小説の方も無理のない範囲で頑張っていこうと思います!それでは本編スタート!
俺は酷使した頭の冷却と、今晩の食料の確保を兼ねて、石槍を片手に近所の散策に出ていた。先程のウォーカー博士の記録には、残念ながら俺が期待したような島からの脱出手段に関係する情報は無かった。だが、この島の謎を解き明かそうとした彼女の姿勢には勇気を貰う事が出来た。俺には彼女の様な偉大な行いは出来ないが、それでも同じ様にこの極限環境下で生きた、生きている人がいるという事実だけでも、今の孤独な心を奮い立たせるには十分だ。
唐突ではあるが、少し実験をしたいことがある。それは今も俺の傍らを漂っているホタルの様な虫の群れ、導蟲に関してだ。あのノートを手に入れられたのは、そもそも突如として飛び去って行った導蟲を追い掛けたのが事の始まりだった。その前後での導蟲たちの動きに気になる箇所があるのだ。こいつらの一部が飛び去る前には、群れ全体で紙に集っていた。そして、群れが向かった先には紙があった。そのことから考えると、あの不可解な行動は紙を覚えるための行動だったのではないだろうか。丁度、犬に匂いを覚えさせて探し物をする様な感じで。そう仮定すると、一連の流れに説明がつく。とにかく調べてみない事には始まらない。
俺は試しに導蟲の群れの中に手のひらサイズの石を近づけてみた。最初の数秒間は特に何の反応も無かったが、それから導蟲たちが徐々に石の周りに集まってきた。紙に集まって来た時のように、石の周りを漂っている。そして、少しの間が経過した後、導虫たちは群れの一部を残してまたもや飛び去って行った。俺はそれを追い掛けてみる。たどり着いた先は今いた場所から約数十メートル程しか離れていない場所だった。そこには、俺が持っていた石と同じ種類の岩があった。次は俺が普段から常備している食料の一つである赤い果実、ティントベリーを使ってまた同じことをしてみる。案の定と言うべきか、今回もまた導虫たちはベリーの在りかへと向かっていった。ここまで来れば間違いないだろう。やはり導蟲にはこちらが与えた物の何らかの特徴、匂い?形状?なんかをを記憶して近くにある、同じ物を探す生態があるのだろう。これは今後の生活において大いに役立つ性質だろう。必要な資材や食料の場所をこちらが知る事が出来るのは非常に大きなアドバンテージだ。無駄に当ても無くそれらを探して歩き回る必要もなくなる。ただ、それが出来るのは自分が知っていてかつ持っていいる物に限定されたり、幾ら導蟲とてこちらの安全配慮してくれる保証は無いので、知らず知らずのうちに危険地帯に足を踏み入れたりするという欠点については重々理解しておかねばならないが。しかし、それを差し引いてもこの導蟲は今後重要な役割を果たしてくれるだろう。
一通り導虫たちの生態について確認した俺は、本日の夕飯を求めて辺りを調べ始めた。残念なことに、昨日まで導蟲の生態は疎か存在すら知らなかった俺は、狩猟したカモシワラシの亡骸を残していなかった。導蟲が動物に関しても紙や石と同じ挙動をするのかまでは分からないが、今となっては検証の余地すら無いので後の祭りだ。これも調べられたら良い結果を得られたかも知れない。今度からは狩った生物の皮とか毛とか、一部だけでも良いから保存しておこう。もしかしたらこれらにも導蟲が使えるかも知れない。思わぬところで足を掬われてしまったな。反省。そんなこんなで、俺は周辺を探索していたが、青空が橙に染まる時間になっても尚、俺が狩れるような小動物は発見できなかった。ケルビやアプトノスなんかはチラホラと見かけはしたが、俺が石槍一本で戦いを挑むには余りにも荷が重い。今夜の飯がベリーだけになるのは癪だが、それですぐに死ぬ訳ではない。運が悪かったと思ってここは大人しく引き返そう。そう思い家の方向に踵を返そうとした。その時だった。
「グォグォ、ギャーゥ!」
忘れもしない、忌々しい声が辺りに鳴り響いたのだ。俺がここに来てから常に警戒していた存在の一つ、青き竜、ランポスの御登場だ。