「スペーシアンはここから出ていけ!」「地球バンザイ!」「蹴散らせ!」「搾取をやめろ!」
最初は平和的だった筈のデモは人が集まるにつれ、どんどん過激化していった。ベネリットグループの機動隊は催涙ガスやゴム弾を暴徒化した民衆に撃ち込むが全く沈静化する様子が無かった。市民に囲まれ、孤立した機動隊員が撲殺されたり、ゴム弾の当たりどころが悪く死亡してしまった市民の死体がところどころに転がっている。
「第2中隊、後退しろ!第4中隊は前進!暴徒に告ぐ!これより破壊活動防止法に基づき、強制執行を実施する!直ちに破壊行動をやめグハッ!」
暴徒が投げたコンクリート片が機動隊指揮官のヘルメットに直撃した。拡声器を持っていた機動隊指揮官は頭から血を流しながら倒れた。
「しっこぉー!各自に撃て!」
第2中隊が後退し、その隙間に実弾を装備したサブマシンガンを持った第4中隊員が入った。第4中隊員はサブマシンガンの照準を先頭で鉄パイプや工具を持って暴れる暴徒に合わせた。
引き金を引き、10人以上の機動隊員が弾丸を市民に浴びせた。銃弾を浴びて何人、何十人もの市民が斃れる。その中には子供もいた。
「やりやがったな!」「人殺しが!」「子供を撃ちやがった!」
市民達はさらに過激化し、機動隊に突進した。数の暴力の前では銃も無力で最前列で乱射していた機動隊員に軍人上がりの男がさっと近づくとGUND義手で腕をへし折り、スリングを引きちぎってサブマシンガンを奪い取った。
「死ね!スペーシアン!」
男はそう言うとサブマシンガンを機動隊に向け、何十発も撃った。撃たれた機動隊員が痛みでのたうちまわり、血を流した。男はサブマシンガンを撃ち尽くしたあと懐からグレネードを取り出し、機動隊に放り投げた。何十メートルも空を舞ったグレネードは空中で破裂し、後方で待機していた軽装の指揮官や天幕に破片の雨を降らせた。
「MS部隊を投入する!全員下がれ!」
機動隊は負傷者と検挙した暴徒を庇いながら、さっと退いた。暴徒はそれを追おうとするが、装甲車の放水や銃撃で追うことができない。
建物の影から巨人が出てきた。空からも耳障りなジェット機の爆音が響いてくる。巨人は地響きを響かせながらのそのそと登場した。
「モビルスーツだ!」
悪名高いベネリットグループ治安部隊の最後の切り札であるMS部隊がやってきた。重装甲の〈ディランザ・ソル〉や長距離巡行用フライトシステム〈ティックバラン〉に乗った〈グスタフ・カール〉が暴徒を見下ろしていた。
「あ……あぁ」「逃げろ!」「押すなよ!」
今まで機動隊に好き勝手やっていた連中が我先にと逃げ出した。〈ディランザ・ソル〉はそんな彼らを逃すまいと強力な催涙ガスを暴徒の足元に撃ち込んだ。強力なガスがその一帯を包み込んだ。暴徒達は喉や目を抑えてのたうちまわった。
「舐めるな!クソスペーシアンが!」
軍人上がりの男が近くに隠していた携帯型誘導弾発射機を構えて、真上にいた〈ティックバラン〉をロックオンした。引き金を引くと強力な反動と共に誘導弾が発射され、白い尾を曳きながら〈ティックバラン〉に向かって行った。
〈ティックバラン〉はフレアを吐いて回避行動を取ろうとするがいかんせん近すぎた。左翼に命中し、乗っていた〈グスタフ・カール〉がバランスを崩して振り落とされた。〈グスタフ・カール〉は運悪くガス弾をリロードしていた〈ディランザ・ソル〉に覆い被さるように落ちてきた。〈ディランザ・ソル〉は頭部を潰され、〈グスタフ・カール〉の左腕によってコックピットブロックごと押しつぶされて倒れた。
「シンがやられた!」「撃ってきた!」「やっちまえ!」
残っていたMS部隊が逃げ惑う群衆にビームや機関砲弾を掃射する。軍人上がりの男が車の影からもう一発誘導弾を放とうとするが、車ごとビームサーベルで薙ぎ払われ、蒸発した。
「検挙!全部隊前進!武装解除し、拘束せよ!」
MS部隊が薙ぎ払った後を装甲バスやバイク部隊が進行した。追い詰められた暴徒達は跪いて手を上げた。彼らの行手にはビームサーベルやビームライフルを構えた〈グスタフカール〉が待っていたのだ。
「クソアーシアンが!殺しまくりやがって!」「跪け!反抗するな!」
同期を殺された機動隊員が跪いていたアーシアンの頭をポリカーボネート製の大楯で殴りつけた。そのアーシアンは頭から大量の血を流しながら立たされ、最低限の止血処置をされてから他のアーシアンと共に装甲バスのシートに括り付けられ、収容所へと連行された。