モンスターだらけのARKを生き延びろ   作:あるこばれの

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Version17.5:赤き毒たちの統率者

 あれから数日、予定よりも早く隆翔が昏睡テイムに必要な道具を完成させた。今はその道具のレクチャーのため全員で本島の海岸に出掛けている。

 

 

 「本当にその手に持ってるのがモンスターを昏睡させるための道具なのか?」

 

 

 俺は隆翔が持っている普通の物よりも大きめなグレネードと思われる物を指さして尋ねる。

 

 

 「ああそうだ。中には強力な催眠性を持ったガスと粉末が封入されている。これをモンスターの頭へ投げると、爆発してガスを吸わせられるんだ。ただ、中のガスは対モンスター用だから人間には強すぎる。間違って吸えば、命に関わるから扱いは慎重に頼む。」

 

 

 話を聞くだけで如何にもヤバそうな代物だ。これは俺たちが寝起きする草食島の拠点の方には置かない方が良いだろう。多少取りに行くのが面倒ではあるが、本島の方で保管しよう。

 

 

 「使用する際の流れだが、モンスターにガスを吸わせる都合上、動き回っている時には十分な量を吸わせるのは難しい。だから、こいつを使って貰いたい。」

 

 

 隆翔が合図をすると、秀夫が何やら鉄製と思われる装置を重そうに抱えながらやって来た。

 

 

 「それは、トラバサミか?」

 

 

 「そうだよ。エングラムにあった物を元にして改良を施したんだ。」

 

 

 俺の問いに秀夫が答える。なるほど、罠に嵌まって動けない状況で、確実にガスを吸わせる事で昏睡状態に持ち込むのか。

 

 

 「ただし、大型モンスターを相手にいきなり仕掛けても力づくで破壊されてしまう。それを防ぐためには対象とある程度戦ってダメージを与える必要がある。それに、全力の状態のモンスターには麻酔が効きづらいから弱らせて抵抗力を減らす必要もある。」

 

 

 流石に、麻酔が入ったグレネードを当てるだけでテイムされる程モンスターも甘くはないか。テイムのために、交戦が必要なのは先人たちと変わらない訳だ。

 

 

 それから、俺たちは罠とグレネードの試運転を行うため、海岸の手頃な小型モンスターを探した。丁度、ケストドンの群れが居たので、その中の屈強なオスの個体を群れから引き剥がしてオリバーを中心に攻撃を行い、ダメージを与える。その後は、トラバサミの上にエンエンクのフェロモンガスを漂わせる事で、ケストドンを誘導し罠に嵌める事に成功した。最後に、ケストドンの頭近くの地面にグレネードを投げ込むと、爆炎と青白い煙が同時に充満し、ケストドンは倒れ伏した。それを確認すると、トラバサミを解除した。

 

 

 

 確かに、今のケストドンの状態はネムリガスガエルなどで寝かせた際の状態とは見るからに異なっている。その時のモンスターのは寝息や鼻提灯を立てながら寝るっているのがほとんどだが、今はそれもない上に呼吸が浅く、にも関わらず何かを求める様にして口をパクパクと開閉させている。その様子は何かに乗っ取られたかのようで少々不気味だった。

 

 

 「うむ。間違いないでござる。懐く前の獣は皆、この様な状態だった。」

 

 

 新之丞さんは目の前の状況に対して頷いている。その隣では隆翔が何処か安心した様子で胸を撫で下ろしていた。

 

 

 「お疲れ様、隆翔。」

 

 

 「ああ、裕太。ありがとう。何とか上手くいって良かったよ。」

 

 

 隆翔の顔をよく見ると、目の下に大きな隈を作っている。この数日で相当な無理を通していたのが読み取れる。聞けば、麻酔自体はエングラムの”麻酔薬”をベースとした物らしい。この特殊な昏睡状態を生み出すには、前例のある麻酔薬を用いるのが適切だと考えたそうなのだが、モンスターの耐性は高くそれ単体では不可能だったという。最終的には麻酔薬から水気を飛ばして細かな粉末状にした物に、更に干したマヒダケの粉末を混ぜ、ネムリガスガエルのガス共に封入するという形に落ち着いた。だが、その細かな配合が非常にシビアな物であったらしく、生物がきちんと"昏睡"する混合率を発見するのに膨大な試行回数を要したそうだ。

 

 

 

 拠点に新しく建てられた墓標がそれを雄に物語っている。そこでは、動物実験の犠牲となったヨリミチウサギやイシモリトカゲといった小動物が供養されているのだ。残酷とも思えるかも知れない。だが、この島では人間など吹けば飛ぶ様な存在だ。身体で敵わないのなら、せめて心だけでも鬼にならなければ前に進めない時もあるのだ。

 

 

 ケストドンのテイムが開始された。新之丞さんは周期的な開閉を続けるケストドンの口元にメジョベリーを置く。すると、ケストドンは目を瞑ったままベリーに齧り付き、咀嚼を始めた。その行動は明らかに覚醒下の元の物ではない。客観的に見ると、夢遊の様にも思える。新之丞さんによると、かつての恐竜や哺乳類、果てはサソリに魚類もこれと全く同じ挙動を示していたそうだ。どうやらこれは、島の生物に広く成り立つ特有の法則とも言えるのかも知れない。俺としては、こういった所からも何か作為染みた物を感じる。

 

 

 あれから30分ほど、ケストドンがメジョベリーを平らげては与えてを繰り返し続けた。もう20個以上は給餌している。そして、また一つベリーを与えると、それを飲み込んだケストドンはピクりと動かなくなった。

 

 

 「む、そろそろですぞ!」

 

 

 新之丞さんの掛け声と共にケストドンが起き上がり、雄叫びを上げた。それと同時に、インプラントからテイム完了の通知が頭の中に流れてくる。本当に仲間になったようだ。俺は試しに、追従の口笛を吹きその辺を彷徨いてみる。ケストドンは違わず俺の後ろを歩いている。その後も色々な命令を試したが、どうやら、テイム方法の差異によるテイム後の扱い方への違いは特に無いようだった。

 

 

 「これだけ精悍な身体付きの獣であれば、耕作や荷運びで活躍間違いなしでしょうなぁ。だが、ちと大き過ぎるため、洞窟に潜れるかは分かりませぬが。」

 

 

 テイム道具の試運転だったため、あまり深くは考えずに付近のモンスターを対象にしたが、新之丞さんのいう通り意外に大きな収穫だった。アプトノスより積載能力は劣るが、その分速力はある。普段の探索もそうだが、もし洞窟に入れるのなら荷運び役として連れて行くのも良い選択肢だろう。

 

 

 その後はケストドンをミツムシで回復させてからいかだに乗せ、俺たちは草食島へと無事に帰還した。久々に復旧ではない目に見えた進展を得られ、みんな上機嫌だった。隆翔の事もあるし明日は一日休養を取ってから、今度はより強力な大型モンスターを狙ってみよう。

 

 

 

 

 

 

 

 あれから2日後、俺たちは新たな装備を伴って大型モンスターの捜索に打って出ようとしていた。

 

 

 「多少不格好で申し訳ないけど、皮の服よりはちゃんと身を守ってくれる筈だよ。」

 

 

 秀夫はそう言うと、鉄の塊を重そうに抱えながらみんなに手渡した。金属の鎧が完成したのだ。意匠のベースとなっているのは、これまたエングラムにあった物で、中世西洋風のプレートアーマーといった具合だ。エングラムの補助があったとは言え、秀夫が一人で鉄を打って作った文字通りのオーダーメイドの品だ。オリバーの為の小型の物までしっかり用意されている。

 

 

 俺たちは新之丞さんに手伝って貰いながら、不慣れな手付きで鎧を身に着けた。流石はプロと言える円滑な手付きで、とても格好良かった。島に来てから大分筋力が身に着いたと思っていたが、それでも鎧の重さは堪える。普段から身体を鍛えている隆翔や戦闘のプロである新之丞さんやオリバーは順応出来ているが、運動音痴の俺や秀夫は馴れるまでしばらく掛かりそうだ。とはいえ、関節の動きに制限は殆ど無いのは救いがあると言える。これからは少しずつでも身体を鍛えようと密かに決意した。

 

 

 「あと、新之丞さんにはこれを差し上げます。」

 

 

 そう言って秀夫が渡したのは脇差し程の刃渡りの刀だった。

 

 

 「むむ、これは。秀夫殿、恩に着ます。」

 

 

 「本物の鍛冶屋の方が打ったものに比べれば拙いものですが、気に入って貰えると嬉しいです。」

 

 

 「とんでもない。島に流されて以来、日ノ本の刀を握る機会は無かった故、それだけでも胸が一杯でござるよ。」

 

 

 新之丞さんは満足気な表情で刀を腰に下げる。記録に伝わる新之丞さんは刀の名手だった。そんな彼が刀を振るう姿が見られるとは、俺としても感慨深い。それだけで、命懸けで山まで飛んで鉄を掘った甲斐があるというものだ。

 

 

 それから、一頻り身体を慣らしてみんなはメルノスに掴まれて飛び立った。彼らが抱える重量は以前と比較して倍近くまで上がっているが、メルノスたちはそんな事と言わんばかりのどこ吹く風で優雅に飛行している。改めてモンスターの底力を思いしらされた。

 

 

 俺はそんなみんなの様子を見ながらケストドンの手綱を引き、メルノスの後ろを追い掛ける。今、ケストドンには騎乗用のサドルが装着されており、後ろには木製の小型荷車を引いている。その荷車の中にはトラバサミやグレードなど捕獲道具や各人の武器が仕舞ってある。それと、各々の肩には戦闘に有用な肩乗せペットが伴っている。

 

 

 導蟲を使って地上と上空、双方から痕跡を捜索しているが、中々に大型モンスターを発見出来ないでいる。遭遇したくない時に限ってよく襲われるが、こうしてこちらから探しに出ると見つからないのは何かもどかしい、というか胸に引っ掛かる物がある。

 

 

 「少し危ないけど、沼地方面まで足を伸ばしてみるか?」

 

 

 あまり気は乗らないが、海岸や森で収穫が無い以上仕方の無い事だろう。みんなも渋々といった感じではあるが、最終的には同意してくれた。

 

 

 「それなら一旦戻って防虫剤を取ってこようよ。また、ヒルに噛まれて病気するのはもう嫌だし。」

 

 

 秀夫の言葉から嫌な思い出が蘇る。一応、万が一現地で沼地熱を発症した際の防疫のために、にが虫のエキスも持って来よう。それから、沼地用の道具をケストドンに詰め、沼地の入り口付近までやって来た。

 

 

 「ンニャ、導蟲に反応アリニャ。」

 

 

 導蟲は川岸のある地点に向かって行った。俺たちも追い掛けると、そこには足跡が刻まれていた。形からして肉食恐竜型のモンスターの様に見える。

 

 

 「みんな気を付けろ。この足跡、まだ新しいぞ。」

 

 

 隆翔の言葉を聞いて足跡を注視すると、その近辺の土はまだ湿り気を帯びているのが分かった。この主はまだ近くにいる。

 

 

 「この痕跡、場所から考えて多分ドスイーオスの物ニャ。早く荷物からにが虫のエキスを取って、一人一本ずつ持つニャ。」

 

 

 ドスイーオスは沼地に生息するランポスの近縁に当たるモンスターだ。一目で見た者に危険を知らせる真っ赤な皮膚に覆われており、ドスランポスと同等の機動力に加えて、高い生命力を持つ。さらに、粘度の高い毒液を吐く能力を部下のイーオス共々保有しており、喰らえばそう長くない内に命を刈り取られかねない。しかし、戦力として考えれば地上における高い踏破性と搦手に向いた戦闘能力と、総じて優秀と言えるのもまた事実。テイムする対象としては悪くないと言える。

 

 

 「おびき寄せるか?」

 

 

 「やってみる価値はあるニャ。」

 

 

 俺たちはすぐに仕掛けの準備を始める。足跡は沼地の入口の水溜りを最後に途絶えている。手始めに、その足跡の切れ目に強烈な臭気を放つ腐肉の塊を設置した。

 

 

 それから、俺たちは分散し、周囲の岩陰や草むらに各々隠れ準備を進めていく。算段としては、イーオスの群れが肉に釘付けになっている間に、けむり玉を使用して奴らの視界を奪い、その間に奇襲をかけて子分を可能な限り沈める。その後は肩乗せのペットや武器の力を借りてリーダーを削り、予め設置しておいたトラバサミに嵌める。トラバサミの数は限られている。故に今回は親分のみを狙う方針だ。

 

 

 ここで、俺は虎の子の強走薬とフォーカルチリを流し込む。強走薬の原料である狂走エキスはいかだの上からカツオを釣り上げて手に入れた物だ。故に今は数が少なく貴重なのである。とはいえ、この2つがあれば暫くの間は鎧を着ていない時とほぼ同等の動きが可能になる。鎧による運動性への制約がある今、出し惜しみをするのは自殺行為だ。

 

 

 そうしている内に、ドスイーオスが5,6匹の子分を引き連れて肉の元へ駆け寄って来た。彼らは周囲をしばらく見渡した後、威嚇のためか雄叫びを上げた。その瞬間、周囲の小動物たちは一目散に逃げ始める。ドスイーオスはそれを確認すると我先に貪り付いた。

 

 

 視界確保用の灯火蟲は腰に下げた小さな虫籠の中で光を放っている。準備万端だ。俺はハンドサインを送った後、松明の火をけむり玉の導火線に点け、音を立てないよう慎重に投げ込んだ。周囲には、たちまち白い煙が充満する。突然の出来事にイーオスたちは混乱している様だ。

 

 

 イーオスは狼狽え、幸いな事に狭い箇所に固まっている。そこに秀夫が全速力で走り込み、シビレガスガエルを放ってガスをばら撒く。見事、それは命中し全ての子分が麻痺状態になる。秀夫はそれを確認するや否やシビレガスガエルを回収した。

 

 

 その直後には、オリバーと新之丞さんがイーオスに切り掛かった。二人は無駄の無い動きでイーオスの喉元に目にも留まらぬ速さの斬撃を数発与え、瞬く間に群れを半壊させる事に成功する。

 

 

 しかしながら、イーオスの回復は思いの外早く全て倒し切る前に麻痺が治まってしまった。直後、一匹のイーオスがオリバーに向かって飛び掛かる。が、バチッと何かが弾ける音と共にオリバーとは反対方向に吹き飛んだ。

 

 

 間一髪の所で隆翔がパチンコから特殊な弾を放ち、イーオスを怯ませたのだ。その弾とは、"ハジケクルミ"という森の中に自生するクルミに似た樹木が付ける実で、衝撃を与えるとその名の通り弾ける性質がある。この威力はそれなりに高く、その辺の石よりも遥かに効果覿面なのだ。その上、当たれば高確率でモンスターを怯ませられるのも扱いやすいそうだ。

 

 

 吹き飛ばされたイーオスは、新之丞さんに刀を急所の喉元に突き立てられ、迅速に処理された。残った3匹のイーオスとドスイーオスはこちらへ向き直る。ここからが本番だ。何をするにも、まずは子分を仕留め切らなければ。

 

 

 俺は肉食獣が苦手とするであろう松明を奴らの足元へ投げる。ランポスやジャグラスの群れであれば、親分が一喝するまでの僅かな間ではあるが、隙が生まれる。ただ、たったそれだけの隙でも閃光を浴びせるには十分なのだ。

 

 

 しかし、俺の狙いとは裏腹に奴らからは火を恐れる様子を微塵も感じられない。さらにその上、奴らが火傷を負っている様子も見られない。群れを成す獣には火が有効だというセオリーを壊された瞬間だった。

 

 

 動揺してばかりではいられない。俺はすぐに手拍子をして肩の光蟲に閃光を放たせようとする。だが、奴の反射神経はそれを上回った。手を叩き終える前に高速で毒液を発射したのだ。フォーカルチリの効果もあって、寸での処で何とか回避出来たものの、状況は芳しくない。

 

 

 ドスイーオスは野太い雄叫びを上げる。それと同時に追加で5匹のイーオスが沼地の中から駆け付ける。子分の数は合計、8匹。僅かに有った数の有利を完全に反転させられてしまった。俺たちは今、完全に囲まれている。背後に待機するケストドンもこの光景に半ば恐慌状態になろうとしている。俺は無抵抗の笛を吹き続けて暴れ出さないよう嗜める。どうにか落ち着いてくれた。これで不意の突撃による混乱は未然に防げた筈だ。

 

 

 「某がこの"えんえんく"とやらを使って注意を引く。その間に裕太殿は閃光を放って全員の動きを止めるのだ。」

 

 

 新之丞さんは迷いなくエンエンクにガスを放出させた。その瞬間、ドスイーオスは白い吐息を吐き始め、イーオスたちの視線も一気に新之丞さんへと集中する。されど、新之丞さんはそこから一歩たりとも動かない。ドスイーオスの号令と共に、イーオスは一斉に毒液を吐き出そうとする。もはやチャンスは今しか無い。俺は閃光を起動した。

 

 

 眩い光が消え去り、漸く目が開く。

 

 

 「新之丞さん、大丈夫ですか、!?」

 

 

 「心配ご無用。」

 

 

 新之丞さんは鎧の重さを感じさせない軽やかな動きで跳び回り、イーオスの毒液を全て避けて見せた。それから、一匹のイーオスが飛び掛かる。されど、新之丞さんはその場で仁王立ちし、一切動く様子を見せない。そして、イーオスの毒牙が彼の間際に迫った瞬間、刀をその口の中へ突き刺した。イーオスの口からは血が溢れ、そのまま地に倒れ伏す。

 

 

 その光景に、イーオスたちは先程とは打って変わって引腰になる。そこに追い討ちを掛ける様にして、ハジケクルミの炸裂音が響き渡る。それも一度ではなく、二度、三度と続き、群れの前衛を担う個体が揃いも揃って怯んだのだった。パチンコが弾丸に工夫を凝らす事でここまで有用な武器になるとは思わなかった。

 

 

 隆翔が作った隙を見逃すまいと、オリバーはケストドンの積み荷から素早く取り出した秘密兵器を、全力で投擲する。オリバーが言うには、これは"メガブーメランの技"という技らしい。オリバー自身の身の丈を超える巨大なブーメランを全身全霊の回転を以て投げる事で敵に大ダメージ与えられるそうだ。その言に違わず、実際にそのブーメランは前衛の3匹を須らく巻き込み、息絶えさせたのだ。

 

 

 子分は残り4匹、ボスも入れて5匹。これで数の上では互角となった。俺も意を決して、鉄製のパイクを片手に突撃する。毒液を吐こうと構えていた個体に対して、先ほど新之丞さんがやっていた様に槍を突っ込む。彼ほど美しくは決まらなかったが、何度も刺突を繰り返し何とか討伐するまで漕ぎ着けた。

 

 

 「みんな!閃光を出す!気を付けろ!」

 

 

 俺はそのままの勢いで槍を手放し、光蟲に閃光を放つよう促す。光に一瞬だけ遅れてイーオスたちの情けない呻き声が聴こえた。ボス共々目が眩んだようだな。それから、満足に動けないイーオスは難なく処理に成功した。残るはドスイーオスのみだ。これからはなるべく動きを封じて部下を呼ばせない事が何より重要になる。

 

 

 メルノスに掴まれた秀夫が上空からグレネードをドスイーオスへ向かって投げ突ける。一発あたりのダメージは高くないが、数が嵩めばその限りでは無い。10発目を浴びせた所で明確に怯む動作が確認できた。

 

 

 爆発が収まった瞬間、オリバーがドスイーオスの背中に跳び乗り、ナイフで背中を突き刺していく。ドスイーオスの方も激しく抵抗するが、オリバーも負けじと踏ん張り続ける。だが、ここで奴が背中をオリバーごと岩壁へぶつけるという暴挙に出たのだった。

 

 

 その衝撃によりオリバーは振り落とされ、遠くに投げ飛ばされてしまった。俺はオリバーに駆け寄り、抱えて一旦の離脱を試みる。だが、それと同時にドスイーオスはこちらへ向かって飛び掛かって来る。俺は料理の効果もあってどうにか側方へと回避したが、それも想定内だと言わしめる様にして、ドスイーオスはバルバロの様に頭頂を正面に向けて高速で突進して来た。奴の背中に隆翔のハジケクルミが当たった音がしたが、それでも奴は止まらず、俺は捌き切れずにオリバー諸共吹き飛ばされてしまう。

 

 

 起き上がろうとした束の間、頭上すぐ近くに紫色の塊が迫って来た。俺は避けきれないと判断して、咄嗟にオリバーを背後に隠し、毒液を一身に浴びる事を選んだ。

 

 

 先程の攻撃で生じた擦り傷に毒が染み渡る。大した事のない傷口であったが、今はそこから徐々に出血しているのが分かる。身体から力が抜けていく。腰に下げたにが虫のエキスに手を伸ばそうとするが、最早それすらも叶わない。俺は脂汗が頭から足先までを流れるのを感じながらうつ伏せに倒れ伏したのだった。

 

 

 身体が軽くなるのを感じる。同時に金属音が耳に入る。どうやら、オリバーが俺の鎧を脱がせてにが虫のエキスを掛けてくれている様だ。少しずつ呼吸が安定して、楽になっていく。だが、ドスイーオスも手負いから確実に仕留めようと噛みつきの構えを取っている。これ迄かと思われた刹那、ガキンと鋭い音が響き渡り、俺とドスイーオスの間に乱入者が現れたのだった。

 

 

 新之丞さんが立ちはだかり、刀を水平にしてドスイーオスの口元で押さえている。対するドスイーオスは刀に噛み付き、さながら鍔迫り合いの様相を呈している。圧倒的な体格差がありながらも新之丞さんは一歩も引くこと無く、奴と対面している。その背中は誰よりも逞しく大きく、正しく本物の武者と言った様相だった。

 

 

 「今の内に逃げるのだ!某とて長くは持たん!」

 

 

 俺は震えながら地面を這ってなんとかその場を離れようとする。だが、新之丞さんが警告を上げると同時に、ブチッと云う大きな音が耳を劈いた。切っ先は宙を舞い、さも悲しげな雰囲気を伴ってボトリと地面に落下する。虚を突かれ無防備となった新之丞さんは口を大きく開いたドスイーオスに飲み込まれそうになっている。

 

 

 俺は思わず目を逸らしてしまったが、危惧していた悲劇は起こらなかった。なんと、ここで秀夫が無謀にもドスイーオスの胴体に向かってタックルを敢行したのだ。秀夫の小柄な体格では有効打には到底なり得ない。だが、奴の注意だけは何とかして惹けた様だ。その隙に新之丞さんはドスイーオスの正面から離脱した。

 

 

 今の出来事で注意が散漫になったドスイーオスに対し、オリバーのジャンプ斬りと新之丞さん渾身の右ストレートが同時に顔面へと炸裂した。奇襲であったために衝撃に耐えられなかった奴は豪快に後ろへ吹っ飛んでいった。

 

 

 俺は脚を引き摺りながら奴へと近付き、残った力の全てを振り絞りながら、槍の柄で藻掻く奴の胴体を何度も何度も殴打した。

 

 

 しばらくして、立ち上がったドスイーオスは恨めしそうな目付きで此方を睨みつけている。その瞳には隠し切れない疲労の色も感じ取れる。

 

 

 「そろそろ潮時だろう。罠へ誘導するぞ。」

 

 

 隆翔はそう宣言すると、フォーカルチリを口に含みながらエンエンクのガスを身に纏う。ドスイーオスを視線が釘付けになると同時に、隆翔はトラバサミのある方へと走り出した。

 

 

 秀夫は急いでケストドンの積み荷から捕獲用のグレネードを回収し、隆翔の後を追った。

 

 

 トラバサミに掛かったドスイーオスは暴れるが、消耗が激しい所為で一向に罠を破壊出来ずにいる。そこに、追い付いた秀夫が捕獲用グレネードを二発、頭に投げ込むとついに奴は昏睡したのだった。激戦ではあったが、最期は呆気なかった。

 

 

 ドスイーオスの昏睡を確認した後、トラバサミを解除すると、即効で準備を始めた。生肉を食べやすい一口サイズに切り、さらにテイム完了後にドスイーオスを回復するためのミツムシ寄せを行った。

 

 

 周囲を警戒しながら一時間半程度が経過した所でドスイーオスは目を覚ました。何が現れるのか分からない場所で長時間待ち続けるのは、主に精神的に辛い物がある。今度からはアプトノス数匹で牽引する様な大きな荷車を用意して運びながら給餌するといった対策を立てるのが良いかも知れない。

 

 

 今回の戦闘については、俺自身としては反省点が多いが、成功出来て本当に良かった。次こそはみんなの頑張りに報いる事が出来るよう、努力する。日が沈み始める中、俺たちは新たな仲間と共に拠点へと帰るのだった。




 今回、トラバサミを使用する描写が出てきますが、現実では違法なので購入及び実際に動物などに対して使用するのはお控え下さい。


 また、本小説ではARKやMHを下地としている以上、時として生き物に対して残酷とも言える描写が多々登場します。しかし、現実世界でのそう言った行為を助長する意図はありません。併せてご理解頂けるよう、お願いします。
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