モンスターだらけのARKを生き延びろ   作:あるこばれの

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 謎の無人島に迷いこんだ裕太君は無事に生き残れるのでしょうか?それでは、彼のサバイバー生活一日目の様子をご覧ください。


Version1.1:たき火を起こせ!

「な、なんじゃこりゃーー!」

 

 俺は柄にもなく大声を出してしまった。多分俺は今人生で一番焦っている。ドッキリか何かなのか?いや、俺の友人にそんな質の悪い事をする奴はいない。ともすれば、誘拐か?でも、俺は寝落ちするまで大学の講堂にいたはずだし、第一、人が多い学内でそんなことを白昼堂々行えるだろうか。そもそも、俺の家は金持ちでもないし、やんごとなき身分の親類や知り合いもいない。だから、俺を誘拐するメリットなんてどこにもないはずだ。だが、こんな事を考えても仕様がないな。心を落ち着けて冷静にならなければならない。一先ず、ここがどこなのかを知ろう。そうすれば、戻る手立ても見つかるかもしれない。そう、きっとまだ焦るような時間じゃない。そうに違いない。俺は、淡い期待を胸にスマホを探す。そして、俺は自分の体の違和感に気付いた。

 

 まずはじめに、俺は服を着ていない。にもかかわらず、パンツだけご丁寧に用意されている。俺はこれに対して大きな憤りを感じる。どうせなら全身用意して欲しかった。ここまでの事をされたのだからその位望んでも罰は当たらないと思う。それはさておき、当然スマホも財布もなかった。俺は絶望した。これでは、今すぐにこの場所がどこなのか知ることは出来ないうえに連絡も取れない。それに、仮にここに人がいても交通手段を利用させてもらえない可能性が高い。尤も、俺の目に映る範囲では、ここは見渡す限りすべてが自然だ。さらに海に面しているということも加味するとここは無人島である可能性は非常に高い。つまり、俺は助けが来ない限り、ここで一生暮らさないといけないかも知れないという事だ。

 

 次の違和感は、俺の左手首に付けられた謎のひし形のブジェクトだ。完全に俺の体に埋め込まれているらしく、強く引っ張っても押しても外れる事はなかった。さらに、ひし形の真ん中あたりが赤く発光していて、気味の悪さをより引き上げている。ただ、幸いなことに左手に痛みは感じず、動作にも違和感はない。力もいつも通りに入るし、特段腕力や握力が落ちた様子もない。不幸中の幸いと考えて良いのだろうか。しかしなぜ、俺をここに連れてきた奴はこんな物を俺に植え付けた?奴隷を識別するために昔は焼き印や刺青が用いられていたという話を聞いたことがある。俺は、奴隷にでもなったというのか?現代日本でそんなことはあり得るのか?それに、本当に奴隷になったのなら体の自由も制限されるはずだし、そもそも一人の状態で放置されたりはしないだろう。いくら俺が考えても答えは出ないな。とりあえず俺は思考を整理して、ここを無人島と仮定して船舶や航空機が通過するのを待つことを決めた。そのためには、目印になる物が必要だ。それが無理であれば、近辺を探索して食料や水を探そう。生憎、俺はゲームやネットが趣味のオタクだったからサバイバル関連の知識は一切ない。早く誰かがこの近くを通ってくれるのを願うばかりだ。

 

 それから、俺はその辺に落ちていた長めの木の枝を使って浜辺に「SOS」の文字を書いた。最初にこれをやったのは、現状の俺ができる一番簡単なことであったからだ。ちなみに文字の大きさは、一つ当たり10[m]程だ。実際にやった結果、流石にこれだけでは見つけてもらえないことに気付いてしまった。夜になったら当然見えないし、何よ航空機が飛ぶ高度からこんな文字が見えるのかすら怪しい。それから俺は無い知識と記憶を総動員して考えた。ふと思い出した。昔見たテレビ番組で無人島に漂流した人たちのことが取り上げられていたことを。確かその人たちは、火を起こしてその煙で近くを航行していた船舶に気付いてもらえたらしい。正直、そこまで都合良くいくのか、半信半疑ではあるが、現状俺に思いつく手段はこの程度だ。藁にも縋る思いでやってみる他ない。

 

 早速俺は、近くに落ちていた乾いた流木と、ヤシの木の葉を拾って、火起こしを始めた。やり方が分からない俺は、取り敢えず多くの人が直ぐに思いつくであろう方法を用いた。木を地面に置いて、別の木の枝を押しあて、手で回転させる原始的な方法だ。まさか、現代の日本に住んでいてこんな原始人まがいのことをするとは想像もしなかった。本当に何が起こるか分からない物である。

 

「疲れた」

 

 俺は情けなくそう言うと、近くにあった岩に倒れるように寄りかかった。あれから三時間ほど全力で粘ったが、煙の一つも出なかった。掌は長時間木と擦れていたせいか、所々に切り傷が出来ていて尋常でないほどに痛い。それに、長時間握力を酷使したせいで、手が小刻みに震えている。さらに追い打ちをかけるように、陽光の下作業していた俺の全身は汗だくになっていた。これは普段から運動不足の俺にとってこの作業はかなりの重労働だった。活動を止めた途端に俺は言い知れぬ不安を感じ始めた。族にまた会えるのだろうか。親友は心配しているのだろうか。大学にはいつ戻れるのだろうか。俺はこのまま死ぬのではないか。考える程に、ネガティブな感情が湧き上がってくる。

 

 しばらく途方に暮れてから、ふと空を見上げた。20[m]程先だろうか。ひし形で、人の背丈の倍はある白い光を放つ物体が落ちきている。人間追いつめられると自分に都合よく考えるもので、俺は「ついに救助が来た!」、「誰かがあの文字を見てくれたんだ!」と狂喜乱舞した。俺は全速力でその光る物体の所まで駆ける。きっとあれは、救助用の乗り物に違いない、疲弊した俺の頭はそう信じて疑わなかった。物体に到着した俺は、入口を探す。しかし、それらしきものは一向に見つからない。乗り物を満遍なくさわって、何かのスイッチやセンサーにあたるような部分がないか調べてみるが、やはり見つからない。俺は千載一遇のチャンスを目前にしてただ立ち尽くすことしか出来なかった。諦めかけたその時、俺の左腕のひし形が目の前の物体と同じ色の光を帯びた。ついに俺は助かるかもしれない!それが現実味を帯び、俺は天にも昇る気持ちになった。しかしそれ束の間、その光はすぐに消えた。それと同時に目の前の物体は電子音のような、ガラスが割れるような音を放って霧散した。次の瞬間、俺の手に二つの赤い石が乗っていた。俺は落胆した。失望した。怒り狂った。赤い石を砂浜に叩きつける。俺が一体何をした?ただ俺は帰って普通の生活をしたいだけなのに。無人島に飛ばされた対価が石一つなのか?人の命を何だと思っているんだ?やり場のない感情が次々に湧き出した。

 

 あれからの記憶はほとんど残ってない。俺は気が付いたらひし形の物体が降りてくるまで休憩していた岩にあの二つの石を持って倒れ掛かっていた。一面の青空はもう赤みを帯びていた。間もなく夜になる。夜の間は、様々な面で火が必要なのは、サバイバル知識が皆無の俺でも流石に知っている。食料も探さなければいけないだろう。頭では理解しているが、俺の身体はそれに追いつかない。俺は無気力にいじけるようにして、さっきの石どうしを擦り合わせて遊んでいた。まるで、先生に怒られた後の小学生のような哀愁を漂わせて。俺はきっとここで死ぬんだろう。もう何もかもがどうでも良くなった。今晩の火や飯のことも、帰る方法のことさえも。

 

 「熱っ!」

 自暴自棄になっていた俺は腹部に感じた熱さで我に返った。何か熱を帯びた小さな物体が自分の体に当たったように感じた。辺りを見渡してみるが、変わったものは特にない。ふと、自らの手に意識を向けると、さっきの石が熱くなっていることが分かる。俺は試しに、もう一度思い切り石どうしを擦り合わせてみる。俺は目を見張った。火の粉が、飛んだのだ。それからはもう、無我夢中だった。俺は一目散に走りだし、近辺で木の枝や枯れ葉、草などをかき集め、乱雑にまとめた。まとめられた草木に向かって、火の粉を飛ばした。何度かやっていると、火は燃え広がり拳ほどの大きさにまでなっていた。俺はここからどうすれば良いか分からず、とにかく拾ってきた木の枝などを放り込んでいた。

 

 辺りは夜の暗闇に染まっていた。俺は焚き火の前に座っていた。何とか日が落ちるまでに火を起こすことができた。その安堵感からか、俺の心は先程よりかは軽くなった。食料こそ確保できなかったが、火はこうしてある。俺は今途轍もなく空腹だが、一晩程度なら命にはかかわらないだろう。火さえあれば、この島の近くを通る船舶に気付いてもらえるかもしれない。こうして掴んだ生還の可能性によって、つい数時間前まで俺の心を蝕んでいた感情は嘘のように消え去った。きっと明日も何とかなる。そんな希望を胸に俺は瞼を閉じ、少しの眠りに就くのだった。




 何とかサバイバー生活一日目を終えた裕太君ですが、明日は無事に生き残れるのでしょうか?次回も楽しみにお待ちください。次回は遂にモンハンのモンスターも登場します。
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