モンスターだらけのARKを生き延びろ   作:あるこばれの

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 2週間ぶりの投稿となってしまいました。お待たせしてしまい申し訳ありません。先週はリアルの都合で作業時間を確保できなかったのですが、来週は時間に余裕があるのでまたどんどん投稿していこうと思います。

 さて、前回でエングラムを習得した裕太君ですが、今回はどんな出会いが待っているのでしょうか?それでは本編スタート!


Version3.2:陽昇る水景の楽園

 朝日が海面を照らす頃、俺は目を覚ました。見た所家が襲われたような形跡はなく、俺は無事に夜を明かせたらしい。その事実に俺はほっと胸を撫で下ろした。

 

「痛い」

 

生き長らえた安堵感からか、急に手に痛みが込み上げてきた。俺は酷く荒れた両手に目をやった。昨日は達成感と疲労であまり意識はしなかったが、俺の手は木を殴り続けた影響で、手の甲全体が擦り剥け、見るからに痛々しく出血している。おまけに、斧やピッケルを全力で握りしめて作業をしていたせいで腱鞘炎にもなっている。今日は家を拡張してもう少し居住性を改善しようかと思ったが、これでは今日の作業は出来そうにない。こういう時は下手に動かず安静にしていよう。

 

 

 

 

 

 俺は外に出て朝の景色を一望した。ああ、なんて美しいのだろうか。まだ仄かな暗さを残した空には薄く切れた雲が浮かび、その合間から日が顔を出している。淡いオレンジ色の光が海面を照らし、水面はダイヤモンドの様に粒子が煌めいて見える。少しの空の暗さと輝く水面のコントラストがどこか温かく、そして厳かな雰囲気を醸し出している。この島に巨大昆虫や肉食恐竜がいるという事が嘘のように思える程穏やかなな光景だった。何だか心が洗われた気分だ。自然に触れるセラピーなんかが流行る理由が分かった気がする。この島に来てから理解が及ばない出来事ばかりで疲れていたが、これを見てほんの少しだけ生きる希望を抱けた。絶対にこの島から脱出してみせる。そして、また家族や友人たちと再会して平穏な日常を取り戻すんだ。俺はそう自分に言い聞かせ、決意を新たにした。

 

 

 

 

 

 俺の心境の変化と呼応する様にして、これまで穏やかに佇んでいた水面は動き出したのだった。恐らく、数十メートルほど先だろうか、今のいままで静謐を保っていた海面は突如として、何か大きな物体が通ったように不自然な波面を描いた。俺がそれに身構えた束の間、そいつは顔を出した。それはどこか間の抜けた顔をした、ネス湖の「ネッシー」の様な二匹の生き物だった。首は俺が子供の頃に図鑑やアニメ映画で見た首長竜よりは短い気がするが、全身に占める割合を考えたら十分に長いと言える。背中はヒレ状になっており、そこから尻尾の上部にかけてオレンジ色に黒い筋が混じった模様が特徴的だ。日向ぼっこでもしたいのだろうか。あいつらはただ水にプカプカと浮かび、その長い首を上に向け牛の様な鳴き声を上げながら優雅なひと時を過ごしている。あいつらからは、この前の青い恐竜の様な獰猛な感じはしない。目を細めてのんびりとするその様は俺がこの島で見てきた生物とは違い、幾分か癒されると感じた。牧場の牛や羊に似た雰囲気を感じ取った俺は、あいつらはきっと草食動物なんだろうなとつい思ってしまった。俺はこの島は化け物共が集う魔窟の様な場所だと決めつけていた。だが、それはどうも違っていたらしい。ここは危険と神秘そして大きな不思議が渦巻く、生命の溢れる奇跡の島なのかも知れない。目の前のオカルティズムの象徴の様な存在を見た俺はそう信じざるを得なかった。俺はこの朝焼けとネッシーの組み合わせという神秘に満ちた光景に只々見入っていた。

 

 

 

 

 

 あのキャプテン・クックですらも体験できなかったであろう神秘を目の当たりにして浮かれていた俺は、ある種トラウマとも言える音を聞き一気に現実に引き戻された。背後から大きな虫の羽音が聞こえたのだ。あの最初に死んだ夜の記憶がフラッシュバックする。大量の冷や汗が額から全身に向かって駆け巡っているのが分かる。俺は振り返らずにすぐに全力でダッシュし、その場を離れようとした。しかし、その逃避行は一瞬で終わりを告げた。足元の石に躓き、転んでしまったのだ。俺は普段からゲームばかりして運動不足だった過去の自分を心の底から恨んだ。やはり自然においては人間など取るに足らない存在なのだと思い知らされる。俺はこれから訪れるであろう辛苦に覚悟を決め、思い切り目を閉じた。だが、待てど暮らせど身体がしびれる感覚も、肉を食い千切られる感覚も襲ってこない。俺は恐る恐る重たい目を開けた。俺の眼前にいたのは、腹部に大きな緑色の袋の様な器官をぶら下げた可愛気のあるミツバチみたいな虫だった。ミツバチと言ってもかなりの大きさがある。大体2、30 [cm]はありそうだ。そんな虫がフヨフヨと空中を漂いながら俺に向かって近づいて来る。「万事休すか」そう思った瞬間には、虫は俺の眼前にまで迫っていた。そして、そいつは腹部にある袋の様な器官を破裂させ、マスカットジュースを思わせる緑色の液体を俺にかけてきたのだ。俺は何かの毒かと思い焦ったが、それは杞憂に終わった。さっきまであった手の痛みがなくなっている。それに気が付いた俺は自身の両手を眺めてみた。するとそこには、傷だらけだったのが嘘のように、綺麗なまっさらな手が映っていた。それに、腱鞘炎も治っており、不自由なく動かせるようにもなっていた。

 

 

 「お前、俺を治してくれたのか?」

 

 

 俺は無意識にその虫に問いかけていた。当然返答などは返って来ることはなく、ミツバチはフヨフヨとどこかへ飛び去ってしまった。どうやらこの島には人間にとって脅威となる生物だけではなく、役に立つ生物も生息しているようだ。俺はあの虫が飛び去って行った方向に頭を下げ、感謝の気持ちを示したのだった。

 

 

 

 

 

 

 手の怪我が完治した俺は、早速当初考えていた家の増築作業を開始した。流石に現在の一マス小屋では手狭だし、多少は物が置けるスペースも確保したい。俺は昨日作ったつるはしと斧を握り、木こり作業に勤しんでいた。やはり木を倒すのには体力を使うが、昨日よりは手際が良くなっている気がする。ある程度ではあるが、木のどこに斧を入れれば力が伝わりやすいか、どれぐらい力を込めれば良いかといった事に対してコツを掴めてきた。俺はその調子で三本の木を伐採し、藁の建材を作成した。こちらはあの「イメージ」が浮かんでから、なぜか手が動き、信じられない程の速さで建材を作れてしまう。藁を敷き詰める作業も、木をカットして草で結んでフレームを製作する事も経験が無いのにもかかわらずだ。その時の俺はまるで自分が自分でないような言葉で表すのが難しい妙な感覚に陥る。自己の境界線を失いそうで少なからず恐ろしい感じはするが、現状においてはとても役に立っているので、深く考えずに受け入れる様にしよう。ともあれ、俺は昨日よりも短時間の内に土台と壁、天井を完成させた。そして、俺は今ある家の建材どうしを括り付けていたひもを解き、壁を二枚取り外した。それから、俺は新しい土台や壁を既存の土台に植物からできた繊維を使って括り付けた。この繊維のひもがかなり頑丈で、四本ほど括り付ければ、建材どうしをしっかりと固定できる。正直こんな頑丈な植物は初めて見たが、無人島生活においてはありがたい事この上ない。それに、俺はアウトドアな趣味があったわけではないから、解けにくいひもの結び方なんて全く知らなかったが、あの「イメージ」のお陰なのか自然にそれが出来てしまう。拡張された家は土台が2×3マスに、壁が一段分、最後に天上で蓋をするといった形だ。はっきり言って「豆腐建築」から進歩はしていないが、俺一人の仮住まいならこれぐらいの規模で十分間に合うだろう。それから、俺は完成した家の中で少しの間休憩を取った。

 

 

 「ブオー」

 

 ニ十分ほど休憩を取り、リフレッシュ出来たなと感じ始めた頃、家の外から低い動物の鳴き声が聴こえた。俺は身構えた。今度はどんな猛獣だ?確認をしたいが、経験上無闇に接敵するのは余りよろしくないだろう。だが、気にならないと言えば嘘になる。それに、もし家が襲われたらと考えると、どうしても不安になってしまう。無益だと分かっていても、懸念材料がすぐそばにあれば確認をしたいと考えてしまうのは人間の性だろう。しばらく逡巡した後、俺は覚悟を決め家のドアを数センチだけ開けた。恐る恐る外の様子を見渡す。そこに広がっていたのは想像と違い、何とものどかな光景だった。

 

 

 

 

 

 一番最初に目についたその生物は、後頭部の鶏冠と鋭利な棘が特徴的な草食恐竜だった。昔生物好きの友達が話していたパラ…何とかとか言う恐竜にそっくりだ。体色は灰色を基調としていて、背中には黒い縦のラインが点在している。全身を覆う鱗がいかにも爬虫類然としている。体長は8 [m]ほどで、背丈も3 [m]ほどはあるだろう。ゾウと同じくらいのサイズの動物を間近で見ているので、かなり迫力がある。それに、尻尾から延びる三対の大きめの棘がかなり厳つい印象を与える。しかし、そんな見た目とは裏腹に五匹で群れているあいつらは和やかな雰囲気で草を啄んでおり、かなり平和的な生物に見える。群れの中には他の個体よりも二回りほど小さい子供と思われる個体もいる。群れの中の一匹の個体が草を食べながら時折、頭を上げて嘶いている。それに反応するように他の個体も鳴き声を上げている。一番小さな個体は他の大きな個体からワンテンポ遅れて反応した。やはり、あの個体は子供で間違いないな。群れの中で会話でもしているのだろうか?目の前で繰り広げられる微笑ましい光景に、俺の動悸は一気に収束していった。何はともあれ、一先ずは安心だ。あの感じならこちらから手を出さない限りは俺自身や家が襲われることはないだろう。もう一度あいつらの方を見ると、あの草食恐竜と一緒になって草を食べている動物がもう一種類いた。そいつは、ダチョウの様なフォルムではあるが、それより遥かにずんぐりとしている。全身を覆う茶色の羽毛に混じるように前肢と尻に生える青い羽毛が目を引く。体長は7 [m]ほどあり、あの草食恐竜程ではないがかなり大きい。だが、丸々とした全身と、後頭部から生えるニワトリの様な鶏冠、そしてアヒルのような嘴が何とも可愛らしく、大型の動物ながら愛玩動物の様な愛嬌を感じさせる。先程の草食恐竜の子供が後ろからあのダチョウの様な鳥を小突いた。とは言っても、本気で追い出そうとしている訳ではないようで、顔を擦り付け、じゃれつきたい様に思えた。何とも可愛らしいな。そう思っていると、突然鳥が、「グァー」と驚いたような声を上げ、なんとその場で卵を産んでしまったのだ。しかも、その卵は金色に輝いている。草食恐竜の子供もそれに釣られてアワアワとした態度になって、大人の元に駆け寄っていった。目の前のコントの様な光景と凄まじい情報量に対して、俺は思わず吹き出してしまった。それから俺はしばらくの間笑いを抑えられなかった。人生で一番笑ったかもしれない。本当に笑い過ぎるとお腹が痛くなるんだな。

 

 

 

 

 

 この島に来てから肉食の生物と多く遭遇してきたせいで、考えが及ばなかったが、当然こういった温厚な種も存在するのだろう。確かにこの島は俺たち人間にとっては過酷な場所なのは間違いないが、動物たちにとっては今はもう地球上にほとんど残っていない自然が織りなす楽園なのかも知れない。本当にこの島に来てから学んでばかりだな。

 

 

 

 

 この時の俺はまだ知らなかった。この島の本当の恐ろしさを。それが俺のすぐ傍にまで迫っている事を。




 今回登場したモンスターおよび環境生物は、エピオス、回復ミツムシ、アプトノス、ガーグァです。
 
 エピオスは見たことも聞いたこともないという方がいらっしゃるかもしれないので軽く解説。
エピオスはMH3及び3Gにのみ登場した草食種のモンスターです。見た目に関しては小説内で書いた通りなのですが、完全水棲という都合上、水中戦のある2作でしか登場しないため知名度が低いモンスターです。いつかまたゲーム本編に出てきて欲しいですね!

 さて、小説の方は何やら不安な気配がしていますが、裕太君の運命はどうなるのでしょうか?!次回もお楽しみにお待ちください!
 
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