モンスターだらけのARKを生き延びろ   作:あるこばれの

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 ようやく15話目に突入しました!まだ投稿を初めて一月ですが、中々ペースを維持するのは難しいですね。何年もかけて数百話も連載されている投稿者様の根気や情熱は本当に目を見張るものがあるなぁと常々感じる今日この頃です。本作は、まだまだ拙い出来ではありますが、閲覧してくださっている方々のためにもより良い内容にしなければと思う次第であります。


 とまぁ、前置きは長くなりましたが、本編スタートです!!


Version4.5:導蟲

 あれから俺は生活に必要な物品を作った。寝心地は決して良いとは言えない簡易的なベッドに、石を火打石で削って無理やり作った調理鍋、そして木の板を貼り合わせて作った収納箱だ。これで一応生活をしていく上で最低限必要な物資は大方揃ったと言える。ここからは、プラスアルファで気になったエングラムの物を作っていこうと思う。まず一つ目は、槍だ。打製石器の穂先を木の棒に紐で括り付けただけの原始的かつシンプルな物だ。正直こんなオモチャでこの島の化け物の如き生物とタイマンを張れるなどとは毛頭思っていないが、何も無いよりかは幾分かは精神衛生上好ましいはずだ。それに、カモシワラシ等の小動物を狩る際にも、現在の手斧よりかは効率良く狩猟を進められる事が期待出来る。武装としては心許ないが、生活用品としては一定の成果が見込まれる。それがこの石槍に対する俺の評価だ。

 

 

 そして、もう一つ俺が気になったエングラムは「メモ用紙」だ。現状、インプラントにパソコンのメモ帳に該当する機能は無い。そのため、紙は電子媒体が実質使えない今の生活であれば、記録媒体としてかなり大きな役割を果たしてくれるのは明白だ。さらには、細かな汚れ取りなんかでも使えるから痒い所に手が届く事間違い無しだ。尤も、重要な前者の用途としては、ペンや筆が作れない現状すぐには用いられないが。ただ、エングラムから作られる紙がどんな感じになるのかという好奇心もあるし、材料も繊維と藁だから今すぐにでも作れる。取り敢えず作ってみよう。余ったらそれこそ、ちり紙にでもしてしまえば良い。いずれにせよ、あれば一定以上俺の生活の質を高めてくれと考えて差し支えないだろう。そうして、俺は製紙作業を始めたのだった。

 

 

 繊維、もっと言うとこの島の天然資源の多機能な事には毎度驚かされる。藁、正確には藁の様な質感をした木の屑や樹皮とでも言うべきか、それと繊維を、水を張った調理鍋に投入した。それから、これらを石でドロドロのペースト状になるまで叩いた。さらに、その中に圧力を掛けてでんぷん質を析出させた繊維を加えた。そして、それら材料が混ざった物を手ですくって外に出し、乾かした。本来は簀の子などで掬い上げるのが正しい製法なのだろうが、あいにく今そんな物は無いので、形は悪くなるがこれで妥協する。このエングラムの紙の製法は知っている。多少なりとも材料に差異はあるが、概ね「蔡侯紙」と呼ばれる現代の紙のルーツとなった物と同じ製法だ。ちなみに、その歴史は古く、紀元一世紀中国後漢朝の宦官、蔡倫が編み出したものとされている。しばらくの間天日干しにした後、目的の物は完成した。やはり、手で掬った所為か、形はかなり歪だが、手触りは完全に紙だ。麻紙に近い成分のためか、紙肌は粗く書きにくそうだ。この後、俺は残った材料でもう三枚ほど紙を作った。作業を繰り返す度に上達しているのか、最後の紙はきれいな真四角とまでは行かなくても、人によっては四角と思ってもらえる位にはまともな形になっていた。

 

 

 

 

 一仕事終えた俺は、昨日防護柵の紐の補強に用いる皮を手に入れるために狩った、カモシワラシの肉に噛り付いていた。疲れた時の肉はどんな食べ物よりも美味い。これは俺が普通にインドアな生活を続けていては、決して得られなかった感覚だろう。俺はしばしの間、この一時的な満腹感と幸福感に身を委ねていた。こういった瞬間だけは、種々の不安や孤独感を和らげることが出来る。やはり、食の力は偉大だ。

 

 

 しかし、そんな感傷に浸っていられるのも一瞬の事だった。食事を終えた俺の下へ、水を差す存在が集って来たのだ。それは、この昼下がりの時刻には似合わない、美々しく煌めくホタルの様な虫だった。ただ、それだけなら、景色を楽しめれど特に辟易するような要素は無いのだが、この異常な数の正しく大群を見れば誰だって引いてしまうだろう。もう少し数が少なければ、俺はこの光景を幻想的で美しいものだと言えたのかも知れない。だが、この異様な数の虫を目にすればそんな感想など軽く吹き飛んでしまう。軽く数百匹はいる。俺はブナハブラの件があってから、虫の群れという物に対して、どうにも抵抗がある。流石に大群と言えども、標準的なサイズの虫に食い殺される事は無いと信じたいが、どうしても体は命を守ろうと身構えてしまう。やはり、最初の死とあってか、その時の記憶は俺に深く爪痕を残しているようだ。俺は全身から悪寒感じながらも、額からは冷や汗が流れ顔のみが熱くなるという、とても不快な感覚に陥った。俺はその場にいられなくなり、ついに逃げ出してしまった。

 

 

 何てことだ。どれだけ逃げ回っても、この虫の大群は俺の後ろを綺麗に付いてくるではないか。しかも、一匹たりとも漏れなくだ。俺は息が上がってとうとう足を止めてしまった。虫たちは俺を取り囲む様にして未だ周囲をフヨフヨと静かに漂っている。その穏やかな様子を見るに、あいつらは俺に対して敵意を持ってないのかも知れない。それが頭を過ると、俺の中で緊張の糸が少しずつ切れてゆくのが分かる。さっきは数に圧倒されてマジマジと眺める余裕など無かった。しかしよく見てみると、光っているお陰か、こいつらから昆虫特有の気持ち悪さは感じ取れない。それどころか、黄緑色の光を放つ虫たちの飛翔は、まだ白昼にもかかわらず、夜のホタルを思わせる奥ゆかしさと、美麗さを併せ持っており、どこか幽玄を感じさせる様な幻想的な雰囲気を醸し出していた。それに、俺が動くとそこに必ずぴったり付いて来てくれるのが、可愛らしく感じる。思えばこの島に来てから俺はずっと一人きりだった。だからこそ、あの虫たちの様にスキンシップを取ってくれる存在を心の何処かで求めていたのかも知れない。少しの間ならこいつらと戯れるのも悪くない。虫に対する若干の恐怖は残るものの、考えを改めた俺は、息が整うと我が家に戻ったのだった。

 

 

 家に戻ってから、虫の群れがこれまでとは違った妙な動きをし始めた。先程俺が作った紙に纏わり付く様にしてその周りを飛んでいるのだ。もしかして、こいつらには紙を喰う生態でもあるのか?まさか紙魚と同類なのか?紙魚(シミ)とはフナムシに似た見た目をした昆虫で、古文書に食害を与えることで知られている。時に書物を修復不可能な状態に追いやる事もあるため、俺たち歴史の研究を行う者にとっては、正に天敵とも言える存在だ。それ故、古文書の保管場所の温度・湿度管理や清掃は徹底しなければならない。そんな天敵によるトラウマを思い出した俺は咄嗟に、虫の大群を掻き分けながら紙に駆け寄り、手に取っていた。それでも虫たちは俺の手に握られた紙に集っている。だが、幸いなことに紙に喰われた形跡は無いし、今でも喰おうとしている個体はいない。その様子に俺は安堵し、一気に鼓動が落ち着いていくのを感じる。過去のトラウマというのは誠に恐ろしいものだ。この島に来る前にも後にも、俺は虫に呪われているかもしれない。そんな事を考えていると、虫たちは紙から離れ、再び俺の周囲を漂い始めた。どういった目的があったのかよく分からない。紙に飽きでもしたのだろうか?こいつらは案外珍し物好きな虫なのか?人間が作った物に興味を示しているのか?というか虫にもそういう感覚とか感情ってあるのか?

 

 

 そんな取り留めのない疑問についてあれこれ考えていると、虫たちの一部は突如、成人男性の全力疾走と同じくらいのかなり速いスピードで森の中へ飛び去って行った。残った虫たちは、俺の周りを最初の頃よりも幾分か荒々しい様子で飛んでいる。さらに、その中の一部は牛が歩く様にゆっくりとしたペースではあるが、飛び去って行った集団と同じ方向に進もうとしている風に見えた。その様子はまるで、俺にこの先へ行って欲しいと訴えかけている様にも感じた。俺は迷っている。またランポスの様な危険生物と遭遇するかも知れない森の中へ入るのは、どう考えても真っ当な判断ではない。本来ならここで迷う要素など存在しない。合理的な判断を下したいのであれば、たかが虫の一挙一動など黙殺するに限るだろう。だが、俺のシックススセンスは虫たちを追うべきだと理性とは相反する通告をしている。この先には何か重要な物があると。しばらく逡巡したものの、結局俺は頭では危険だと分かっていながらも、強く湧き出る衝動に負けて虫たちの誘う方向へ歩を進めていくのだった。

 

 

 虫たちは一切の迷いもなく、薄暗い道なき道を進んでいく。体力の無い俺はそれに食らい付いて行くのが精一杯だった。俺たちはそれから数分程歩き続けた。そして、俺たちは最初に飛び立って行ったであろう虫たちの集団と再び合流する事が出来た。ここは森の中でもまだ比較的浅い場所だ。幸運なことに俺たちは大きな生物とは依然遭遇していない。目を向けると、合流した虫たちはある一ヶ所の周りを漂っていた。俺はその場所へ足を運ぶ。

 

 

 そして、その場所には古ぼけた金属製のツールボックスの様な形をした箱が鎮座していた。




 ARKのゲーム内では「メモ用紙」は何も設備を使わずに文字通り「手作り」出来るのですが、リアルに考えて、流石に無理があるだろうと考えたので本作では調理鍋を用いて製作しています。


 今回登場した虫の群れは、MHWorldに登場した「導蟲」と呼ばれる生物です。原作では、フィールドに登場するモンスターや環境生物、採取可能オブジェクトをマーキングしてその場所に案内してくれる画期的な新要素でした。新大陸のハンターの皆様は良くも悪くも様々な思い出があると思います(笑)さて、裕太君は数多のハンターに天国と地獄を見せたこの生物を使いこなすことが出来るのでしょうか?!またまた導かれた先にある物とは一体何なのか?!


 それでは次回もお楽しみにお待ちください!
(次回はリアルの都合上早くても来週の後半ぐらいにしか投稿できません。少しの間お待たせいたします…)
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