モンスターだらけのARKを生き延びろ   作:あるこばれの

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 今日、ARKの公式サーバがついにサ終しましたね。もう8年も経過していると聞いて時の流れは速いなと思う今日この頃です。公式プレイヤーの皆様、本当にお疲れ様でした。さて、ASAも間近に迫り、着々と情報が公開されつつありますね。無事発売される事を願うばかりです!


Version15.4:女王再臨、ですニャ

 ”ギシャーー!!”

 

 

 リオレイアの咆哮が耳をつんざいた。先程の黄緑色の鳥とは比べ物にならない大音量に、落ち着きを取り戻していた心臓は再び激しい鼓動を打ち始め、首筋には緊張した時特有の何かが詰まった様な不快感が押し寄せた。音圧とでも表現すべきか、身体中に空気の流れが当たっているのを感じる。だが、それも束の間。轟音は過ぎ去り、今にもこちらを殺さんとするばかりの鋭い眼光をした飛竜の姿を漸く視界に捉えられた。

 

 

 

 どこか様子がおかしい。リオレイアは以前遭遇した際とは雰囲気を異にしている。口の中からは燃え盛る炎が覗いており、時折その一部が外に向かって漏れ出している。そのせいか、奴が吐き出す吐息は煤煙の如く黒ずみ、こちらにまでその熱気が伝わって来そうな勢いだ。口腔という非常にデリケートな部位にも関わらず、燃焼の熱すらも物ともしない奴の耐久力からは、生物としての格の違いにを嫌でも意識させられる。さらに、頬をひくつかせ、目線をこちらへ一点に集約する眼光からは奴の底知れぬ憤怒の情を感じる。総じて前回遭遇した時の個体よりもおどろおどろしい佇まいと言える。前回の時には垣間見える事は無かったが、これこそがリオレイアの本来の姿なのかも知れない。これは明らかにヤバい。そんな月並みな表現しか湧いて出ない程に本能が危険信号を発し続けている。手遅れになる前に動かなければ。その思考が辛うじて頭に浮かんだ瞬間、俺は即座に行動を起こした。俺は固まる二人の肩をそれぞれ左右の手で掴み、海岸の方へ投げ飛ばした。

 

 

 

 それとほぼ同時にリオレイアは右脚を一歩後ろに下げ、下半身に重心を置く姿勢を取った。かと思えば、ほんの寸刻の後には奴は宙を舞っていた。目にも留まらぬ速さで宙返りの様な動作を行い、あろう事か重機にも迫る巨大なその身を360 [°]回転させ一瞬の内に空中へ跳び上がったのだ。驚いている暇など俺には与えられなかった。奴は回転する際に、身の丈の半分程はある長大な尻尾にひと際勢いを込めて、こちらに叩き付けて来たのだ。不幸なことに、俺はその尻尾の先端、すなわち最も速度の大きい位置から攻撃を受けてしまったのだ。俺はサッカーボールもかくやと云う程の強烈な勢力で後方へと吹き飛ばされたのだった。

 

 

 

 だが、俺の目に映る景色の遷移は自分が感じた衝撃からすると、甚だゆっくりとしている。ああ、いつものが来たなと言う心境だ。幾度も死を経験して分かった事がある。大体いつもそういう時には、景色がスローモーションになって一周回ってと表現すべきか、周りがよく見えるようになる。よく怪談噺なんかでは死相が云々などと話題になる事があるが、これもその一種なのかも知れない。呑気にそんな場違いな考え事をしていると、ふと隆翔と秀夫の姿が目に映った。良かった。一先ず、先程のリオレイアが放ったサマーソルトみたいな攻撃の餌食にはなっていなかった様で安心した。だが、冷静に今後の状況を考えれば、奴は二人に追撃を行う可能性が高い。もしかすると俺の行為は余り意味の無い物だったのかも知れない。そんな考えが頭を過ぎ去って行った。もう少し巧いやり様はあったのだろうな。今更そんな思慮を巡らせても後の祭りだ。

 

 

 

 いつの間にか背中に衝撃が走った。俺の身体は地面に落ちていた。それと同時に先程の衝突とは違うジリジリと何度も体中を突き刺される、異様な激痛に襲われる。サマーソルトに直撃した胴体に目をやる。すると、すぐに違和感の正体が理解出来た。当然あれ程の衝撃を受けたので出血はしているが、それだけでは飽き足らず患部には、紫がかった深緑の棘が何本も刺さっていた。流れ出る血液は見慣れた鮮やかな赤色ではなく、禍々しく毒々しい濃い紫色に変色していたのだ。一目で察しが着いた。あいつは毒持ちだったのだ。それを自覚した瞬間、全身から生気が抜けてゆくのを感じた。激痛と脱力感に苛まれているにも関わらず、まだ当分は逝けそうにない。苦痛は永遠にも思える程の長時間俺を蝕み続けた。こんな事なら、あの時みたく一撃で止めを刺して欲しかった。どうか、早く楽にしてくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 side 道尾隆翔

 

 話を聞いただけでは俄かに信じられなかった。大型の獣脚類にも迫る、いやそれすらも超えうる体躯の生物が悠々と空を翔け、剰え火を吐く能力があるなんて。だが、それはこうして現実の出来事となった。さっきの鳥もどきも威圧的で腰が抜けそうになる程恐ろしかったが、目の前にいる深緑の竜はさらにそれを超えている。口内が燃えているのに、何事も無いかのように平然と地を踏み締めるその姿は、もはや異様としか表現出来ず、どこまでも不気味だ。喉元が燃焼しているという事は、必然的に気道にもその影響が及ぶのは間違いない。気管が損傷して使い物にならなくなれば、その生物は呼吸が出来なくなりすぐに死に至る筈だ。そもそも、それ以前に口内が数百度の高温に曝されれば、脳も無事では済まないだろう。だが、あの竜はそんな事などお構い無しだと言わんばかりに、怒った様な鋭い目線をこちらへ送り、今にも動き出さんと荒々しい様相を呈している。これまで培って来た生物の常識がまるで通用しない。自分はそんな存在が不気味でたまらない。

 

 

 

 海水に足が入ったと思うと、竜がその巨軀に似つかない猛烈な速度でピッチ方向に見事な一回転を決めた。眼前の圧倒的な暴力を目の当たりにして自分はただ見る事しか出来なかった。それから十秒程経過した後、背後で何かが衝突した様な音がした。恐る恐るその方向へ目をやると、なんとそこには血を流し倒れ込む裕太の姿があった。その瞬間に窺い知れた。裕太が満足に動けない自分と秀夫を庇ってくれたのだと。それと同時になんとか我に返る事に成功した。

 

 

 

 

 一刻も早く裕太の元に駆け付けたいが、ここで相手に背を向けるのは最悪の一手だ。しかも、あの様子なら裕太の生存は絶望的だと考えられる。あの竜の脚部の発達具合から見て、あの竜は飛行しなくても一定以上の速力を出せるのは明白だ。ともすれば、確実に追い付かれる。ならば、クマと遭遇した時の様に目を合わさずにゆっくりと後退すればいずれ裕太の所まで辿り着けるか?否、あの殺気立った様子から見てそんな悠長な事をする暇は無さそうだ。ここでやられてしまえば、裕太の決死の覚悟を無駄にしてしまう。だが、このシチュエーションで二人とも生き残るのは難しいだろう。ならば。

 

 

 

 

 「秀夫、ここからゆっくり後ろに下がって海に潜るんだ。そして、海岸沿いに泳いでここを離れて拠点まで戻ってくれ。あのなりだ、流石に海の中までは追ってこれまい。」

 

 

 

 幸い海にはすぐに潜れる位置関係だ。正直、岸辺にマグロサイズの魚類がいる様な、何がいるとも知れない海に入るのは気が引けるが、竜から逃れるにはそれしか無いだろう。

 

 

 

 「で、でもそんなことしたら!」

 

 

 秀夫は異議を唱える。やはり、自分達を見捨てて一人逃げるのは気が引けるのだろう。しかし、残念だが恐らくこの状況で助かるのは一人だけだ。しからば、体格が大きく目立つ俺が竜の気を引き、小柄で小回りの効く秀夫が脱出を試みるのが合理的と言える。

 

 

 

 「なに、大丈夫だ。俺も適当なタイミングを見てずらかる。ここで俺たちが死ねば裕太の行動を無駄にすることになる。だから、早く行くんだ。時間は待ってはくれない。」

 

 

 

 秀夫は悔しそうな表情を浮かべ、逡巡したがついには納得してくれた。そして、実行に移そうとした瞬間の出来事だった。竜はこちらに狙いを定め走り出した。その速力は凄まじく、競走馬にも迫る勢いだ。ほんの僅かな間に距離を詰められ、ついには噛みつこうと左右に振られた竜の頭部がすぐ目の前にまで逼っていた。最後は呆気ないものだった。さっきの鳥もどきは偶然拾った虫が良い働きをしてくれたお陰で凌げたが、もうこちらが切れる駒は無い。未練が無いと言われれば嘘になる。もう一度故郷の土を踏みたかったし、この島での発見を後の世に少しでも残したかった。だが一方で、俺は案外幸せ者でもあるのかも知れない。誰も目撃したことのない未知の生物を、生態系を、その一端をこの目で確かめられたのだから。幼い頃から生物に興味を持ち、その道を志した者としては、この上ない程の幸運だと胸を張って言える。そうした思いが交錯する中、自分は最期の瞬間を覚悟し、拳を精一杯強く握り締めた。竜の大口が自分の顔に触れそうになった絶体絶命の瞬間にそれは起った。ボワーッと何かの炸裂音とも思える音が辺りに鳴り響くと同時に、視界を保てなくなる程の激烈な閃光が迸った。周囲の様子は何も見えない。ただ一つ分かるのは、あの竜が呻き声を上げ、地団駄を踏むかの様な音が現在進行形で聴こえるという事のみだ。

 

 

 

 それから、数十秒ほどが経ち視界が回復すると、首を大きく持ち上げつつ、頭を左右に振って何かを振り払うかの様な動作をする竜の姿が最初に見えた。どうやら、あいつも今のの影響を受けて、目が眩んでいたのだろう。そして、次の瞬間には竜はこちらを向き再び突っ込んで来る、という事は無かった。それが起こるよりも前に、今度は笛?の様な管楽器を思わせる、恐らく人工的に発せられたであろう音色が周辺一帯に響き渡ったのだ。それから数拍程度の間を置いた後、竜は音源の方向へと向き直り、遭遇時とは比にならない怒気を孕んだ咆哮を上げた。

 

 

 

 最初のよりも長い咆哮が周囲を支配する中、自分は耳を塞ぎながらもさっきの笛が鳴った場所へと目を向けた。そこにはまたしても信じられない光景が広がっていた。そこでは、なんと、直立二足歩行の白い毛並みの猫がドングリを思わせる形状の槍を持って悠然と竜へと対峙するという有り得ない現状が繰り広げられていた。背丈は人間の半分くらいだろうか。もはや理解が追い付かない。知的生命体だと言うのか?猫が?あの存在への疑問は尽きない。ただ、一つ言えるのは、こちらの危機を救ってくれたという事だ。友好的な相手である可能性は限り無く高いが、コミュニケーションは取れるのだろうか?まさか、ネコ語が必要になったりとかはしないよな?余りにも訳の分からない状態に、思考があらぬ方向へと舵を切り出す。

 

 

 

 

 自分がこうして惚けている間にも目の前の状況は時々刻々と変化していく。竜は咆哮を終えると、猫人へ突進を仕掛ける。しかし、そんな明らかに危険が迫る状況であるにも関わらず、件の猫人はその場から動こうとはしない。竜が走り出すと同時に猫人は背負っているドングリ型の背嚢と思われる物に手を回し、何やら木製の小さな手に収まるサイズの樽を二つ取り出した。そして、ずっとその場に留まり続けている。竜の身体がとうとう猫人を掠めんとする位置にまで迫った。これから起こる惨劇を予知し、自分は無意識に目を背けそうになってしまった。だが、その刹那、起ったのは全く予想だにしない出来事だった。

 

 

 

 猫人は竜の顎門がその身を捉えようとした一瞬のうちに、車輪の如く大回転を始め、竜の股下を通過して一気に前方へ駆け抜けた。その速度は自動車にも引けを取らない圧巻の物だった。それと同時に火薬の炸裂音と小規模な爆炎が挙がった。その爆風は見事に竜の頭部にクリーンヒットした模様で、竜は姿勢を低くし、身体を縮こませた。また、その際にこれまでの様子からは想像出来ない弱々しい声が竜の口から漏れ出したのだ。猫人はその隙を逃すものかという勢いで竜の側方に回り込んだ。そして、何か茶色い物体の塊を両翼の間の背甲に向けて投擲した。それからすぐに、この一帯は堆肥の様な不快で鼻を摘みたくなる臭いに包まれた。竜にも効果覿面らしく、「グォォ」と嫌がる様な、啼き出す様な、これまでの威圧的な印象からは遠くかけ離れた女々しい鳴き声を放った。竜は付着した汚物を落としたいのか、背中を震わせながら翼を上下に揺らしている。しかし、それでも中々落ちないためか、とうとう諦めてこの場から飛び去って行った。今この場所にあるのは鼻を突くこやしと僅かな硝煙の臭いだけだった。

 

 

 

 

 「そちらのお兄さん方、大丈夫ですかニャ」

 

 

 

 猫人は事も無も気なあっけらかんとした様子でこちらに話しかけて来た。秀夫も自分もあまりに突然の出来事に何も反応できず、案山子の如く固まっていた。物語の中の存在としか思われていなかった獣人が実在するばかりか、自分たちと同じ日本語を使って会話を行えている。それだけではない、先程の二度に渡るモンスターとの遭遇、話に聞くだけではない生々しいリアリティを伴った体験も合わさり、もう頭の処理が追い付かない。そんなこちらの様子を知ってか知らずか、目の前の獣人は言葉を紡ぎ続ける。

 

 

 「怪我は無さそうで何よりですニャ。それよりも。」

 

 

 そう言って猫人は横たわる裕太の方へ視線を向けた。ああ、そうだ。自分としたことが!目の前の事にかまけて一番大事な事柄を忘れてまうなんて!

 

 

 「なんて酷い怪我。あっ、まだ息がある!裕君、しっかりして!」

 

 

 秀夫が裕太に駆け寄っている。本当に酷い怪我だ。胸部と腹部にかけてアイスピックの様な鋭く太い棘が四、五本刺さっている。その患部からは紫色の液体が染み出しており、現状の悲惨さを物語っている。呼吸はあるが、もはや虫の息としか表現できない程弱々しく、いつ事切れてもおかしくはない。正直なところ、十分な医療設備が仮にあったとしてもこの状態からの生還は難しいだろう。庇って貰っておいて何も返せない自分が恨めしい。凄惨な現実を前にして、膝を着く事しか出来なかった。

 

 

 「小さい方のお兄さん、ちょっとどいてくださいニャ。今ならギリギリこのお兄さんを助けられますニャ。」

 

 そんな中、猫人は裕太に寄り添う秀夫を下がらせた。猫人は背中のポーチからネコの頭を模した石?の様な物体を取り出し、地面に設置した。あれはお香なのだろうか?アロマに近い植物由来と思われる香りが辺りを漂い始めた。すると、何処からともなく腹部に自身の体格の三倍はあろう巨大な緑色の袋状の器官を備えたミツバチを思わせる外見をした昆虫が地面のお香の下に飛来した。それを見た猫人は今度は革製の袋を取り出し、その中に入っていた青白い粉塵を裕太の身体と彼自身の手に振りまいた。そして、猫人は裕太に刺さった棘を一本、一本素早く抜いていった。そこから、さらにもう一度同じ粉塵を裕太の身体に振りかけた。見れば、紫色に変色した痛々しい傷口はいつの間にか赤い血が覗くだけになっていた。それに伴って、裕太の呼吸も少し深くなる。信じられない、まさかこの短時間で解毒したというのか、しかも注射を行わずに粉薬をかけるだけで?!一体、彼は何者なんだ?そう思っていると、彼は最後の仕上げと言わんばかりにミツバチの袋に手を伸ばした。袋は破裂し、内部から黄緑色の粘性の高いゲル状の液体が溢れ出た。それが裕太の全身を包み込むと、みるみるうちに傷が塞がって行った。見た目の上ではもはやケガ人ではない。呼吸も大分穏やかになり、脈も安定している。これなら、安心しても問題は無さそうだ。

 

 

 

 「危ない所を助けて貰うばかりか、友人の治療までして下さり、ありがとうございます。何とお礼をしたら良いか。」

 

 

 自分は獣人に対して、恭しく頭を下げた。秀夫もそんな自分に続き礼の言葉を述べる。

 

 

 「気にしなくていいニャ。困った時はお互い様ニャ。どうしてもって言うなら、報酬は魚でいいニャ。」

 

 

 一応、拠点に保存している魚があるという旨を伝えると、彼は同行する事となった。俺は未だに眠る裕太を背に負い、何とか青みを保っている薄暗い空の下、家路に就いたのだった。




 今回はお馴染みのアイルー(と大回復ミツムシ)の初登場回となりました。実は今回のこの子の挙動はMHシリーズでお馴染みのものをいくつか取り込んでおります。特にMHXX経験者ならお分かりになるのではないでしょうか?


 最後になりますが、登場人物が増えて来たので、ここら辺で設定集を作ってみようと思うのですが、需要はありますでしょうか?アンケートを行おうと思いますので、ぜひご協力お願いします。
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