白い悪魔と赤い彗星   作:ガミ2199

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パーティ

 アナハイム寮の広いパーティルームでアムロの歓迎会を兼ねた祝勝パーティが行われていた。アムロは編入して来てから行われた初めての決闘で見事ジオニック寮のエースパイロット、シャア・アズナブルに勝利を収めたのだった。

 

「アムロの初勝利を祝って!乾杯!」

 

 アナハイム寮寮長のフィニアスがジュースの入ったグラスを高く掲げた。

 

「「「かんぱーい!」」」

 

 パーティに参加している全員がグラスを高く掲げた。アムロもそれに合わせてグラスを高く掲げた。

 

「アムロ先輩流石っす!」「アムロさん!」「アムロ!」

 

 グラス片手に皆がアムロの話を聞こうと彼の周りに群がった。彼は編入してからたったの数日でこの学園内ではグエルに次ぐ実力を持つと言われていたシャアを打ち負かしたのだから話題性は充分だった。

 

 「あぁ、うん……ありがとうみんな」

 

 照れながらグラスを口に持って行きジュースを飲んだ。決闘を終えて疲れた体に炭酸がしみ渡る。

 

「いや~しかしあのシャアを負かすなんて!」「ほんとよねぇ、私もびっくりしたわよ」

 

「アムロ先輩!どうやってあの赤い彗星に勝ったんすか!教えてほしっす!」

 

 アムロにそうせがんでいるのはパイロット科1年のニーカ・ブルトゥスだった。彼女は目を輝かせながらアムロから話を聞こうとしている。

 アムロはそんな彼女の顔を見てグラスを置き、渋々話し始めた。

 

「どうって言われても……な。うーんそうだな。まず相手の意表を突くことだ。相手はきっとこっちの一挙一動を見ている」

 

 アムロは両手を使って自分と相手の動きを表した。

 

「ここで僕が上に行くとしよう。その時相手はどこに意識が行くと思う?」

 

 アムロの説明を固唾を飲んで聞いていた全員が考えた。

 

「上じゃね?」「きっとこの問題には裏があるんだ。下だ」「上っす!」「下なわけねぇだろ。それただよそ見してるだけじゃねぇか」

 

 みんなが口々に自分の意見を言っている。みんな楽しそうだった。

 

「正解はみんなが言う通り上さ。だからこっちは下から攻撃するんだ」

 

 アムロがそういうと皆が話すのをやめてきょとんとした顔になった。

 

「……とにかく、相手の意表を突いた攻撃が大切なんだ」

 

「なるほど」「だから赤い彗星を倒せたのか」「アムロ先輩流石っす!相手の意識を上に向けさせてこっちは下から攻撃するなんて!今度やってみるっす!」

 

 ニーカは納得したように何度もうなずいていた。彼女はわざわざ学生端末を取り出してアムロが言っていたことを必死に記録しているようだった。きっと彼女は素晴らしいパイロットになる。アムロはそう感じた。 

 

 その後もアムロはパーティ中ずっと質問攻めにあっていたが彼は渋々だが丁寧に答えていた。パーティが終わったあと、自室に戻ったアムロは制服を脱ぎ散らして自分のベッドの上に寝転がるとそのまま眠りについてしまった。

 

 

 パーティが終わった後、ニーカは1人で格納庫へと向かった。誰もいない暗い格納庫の電気をつけ、彼女は愛機へと向かった。アムロの〈Hi-ν〉、コウのスタークジェガン、キースのジェガンを歩きながら眺めた。どれも傷つき、汚れている。アムロの〈Hi-ν〉に至っては右足を欠損し、天井からワイヤーやクレーンで吊るされている状態だった。

 それらに比べて自分のジェガンは綺麗だった。彼女専用にカスタムされたジェガンは全身が白く塗装されている。全体的に傷はなく、塗装禿げも少なかった。

 

 彼女はゆっくりとタラップを登った。誰もいない格納庫にタラップを上る音が響く。上り終えると彼女はそばにあったヘルメットを取ってコックピットへと入った。コックピットは当然のことだが誰もおらず、静寂に包まれていた。

 生徒端末をポートに差し込み、ジェガンを起動させた。

 

「MP038、ニーカ・ブルトゥス。ジェガン起動」

 

 コックピット内の全天周モニターが起動し、格納庫の壁が表示され、ジェガンとデータリンクで繋がっているヘルメットに様々な情報が表示された。

 

「モードT。バトルシミュレーション起動」

 

 ニーカの音声操作を認識したジェガンがバトルシミュレーションを起動し、全天周モニターにメニュー画面が現れた。

 ニーカはスティックを操作して戦闘状況の設定や敵の設定を行った。

 

「設定が完了しました。これより模擬戦を開始します」

 

 画面にそう映し出されてから少しおいて、宇宙空間が表示された。全てを包み込むような漆黒の闇と星々の煌めきが広がっている。

 そしてその煌めきの隙間を2機のモビルスーツが移動していた。AIが自動生成したモビルスーツだがどことなくジオニック社の雰囲気を感じた。

 

「くっ!このっ!」

 

 ちょこまかと動く敵機に照準を合わせてビームライフルを発砲するがなかなか当たらない。残弾数表示だけがどんどんと減っていく。

 

「相手の意表を突く!」

 

 ニーカはビームサーベルに武装を持ち替え、シールドで敵のビームを弾きながら吶喊した。ビームを弾いたり、避けたりしながら確実に敵に近づく。

 

「うわぁ!」

 

 左足にビームを食らい、融解した装甲板とフレームが脱落した。推力が低下し、シートが揺れる。

 

「なにすんだっ!」

 

 ニーカはシールドとのデータリンクを確認した後、左方向へと移動しながら、ビームサーベルを敵機に投げつけた。密集した2機が飛んでくるビームサーベルにバルカンを発砲し、破壊した。ビームサーベルは火球に変化し、ニーカはシールドを捨ててその火球へと突っ込んだ。

 AIは火球を抜けて現れたニーカにビームやバルカンを浴びせた。ニーカはそれらを右手の小型シールドを使い防御した。

 

「今!」

 

 シールドミサイルの発射ボタンを押した。AIの警戒対象から外れていたシールドからミサイル4発が発射された。ミサイルは敵の迎撃虚しく1機に命中し、ブレードアンテナごと頭部を破壊した。

 

「まず1機!次!」

 

 僚機を失った敵モビルスーツは動揺しているのかさっきより狙いが甘い。

 

「ハンドグレネード射出!ビーム撹乱幕!時限3!発射!」

 

 ニーカは音声操作で左腰に装備されているハンドグレネードを発射した。ビーム撹乱幕とはアナハイムが独自に開発し、特許を取得したものでその名の通りビームを乱反射させその威力を大幅に拡散、屈折させることができる対ビーム兵器だ。アナハイムのモビルスーツならどれもが最低でも1発を装備している。

 発射から3秒後に炸裂したグレネードは周囲にビーム撹乱幕を散布し、敵の弾幕はそこで消えた。

 敵機はビーム撹乱幕の影響を受けないヒートホークに武装を変更してニーカへと突っ込んで来る。ニーカはハンドグレネード2発を牽制で発射するが相手はそれをひょいと避け、どんどん距離を詰めてくる。

 

「そっちかその気なら!こっちだって!」

 

 ニーカはビームライフルの狙いを頭部ブレードアンテナに定め何発も撃つがなかなか当たらない。当たったと思ったら敵機のシールドで防がれてしまった。

 ニーカはここでビームサーベルを囮に使ったのを後悔した。

 最後の悪足掻きでバルカンポッドでビームを撃つが敵のヒートホークの方が動きは早かった。頭部に付けられたブレードアンテナをヒートホークが叩き切り、戦闘が終わった。

 

「……まただ!なんで勝てないんだよ!」

 

 ニーカは脱いだヘルメットを肘掛けに叩きつけた。ヘルメットが鈍い音を立ててシートから落ちた。ニーカはしばらく考え込んだあと、ヘルメットを拾って、学生端末に今回の戦闘の記録をダウンロードしたあと静かにジェガンから降りた。

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