのエアリアルでも宇宙での戦闘は出来なくはないが、機動性もスピードも遥かに劣ることになる。これが他の寮なら機動戦に対応した追加装備やサブフライトシステムなどがあるがそんなものは地球寮には無い。

 

「ニカ、アナハイム寮に友達いるんだろ?何とかSFSとか借りれないのか?」

 

「確かにキースくんなら貸してくれるかも」

 

 ビッグ5の一角であるアナハイム寮はフロント内外で使えるベースジャバーというSFSを保有している。

 

「それはダメ!ビッグ5は敵よ!」

 

 ニカはこの前連絡先を交換したキースに電話を掛けようとしたがミオリネに制止された。

 

「なんでお前が居るんだよ」

 

「別に居てもいいでしょ」

 

「じゃあ、昔みたいにホビハイのバックパックでも使う?あーしのデミトレでも使えんたんだしエアリアルでも使えるっしょ」

 

 ホビハイとはホビーハイザックのことでニカが地球から整備訓練用に持ってきた旧式のモビルスーツだ。チュチュが入学してから間もない頃に行われた決闘で無理やりバックパックを取り付けた〈デミトレーナー〉で勝利を収めた。

 

「確かにホビハイの機動性なら今でも通用するかも」

 

 ホビーハイザックの原型機である〈MS-108ハイザック〉は10年ほど前にロールアウトした機体だ。その機動性と生存性は高く、傑作機として多くのフロント自治区やセキュリティフォースで採用された。現在は旧式化し、スペックダウンした上で警備や趣味などで用いられている。

 

「まだ機動性に不安があるわね……」

 

 ミオリネが顎に手を当てながら考えこんだ。アリヤもミオリネの言葉に頷いた。

 当のスレッタは皆が自分の為に頑張って意見を出してくれているのに何も出来ない自分にもやもやしていた。

━━━いつもの戦術試験区域なら良かったのにな

 

「ドンマイですよ!決闘の条件を決めるのは決闘委員会の特権ですから!」

 

 落ち込んでいるスレッタを見てリリッケが励ました。

 

「でもどうすんだ?ホビハイ用の追加装備なんて買う金、ウチにはねえぞ。あっ!ミオリネ!お前の金━」

 

「無理よ。私の資産は全部クソ親父が管理してる。私が自由に使えるのはポケットマネーと1ヶ月分の生活費だけ」

 

 オジェロが最後まで言い切る前にミオリネが発言した。それを聞いてオジェロは落胆した。

 

「じゃあ作ろっか」

 

 ずっと俯いて考えていたニカがやっと口を開いた。

 

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