モンスターだらけのARKを生き延びろ   作:あるこばれの

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 前回は久しぶりに不穏な最後となりましたが、今回果たして裕太君は無事に生き残れるのでしょうか?!

 それでは本編スタート!!


Version4.8:Triumph!

 ああ、何度味わっても、この獣に睨まれる感覚には慣れないな。今、俺の目の前には、三匹の青い肉食竜が立ち塞がっている。奴らの黄色くて大きくて、そしてどこか据わっている無機質なその瞳は、忘れようも無いあの本能的な恐怖心を呼び起こさせる。だが、最初に殺されたあの時とは明確に違う事が一つだけある。それは、俺にまだ幾分かの理性が残されている事だ。あの時は、ただ恐怖に駆られて、腰を抜かして震える事しか出来なかったが、今は違う。確かに、今の俺も手足は震え、額からは嫌な汗がこれでもかという程に溢れ出ている。だが、それでもランポスを眼前にしても何とか踏みとどまる事が出来ている。やはり、リオレイアと出会ってしまったせいで、俺の感覚と言うか、基準は狂ってしまったのかも知れない。

 

 

 

 現状、三匹のランポスと俺が正面から相対している。両者ともに大きな動きを見せることの無い膠着状態だ。出来ることなら、一秒でも早くこの場から全力で逃走したいものだが、それは現段階では最悪手だ。仮に今俺が全力でダッシュしても奴らにすぐに追い付かれるのが関の山だ。人間の速力では絶対に奴らを引き剝がすことは出来ない。だからこそ、俺は奴らと目を合わせたまま、なけなしの槍を構えつつ、ゆっくりと一歩、また一歩と少しずつ後退している。対するランポス達は、そんなこちらの様子を警戒してか、いきなり飛び掛かって来るようなことは無く、徐々に獲物を追い込む構えを取っている。三匹の群れはアーチを描く様にして広がっている。俺の真正面には一匹のランポスがいる。現状、俺と睨み合っているのはこの個体だ。残りの二匹は、そいつを中心として左右に分かれ、俺から見て左右の方向から俺を囲み込み込むように俺へ向かって段々と前進してくる。奴らが歩を進める度に、俺も一歩ずつ後ろへ下がってゆく。数の優位は向こう側にある。このままズルズルと同じ状態を引きずり続ければ続ける程、こちらが不利になるのは火を見るよりも明らかだ。だが、それでもこちらからこの均衡を破壊しに行く事も出来ない。もしも、俺が槍一本で突っ込んだところで、群れの力には敵わない。さらに、運が悪い事に、今俺が進んでいる方向は家とは正反対だ。つまり、家まで引き付けて、最終的に立て籠もるという手段は使えない事になる。だからこそ、俺が一瞬でも長く生き残るためには、この出来レースに縋り続ける他無いのだ。何分、何時間経過したのかなどこの極限状況においては、分かるはずがない。ただ一つ言えるのは、この膠着が俺にとって無限にも思える程の時間続いているという事だ。お互いが歩みを進める毎に、勝利の天秤が少しずつ、だが確実に向こう側に傾いて行くのを実感する。

 

 

 

 

 永遠に続く時間など存在しない。変化という物は突然にやって来る。いつ終わるとも知れない程続いた歪な均衡は、あまりにもあっさりと破られてしまった。俺は靴底から土とは違う何か硬い、違和感のある感触を感じ取ったのだ。俺は思わず、足元を見てしまった。なんとそこには、体長15 [cm]以上はある黄色い甲殻を持つコガネムシを思わせる昆虫がいたのだ。しかも、人間に踏まれたにもかかわらず、全くの無傷で。しかし、こんな事に気を取られている暇などない。俺がほんの僅かな隙を晒したと見るや、先程まで睨み合いを演じていた真ん中のランポスが体を縮め、俺に飛び掛かる体勢に入っていたのだ。最早万事休す、絶体絶命とは正にこの事だ。そんな様子を見て、俺はまたこいつらに殺されるのかと、悔しさを滲ませた。家を作ろうとも、生活物資を整えようとも、、終いには武器を作ろうとも、結局のところ人間は無力だ。前から十分理解していたつもりではあるが、やはり、いざそれを目の前で突き付けられると、例え何回目だとしても、悔しくて、悲しくて、絶望してしまう。きっと、向こうにその気など無いのだろうが、人の営みを否定されている様で、堪らなくむず痒い。せめて、今度は腹に爪を指したりせず、一発で喉笛を噛み切って欲しいな。あの時も似たような事を考えてたっけ。結局、俺の運命は何があっても不変って訳か。そんな諦観が俺の心を覆い、一方では一頭のランポスがいざ飛び上がろうと縮めていた足を延ばした、その刹那だった。

 

 

 

 

 

 

 

-------------ピシューーーン---------------

 

 

 

 

 

 

 

 そんな何かが弾ける様な音と共に、眩いという言葉では表しきれない程の強烈な閃光が辺りを照らしたのだ。俺は咄嗟に目を閉じ、顔を両手で覆った。発光が収まると同時に俺は目を開けた。すると、俺の視界には信じられない光景が映っていた。なんと、三匹のランポスが先程の光で眩暈を起こして行動不能になっているのだ。俺に向かって飛び掛かろうとしていた一匹は、急な刺激で身体のバランスを保てなくなったのか、地面に転倒して、まるで釣り上げられた魚の様にのたうち回っている。残りの二匹も立ててはいるが、その足元はふら付いており、首から上はダラーンと下を向いて項垂れる様な姿勢になっている。

 

 

 

 そんなランポス達の様子を見た瞬間、俺の中で得体の知れない何かが込み上げてきた。今なら殺れる。殺れば俺は生き残れる。そう何かに囁かれた気がした。

 

 

 

 

side ???

 それは彼が、多くのサピエンスが久しく忘れた原初の本能であった。人が考える葦となるより遥か太古の、まだ獣であった時の生きる術だ。だが、これは「挑戦し続ける者」となってまだ間もない彼には理解の及ばない物に違いない。今、彼は理性ではなく、ただ生きたいという生命の本能によってのみ衝き動かされているのだ。私や先人の様にただ、小さな部屋の小窓からしか世界を見れぬ者には到底成し得ない偉業だ。私は彼が羨ましい。そして、また彼と云う存在にどこか懐かしさや郷愁を感じるのだ。それは、今では僅かに残るのみとなった私の旅路の記憶を刺激するのだ。

 

 

 おっと、彼が動き出したようだ。彼はどうやら最も被害の大きかったのたうち回っている個体に狙いを定めたようだ。仕留められる獲物から仕留めようとする。実に賢明な判断だ。まだまだ不慣れなものだと思っていたが、サバイバーの成長は存外早いものだ。彼はランポスの首筋に、手製の石槍を突き刺した。だが、奴らの皮膚は硬く、貫くことは疎か傷を付けることさえも出来ない。それでも彼は、二度、三度と槍を突き立てるが、青き竜の体躯を突き破る事は叶わない。それもそのはずだ。あれらはそれしきで息絶える程柔な「設計」ではないからだ。さあ、ここから君は一体どうやって対処する?

 

 

 

 

 彼はまだ諦める気は無いらしい。彼は天を仰ぎながら、喉が潰れんばかりの雄叫びを上げたかと思うと、今度は奴の眼孔に得物を突き刺した。そして、柄の先端に全体重を掛け、より深く潜らせてゆく。あの様な急造の品では、やはり荷重を支えることは出来ないようで、彼の槍は座屈して真っ二つに割れた。それと同時に刺されたランポスの身体一瞬だけビクりと震えた後、掠れた弱々しい断末魔と共に動かなくなった。残りの二匹は、閃光による眩暈が収まり、同胞の最期が見るや否や、一目散に深い森の中へと去って行った。どうやら彼は一つ急場を凌げたようね。

 

 

 

 

 私は彼の戦いを見て、懐かしい記憶を蘇らせていた。彼の戦いは率直に言って、まだまだ粗削りで、あの時よりも過酷な環境となったあの島を生き延びるには力不足だ。私の知る獣の女王には遠く及ばない。しかし、そんな彼の様子は在りし日のヘレナを想起させるのだ。彼女もまた今の彼と同様に、自らを守るため慣れない武器を取り、脅威に立ち向かう事を選択したのだ。さあ、サバイバー、あなたの試練は、冒険は、進化はまだ始ったばかりよ。願わくば貴方がこの地へと廻り来ぬことを。

 

 

 

 

 

side 桃園裕太

 「はぁはぁ、やった…のか…?」

 

 気が付けば俺の目の前には、槍が眼孔から頭部を貫通した一匹のランポスが横たわっていた。息はすでに無くなっているようだ。本当にこれは俺がやったのか?俺はあの窮地から生き延びる事が出来たのか?実感は未だに湧かない。だが、一つだけ言えることがある。人間だってやれば出来るんだ!幾重にも偶然が重なった上での勝利なのは承知の上だが、それでもヤツらに一矢報いられたのに変わりは無い。少し遅れて、俺の胸中に感情の波が押し寄せてきた。歓喜、安堵、優越感、それらが入り乱れ麻薬の如く俺の心を刺激する。そんな俺の心境を映し出す様に、夕日は燦然とこの島を照らしている。今この瞬間だけは、勝利の喜びに身を任せよう。




 本編の補足です。裕太君が踏んづけたムシは光蟲という、モンハンでは超お馴染みの昆虫です。閃光玉orスリンガー閃光弾という、現実で言うスタングレネードに近いアイテムを調合するための素材となっています。


 ここからはハンターの皆様向けなのですが、光蟲はMHWorldの本編では息絶える時に強い光を発するという記述がありますが、昔のハンター大全にはどうやら発光後に光蟲は逃げていくという記述もあったようです。今回の話では後者の設定を採用させていただきました。
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