新一は組織の末端構成員が運転する車で、江古田中学に向かっている最中だ。ラムの計らいによるものである。家から江古田中学までは、交通機関を使わなければ、遅刻が確定してしまう。
「毎日疲れないか?俺の送り迎え…」
「この任務は優しい方ですよ。他の構成員は、命と隣り合わせですから。安全運転に気をつければ、組織に消されませんから。」
新一と会話している運転手は、組織の末端構成員、谷在秀悟である。この男の特技は機械のメンテナンス。ようは機械弄りが好きなのである。爆弾の製作や解体作業を得意としている。
「帰りは何時頃に?」
「終わりが15時なんだよな。任務はないし…15時30分に迎えお願いしますね。」
「わかりましたよ。新一君…」
江古田中学に到着した新一は、車から降りて門を通り抜けると担任である山崎レイが呼んだ。
「工藤。今日は15時から学級委員会があるが…」
「今日は家の用事で、早く迎えに来てもらう予定で…」
新一が学級委員会に参加できないとわかった山崎は、仕方ないと諦めた。用事があるものを無理に参加はさせない。
「それなら仕方ないな。そろそろ時間になるから、教室に急ぎなさい。」
「わかりました。」
校舎内に入ると、いきなり肩を叩かれた。後ろに振り向く。右手からクローバーのAのカードを出現させたのは、同級生である黒羽快斗である。手品が得意であるが、悪戯好き中学生である。
「工藤!今日もリベンジするからな。」
「悪いけど黒羽。今日は用事があるから明日でいいか?」
「マジかよ!?今日も、お手製のマジックを考えてきたのによ………と言いたいけど、仕方ないな。また明日な!」
わざと落ち込んだ様に見せるが、笑みを浮かべた快斗。だが、新一には誤魔化せない。制服の左の袖から、白い鳩の描かれたメダルを取り出して見せた。
「仕込むのは上手いが、俺には誤魔化せないぜ。」
「バレてたのかよ!?他の同級には上手くいったのによ!」
「俺を負かせたいんだろ?だったら、頑張れ。」
「絶対に参ったと…言わせてやる。」
快斗は教室に入る。一番前の席に座り、鞄から教科書を出している。一番後ろの席に座った新一は、鞄から教科書を出しながら窓の外を眺める。
(平和なんだけどな。知られたら…俺の身近な人間が、消されかねない。気をつけないと…)
授業が始まり、新一は何気に教師の話を聞きながら、ノートに何かを書き進めている。
「……………授業はここまで。次は体育だからな。着替えたのち、体育館に集合しろよ。」
(次は体育……ヤバイ。加減できるかな…)
教室から出ようとしたら、懐に入れている組織用の携帯が振動した。新一はトイレの個室に入ると携帯を確かめる。ラムからメールが届いた。
《明日の夜7時にベルモットが迎えに来る。隠れ家にて待機せよ。》
《了解。》
(仕事かな?暗殺じゃなければ良いけど…)
体育館では、グループにてバスケの試合をしていたが、新一は仲間からパスを受け、敵の妨害を難なく避けて、スリーポイントゾーンからのシュートを成功させていた。
「工藤は、サッカーだけじゃなかったのか!?」
「運動神経良すぎだぞ!?」
「シュートは偶々だって。」(組織の戦闘訓練で、素早く動く練習してたからな。相手の動きが…若干遅く見えるんだよな。シュートはマジで、偶々だし。)
新一は組織に入って以降、身体能力が上がってきていた。戦闘訓練はピンガと毎回していたので、上達が早い。
「……よし。一旦休憩に入る…10分後、別グループとするように。」
(流石に疲れたぜ。)
ベンチに座り込むと快斗が、チョコレートを差し出してきた。
「疲れた時にはこれだぜ?やるよ。」
「教師に注意されるぞ?」
「なら、後で取りに来いよ。」
快斗はグループに戻っていった。