モンスターだらけのARKを生き延びろ   作:あるこばれの

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今回はタイトルの段階で軽くネタバレしかかってますが、ご了承ください。


Version5.0:森を牛耳る蛮顎の竜

 「知ってる天井だ。」

 

 俺は見覚えのある室内で目を覚ました。と言っても、慣れ親しんだ我が家などではなく、俺がこの島で作った木造の小屋のだが。今までの事がすべて夢で、目が覚めたらまたいつもと変わらない日常が、なんて都合の良い夢オチ展開だったならばどれ程幸せだっただろうか。だが、この現実が眼下に広がっている以上、タラレバ話をいつまでも考え続けている暇なんて無い。一先ず目の前の現実を整理しなくては。

 

 

 

 

 

 

 俺にとっては、先程の襲撃からどれ位の時間が経過したのかは分からない。もし、少し間しか経過していない場合、群れのボス、ドスランポスを含むランポスの群れがまだこの近くにいるかも知れない。現状で再び遭遇してしまったら、また先程と同じ展開になるだろう。取り敢えず、状況が分からないから外の様子だけでも確認しておこう。そうして、俺は家のドアをほんの数センチだけ開き外の様子を眺める。だが、そこに在ったのは目を疑う光景の数々だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれだけの数がいたランポスが一体も残らず見るも無残な姿に変わり果てていた。ある個体は、乱暴に投げつけられでもしたのだろうか、家の外周を覆うスパイクウォールに全身が突き刺さって絶命している。しかもそのスパイクウォールは、何か衝撃が加わったのか真っ二つに割れている。ランポスの皮は槍でも貫けない程に硬く丈夫だった。にもかかわらず、この惨状が繰り広げられているという事は、相当な速度で投げ飛ばされでもしたという事だ。それに、よく見たら、家の外壁も所々傷がついていたり、血痕が付着していたりしている。他のスパイクウォールも踏み潰された痕が複数あり、囲いとしての機能はもはや半壊している。明らかに想像を超えた事態が起こっている。それから、俺は状況をより詳しく確認するためにもう少し、周囲を見渡してみる。他にもランポスの死骸は多く転がっている。その中でも多いのは、炎で焼かれた様に、体表に焦げた跡が付いた死体だった。炎で真っ先に思い出したのは、リオレイアだ。確かに、あいつならこれしきの暴挙を行うなど造作も無い事だろう。だとしたら、今はかなり不味い状況だ。まだ奴が近くにいる可能性が高い。であるならば、ここも最早安全とは言えない。それに少し気になる事もある。それは、この家やその周囲のそこかしこに付着した黄色い粘液だ。先程から漂って来る、血液のものとは違う何かが腐った様な鼻を刺す臭いの原因のように見える。そして、そこには導蟲たちが集まっており、ウォーカー博士の記録を見つけた時と同じ挙動をしている。あれは確実に何かある。そう思った矢先、この不穏な静寂は破られた。

 

 

 

 

 

 

 「グ…グォグォ…」

 

 

 

 

 家の扉の右方からドスランポスの物と思われる鳴き声が聴こえたのだ。その声は、俺を殺した時の威圧感が嘘だと思えるほどに、弱々しい呻き声だった。それと同時に導蟲たちがその方向に向かって一斉に飛び始めた。このまま篭っていてもどの道助からない。そう予感がした俺は、意を決して家の外に出たのだ。そして、導蟲指し示した場所には、信じられない衝撃の光景が広がっていた。あの10 [m]の巨躯を誇るドスランポスが、いとも簡単に咥えられ、まるで親猫に連れられる子猫の様に運ばれていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それは圧巻のパノラマだった。もし、これが俺の目の前で起こっている現実でなければ、そんな吞気な感想を言えたのかも知れない。俺の目の前にいたのは、またしても肉食恐竜だった。だが、それは今まで巨大だと思っていたドスランポスがまるで子供の様に見える程、圧倒的な存在だった。その様は誰しもが知る、あのティラノサウルスを彷彿とさせる。体長は20 [m]は確実にある。身体の高さも4 [m]以上はあり、ドスランポスのそれを大きく上回っている。また、スレンダーな体格のドスランポスとは異なり、大柄でかなりガッチリとした体型をしている。脚は丸太の様に太く、大腿部から足先に至るまで、筋肉が浮かび上がっている。足のサイズも5、60 [cm]はあり、指や爪の大きさもそれに応じて太く長くなっている。首は平均的な成人男性と同じくらいの太さがあり、そこから生える頭も大人の人間と比較しても遜色ないほどの大きさだ。単純な体の大きさだけならあのリオレイアと同程度だろうが、この体格のせいか、ぱっと見の威圧感はこちらの方が強く感じる。皮膚は全身を通して薄いピンク色で、前脚や後脚の一部は黒ずんでいる。そこからは、爬虫類らしい独特な質感の鱗が覗く。さらに、首の付け根から尻尾の先端に至るまで、身体の上部を覆うように紺色の体毛が生えている。そして、大きく開いた口から覗く無数の牙は、ナイフのように鋭く、ティラノサウルスの骨格標本と比べてもほとんど違いが無いだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 咥えられたドスランポスは前後の脚をばたつかせ、抵抗している様に見えるが、その動作からは群れを率いていた時の力強さや威厳はまるで感じられない。その姿はもはや余命幾ばくも無いひっくり返った虫の様に、弱々しく、まさに自然界の弱肉強食の縮図を表しているように思えた。あのピンクのデカい恐竜はそんなドスランポスの様子など歯牙にもかけず、こちらに向かって悠然と歩いてきた。そして、俺を一瞥したかと思うと、その瞬間に大地を踏みしめる脚を大きく開き、力を籠めた。それから、軽く見積もっても体重が数百キロはあるであろう青の竜を咥えたまま、背中を上にそらせ、頭部を天に向かってほぼ垂直に持ち上げた。俺は、目の前の竜の迫力に気圧されながらも、震える足に鞭を打ってその場から駆け出した。俺は、奴によって破壊されたであろうスパイクウォールの隙間を縫いながら家を抜け出した。覚束ない足取りで数十メートルほど進んだ時に異変は起こった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドゴーンと、後方から何か硬い物体同士が衝突した時のような轟音が俺の耳を刺したのだ。俺はあまりの音圧に耐えきれず、その場で耳を塞ぎ、うずくまって動けなくなってしまった。そんな時俺の目に入って来たのは、目を背けたくなる余りにも残酷な光景だった。ドスランポスはあのデカい竜によって思い切り、俺の家の外壁に投げ飛ばされ、叩きつけられていたのだった。その衝撃で、ドスランポスは白目を剥いた状態で事切れ、さらに俺の家は全壊してしまったのだ。俺は目の前が真っ暗になる感覚に襲われた。リオレイアに殺され、全てを失いながらも辿り着いた新天地。そこに建て、多くのハプニングを共に乗り越えてきたあの家は、云わば俺の努力の、成長の証であり、孤独な俺にとって数少ない心安らぐオアシスの如き場所だった。そんな家がついさっき現れた名も知らぬ生物によって蹂躙されたのだ。理不尽だ。あまりにも理不尽過ぎる。あの竜は、この島は、何度俺から全てを奪えば気が済むんだ!日本での平和な日常を奪われ、何処とも知れぬ島に裸一貫で連れて来られた挙句、さらにはそこで得たほんのささやかな安寧すらも許されないだと!俺が一体何をしたって言うんだ?何で死ぬ痛みを、恐怖を何度も味わわなければならないんだ?そんなやり場のない怒りだけが虚しく込み上げてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな、動けない俺の様子を見つけたあの竜はこちらを向くと、一瞬だけ身体を後退させ、上半身を捻ったと思うと、その巨体に見合わぬ豪快な大ジャンプをした。数メートルの高さまで飛び上がった竜は瞬時に俺との距離を詰めてきた。俺は何とか立ち上がり、逃げそうとするが、竜が着地した際に発生した振動で足を取られ、転んでしまった。そして、俺と竜は向かい合い、見つめ合う様な態勢となった。竜は姿勢を低くし、頭の位置を俺の高さに合わせた。その刹那、奴の鼻腔は大きく、上に向かって張り出し、膨れ上がった。それはもう鼻腔というよりも鶏冠と形容した方が適切だと思えるほどに。さらに、背中からは、扇形の一対の巨大な翼が展開された。あまりにも現実離れした、威圧的なその姿に、俺は完全に戦意を喪失してしまった。そして、次の瞬間、奴は喉元を熱した鉄の如く赤く輝かせ、なんと直線状の火炎放射を俺に向かって放ってきたのだ。俺はそれを頭からモロに受けてしまった。その瞬間、全身を灼熱感に支配され、気付けば目が見えなくなってしまった。自らの身体が爛れ、崩れ落ちていく苦痛に支配される中、俺はまたもや意識を手放したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

You were killed by an Anjanath.

 




 今回登場したモンスターはアンジャナフです。MHWorldにて初登場し、最新作Riseにも登場しています。アンジャナフは如何にも頂点捕食者という見た目をしていますが、ゲーム内では序盤から中盤にかけて戦う、所謂初心者キラー的なモンスターです。それ故、彼らよりももっと強大なモンスターはわんさかいます。ARKで例えるなら、カルノタウルス位の立ち位置でしょうか。


 さて、裕太君はあっけなく全ロスの憂目に逢ってしまいましたが(ARKではよくあること)、今後どうやって島から脱出するのでしょうか?!


 それでは、また次回もお楽しみにお待ちください!
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