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工藤新一は遊びから帰ってくると、救急隊員達が家から母親である有希子と父親の優作が、救急車に運ばれていくのを目撃した。
「………母さん、父さん!?」
「君は息子さんかな?お母さんとお父さんが、倒れていると、連絡があったんだ?」
救急隊員の話だと、女性から病院に連絡あって『友人が倒れているから助けてほしい』と言われたらしい。救急隊員が家に入ってみると、有希子と優作が倒れていたようだ。
「父さんと母さんを…助けて!」
「ボウヤ…私と一緒に、病院に行くわよ。」
新一は黒服を着ている女性を警戒したが、救急隊員は「あの人が連絡してくれたんだよ。」と言ったため、警戒心が消えた新一は救急車に乗り込んだ。
女性は黒い携帯を取り出すと電話を掛ける。
「ラム……例の組織が動いたわよ。」
『あの夫婦はどうなりましたか?』
「一足遅く…襲われたのか、昏睡状態に…一応、組織の病院に搬送させるわ。」
『我々が求めている情報を持っている可能性が高い…あの夫妻を襲撃するとは……ベルモットの判断に任せます。』
「あの夫妻のボウヤはどうするの?」
女性が新一をどうするのかを…ラムの判断を伺うと、思いかけない指示が出された。
『あの少年は、あの夫妻の息子。組織にスカウトしなさい。まだ生かす予定だったターゲットを襲撃したのですからね。例の組織には…制裁しなければ…なりません。』
「だけど、あのボウヤは小学4年よ。早すぎないかしら?」
『組織のメンバーに、年齢は関係ありません。条件を出せば…組織に加入してくれるでしょう。全くの偶然ですが…』
「わかったわ。その条件とは?」
『あの少年に、復讐を提案させてみては…どうですか?まあ、貴女に任せしますよ…ベルモット。』
女性…ベルモットは電話を終えると、車に乗り込んで組織系列の病院に向かう。
(私の親友を襲うとは。ラム…切れてたわね。どうやって、あのボウヤをスカウトするか。正義感がありそうだから、犯罪組織に入るとは…思えないけど…)
組織系列の病院に到着したベルモットは、病院内に入ると携帯の電源を切り、受付の人に封筒を渡す。中身を見た男性はカードキーをベルモットに渡した。
「例の少年がいる部屋のカードキーです。一応、薬で眠らせています。」
「暴れなかった?」
「大人しかったですよ。一番辛いのは、あの少年です。」
「………そう。」(組織の人間でも、悲しみの感情を持つ人間もいる。珍しいけどね…ジンとウォッカは論外かしらね。)
カードキーを受け取ったベルモットは、病院内にあるエレベータに乗り込むと、ある仕掛けを作動させて、地下に降りていく。
その頃。新一が目を覚ますと真っ暗で、何も見えない室内に寝かされていた。目の前にはモニター画面があった。
(この部屋は…確か、病院に向かってから…)
新一は病院に到着以降の記憶がない。眠らされていたので、仕方ないのだが…
モニター画面が光るとNo.2と表示されて、設置されているスピーカーから声が…
『目覚めたようですね?工藤新一…』
機械音声に新一は、警戒心を露にしつつ言った。
「お前は誰だ!」
『………私は、組織のNo.2。コードネーム…ラムです。病院に連絡したあの女性の上司です。』
「コードネーム…ラム……お酒の名前?」
『ほう。知っていましたか。なら…話が早い。私は貴方をスカウトしたいのです。我々の組織に…』
新一は耳を疑った。子供の自分をスカウトしたいと言ってきたからである。ラムは『犯罪組織の構成員として』と発言した。
「俺は…犯罪組織には、入らない!」
『それでもいいですが…新一君。貴方は両親を助けたくありませんか?』
「……………」
ラムは新一に、取引を持ち掛けようとしている。
ラムから提示された取引内容は、新一が組織に貢献する見返りに、昏睡状態に陥っている有希子と優作の治療費、入院費を肩代わりすると申し出た。
新一は小学生でありながら、知能が高いのに着目したラム。
『新一君が組織に貢献すれば、組織内で高い地位を獲得できます。最初は知識を蓄えてもらいますが…更に、組織を裏切らない限り…ある程度の自由を与えます。監視付きですがね…』
「………俺は、人を…殺したくない…父さんから教わっているから…悪いこと。」
『よろしい。私は新一君の頭脳を借りたいだけですよ…君が、殺人を拒むなら…それでも構いません。どうしますか?』
新一は嫌々ながら、ラムのスカウトを受け入れた。黒の組織に加入した瞬間だった。