モンスターだらけのARKを生き延びろ   作:あるこばれの

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前回は不穏な雰囲気の中終わりましたが、裕太君は生き残ることができるのでしょうか?それでは本編スタート!!


Version2.1:狡猾なる森のならず者

 「はぁはぁはぁ、ここはどこなんだ」

 

 疲れからか我に返った俺は、辺りの景色がさっきまでの海岸から鬱蒼とした森の中に変わっていることに気付く。あんな状況だったので、仕方のないことではあるのだが、周囲への注意を怠った過去の自分を恨む。今俺が向いている方向と反対の向きに進めば、森から出られるのだろうか?早く出ないと不味い。何せ、この島には化け物がいるんだ。他にもああいった奴がいないとも限らない。とにかく、もうあんな目に遭うのは御免だ。悩むのはここを出てからでも遅くはない。そうして、俺は踵を返そうとした。その時だった。

 

 「ギィギィーギャァーウ」

 

 甲高く、野太い声が辺りに響き渡る。声の主が何なのかは俺にはわからないが、とにかく危険なケダモノのそれであることは直感的に理解できた。俺は咄嗟に近くにあった茂みの中で丸まり、身を隠す。幸いまだ音の発生源はここから距離があるのか、声の主らしき動物の姿は見えない。一先ず、俺は胸を撫で下ろす。このまま何事もなく事態が過ぎ去って欲しい。俺は淡い期待を胸に息を潜め続ける。しかし、そんな俺の心情を踏み躙るようにして、その獣達は現れた。俺は奴らの容貌に戦慄した。なぜなら、声の主、ケダモノは子供の頃に図鑑で見た肉食恐竜に酷似した見た目をしていたからだ。体の長さは5 [m]程だろうか。体の高さに関しては2 [m]程はありそうだ。フォルムこそ細身で全体的にシャープな印象を受けるが、その大きさからか、身を縮めて視点が低い現状ではかなりの威圧感がある。体色は青色を基調としつつ、背中から後脚の付け根、尻尾に至るまで黒いラインが通っている。その所為か、この森の中では身奴らの体の輪郭はややぼやけて見え、こちらとの正確な距離感を測り辛くしているようにも感じる。奴らが森の茂みに隠れていたりしたら、きっと俺は見つけられなかっただろう。それ位奴らの外見はこの森とマッチしている。体表は鱗に覆われ、如何にも爬虫類然とした印象を受け、より本能的な恐怖心を煽られる。そして、さらに恐ろしいのは、前後の脚から生えた鋭利な鉤爪だ。後ろの方は、スパンが20 [cm]程で半円状の曲率が付いており、先端はアイスピックのように尖っている。前肢の鉤爪は、六本生えていてそれらが熊手のような広がり方をしており、その形状は一目で獲物を切り裂くことに特化したものだと気づかされる。また、頭からはオレンジ色の小さな鶏冠が生え、口部は黄色の嘴のように見えるが、そこからは鋭利な歯が上下に覗いている。昨日の虫とはまた異なる畏怖の感情に支配される。昨日のあの虫が俺にとって「ホラー」な存在だとすれば、今のこいつらさしずめ「フィアー」といったところだろう。

 

 

 奴らは、三頭で群れを形成している。三頭は放射状に並び、身体の重心を低くし、頭を突き出して獲物を探すような姿勢を取っている。恐らく、臭いとかで俺の存在には気づいているのだろう。本当に見つかるのは時間の問題かも知れない。奴らの中の一匹が俺がいる方角を向いてキョロキョロと広範囲を見渡すような動きをしている。そいつはほんの一瞬だけ俺が隠れている茂みの方を見た。奴らが来てから、体中から変な汗が止めどなく流れ出ている。それに加え、奴の視線を感じた瞬間に、股下から温かいものが漏れ出した。奴らの一挙手一投足そのすべてが怖い。音を出したら終わる。少しでも体を動かしたら終わる。俺の本能が警鐘を鳴らしている。かつてない程の緊張感に俺はもう目を開けることすら出来なかった。カタカタと爪を鳴らす音が聞こえる。目を閉じていると周囲の音にいつも以上に敏感になってしまう。奴らの息遣いが先程までよりもさらに鮮明に聞こえる。思わず背筋が震えあがってしまう。比喩でもなんでもなく、本当に背中にゾワゾワと嫌な感覚が流れるのだ。「早くどっかに行ってくれ」と、俺は心の中で何回も何回も懇願する。

 

 

 どれくらいの時間が経ったのかなんて今の俺には分からない。今の俺にはこの微小な時間がどんな一時間よりも長く感じるだろう。この永遠にも思える静寂に終止符を打ったのは、意外にも奴らだった。群れの中の一頭が急に、「ゴォゴォゴォ」と大きな鳴き声を上げたのだ。その瞬間、俺は死を悟った。今度は一思いに一撃で終わらせてほしい。俺を喰らうのはせめてその後にしてくれ。俺は昨夜の出来事を思い浮かべながら、せめてもの願い事をした。だが、奴らの取った行動は俺が思ったものとは正反対だった。奴らの声は、そそくさと森の奥の方向、すなわち俺の進みたい方向とは真逆の方向へ向かっていったのだ。それを知って、俺はようやく重い瞼を上げることができた。それから、俺はすぐさま走り出した。まだ震える脚で蛇行するその様は、酔っ払いの千鳥足と比べても寸分の違いはないだろう。ともあれ、俺は生き延びたんだ!あの危機的な状況から!俺はその喜びに打ち震えていた。しかし、それは儚い幻であったこと知るのにはそう時間を要さなかった。

 

 

 やっとの思いで、200 [m]ほど進んだ所でだろうか、俺の行く手に先程の恐竜と同じ種類と思われる個体が二匹現れ、俺の退路を塞いできたのだ。俺はすぐに方向転換をし、反対方向に向きなおろうとする。そんな俺が目にしたのは、正に絶望ともいうべき光景であった。先程遭遇した三匹の恐竜がこちらに向かって走って来ていたのだ。ああ、俺は助かったんじゃない。ただ奴らの狡猾な策によって掌の上で踊っていただけだったのだ。それを察した時にはもう遅い。向かてきた個体の中の一匹が人間の身長を悠に超える高さまで飛び上がり、気付いた時には俺の上にのしかかり、俺を組み敷いたのだ。

 

 奴は後ろ脚の鉤爪を俺の腹部に向かって突き刺してきた。三本の鉤爪が俺の皮膚をまるで豆腐に箸を刺すように、いとも簡単に貫いた。俺は、「ガハッ!」と断末魔のような声を上げる。傷口からは赤い血が止めどなく溢れている。昨日化け物昆虫に襲われた時は、夜間だったので流れる血の様子は見えなかった。しかし今は、真昼間だ。否が応でも自分の命が体外に虚しく流れ出る様を見なければならないのだ。赤い池が地面に広がるのを見る程に、痛みが増していくような感覚がする。身体から徐々に力が抜けていくのが分かる。昨晩のように一瞬のうちに動けなくなるのも辛かったが、こうやって少しずつ身体の自由が奪われていくのも中々に苦しいものだ。そして、奴は獲物が衰弱したのを確認すると、俺の腹から爪を引き抜く。最後に、奴は黄みがかった瞳を大きく見開き、鋸のような鋭利で硬い牙で俺の喉笛を嚙み千切った。こうして、一瞬の激痛と供に俺の意識は途絶えたのだった。

 

 

You were killed by a Velociprey.

 

 




 今回裕太君を襲撃したモンスターはランポスでした!初代モンスターハンターから登場している由緒正しき序盤の敵です。後輩のジャギィやジャグラスと違って日本語名と英語名が異なっているので分かり辛かったかもしれませんね。この作品での立ち位置はARKで言うユタラプトルとディロフォサウルスの中間ぐらいの初心者キラーかなと思っています。ちなみに、3話目で登場したブナハブラはティタノミルマ・ソルジャーの位置かなと思っています(笑)

 さて、前途多難な裕太君のサバイバルはどうなっていくのか!?次回も見守っていただけると幸いです。次回も楽しみにお待ちください!
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