情報の量が多すぎる。第一に感じたのはこれだ。そもそもの話ではあるが、著者が26世紀の人間だというのがまず信じられない。それに、「テラン連邦」なる国家も世界には存在しない。それを鑑みると、これは恐らく事実であるとし仮定しても筋が通るウォーカー氏の記録とは異なり、何らかの物語であるとも考えられる。だが、必ずしもそう断定できない部分も多々ある。微生物とカビを操る謎の龍、しかもそれが赤オベリスクに現れたという記述。確かに今の赤オベリスクにも記述の特徴と一致するカビや微生物が残っていた。加えて、ギガノトサウルスが倒されたという部分も俺たちが拾った頭骨と状況的に一致する。フィクションは時に事実が盛り込まれる場合もあるが、ここまで事実と詳細に一致するものだろうか?宙に浮くオベリスクや、インプラント、果ては空を飛べるようになるスーツなどの超技術の存在も考慮すると、あれらが26世紀のテクノロジーですと言われれば、納得できる部分もある。俺たちがなぜそんな後の時代にいるのかという点を除けば、筋は通る。そういった意味でも、この記述は単なる物語や妄想の類として切り捨てられる物ではない側面もある。
島にいる生物がまったく見た事も聞いた事も無い種類ばかりなのも不可解だ。流石に記述に登場した物のいくつかは聞いた事があるが、島の生活の中で彼ららしき生き物を見た事は今までで一度も無い。島には一部古生物の特徴を持つ生物もいるが、隆翔曰く、ランポスやメルノスはおおよその外見こそ既知の恐竜や翼竜に似ているが、細かな身体的特徴は既存の分類の物には無い点もあり、完全な新種である可能性が極めて高いという。記録に登場していた生物は全て実際に古代の地球に存在したものの名前らしい。ただ、その一部、「リニオグナタ」や「ギガノトサウルス」などは、発見された化石や標本とは大きさや外見が大きく異なり、それらとは名前だけ同じの別物である可能性が極めて高いようでもあるそうだ。素直にこの記録を受け取れば一匹の龍によって全ての島の生物が絶滅させられた事になる。そして、生態系が丸々置換された。果たして、そんな事が有り得るのだろうか?明らかに一生物の行える範疇を超えている。
だが、真に重要なのはこういった部分ではない。彼女が島の成り立ちに対してある程度の知見を有しているという事だ。その口振りからしてオベリスクやインプラント、その他諸システムの開発者である可能性が濃厚だ。その全ては語られていないが、記述の端々から島の生態系が人為的に作られたものだという事が示唆されている。ここで、俺が一つ考え付いたのは俺達や恐竜は本当にタイムトラベラーだったという可能性だ。目的の程は不明だが、そうであれば人間と恐竜が共存していたのにも説明がつく。26世紀が本当のことだとすると、その時代にはタイムマシン的な発明がなされていても何ら不思議ではない。ヨンキ氏が「過去の人間」という表現をしきりに使用していたことからも、彼女らの時代にはそういった手段が一般的であるとも考えられる。考えれば考える程に、この記述が事実である可能性は高まっていく。もしかすると、リオレイアの様な一見すると、ファンタジックな生物も、21世紀時点では人類が発見出来ていなかっただけで、本当は過去の地球に生きていた存在なのかも知れない。資料が残らず後の世の人間に知られることの無かった存在が、タイムマシンによって明らかになった。タイムマシンを仮定すると、これまで謎に包まれていたモンスターの正体に説明がつく。それだけではない、俺たちが死んだ後に、記憶を保持したまま蘇れているのも大まかにだが説明は付く。死ぬ前の肉体が過去から回収され、インプラントの機能によって、記憶や人格と言ったソフトの部分だけが再インストールされる。そう考えれば、細かな点は抜きにしても、大まかには成立する。俺たちは途轍もない陰謀に巻き込まれてしまったのかも知れない。
そして、記録の最後、彼女は島を出る方法について言及している。コントロールセンター、名前から察するにこの島の維持管理を行う施設なのだろうか。書き方から察するに、この施設はオベリスクとは別に存在するのだろう。残念ながら、その場所までは書かれていないが、その存在を知られただけでも大きな収穫だ。俺たちの目的は島からの脱出だ。コントロールセンターの発見はオベリスクの起動よりも優先順位は高いだろう。なにせ、あの光の壁を何とか出来る可能性が僅かとはいえ浮上したのだ。あれの原理が分からない以上、これに賭けるしかない。ここは一旦、みんなで考えを共有して整理した方が良さそうだ。
「タイムトラベル、か、俄かには信じがたいが。」
隆翔は難色を示している。致し方ない事だ。急に自分がタイムトラベラーだったなどと言われてすぐに受け入れられる筈が無い。
「でも、この著者も中々に変だよね。開発者なのに、担当外の細かい所ならともかく、オベリスクとかの大きな仕様変更を把握してなかったなんて。」
確かに、秀夫の指摘は正にその通りだ。オベリスクをどんな形にするのか、島にどんな生物を配置するのか、冷静に考えればそんな設計の根幹を成す重要な情報が行き渡っていないなんておかしい。いくら未来のオーバーテクノロジーをフル活用したとしても、そんな事も行う余裕が無い程の極限状況下における開発で、ここまで大がかりなシステムを完成させられるものなのか?いや、いくら技術が発達しても、情報伝達の重要性みたいな基本的な所はそうそう変わらないはずだ。記録にある彼女のスキルから考えて、ヨンキ氏が職場内でハブられていた可能性も考えにくい。そこで、一つの可能性が思い浮かんだ。
「なあ、もしかしてこのヨンキ氏も俺たちと同じタイムトラベラーだったんじゃないか。この人が元居た時代ではまだ島は開発中だったけど、なんかの理由で連れて来られた”今”の時代では完成してて知ってる情報に食い違いがあったって考えれば筋は通りそうじゃないか?」
「確かに、そう仮定を置くと、全てが説明できる。それに、不自然に調教された生き物も、その俺たちを連れて来た存在によって何かしらされているのかも知れない。そういう技術が開発されていてもおかしくはない。だが、その目的が一切見えてこないのも不気味だな。古生物はともかく、過去の人間を連れて来て、謎の島に置いておくなんて。そんなに過去の何かが重要なら、向こうから接触するなり、軟禁するなりした方が好都合だろうに。」
隆翔の意見も尤もだ。現状の情報では、この島が何を目的として作られた物なのか一切合切見えてこない。とにかく、今はコントロールセンターを目指し、脱出するのが最終的な目標になりそうだ。
夜も更けて来たというのにまったく寝る気になれない。今ほど自分が置かれている状況が余りにも酷くて、理不尽で、救いようのないものだと感じたことはない。本当にここが26世紀以降の世界だったのならば、21世紀に戻れる確率は、また家族と生きて会える確率は著しく低いことになる。「待つ者」が日本に戻るのは無理だと言っていた理由を理解出来てしまった。この危険な島からは、さっさとおさらばするのが身のためだ。だが、その後はどうなる?俺たちは5世紀以上も後の世界で生きていけるのか?そんなはずはない。室町時代の人間が現代に来たところで、価値観も習慣も何もかも違う中でまともに生きていくなど至難の業だ。それに、こんな扱いを受けているんだ。俺たちに人権など無いだろう。進んでも、止まり続けても、退いても、どの選択肢を取っても碌な結末は待っていない。正直、死んで終わった方がどれほど楽だろうか。それすらも許されない。生き地獄と言うのはこういう世界を指すのかも知れない。
「悪い、少し頭を冷やしてくるよ。」
俺はみんなにそう言って、火打石を擦って、松明に火を付け、扉を開けた。
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俺は波打ち際に立ち、空を眺める。星々はいつもと変わらず、煌々と煌めいている。きっとこの星たちは俺たちの時代から変わらず在り続けているんだろうな、なんて柄にも無い事が頭を過る。暗闇の中で僅かに光、蠢く水面は油断してるといつの間にか吸い込まれてしまいそうな、妖しさを放っている。駄目だ。冷静になろうとしているのに、余計におかしくなりそうだ。
「おーい、ちょっと待ってくれよ。」
センチメンタルな気分になっていると、不意に背後から隆翔の声が響いた。
「まったく、酷い顔をしてたから心配して来てやったんだぞ。」
「るせえ、俺とて心配されるほどまだ落ちぶれてないわい。」
精一杯の虚勢を張る。思えば、こうして軽口を叩き合うのなんて何時振りだろうか。この島に来てからはいつも生きるのに必死で、ずっと真面目な話ばかりだった。なんか、日本にいた頃の、あの三人で馬鹿やって、楽しかった頃の記憶がフラッシュバックし、つい目元が緩みそうになる。星降る海岸に腰掛けるは男二人。ロマンチシズムの欠片もない。
「はーあ、こんなことになるくらいなら、彼女の一人でも作っとくんだったな。」
俺は空を見上げながらそう語ちる。
「なら、裕太はまず女の子を前にして話せなくなる癖を何とかしないとな。」
隆翔はからかう様な、ニマニマした顔でこっちを見てくる。
「隆翔はいいよなー。魔法の壺を持ってきてくれる可愛い彼女がいて。」
意趣返し問わんばかりに俺も負けじと言い返す。
「ちょっ。その話を掘り返すのはナシだろう。トラウマなんだ。」
俺たちは可笑しくなって吹き出してしまった。今だけは全部忘れて、昔みたいに何も難しい事なんて考えずに笑い合っていたかった。しばらくそんな状況が続いた後、隆翔が改まった様子で言った。
「こんなこと言うと、お前に対して不謹慎かも知れないけどさ。俺はまた生き返ってチャンスが与えられてすごく嬉しかった。日本に居たら一生見れないかも分からなかった生物を見れて、触れられて、幸せだった。例え待ち受ける未来が悲惨な物だったとしても、俺はここに来れて良かったと胸を張って言えるよ。」
隆翔は昔から逞しいというか、肝が据わっているというか、そんな所が頼もしくていつも助けられてきた。そうだ。本当に俺たちが未来の世界にいるとして、置かれた状況が良い物とはお世辞にも言えない。だが、隆翔の言う通り、ここでしか知れない事も多くあるのも事実だ。俺たちはどう頑張っても21世紀より先の世界を、歴史を知る事は許されなかった。でも、今の俺達にはそれが出来る。失った多くのものと比べれば微々たる物かも知れないけど、せっかくのチャンスでもあるんだ。いつまでも暗い気持ちのままでいても何も生まれない。それに、まだ21世紀の日本に帰れないと完全に決まった訳ではない。そう考えると、心の靄が晴れていく様な感じがした。俺は隆翔に笑い掛けた。
「まったく、隆翔は昔から変わらず色々と逞しいな。」
「"今の"裕太もな。」
それどういう意味だよ!俺たちはそれからも満点の星空を背景に他愛のない会話を続けた。
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side 秀夫
「あのー、ヒデオさんちょっといいですかニャ?」
裕君たちが出て行った後、オリバー君がちょっと気不味そうな雰囲気で話しかけてきた。
「どうしたの?」
僕はオリバー君の隣に座って、自然な流れで自分の膝の上に乗せる。日本にいた頃によく飼い猫にしてあげていた事だ。適度に温かくて、フワフワしてて気持ちがいいから癖になる。最初の頃はオリバー君も嫌がっていたけど、今は口では色々と言いながらも、なんやかんや定位置と化している。こんなにカワイイ見た目なのに何メートルもあるモンスターと臆することなく戦える位に強いなんて反則だよ!昔から荒事が苦手な僕からしたら正直羨ましい。
「さっき皆さんが話してた時、ボクは言ってることがよく分からなくて、何だか仲間外れみたいで寂しかったニャ。」
「その、ごめんね。みんな悪気はなかったんだ。これからの事に関わって来る情報だったから、どうしても熱くなっちゃたんだよ。今後は僕も気を付けるし、みんなにも言っておくよ。」
「できれば僕にも皆さんがいた場所の事とか、皆さんがやってる勉強のこととかも教えて欲しいニャ。」
「お安い御用だよ。むしろ、僕たちもオリバー君からはたくさん教えて貰ってるし、何回も助けて貰てるんだからそれくらいしないと罰が当たっちゃうよ。それに、裕君も隆君も自分の分野に関してはすごく話したがりだから喜んで語ってくれると思うよ。」
それから、僕とオリバー君は色々な話をした。日本での生活から、コンピュータを始めたとした文明の利器の話まで、オリバー君には新鮮に映ったようで、とても目を輝かせながら話をしていたのが印象深い。特に科学の話には関心を持っているようだった。僕と隆君がいれば大抵の分野は抑えられるし、これから沢山そういう話をしようと言ったら喜んでくれた。僕たちからも多少は何かオリバー君へお返しが出来そうで嬉しかった。
こうしてまったり話している内に二人とも眠気が押し寄せて来た。再びこうして僕は生きている、そんな実感が込み上げてきて安堵感に包まれる。それが一層、微睡みを加速させる。僕たちが床に就こうとした矢先だった。外から何かを殴打するような激しい、物騒な物音が響いたのは。
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side 裕太
松明の火種も枯れ始め、俺たちは家の中へと戻ろうとした。だが、その消えゆく火に呼応するように、先ほどまで穏やかだった海面が突如として、揺れ始めた。こちらが体勢を整える間も無く、奴らは水面から地上へと上がって来た。月明りに照らされるのは、全長7.5 [m]程の黄色い皮膚に包まれたワニの様な生物だ。おまけに、前後の脚には物々しいスパイク状の棘と鋭い爪まで付いている。どことなくその風貌はジャグラスを思わせるが、その手にある水掻きは、奴らが水辺を縄張りとする生物であることを認識させる。その巨大なワニが三匹、波打ち際から一般的な種類では考えられない程の勢いで跳び上がって来た。
俺は突然の出来事に反応できず、呆気なく足を噛まれ地面に押し倒された。それから、気が付けば俺は地面を引きずられ、今にも海中へと引き込まれそうになっていた。だが、助けを呼ぶ事は叶わない。なぜなら、今俺の身体を咥えて引き摺っている個体とは別の個体が、俺の胴体に巻き付く形になり、胸部を圧迫されているせいでまともに呼吸が出来ないからだ。身体を内部から押し上げられるような不快で強烈な苦しみに襲われる。息が吸えず、頭の中にじりじりとした痛みが反響する。徐々に力が入らなくなっていく。もはやこの状態から脱出することは出来ない。さらには俺の胸部や腹部、足元には複数の噛み痕が付いており、大量に出血している。久方振りの死が目前に迫った。
そんな中、この逼迫した状況に似つかわしくない爽快な打撃音がこの場に鳴り響いた。そこら辺に放置されていた木材でも拾ったのだろうか、隆翔は丸太を両手で持って、思い切り俺に巻き付いた個体の頭部を殴打した。だが、このワニは隆翔の剛腕から放たれた一撃をものともしなかった。五、六発ほど殴ったところで、ようやく奴は怯んだ。あのラギアクルスに比べれば大人と子供ほど小さく見える生物ではあるが、その頑強さは奴らが紛れもなくモンスターと呼べる存在である事を実感させる。だが、それも束の間、いつの間にか俺の脚に噛み付きながら引き摺っていた個体が俺から離れ、体を起こして、何やら青味が掛った液体を口から吐き出した。その液体の塊は隆翔の顔面にクリーンヒットした。
「う、うわぁぁぁ、溺れる、溺れ、、。」
その瞬間、奴から吐き出された粘液は隆翔の顔に纏わり付き、離れなくなっていた。隆翔の鼻や口は完全にその粘っこい塊に包まれ、呼吸困難に陥っている。俺は再び引き摺られ始めた。だが、その瞬間に、薄れゆく意識の中、俺に残った僅かな感覚は地面から熱気が伝わってくるのを感じ取った。俺たちが持っていた物とは別の松明が二つ投げ込まれていた。その様子を見るなり、群れのうち、俺を引き摺っていた個体を含む二匹は、火を怖がるような素振りを見せた後、直ちに海中へと引き返していった。残りの一匹は二つの松明に丁度挟まれる様な位置関係になったことで、身動きが取れなくなってしまったのだ。段々と火を前にした奴が衰弱していく様子が目に入ってきた。それと同時に俺も意識を落としたのだった。
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窓から差し込む光に釣られて俺は目を覚ました。それと同時に身体の至る所が痛むのを感じる。見渡すと、大量の傷口に包帯代わりの布切れが宛がわれているのが見える。死んだかと思ったが、また寸での処で繋ぎ止められたらしい。大量に血が溢れたのは覚えている。多分そのせいだろうか、やたらと頭がふらつくし、立ち上がれそうにもない。振り返れば、秀夫たちと再会してから今日まで常に動きっ放しだった。心身ともに擦り減る様な出来事にも多く遭遇してきた。であるならば、今日一日ぐらいは暇を貰ってゆっくりするのもアリかも知れない。どのみちこの状態では、作業するにしても探索するにしても足手纏いになるだけだ。そんな事を考えていると、部屋のドアがノックされた。
「ユータさん、失礼していいかニャ?」
オリバーの声だ。俺は了承する。オリバーは部屋に入るなり、緑色の液体が入った瓶を手渡してきた。
「ミツムシの液を取ってきたニャ。これを使って今日は安静にしてるニャ。」
「いつも済まないな。ありがとう、大切に使わせてもらうよ。」
俺はミツムシの体液を掌に垂らし、延ばしてから傷口に塗布していく。滲みる痛みが各所で広がるが、それも一瞬のこと。傷口が癒えているのが分かる。本当に回復ミツムシは有難い生物だ。こんな衛生状態の管理が難しい環境下では少しの傷でも破傷風やその他感染症へのリスクは嫌でも付き纏う。命が助かっても、それから更に苦しんだ挙句死ぬのは御免だ。正直それを回避できるだけでも安心感は段違いだ。
「そういえば、昨日俺たちを襲ったあのモンスター何者なんだ?」
落ち着きを取り戻した俺は、気になった事を口にした。
「ああ、あいつらは”ルドロス”っていうニャ。普段は水の中に住んでるからあんまり出会う機会は少ないけど、時たま地上に出て来て手頃な獲物になりそうな生き物を襲うから注意が必要ニャ。あと、群れのオスがいる時は普段よりも長く地上に居座るから、そういう場合はしっかり周囲を警戒する必要があるニャ。オスはメスのルドロスよりも何倍も大きくて、強さもドスランポスやドスジャグラスを超えてるニャ。」
そういえば、イリエワニ?だったかな、そんな名前の巨大なワニが人を喰ったなんて報道を昔テレビで見た事がある。その時の映像を見た限りではワニは一匹でいたようだったが、ことルドロスに関しては、そうではないようだ。人喰いの巨大ワニと同じくらいのサイズ感の生物が群れを成していると考えると、何とも末恐ろしい話だ。ただ、俺たちの常識から考えればルドロス程の生物であれば、一匹いれば一帯の頂点捕食者にでもなれそうな物だが、あのラギアクルスと比べると力不足感は否めないから、この島の常識に照らし合わせれば不思議な話でもないか。話を続けよう。
「襲って来たあいつらはどうなったんだ?」
「それなら三匹いたうちの二匹には逃げられたけど、一匹は松明の火で動けなくして仕留めたニャ。あいつらは乾燥に弱いからずっと陸にいると自然と弱るニャ。今はヒデオさんたちが死体の解体をしてるニャ。それと、リュートさんは酸欠になってただけで特に別状はなかったニャ。」
隆翔も無事なようで本当に良かった。それにしても、あの水の塊は厄介そうだ。顔にへばりつけば最後、陸上にいるにもかかわらず溺れてしまい、終いには奴らのホームである水中に引っ張り込まれてしまう。そうなれば生還するのは困難だろう。ルドロスたちがこの近辺の海辺を縄張りとしているという事は、今後も襲撃される危険性は常にある。しかしながら、ルドロス対策のために火を焚いてしまうと、今度はブナハブラを呼び寄せる結果になりかねない。どちらにしてもあまり好ましい物ではない。もっと言うと、俺たちが留守にしている間はここを守る者はいないので、襲われ放題だ。現状の俺たちの戦力でその問題を解決できる手段を何か用意できないだろうか?拠点が壊滅したり、そうはならなくても修理が必要になったりすれば、俺たちの目標であるコントロールセンターは遠ざかるばかりだ。俺はその旨をオリバーに話した。
「ユータさんの言う事は尤もニャ。一応、小型モンスター程度なら留守中でも勝手になんとかしてくれる手段はあるにはあるニャ。」
その一報に俺は唾を飲んだ。こういうのは相談してみる物だ。
「その名も”プラントX”だニャ。外敵が接近したら液状の胞子を敵目掛けて発射して迎撃してくれる植物ニャ。」
そんな植物まであるのか、この島には。それなら、流石にリオレイアやアンジャナフ級のモンスターは荷が重いとしても、ルドロスやランポスへの対抗手段は獲得できることになる。この前みたいに群れの襲撃に遭っても、拠点に籠城するという選択肢が生まれるのは魅力的だ。プラントX、是非とも今後のためには入手しておきたい代物だ。
「ただしニャ。」
オリバーは念を押すような声色で重々しく語った。
「プラントXの種が拾えるのは、ここから少し北に行った"沼地"に入らないといけないニャ。沼地はここや森の中とは比べ物にならないくらい危険なモンスターで溢れ返っているニャ。今のこの戦力で行っても、みんな揃ってモンスターの胃の中ニャ。だから、せめて最低限沼地に赴くためには、戦闘向きの環境生物や小型モンスターのテイムが必須ニャ。」
どうやら、俺たちが真に生活を安定させるのは当分先の話になりそうだ。沼地、当面の俺たちの目標はそこに決定した。
今回登場したモンスターはルドロスです。MH3が初登場の小型モンスターで最近ではRiseシリーズやストーリーズ2にも登場しています。初登場の3および3Gではちゃっかり登場ムービーまで用意されていたりします。私はよくありの最中に邪魔をされた経験があり、はっきり言っていい思い出はありません(笑)。
さて、彼らの旅は新たな場所へと向かおうとしています!彼らはどう戦力を整えていくのでしょうか?意外な奴らが登場したりしなかったり。次回、テイムラッシュ!お楽しみに!