モンスターだらけのARKを生き延びろ   作:あるこばれの

23 / 62
 この所、暑さが酷いですが、皆様はいかがお過ごしでしょうか?私はなかなか執筆作業が捗らず…とまあ、散々な感じですが、無理のない範囲でこの夏を乗り切っていきましょう!

 それでは前置きはここまでにして、本編スタート!!


Version7.0:小さな光

 鋼が軋む様な音が遠くに聞こえた。それと同時に俺はまたしてもあの海岸で目を覚ました。これでもう何度目だろう。俺の今際の願い事は無残な形で踏みにじられてしまった。もう疲れた。何もする気が起きない。そんな無力感に支配された俺に降り注ぐのは大粒の水滴。この島では、俺が流れ着いてから初めての雨が降りしきっている。動物たちも、どこに隠れる場所があるのか、周囲に一切その気配を感じられない。その様子に、俺は世界に独り取り残された様な錯覚に陥ってしまう。雨が明けたらまた死ぬのかな?雨が明けるまで生きていられるのかな?そんな悪いビジョンばかりが頭に浮かんでしまう。もういっそ、俺の存在なんて消えてしまえば良かったのに。そう思う程に、雨は強くなっていく気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 雨に当たっているので体温が下がる。その所為で、現在パンツ一丁の俺の歯はガタガタと音を立て、全身は小刻みに震えている。漂流してから昨日までの間ずっと、常夏の装いだったので、久々に味わうこの寒さは俺の身に嫌な意味で染み渡る。俺は木陰で身体を丸め、蹲っている。惨めだ。ついこの間まで、事は上々に運んでいたではないか。住まいを整え、物資を手に入れ、さらには、辛勝とは言え因縁の相手にも一度は勝利した。インドア派で、非力だったこの俺がそこまでの事を一人でやり遂げられた。それは確かに俺の自信になっていたのに。結局俺は、人間は弱者だった。どれだけ全力で走っても、竜の速力には敵わない。火を吐く竜を目の前にすれば、一瞬のうちに火だるまにされる。全てが無駄だったんだ。こんな魔境から脱出できる道理なんて初めから無かったんだ。はあ、何もかもが馬鹿馬鹿しくなってきた。別の何かに殺されるんじゃなくて、俺自身の手で死ねばもう二度と目覚めないのかな?そうすればもうモンスターを恐れなくていいのかな?こんな気持ちから解放されるのかな?俺は何も分からずにいた。

 

 

 

 

 

 「ゲコ、ゲコ?」

 

 丸まって震えていた俺の目の前にちょっとした来訪者が現れた。この雨模様に相応しい小さなお客様だ。それは、背びれと本来無いはずの小さな尻尾が特徴的な青いツノガエルだった。サイズは、ヒキガエルとウシガエルの中間ぐらいといった所だろうか。一般的にイメージされるカエルよりかはかなり大きいように思える。だが、この島の化け物共からすればその程度可愛いものだ。カエルは、頭との境目が分からない首を左右に振り、怪訝な様子でこちらを見ている。少し馬鹿っぽいその顔が小憎たらしさを演出している。カエルの鳴き声を聞きながら、雨を明かすのも風情があって悪くないか、そう思った矢先だった。突然、カエルの腹が膨れたと思うと、青色のガスを噴射してきたのだ。その量も尋常ではなく、平気で人間二人くらいをすっぽり覆える程の範囲で放たれている。急な事だったので、反応が間に合わず、鼻と口を塞ぐ前に幾らかその青いガスを吸引してしまった。そのガスは甘い匂いだったが、鼻を突く刺激臭でもあり、嗅いだ瞬間、これは不味いと本能的に察してしまった。しかし、時すでに遅し、段々と俺の意識が朦朧とし始めた。何とか意識を保とうと、踏ん張ってみるが、無駄な抵抗でしかない。次第に、眼前の景色は輪郭を失い、ぼやけていった。そして、ついには瞼を持ち上げる力すら入らなくなり、気が付けば俺は降りしきる雨の中、意識を手放していた。

 

 

 

 

 

 

 

 噎せ返る様な暑さの中、俺は意識を取り戻した。どれぐらいの間眠っていたのかは分からないが、先程の大雨が嘘に思える程、空は晴れ渡っている。周囲にもアプトノスやケルビといった草食動物たちの姿が戻っており、いつもと変わりない島の風景が展開されている。が、この眩いばかりの陽光も、牧歌的な眺望さえも俺の荒んだ内面を照らすには無力だった。俺はいつまでも途方に暮れることしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜の帳が下り始める時間帯、俺は左腕のインプラントが緑色の光を放ちながら煌々と点滅している事に気が付いた。俺は気怠さを感じながらも、重い腰を上げてインベントリにアクセスしてみる。どうやら新しいエングラムを入手できるという旨の通知だったようだ。この辺りの機能は、スマートフォンを彷彿とさせる。尤も、形は全くと言っていい程異なっているが。しかし、今更エングラムなどに何の魅力も希望も感じ取る事は出来なかった。どうせ何を作ったとしても、モンスターに遭遇すれば数秒も経たないうちに木端微塵に破壊される未来しか見えない。それにもかかわらず、俺の心情を知ってか知らずか、こんな間の悪いタイミングで通知を寄こしてきやがったインプラントに俺はそこはかとない苛立ちを感じた。だが、悲しいかな、現代人としての性なのか、例えどれほど嫌っている相手からの連絡でも一度は目を通さないと気が済まない様な心持に似た心情か、俺は嫌々ながらもエングラムリストを開いてしまったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 周囲はすっかり暗闇に包まれた。今宵は新月なのか、俺を照らすものは何も無い。だが、俺の内面はそんな瑣末なことになど一切の関心を持たなかった。それほどまでに、今の俺の精神は、数刻前までの憂いを全面に抱えた状態とは打って変わって、烈火の如く燃え上がり、滾っていた。この高揚感は、初めてランポスを討伐したあの瞬間にも勝るとも劣らない。「いかだ」という三文字を見た時、俺は思い出すことが出来たのだ。俺はこれを何よりも求めていたのだと。そうだ、ドスランポスやアンジャナフに殺される前の俺はこれを最も切望していたはずだ。思えば、住居を整備していたのも、生活物資を整えていたのも、島からの脱出手段を作り出すための布石とするためだった。その事が頭を過った瞬間、このどうしようもない孤独感と絶望感で形作られた雲の狭間にたった一片の、だが確かな希望を見出すことが出来たのだ。どうやら天はまだ俺を見放してはいなかったらしい。どれだけ過酷な航路になろうとも、俺はこのチャンスだけは絶対にモノにしてみせる。これは俺に舞い降りた最後の希望なんだ!

 

 




 今回登場した環境生物は「ネムリガスガエル」です。その名の通り、催眠性のガスを広範囲に放出して、プレイヤーのみならず、果ては古龍までをも眠らせる激ヤバ生物の一角です。ARK的な言い方をすると、大量にテイムしておきたい有能生物です。こいつ一匹いるだけで、上手くやれれば普通にレイアやジャナフなんかと遭遇しても逃げられます。その事実に裕太君は気が付くことが出来るのでしょうか?!
それと、こいつには親戚みたいな種類が何種類かいて、それぞれ違った効果を発揮します。

 さて、絶望の中、一縷の希みが舞い降りてきましたが、これは吉兆なのか、はたまた更なる絶望を呼び寄せる凶兆なのか、今後の展開にご期待ください!


 それでは、次回もお楽しみにお待ちください!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。