モンスターだらけのARKを生き延びろ   作:あるこばれの

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 前回から間が空いてしまいました…連日の暑さでモチベーションが保てず…

 まだまだ残暑はキツいですが、負けずに投稿を続けていきたいものです。それでは、本編どうぞ!


Version15.1:再出発

 「落ち着いたか。」

 

 

 

 俺は気付けば崖の上に引き上げられていた。どうやら隆翔が引っ張り上げてくれたようだ。相変わらず凄い腕力だ。それに加えて、頭も良いんだからズルいもんだ。

 

 

 

 「裕君、なんだか疲れた顔してるけど大丈夫なの?」

 

 

 

 もう一人が問いかけてくる。そいつの名前は鬼塚秀夫(おにづか ひでお)。幼馴染で、俺とは違って昔から手先が器用で、色々と物を作るのが好きなやつだった。大学に入ってからは更に熱が入ったらしく、秀夫の部屋には何やら難しい設計図らしき物が何枚も転がっているのを見た事がある。二人とも優秀で頼りがいのある大親友だ。だからこそ、俺には心配な事がある。

 

 

 

 「そんなことより!二人とも、無事だったか?!モンスターに襲われたりしてないか?怪我とか、体調とか大丈夫か?変な物とか食べてないか?それと、それと!」

 

 

 

 俺は気付けば二人に迫る形になり、早口で捲し立てていた。

 

 

 

 「ゆ、裕君、なんだか怖いよ?どうしちゃったのさ?」

 

 

 

 秀夫は困惑したような表情になり、俺から一歩後ずさる。隆翔がそんな白熱した俺の前に立ちはだかり、諭すように言った。

 

 

 

 「裕太、一旦冷静になろう。まずは深呼吸をしよう。そうだ。よし、少しはクールダウン出来たみたいだな。その様子だと何かあったんだな?話せる範囲で良いから話してくれないか?」

 

 

 

 俺は隆翔の一言のお陰でなんとか落ち着きを取り戻すことが出来た。そうだ。ここで取り乱しても何にもならない。まずは、俺の身に起こった事をありのまま二人に話そう。きっとこの二人なら信じてくれるはずだ。

 

 

 

 「信じられるは分からないけど、聞いて欲しい事があるんだ。」

 

 

 

 それから俺は、二人にこの島であった全ての事を話した。一月以上の間この島で生活したこと、その中で何回も死を経験しその度に蘇ったこと、アンジャナフやリオレイア、ラギアクルスにジンオウガといった常軌を逸したモンスターのこと、そしてこの島の外周を覆っていた光の壁や「待つ者」のこと。その他一切合切すべてを話した。その間、二人は何も言わずに真剣な表情で俺の言葉を聞いてくれた。ここに来てからずっと一人だった俺にはそれが何よりも嬉しかった。相手がこの二人だったことも理由なのかもしれない。

 

 

 

 

 これからの話をするのは腰が重い。俺の口から島の探索を手伝って欲しいという事を言わなければならないのだ。それすなわち、俺と一緒に死地に赴けという自分本位の身勝手な要求をすることになる。だが、現状で俺に出来るのはそれしかない。さもなくば、以前の様に、作っては壊されの繰り返しで精神を擦り減らし続ける生活を一生送らなければならない。だからこそ、今日この島に来たばかりである二人の今後を思うならば、今この場で言わなければならないのだ。結局のところ、俺は二人に拒絶されるのが怖い臆病者なんだ。二人と再会した今、再び孤独なあの生活に戻ることなどもはや考えられない。しばらく考え込んでいると、秀夫がいつの間にかぴょこんと俺の前に現れていた。

 

 

 

 

 「裕君、辛そうな顔してるよ。話したくない事は無理に話さなくてもいいんだよ。」

 

 

 秀夫は心配そうな表情でこちらを見つめている。その優しさが今の俺の胸には突き刺さる。だが、いずれにせよ早かれ遅かれ言わなければならない。俺は意を決して口を開いた。

 

 

 

 「俺はこれからこの島を探索してその謎を解こうと思ってるんだ。さっきも話したけど、これまでの感じからいって普通の手段ではこの島を出るのは無理だと思う。だから俺は、島を調べてここがどういう場所なのか知りたいんだ。そのための戦力を確保するためにモンスターを飼い慣らす試みもしようと考えてる。それで、その、二人にも手伝って欲しいんだ。危険な場所に行く事もあるだろうし、死ぬことだって一度や二度では済まないはずだ。だから、無理強いはしない。」

 

 

 

 俺が言い終えると、二人は迷いなく返してくれた。

 

 

 「大丈夫だ。心配することはない。俺たちも元よりその心づもりだ。それに、お前にだけ辛い事を任せる訳にはいかない。」

 

 

 

 隆翔は俺の方をじっと見つめて力強くそう言ってくれた。その真っすぐな視線は隆翔の大柄な体格も相俟って誰よりも頼りがいがあるように感じた。秀夫も隆翔の発言に頷いている。二人には感謝してもし切れない。俺はこんなにも良き友に恵まれて本当に幸せ者だ。こんな場所でもこの三人でならどんな苦境も乗り越えられる気がした。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 それから、俺たちはすぐに仮住まいの設営に取り掛かった。まだ日が高い内に外界と隔離された空間を作っておきたかったからだ。夜間に生身の人間が野晒しになるなど、この島では命がいくつあっても足りた物ではない。二人にインプラントの使い方を教えつつ作業をした。今回は一先ずの屋根を確保するのが目的なので、一旦は時間的にも、資材量的にも手頃に作れる藁製で作る事にした。二人はインプラントの機能とその多さに大層驚いていた。曰く、こんな高度な技術は見た事も聞いた事も無いようだ。特にエングラム関係に至っては原理すらもよく分からないらしい。二人は俺と違ってその道の人間だ。だからこそ、俺が感じた以上に未知のテクノロジーに対して異質さや先進性が身に染みて分かるのだろう。

 

 

 

 そんなこんなで、俺たちは三人で済むには少々手狭な、底面積3×2マス、高さ2マスの藁小屋を急造した。不思議な事に、同じエングラムを使用しても、作業時間や完成品の質などは使用者によって差異が発生することが明らかになった。元々器用な秀夫は速く製作できていたのに対して、一番不器用な俺はそれより三割増し位の時間が掛った。俺はこれまでの使用感からてっきり、どんな人でも画一的に同じ物が作れるようになると思い込んでいたが、どうもそうではないらしい。製作物の品質や加工時間は一定の水準には誰でも到達するようだが、使用者の技能が高ければ更なる向上を込めるようだ。このインプラントは、ただ単に人間の能力を横並びに調整するための代物ではないようだ。言語翻訳機能が存在するあたり、そういった思想の下開発された技術の様にも感じ取れたが、それが違うとなると、いよいよこれが作られた背景が分からなくなる。この島を探索する中でこのインプラントの謎も白日の下に晒されるのだろうか?

 

 

 

 

 日が完全に西へと傾き、空が黒ずみ始める頃、本日の夕飯を求めて釣りに出た俺と隆翔は、上々な戦果に満足しながら帰路に就いていた。

 

 

 

 「まさか岸辺でマグロみたいなのが釣れるなんてな」

 

 

 

 そう、幸運な事に1 [m]を超えるサイズの一尾のマグロらしき魚が釣れたのだ。たが、如何せん釣り竿の強度が足りず、引き揚げる際に見事に真っ二つに割れてしまった。だが、浅い場所だったので二人で水中に乗り込み、無理やり抑えつけてから槍でどうにか仕留められた。思えば、浅瀬とは言え何が潜んでいるとも知れない海に突貫するのは中々に無茶な行動だったが、それに見合う成果は得られた。食料保存庫を作れば数日の間は三人でも食糧に困る事は無いだろう。今からどうやって食べるか楽しみだ。

 

 

 

 

 仮住まいに戻ると、俺たちが出ている間に完成したであろう食料保存庫やベッドを凝視しながら難しい顔をしている秀夫の姿があった。そういえば、さっき作業をしている時の秀夫は、どこか複雑そうな面持ちだった様な気がする。秀夫は昔から物を造る事に関して並々ならぬこだわりと情熱を持っていた。それ故に、自身の矜持を揺るがしかねないエングラムの存在に対して何か思う所があるのかも知れない。秀夫がこんな顔をするのは昔から決まって、壁にぶち当たった時だ。しかし、生憎なことに俺は秀夫の悩みに適切に応えるだけの知見は持ち合わせてはいない。そういう時は、無難に飯や遊びに誘ってリフレッシュさせてやることしか俺には出来ない。だからこそ、俺は何食わぬ感じの軽い口調で声を掛ける。

 

 

 

 「大物も釣れたことだし、そろそろ飯にしようぜ、秀夫」

 

 

 

 秀夫は一瞬呆気に取られた表情をしたが、その直後に腹の虫が鳴った。それから、俺たちは夕餉の準備を始めたのだった。

 

 

 

 マグロらしき魚の解体は生物の構造に詳しい隆翔が行ってくれた。手際は良く、その動きには迷いが無い様に見えるが、切れ味が優れない石斧を利用しているためか、所々で力が必要な場面が発生したため俺たちも加勢した。特に、硬い装甲で覆われた頭部を落とすのには苦労した。こいつらもあの魔境の如き海で身を守るのも一苦労なのかも知れない。隆翔曰く、こうした特徴は太古に絶滅した板皮類という魚類の系統に見られた物らしい。なんと、あのシーラカンスよりも古い時代から存在していた種もいたそうだ。なので、目の前のこいつはマグロとは全く異なる生物である可能性が高いみたいだ。そんな理由からか隆翔は捕まえた当初は、言葉には出さないものの、食材にするのは惜しいという顔をしていたが、今度また釣れたら標本にしても良いと言うと、渋々了承してくれた。

 

 

 

 頭を落としたら今度は、腹の中から虫が出て来た。虫と言っても寄生虫の類ではない。それは大海原に住まう魚類の餌としては似つかわしくない立派な甲虫だった。何を隠そう、あのジンオウガが引き連れていた昆虫、雷光虫と同じ種類なのだ。あの時の凄惨な光景がフラッシュバックし、俺は思わずたじろいでしまった。食べられたであろう雷光虫は原型こそ保っていたものの、流石に息絶えていた。これで本当にまだ生きていたら俺はこの場で気絶していただろう。とりあえず、作業の邪魔になるし虫を退けようとした時だった。死骸を掴んだ手に文字通り電流が流れた。青白い一筋の光と共にバチりと鈍い痛みが掌全体に伝わっていった。それと同時に情け無い声が漏れた。二人からは心配そうな目付きで見られたから、なんとか大丈夫だと伝えた。

 

 

 

 秀夫はそんな雷光虫に興味がある様子だ。目を輝かせて地面に落ちたそれを眺めている。

 

 

 

 「祐君、この虫が生息している場所は分かる?僕思い付いたことがあるんだ!」

 

 

 

 まるで欲しいおもちゃを手に入れた子供の様にキラキラとした表情で問いかけてきた。秀夫の好奇心旺盛な所は昔から変わらないな。

 

 

 

 「すまんが、普段どういう場所にいるのかはよく分からないんだ。ある夜に急にこいつの群が現れたから。余裕が出来たら一緒に探そうな。」

 

 

 

 俺がそう言うと、秀夫は満面の笑みを湛えて、「うん!」と頷いてくれた。隆翔も柔らかい表情を浮かべて作業を続けてくれている。俺はそんな二人の様子を見て、この二人だけには危険目を味わわせない、あんな苦しい死に方をさせるものかと密かに決意を固めたのだった。

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 このマグロらしき魚は「大食いマグロ」という名前らしい。分類としては、マグロとは大きくかけ離れている可能性が高いそうだが、肉の部位の構成は俺たちが知るマグロと酷似しているようで、赤身やトロなどが確認出来た。今晩は、贅沢に大、中のトロを頂く運びとなった。トロは腐りやすく保存が効かないため、新鮮なうちに食べてしまおうという算段だ。その他の部位は食料保存庫に入れて燻製として保存することにした。

 

 

 

 俺たち三人は豪勢な食卓を囲みながら明日からの事について話し合っていた。

 

 

 

 「一先ずの長期的な目標として、俺は島の奥地を目指したいんだ。島の謎に迫れる可能性があるのは現状ではそれしか無いと思うんだ。」

 

 

 

 俺たちは否が応にもこの選択肢を取る他無い。だからこそ、俺は改めて二人に提案する。

 

 

 

 「それには賛成だが、実際どうやって恐竜サイズのしかも信じられない能力を持った動物が犇めく場所を突っ切るつもりだなんだ?」

 

 

 

 隆翔が俺に尋ねる。

 

 

 

 「力のあるモンスターを飼いならせればと思っている。強大な肉食のモンスターなら護衛として道中で役に立ってくれると、思う。正直、俺たちだけの力ではあいつらとやり合うのは不可能た。だから、モンスターにはモンスターで対抗する以外ないんじゃないのかなって。」

 

 

 

 あの「待つ者」が言っていた事だ。我ながら雲を掴む様な突拍子も無い話をしていると思う。俺はモンスター達の圧倒的な力の前に何度も屈し続けて来た。あれらは最早人間だけの力でどうこう出来る存在では決してない。だからこそ、本当に雲を掴めなければ俺たちに生存は許されない。

 

 

 

 「お前のこれまでを否定するようで申し訳ないんだが、」

 

 

 

 隆翔はどこか言い淀む様子でゆっくりと話し始めた。

 

 

 

 「動物というのは俺たちが思ってる以上に本当に危険なんだ。その殆どは人間が都合良く従わせられるような甘い存在ではない。人間よりも小さな猿でさえその気になれば人に大怪我を負わせ、時に生命を奪う事だってある。それが、人より遥かに巨大で剰え火や電気を操れる様な人智を超えた生物なら尚更だ。それに、そんな強大な生物が小さな人間に大人しく付いて来る保証なんてない。」

 

 

 

 隆翔の意見はこれ以上ないまでに正論だ。だからこそ、俺は何も返せずにいた。そんな中、今度は秀夫が手を上げ意見を口にした。

 

 

 

 「それならさ、虫みたいに小さな生物を利用するっていうのはどうかな?さっきちょっと考えてたんだけど、あの雷光虫の放電を活かせば、モンスターに大きなダメージを与えられなくても短時間なら足止めしたり出来るんじゃないかなって。祐君のイメージとは違うかも知れないけど、ああいう小さくて有益な生き物をたくさん集めることなら出来るんじゃないかな。」

 

 

 

 確かにそれなら現実的に可能であるはずだ。勿論、大型の生物のテイムも試してみたいが、やはり手頃な小さな生き物から攻めていくのが吉だろう。

 

 

 

 「確かにそれなら今の俺たちでもこなせそうだ。裕太、有用な生物について何か心当たりはないのか?」

 

 

 

 隆翔も秀夫の提案に賛成なようだ。隆翔からの質問に対して俺はこれまで出会ってきた小型の生き物を振り返る。すると、いくつか候補が浮かんできた。

 

 

 

 「それならいくつかある。俺が一番有用だと思うのは、重傷を短時間で治癒してくれる回復ミツムシかな。あれがいれば複雑骨折級の怪我をしてもなんとかなる。モンスターに遭遇した時に役立ちそうなのは、目眩ましに使える光蟲とか人間が一瞬で昏睡するレベルの催眠性のガスを出すネムリガスガエルかな。直接モンスターにダメージを与えられなくても足止めしてやり過ごしながら進むことも出来るかもしれない。」

 

 

 

 それから、話は進み小動物の捕獲は生活が整ってから一気に行おうという結論に至った。そして、目先の目標については、最優先で家の周りにスパイクウォールを設置すること、次点で家を木製に改築し居住性を上げるという方針に落ち着いた。経験上、防護柵程度ではリオレイアクラスのモンスターの襲撃を防ぎ切るのは不可能だが、リモセトスの様な大型の草食動物に家ごと踏み抜かれるのは避けられる。それに、少数のランポス程度なら立て籠もれば対処は可能だ。

 

 

 

 取り敢えず、明日はスパイクウォールの設置を第一優先で行い、時間的な余裕があれば近くの赤いオベリスクを見に行くと云う流れになった。そうと決まると、俺たちは英気を養うため早めに床に就いたのだった。




 そういえば、そろそろMHnowが始まりますね。皆様はもう登録はお済みでしょうか?ARKの方も公式サーバのセーブが行われ本格的にASAへの移行が見えてきましたね。今月からは双方にとって重要な期間になりそうで、目が離せません!
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