モンスターだらけのARKを生き延びろ   作:あるこばれの

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Version15.13:沼地へ

 先ほどの戦いの興奮冷めやらなぬ中、俺たちは新たにテイムした仲間たちと共に無事に拠点へと帰還出来た。時刻は既に夕方を回り、辺りは赤く染まっている。討伐したドスランポスの死体を解体していたために、帰りが思いの外遅くなってしまった。本来であれば、丸ごと全部持ち帰りたかったが、流石に推定数トンはあろう巨大な物体をアプトノスで牽引可能な体勢へと動かすには些か人手不足だった。そのため、方針を変えてその場で必要な身体の部位を剥ぎ取って持ち帰ろうという運びになった。俺たちが採取したのは前脚に生えた爪と皮だ。この島に来てから小動物を解体するのにはある程度慣れていたつもりだったが、ここまで大きな獲物は初めてで、苦戦してしまった。石斧では文字通り刃が立たず、オリバーの短槍を借りて何とか作業を進められた。ドスランポスの皮は石製の刃物を通さない程に頑丈なのにも関わらず、非常にしなやかで弾性が強い。これならば、島での活動に耐えられる強度と動きやすさを実現した装備が作れそうだ。爪も鉄の刃物を思わせる程に鋭く、強い。こちらは槍やナイフとして十分に使えそうだ。今日ほど収穫を感じた日は初めてだ。今夜は保存してある魚や肉を多めに使ってささやかな祝宴会を開くのも良いかも知れない。

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 昨夜は雨が降ったようだ。拠点は雨漏りしている。カモシワラシのキナコはジメジメとした空気の中でも元気そうだ。カビと共生するカモシワラシにとっては、湿気が多い方が好みなのかも知れない。昨日は帰ってから日の入りまで僅かな時間で急ピッチでホルクのための柱と天井だけの簡素な東屋を秀夫に作ってもらった。そのお陰か、外に出していたホルクは濡れずに済んだ。ちなみにラッキーの方も普段休ませている場所に簡素な屋根を先日作っていたので無事だった。この島のペットたちは口笛一つでちゃんと定位置に留まってくれるので、日本の飼い慣らされた動物たちよりも遥かに扱いが簡単だ。どうしてなのかは分からないが、こちらとしては有難い事に変わりは無い。

 

 

 秀夫はオリバーを伴って屋根に上って急ピッチで雨漏りした箇所の応急処置をしている。隙間がある箇所に上から板を取り付けて塞ごうとしているのだ。家の中では、既に雨漏りした箇所になけなしの布を使った漏斗が作られており、水が床に広がらないよう処置がなされていた。幸い、水が垂れた箇所は収納ボックスからは離れた位置だったので、物資に目立った被害は無かった。しかし、その代わりというべきか、雨漏りが発生したのは秀夫のベッドの真上だったので、昨晩は碌に寝れてないようだ。そんな中、作業をしてもらうのは申し訳ないが、両肩を怪我してまともに使えない俺が加勢をした所で足手纏いにしかならない。手持無沙汰な俺は東屋の屋根の上で日光浴を楽しむホルクを只々眺めていた。

 

 

 怪我の事を考慮して俺は数日の間安静にするよう皆から言われている。回復ミツムシを使えば一瞬で完治するのだろうが、いつもそう都合良く現れる訳ではない。オリバーが持っている「ミツムシ寄せのお香」という彼らの好む匂いを出しておびき寄せるための道具もあいにく現在は在庫切れらしい。どうやら、ミツムシたちは「回復ツユクサ」と呼ばれる植物から蜜を吸って下腹部の袋に溜め込むという、ミツバチと近しい生態をしている様で、傷が治る成分もその植物に由来する物らしい。そのため、回復ツユクサを拠点で栽培できない現状では、ミツムシを拠点で飼っても意味は無く、野生の蜜を溜め込んだ個体を適宜引き寄せて利用するしかないのだ。昨日拾った火薬草やツタの葉もそうだが、食糧の他にも栽培すべき植物が増えるのも考え物だ。農地のために拠点を拡大しなければならないが、面積が大きくなればなる程にモンスターに襲われるリスクは上がる。そういった意味では、常に拠点を守ってくれるというプラントXは今後の生活や、曳いては島の探索を安心して行うためにも必須の物となるに違いない。

 

 

 一方、隆翔はと言うと、ラッキーを連れて毎朝のベリー採集に出ている。この島の植物は成長が速く、草ごと刈ったとしても数日のうちにまた生えてくるので、毎日採っても枯渇しない。よくよく考えれば不気味な現象ではあるが、そのお陰で俺たちは飢えることは無いので悪い事ではない。ラッキーをテイムしてから持ち帰れる量が増え、さらには騎乗する事で移動時間も短縮されたので良いことずくめだ。しかし、それにしても帰って来るのが遅い。いつもなら出発から1時間程度もすれば帰って来るのだが、今日に限っては2時間経過した今でも帰ってきていない。いつもは安全のため二人一組で行動するのだが、今日は俺がこんななので一人で出て貰っている。隆翔の身にもしもの事があったのではないかと、心配になる。丁度、屋根の修復も終わった様なので、探しに行こうとした矢先だった。

 

 

 隆翔がラッキーと共に戻ってきたのだ。今日はいつもより少しだけラッキーの積荷の量が多い。それに、隆翔も汗を大量にかいており、どこか息が上がった様子だ。その様子にますます心配になり、俺は何があったのか尋ねる。

 

 「鉄を見つけたんだ!それも、鉄鉱石じゃない金属の状態のやつだ!」

 

 なるほど、確かにそれなら隆翔の今の昂り様も理解できる。俺たちは今まで石器に頼って生活をしていたが、それにも大分限界を感じ始めていた。利用可能な鉄を入手できたのは正に渡りに船だ。金属製のツールを作成できれば俺たちの生活水準は間違いなくワンランク上の物になる。文明が一つ進歩する瞬間だ。隆翔はラッキーの両脇に括り付けられた収納ボックスから件の物を取り出した。

 

 それはとても美しい造形だった。龍の鱗を思わせる形状で、彫刻の様に整っている。手に掛かる重みと少し赤茶けた灰色の輝きはがこれが金属であることを示している。鋼の鱗を持つ生物など聞いた事がない。いくらこの島の生物と言えど、そこまで生物離れした突飛な性質は持ち合わせていないはずだ。およそ自然に形成された物には思えない。気品があり洗練されたこの鉄塊は、これまで見たどんな芸術作品よりも妖艶でどこか不気味な雰囲気を感じる。これを加工してしまうのが勿体ない程に、不思議なオーラがあるように思える。それを裏付ける様に鋼の周りに何処からともなく導蟲が集まって来た。

 

 導蟲は青く染まっていた。この現象に遭遇するのも、もう三度目だ。前の時はオベリスクに纏わり付いたカビや微生物の塊だったり、突然発生した霧だったりした訳だが、どうにも三者の間に共通点は見えない。ヨンキ氏記録の中の謎の龍も然り、霧の後に現れたドスジャグラスも然り、この現象の後には何かと嫌な事が起こる傾向にある。だからこそ、理由を知りたいのだが、こうも法則性が理解できないとなると、やはり原始的な手法だと解き明かすのは難しいのかも知れない。

 

 そんなことを考えていると、導蟲は天高く昇って行った。それはまるで御伽噺の一節を彷彿とさせる幻想的な一幕だった。導蟲にはマーキングした物と同質な物に引き寄せられ、向かうという性質がある。その性質を利用することで、俺たちは探し物を行う事が出来ている。だが、今ここで起こった事に対してもその性質が適用されるとすれば、はっきり言って異常だ。それだと空から鉄の塊が降って来たことになる。まさか、本当に鉄の鱗を持つ生物がいるとでも言うのか?

 

 

 「ああ、それは雨の日の後になると時たま森の中とか海岸に落ちているやつニャ。」

 

 考え込んでいると、オリバーが横からそう言ってきた。雨の日の後?余計に正体が分からなくなる。

 

 「なんかこう、身体が鉄に覆われている様なモンスターとかがいるのか?」

 

 気になった俺は尋ねた。

 

 「ボクが知る限りだとそんなのはいないニャ。言い伝えでは、その鉄は空から降って来る天からの恵みだって言われてたニャ。でも、本当のところは誰も知らなかったニャ。」

 

 ということは、この鉄塊は生物由来の物ではなく、やはり環境由来の物である可能性が高い。だが、それでも疑問は残る。空から鉄が降ってくることなどあり得るのだろうか?そもそも自然界において金属は酸化物や窒化物などの形態で存在するはずだ。こんな感じで精錬された状態では存在しない。ならば、これは一体何なんだ?俺たち以外の人間が作った物なのだろうか。だが、この危険な島で芸術作品なんかを作るだけの余裕があるとは思えない。この島にはしばらく滞在しているが、それらしい人物や集団とも遭遇していない。

 

 「なあ、隆翔、空から鉄が降ってくることってあるのか?」

 

 「一応あるぞ。といっても、隕石だがな。」

 

 思っていたのとは違うな。仮にこれが隕石由来だとするならばこんなにも綺麗な形になる物なのだろうか?しかし、それだと雨の日の後に出現する理由を説明できない。

 

 「ただ、俺が周囲を調べた感じでだが、隕石が衝突したと思われる痕跡は無かった。クレーターも無ければ、植物が焼けた様な跡も無かった。それに、結晶構造が隕鉄で見られるものとは明らかに違うから、隕石の可能性は低いと思う。」

 

 結局この鉄塊の正体は分からず仕舞いだ。発生するメカニズムが分かれば、大量に入手する算段でも立てられるかとは考えたが、どうやらそう上手くはいかないらしい。とはいえ、数本のナイフや金槌を作るには十分な量はあるので、惜しい所もあるが、活用させてもらおう。

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 あれから、一週間ほどの時間が経過した。結局あの鉄は加工する事はできなかった。「製錬炉」と言うエングラムを活用して加熱する事で、鋳造や熱間での鍛造を試みたのだが、鉄塊は柔らかくなるどころか、加熱によってむしろ硬くなってしまった。キレアジのヒレを用いての研磨を試みてもみたのだが、俺たちが良く知る鉄よりも硬い材質だったためか、結局削られなかった。秀夫と隆翔はとても驚いていた。二人曰く、よく知られている鉄の性質とはかなり異なっているらしい。さらに、機械的性質に関しても通常の鉄よりも相当強くて硬いことが判明したそうだ。それを知った時の二人の興奮たるや凄いものだった。ちなみに、実験のためにラッキーに踏ませたり、木に固定した状態でまたもやラッキーに引っ張らせたりする様子を、嬉々として観察しながら砂浜によく分からない数式を長々と書く二人には少し引いてしまった。意外にも、オリバーは二人のやっている事に興味を持ったらしく、談議に花が咲いてしまって俺は肩身が狭かった。

 

 閑話休題、この鉄の加工法の研究に関しては秀夫と隆翔の下で進められることになった。今回の件から、もしかすると、この島に鉄の鉱脈が存在する可能性が高まった。すぐに利用できるかどうかは別として、文明の発展を行える可能性のある資源が安定供給される可能性があるのは、俺たちにとっては大きな収穫と言える。

 

 俺の怪我が治ってから、この島の上空を目指すことになった。理由としては、空の上を見ることで、あの鉄塊の言い伝えの真偽を確かめたいというのと、もしかすると海を覆っていた光の壁の切れ目を見つける事が出来、さらには島からの脱出が行えるのではないかという期待もあったからだ。ホルク一匹では流石に全員を掴んで運ぶのは難しいので、俺たちは海岸付近を飛ぶメルノスを三匹をテイムした。テイム方法はアプトノスと同じく、餌を手渡しする形でのものだ。休憩のため地上に降りた隙を突いて口元へ餌を運んだ。幸い、彼らは人懐っこい気質だったようで、一度餌を与えるとこちらへ興味を示し、飛び去ることは無かった。ただ、アプトノスとは違って雑食性だったためか、肉とベリー双方が必要となり、肉の方が足りなかったので給餌を行う秀夫と隆翔を横目に俺は小動物狩りに奔走する羽目になった。

 

 ともあれ、こうして全員分の飛行手段を確保したので、俺たちは晴れて空の調査に出向けるようになった。とは言っても、実際は移動の笛を吹き続けながら拠点の真上にひたすら昇っていくだけではあるが。飛行するときの体勢はホルクもメルノスも同じで、彼らの足で俺たちの肩を掴む形になる。この前はそれが原因で、ホルクの爪が肩に食い込んで怪我に繋がったため、今回は服の肩の部分に布を詰め込んで、なるべく痛みが無くなるよう工夫した。そのお陰で、特に出血等の怪我を伴うことなく上空へと徐々に上がっている。落下した時の対策も併せて行っている。「パラシュート」というお誂え向きのエングラムが存在したのだ。一応地上で、ではるが風が強い日に展開する練習はしてある。なので、よっぽど焦っていない限りは大丈夫だと考えられる、

 

 やはりと表現すべきか、現実はそう甘くはなかった。竦む足を堪えながら、なるべく下を見ないよう心掛けつつ、ようやく上空4、500 [m]程へと到達した時だった。笛吹いてもホルクたちが上昇しなくなった。その上には海で見た光の壁と同じ物が空一面、地平線の彼方にまで広がっていたのだ。どう足掻いても超える事はできない。とてもではないが、その様を見れば切れ目を見つけられるとは思えなかった。結局のところ、俺たちがこの島から逃れるためには、ヨンキ氏の記録で存在が仄めかされたコントロールセンターに向かうしかないのだろう。なんとも抜け目の無い事だ。加えて、不思議な事がある。それは、高度が増減しても空気の濃度に変化がないという事に関してだ。光の天井がある高度まで来ても特に息苦しさは感じないし、四人とも高山病の様な症状は無く、高さに足が竦んでいること以外は実に好調だった。この事から、この島の酸素濃度は一定になるよう保たれていると考えられる。ヨンキ氏の記録でもこの島の生態系やシステムが人工的に維持されていることが示唆されていたが、今回の件は彼女の記録の信憑性をより高める結果となった。

 

 しかし、あの鉄の鱗の発生源と思われる物は何も発見する事が出来なかった。そこに関しては残念である。本音を言うと、もう少し調査をしていきたかったが、天井に辿り着いてから数分が経過すると、メルノスたちのスタミナが限界を迎えそうだったので、急いで地上まで降りた。今回の調査で得られた物は多くは無いが、翼竜を使役しての飛行の経験を積むことができた。指示の出し方やホルクたちの個性なんかも少しずつではあるが、把握出来ている。今の状況ならば沼地への遠征も十分に可能だろう。

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 調査から数日、俺たちはついに沼地へと向けて出発する。今回の遠征はスピード勝負だ。沼地は危険なモンスターに溢れており、長時間の滞在は不可能だ。そのため、空路で沼地まで向かい、プラントXの種を回収したら即効で空を飛んで離脱する計画だ。一応、ホルクもメルノスも夜目が効くのだが、夜行性のモンスターもいるため、日帰りでの決行になるため、出発は早朝だ。俺はホルクに掴まれ、他の三人はメルノスに掴まれる。秀夫の腕には先日テイムしたマルドローンが、隆翔の肩にはエンエンクが連れられている。今までにない緊張感に包まれる中、俺たちは飛翔した。

 

 




 今回からテイムしたモンスターや環境生物が実際にARKのゲーム内に登場した時の能力予想、というか妄想をするコーナーを始めようかと思います!ただし!ゲームの方に準拠して考えるので、小説本編の描写と異なる場合があるのは悪しからず!という訳で、第1回となる今回は本編で最初にテイムした環境生物であるカモシワラシについてです!

カモシワラシ
区分:肩乗せ生物
テイム方法:手渡しテイム
テイム時の餌:ベリー、野菜、キブル(basic)

能力:①時間経過でインベントリ内に「カビの胞子」を生成する。「カビの胞子」  
    には2つの効果がある。一つ目は、堆肥箱やフンコロガシのインベントリ
    内に入れる事で、発酵が促され、肥料の生成時間が短縮される。二つ目は
    たき火、調理鍋工業用調理器具、工業用グリルのインベントリ内に入れて
    こんがり肉や料理の作製を行うと、それらの効果全般が向上する。また、
    胞子はカスタムレシピの材料にすることも可能である。そのため、上級者
    のサバイバーのインベントリには、しばしばカビとエレメントダストの混
    合物が見られる。

   ②リストロサウルスやヒエノドンと同様になでる事が出来る。なでると、周
    囲のサバイバーに一定時間バフを付与する。バフの効果は、バフを受けた 
    サバイバーがカスタムレシピの作製を行った際に、製作スキルとは別にレ
    シピに対して補正が掛かる。また、このバフはフェニックスやマグマサウ
    ルス、デスモダスに対しても有効で、こんがり肉やサングインエリクシル  
    の効果を高めると同時に製作時間を短縮できる。
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