機動戦艦ナデシコ -Shoot it in the steel-   作:古鉄の夜

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第二話 なにはともあれ『自己紹介』

「ふう……」

 

 アルトアイゼンをナデシコの格納庫に入れたユキヤ。機体を所定のハンガーに固定。コックピットハッチを開放するとそこから抜け出した。

 

「おおおっ!? キタキタキタァッ! エステバリスのカスタムタイプ、陸戦の重装型っ! 腰の刀以外、全武装固定式とはなんっとも男らしい機体じゃあないかっ! 技術屋としてこーいう馬鹿げた機体は一度、触ってみたかったんだよ! ナデシコに乗って良かったああああっ!!」

 

 眼鏡をかけ、整備班を示す青い制服を着た男がアルトの傍に駆け寄ってくるなり大声を張り上げた。恐らくこのナデシコの整備クルーの一人なのだろう。ユキヤはひとまずアルトを預ける為に声を掛けた。

 

「あのー、ナデシコの整備の人、でいいんですよね? 俺はミナヅキ・ユキヤ。アルトアイゼンの整備と補給をお願い出来ますか。特に装甲板の張り替えと弾薬の補充は最優先で頼みます。また、敵が仕掛けてこないとも限りませんから。こちらが整備マニュアルです」

「ん? おお、わかったぜ。っと、自己紹介がまだだったな。俺はウリバタケ・セイヤ。このナデシコで整備班班長を務めている。お前のアルトアイゼンってーのはキッチリ整備しといてやるよ」

 

 ユキヤが手渡したマニュアルに早速、目を通しながらウリバタケは周囲の整備クルーに声を掛けるとアルトの整備に取り掛かってくれた。

 良かった。大事な機体を預けるのだから整備クルーがどんな人なのか不安があったのだが、ここのスタッフとならなんとかやっていけそうな気がする。そんな事を考えていたユキヤの元にプロスペクターが小走りでやってきた。

 

「おお、ユキヤ君! 初出撃でありながらあれだけの働き。本当にお疲れ様でした。すぐに自室に案内して疲れを取ってくださいと言いたい所なのですが……その前にブリッジスタッフに顔合わせをお願いできませんか? 皆さん、ユキヤ君と話をしてみたいとおっしゃっていまして……」

「プロスペクターさん? ええ、構いませんよ。俺も乗艦したばかりですから皆さんにちゃんと挨拶をしておきたいですし。あ、でも、俺パイロットスーツのままなんですけど……」

「まぁ、挨拶だけですし、そのままで構いませんよ。ブリッジまでご案内しましょう。私の後についてきてください」

 

 ヘルメットを小脇に抱えたユキヤはそのまま、プロスペクターの後に付いていく。自分の荷物等は、トレーラーにまだ積まれたままなので服がコレしかないのだ。まぁ、サセボでの戦闘が終結した以上、トレーラーももうじき基地に到着するだろうが。

 ん? なんか調子の外れた歌声が聞こえる。ユキヤは歩きながらそちらに目をやると、ゴートに何やら注意を受けている私服を着た民間人らしき青年、コックだというテンカワ・アキト青年の姿があった。

 その様子をコンテナに寄りかかりながら見ている赤い制服を着た男が一人いた。理由は不明だが松葉杖をついたこの男――ヤマダ・ジロウが歌声の主だろう。胸元から『熱血ロボゲキガンガー3』の人形が覗いている。……どうやらアレがアキトに返せと怒鳴っていた人形らしい。

 どうも民間人であるアキトが軍用兵器であるエステバリスを無断使用した事が問題となっており、ゴートがその件について注意を促しているようだ。しかし、ヤマダのあの歌は嫌がらせにしかなっていないのだが……案の定、ゴートから怒鳴り声が上がった。

 

「うるさいぞ!」

「なーんでお咎めなしなんです! あの坊主共々、人の見せ場奪いやがって!」

「勝手に骨を折ったくせに」

「う……だっ、大体、こいつ馴れ馴れしいんですよ! 艦長の事も呼び捨てだし!」

 

 ……どうも骨を折って出撃不能になっていたらしい。それで見せ場もなにもあったものではないと思うのだが。ゴートもそれ以上、ヤマダに取り合わず、アキトにとりあえず臨時パイロットとして待機してほしいと告げると去っていった。残されたアキトは何やら思い詰めた表情をしていた。

 

「俺はコックなんす……コックがやりたいだけなんす」

「あの、テンカワさん、でいいんですよね?」

「へ? ああ、そうだけど。って、その声! 君がユキヤ君かい!?」

「はい、そうです。元気そうで良かったです」

「さっきは助けてくれて本当にありがとう! ユキヤ君が来てくれなかったら俺、どうなっていた事か……」

「いえ、当然の事をしただけですから」

「ふむ、テンカワさん。私はこれからブリッジの皆さんにユキヤ君を紹介しに行こうと思っていた所なのですが、良ければテンカワさんもご一緒に自己紹介をされてみては如何ですかな? 貴方もまだ、ナデシコに乗られたばかりでしょう」

「え? は、はい。……そうっすね、俺も行かせてもらいます」

「では、ご案内します。こちらです」

 

 プロスペクターもアキトの様子に思う所があったのか、そんな提案を持ちかけた。そして、アキトの了解を取ると、先導するようにゆっくりとブリッジに向かって歩き始めた。

 ユキヤと気がそぞろになっているアキトはその後を追いかけていった。道中、ユキヤは気になった事をアキトに尋ねてみた。

 

「その、テンカワさんはコックさんが本職なんですよね?」

「う、うん。といってもコックとしてもまだ半人前なんだけどね」

「そうなんですか。では、その手のコネクターはなぜ?」

「ああ、これは……俺、火星のユートピアコロニー出身でさ。火星じゃコネクター付けてんのは珍しくもなかったから、俺もなんかの役に立つかと思って、さ。でも……地球じゃこれ付けてんのパイロット位なんだよな。だからパイロットの癖になんでコックなんかやってんだって、前働いてた食堂でもよく言われたよ」

「……すみません。嫌な事を聞いてしまいましたね」

「ううん、気にしないで、ユキヤ君。気になっちゃうのは仕方ないよ」

 

 弱った様にたはは……と笑うアキトの様子にIFSコネクターを付けてた事で地球で散々、嫌みを言われてきたであろう事が窺えた。ユキヤは少し、考えるとアキトにもう一度顔を向けた。

 

「もし……」

「ん? なんだい、ユキヤ君」

「もし、テンカワさんがこれは自分の望む所ではない、と思うのであれば、パイロットの話はしっかりと断るべきです」

「え……で、でも今、大変な時なんじゃ? もう一人のパイロットも骨折してるし……」

「テンカワさん。パイロットになるという事は、一般のクルーよりも当然、危険が大きくなります。戦闘の結果、命を落としても文句が言えない戦闘単位となる事を了解したと見做されるんです。ナデシコのパイロットが少ないのはナデシコの都合でしかありません。テンカワさんが本当にしたい事はコックになる事なんでしょう? 人間の人生は一度きりです。なら、自分が一番やりたい事、好きな事をして生きなきゃ損しますよ?」

「ユキヤ君……君はどうしてパイロットに? そんな危険な仕事なのに」

「俺は、もう自分で選びました。この道でやっていくって。覚悟もあります。だからといって簡単に命を捨てるつもりなんてありませんが……それにこの仕事にやりがいも感じているんです。他人からは救いがたい奴だ、と思われてしまうかもしれませんけど」

「そんな事ない! 少なくとも今、俺の命はユキヤ君が頑張ってくれたからあるんだ! それを救いがたい奴だなんて俺は思わないっ!」

 

 ユキヤの言葉を大声で否定するアキト。その姿にユキヤは少し目を丸くした。ある意味、好んで自分の命を危険に晒しているのだから変わり者扱いされるかもと思っていたユキヤにとって、アキトが必死に抗弁してくれたのは意外だった……だが、ありがたくもあった。

 

「ありがとうございます。俺もせめて、目の前にある命は守りたい。それだけの力はあるはずだと思いたいので……そう言ってもらえると少し、気が楽になります。」

「ユキヤ君、きみって子は……」

「テンカワさん、ユキヤ君。お話の途中ですが、ブリッジに着きましたよ」

「「ハ、ハイッ!?」」

 

 後ろで二人の会話を静かに聞いていたプロスペクターはブリッジ前で足を止めた。会話に夢中になっていたアキトとユキヤは吃驚しながら同じく足を止めた。

 プロスペクターは二人の様子を確認してからブリッジの扉を開いた。

 

 

 

 

 

「皆さん、お待たせしました。先程、見事な活躍ぶりでナデシコの初陣を飾ってくれたユキヤ君、そしてコックのテンカワさんです。二人ともナデシコにはまだ乗艦されたばかりなので一緒に自己紹介をと思いまして連れてきました」

「ああーーっ! アキト! わざわざ、私の為にブリッジまで会いに来てくれたのね! もう、ユリカ感激ぃ!!」

「げっ!! そういや、ブリッジにはコイツがいたんだっ! は、早まったか!?」

 

 どうも臨時パイロットの事とユキヤとの会話で夢中になり過ぎていてブリッジに行けば艦長であるユリカがいるのが頭からすっぽ抜けていたらしい。

 しかし、このままでは話が全く進まないと判断したプロスペクターがユリカを宥めようと両手を上げて抑えて抑えてのポーズで前に出た。

 

「まぁ、まぁ、艦長。テンカワさんとの積もるお話はまた今度の機会という事で宜しいではないですか。今は、お二人の自己紹介を皆さんにさせて頂きたいのです。では、ユキヤ君。まずは貴方からお願いします」

「パイロットスーツ姿のままで失礼します。ミナヅキ・ユキヤといいます。あのエステバリスの改造機、アルトアイゼンのテストパイロットとしてこのナデシコに乗艦する事になりました。皆さん、これから宜しくお願いします」

「しつもーん。どうしてパイロットスーツのままなのぉ?」

「トレーラーから直接ここまで来たので着替えがないんです……」

 

 ユキヤに手を上げて質問してきたのは伸ばした茶髪のセクシーな女性だ。唇には紅いルージュが引かれている。制服の胸元は開いており、スカートには大胆にスリットが入っていた。……正直、目に毒な恰好だ。

 ユキヤは努めて意識しないようにしていたが、アキトは顔を真っ赤にしており、いけないと思いつつ女性を凝視してしまっていた。

 そんなアキトの様子を敏感に感じとり、ムッとしているユリカ。そして、ユリカの隣りで溜め息をついている副長と思しき青年がいた。……失礼ながらユキヤはなんか陰薄そう、と思ってしまっていた。

 ふと、プロスペクターが腕時計型の通信ツールであるコミュニケーター、通称コミュニケに目を落とした。キャッチボタンを押したプロスペクターの目の前の空間に、小さな画面が浮かび上がる。

 コミュニケ。軍や研究所でよく使われる通信システム。ナデシコのコミュニケは最新型で、通信者の声量、感情などにより画面が拡大変形するシステムになっている。

 ユキヤ達の邪魔にならないように画面を小さくしながらプロスペクターは誰かとやりとりをしていた。

 

「そうなんだ。でもユキヤ君、良く似合っているわよ、そのパイロットスーツ。それで艦長と知り合いだっていうそっちのコックの子……アキト君って言ったっけ?」

「は、はい。コックとしてナデシコに乗る事になりました。テンカワ・アキトです。よ、よろしく……」

「じゃあ、次は私ね。操舵手のハルカ・ミナトよん♪ ナデシコに来るまでは社長秘書やってたんだ。二人共、よろしくね」

「はい」

「ど、どうも……」

 

 短く返答するユキヤとどもりながら答えるアキト。何処となく対照的な二人だ。その会話の切れ目にプロスペクターが小さく手を上げるとユキヤに目を向けた。

 

「あー、自己紹介の途中ですが、ユキヤ君。貴方の荷物を載せたトレーラーがつい先程、基地に到着したそうです。お荷物は降下艇ヒナギクでスタッフが受け取りに向かってくれます。後ほど案内させて頂きますユキヤ君の自室にそれらは置かせてもらいますので……」

「わざわざすみません。プロスペクターさん」

「いえいえ、ナデシコの危機に駆けつけてくださったのですから、これくらいはさせてください。それと私の事はプロス、と呼んで頂いて結構ですよ。長いでしょう?」

「は、はあ、わかりました、プロス……さん」

 

 ユキヤの返答に満足そうに頷いたプロスペクター。引き続きどうぞと皆を促した。続いて一歩前に出てきたのは髪を三つ編みにした女性だ。制服をしっかりと着こなし、首元に黄色のスカーフを巻いていた。顔に残ったそばかすがチャームポイントになっている。

 

「じゃあ、次は私ですね! メグミ・レイナードです。ナデシコでは通信士を担当しています。ここに来る前は声優をやってたんだけど『メグたんとウサたん』とか『魔女っ子プリンセス ナチュラルライチ』とか『歌え! 髭男爵』とか見てるかな。あ、でもユキヤ君もアキトさんも、男の子だから知らないかなぁ」

「うーん、テレビのCMで少し見たくらいで、俺はちょっと知らないですね」

「俺もコックの仕事が忙しくてそっちはあまり……」

 

 困った顔の二人を見てメグミは「あ、やっぱり」とちょっと残念そうな顔になった。ユキヤとアキトはどうしたものか? と二人で思わず顔を見合わせてしまった。そして、遂にナデシコの御大が満を持して名乗りを上げた。

 

「では、次は私の番ですね。機動戦艦ナデシコ艦長のミスマル・ユリカで~~す!! 二度目のブイッ! よろしくね、アキトッ! それにユキヤ君! 困った事があったらじゃんじゃん頼ってくれていいからね。なんたって私はこのナデシコの艦長ですから!」

 

 天真爛漫を体現するかの如きその溌剌っぷり。ユキヤもアキトもいきなりブイサインかます艦長の姿に呆気にとられてしまった。

 とゆーか二度目のブイって……一度やったのか、この人。「……バカ」とルリがそんな艦長を見てボソッと呟いていた。

 そんなユリカの隣りでおずおずと手を上げた青年。先程、溜め息を吐いていた人だ。

 

「僕は副長のアオイ・ジュン。ユリカの補佐が主な仕事かな。宜しく、ユキヤ君……それにテンカワも」

 

 ユキヤにはにこやかな笑顔を向け、アキトにはどこか伺うような目を向けているジュン。それにアキトは戸惑い、ユキヤは胸がざわつくのを感じていた。

 もしや、副長は艦長の事を……だから艦長が意識しているアキトを見ていると心中、穏やかではいられないのではないか? そこまで考えたユキヤだが、これ以上は自分がどうこう出来る事ではない、と思考をシャットアウトした。まだ、13歳の自分にそういう話は早いとも思ったからだが。

 

「では儂も改めて自己紹介をさせてもらおう。フクベ・ジンだ。提督ではあるが、むしろ役職としてはナデシコにおけるオブザーバーといった所かな? 宜しく頼むよミナヅキ君、テンカワ君」

「「はい、宜しくお願いします」」

 

 貫禄ある提督といったフクベにユキヤとアキトは二人同時にそう言っていた。白いあごひげを蓄えた人生の酸いも甘いも嚙み分けたと思える老将。

 その姿は見ているだけでこちらの背筋が伸びてくるような感覚に捕らわれる。二人の様子にミナトはプッと吹き出すと「さっきから二人ともなんだか兄弟みたいねぇ」と呟いた。

 そして自分の隣りでそんなユキヤとアキトの二人を何処か不思議そうな顔で見ていた銀髪の少女の背に手をやり、優しく押した。

 

「さぁ、次は貴女の番よ、ルリちゃん」

「は、はい……ホシノ・ルリ。オペレーターです。よろしく」

「よろしく、ルリちゃん」

「……ああ、よろしく」

 

 戸惑いながらも言葉少なく自己紹介をしてくれるルリにアキトは微笑ましいものを感じ笑顔を返した。対してユキヤはこの少女の境遇がどのようなものだったのか、気になってしまい、慎重に挨拶を返していた。

 

「そうだ、ユキヤ君。貴方って今、幾つなの?」

「へっ? ああ、13歳ですけど、それがどうかしましたか、ミナトさん?」

「それじゃ、この子と二つ違いね。良かったじゃない、歳の近い子が来てくれて。きっと良いお友達になれるわよ、ルリちゃん」

「別にそんな事ないと思いますけど……」

 

 ミナトの言葉に目を横にずらしながら困った顔をしているルリ。それを見たユキヤは出方を見た方が良いか、などと思っていた自分自身に馬鹿な事を考えていたと反省した。

 まだ、人に慣れておらず、どうやって他者と距離を測っていけばいいのか、分かっていないだけなのだろう、この少女は。それは今の反応を見ていれば明らかだ。

 かつての自分もそうだった。マリオンが自分に教えてくれた事ではないか。まず、相手に自分を信じてほしいのならば、自分が相手を信じていると伝えなければならないはずだ。

 

「その、ホシノ……と呼ばせてもらっていいか?」

「え? ハイ、構いませんが、何ですか? ミナヅキさん」

「さっきの戦闘、テンカワさんのエステバリスの位置や、敵機の分布、ナデシコの主砲の射程範囲といった、こちらが欲しい情報を的確に転送してくれて助かったよ、お陰でほとんど戸惑わずに作戦を遂行する事ができた。ありがとう」

「……いえ、仕事ですし。気にしないでください」

「いや、俺達、現場のパイロットにとってオペレーターが寄越してくれる情報というのは文字通り生命線になる。優秀なオペレーターがいてくれるのは本当にありがたいんだ……頼りにしているぞ、ホシノ」

 

 まだ、知り合って間もない自分にはこの少女がオペレーターとして充分に信頼できる力量を持っている事くらいしか確かな事が分からない。

 ここから先は言葉を尽くして分かり合っていくしかないだろう。目を見開き、自分を見てくるその金色とも、琥珀色ともとれるその瞳。ユキヤは、それを静かに見つめ返した。

 

 

 ――驚き、ました。まさか、自分が当然だと、その為にナデシコに乗ったはずの仕事に対して、そこまで感謝してくれるミナヅキさんが。……おべっかやお世辞といった嫌な感じはしません。ただ、自分が思った事を、相手への信頼をそのまま口にしている。

 そんな感じ。私を見つめてくるその静かな瞳。テンカワさんの優しい瞳とはまた違った印象です。……誠実さ、というんでしょうか? 上手く言えません。なんでしょう、胸が熱い気がします。さっきまで体調に変化は見られなかったのに。

 私がナデシコに乗ったのはただ、なんとなくでした。研究所から出てどこかに行きたかったというのが大半の理由かもしれません。でも、ナデシコに行ったからってそれが劇的に変わるとは思っていませんでした。

 どこへ行こうと自分はただ、大人達が求めた仕事をこなして、結果を出すだけ。それでいいと私も思っていたのに。なんてことないはずの仕事を他人に認めてもらえるのが、こんなに、嬉しい、なんて……

 

「良かったわねぇ、ルリちゃん。ユキヤ君、貴女の事、頼りにしてくれるって。お姉さんの目に狂いはなかったわね。二人とも良いお友達になれるわよ、絶対」

 

 ミナトさんが、そう言って私の頭を優しく撫でてくれてます。なんか顔まで熱くなってきて、思わず目を伏せてしまいました。

 私達を見つめてくる皆さんの優しい目がちょっと、恨めしいです……

 

「さて、自己紹介も穏やかに済んだ事ですし、ユキヤ君もテンカワさんもそろそろ自室にご案内しましょう。二人とももうお疲れでしょう? ゆっくり身体を休めてくださ――」

「ちょっとッ!! 私の事をスルーするんじゃないわよッ!? このムネタケ・サダアキを!!」

「いやー、しかし、わたくし共ネルガルとしてお招きしたのは本来、フクベ提督だけであって貴方方をお呼びした覚えはありませんので……」

「私はお呼びじゃないって言いたいワケッ! キイイィッ!」

「ハイハイ、では皆さん。これにてお開きと致しましょう。ユキヤ君とテンカワさんは私についてきてください。自室にご案内しましょう」

 

 場の空気を激しく壊す副提督のヒステリックな叫びに、プロスさんは手を叩きながら、少し強引に締めにかかりました。皆さんも関わると面倒くさい事になるとすぐに察したのかめいめい、自分の持ち場に戻って行きました。

 ……私もオペレーター席に戻りながらプロスさんについてブリッジを後にしようとするテンカワさんと、そしてミナヅキさんの後ろ姿を目で追いました。まだ、少し頬が熱いです。次にミナヅキさんと会った時、どんな顔で会えばいいんでしょうか? でも、もっとミナヅキさんとお話してみたいという気持ちもあります。私、どうしちゃったのかな?

 




話が進まないままで終わってしまった……次話からもう少し状況が動きます。
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