機動戦艦ナデシコ -Shoot it in the steel-   作:古鉄の夜

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鉄機巧アルトアイゼン発売しましたね……


第四話 さあ、楽しく『お喋り』しましょう

「ウリバタケさん、救難信号付けたコンテナに軍人たちを集めておいてもらえますか? 念の為、ゴートさんも彼らの誘導お願いします。俺も手伝いますので」

「ん? どうしてだ。もうアイツらにゃあ、なんにもできねぇだろう?」

「そうだな。どうかしたのか? ユキヤ君」

 

 アルトアイゼンを格納庫のハンガーに固定し、コックピットから降りてきたユキヤはウリバタケとゴートのコミュニケに通信を入れた。拘束した軍人たちの処遇で気掛かりな事があったからだ。

 

「いくら、拘束したといっても訓練された軍人です。あまり長くナデシコに置いておくと良からぬ事態を招くかもしれません……艦のクルーに被害が出たりしたら目も当てられない。早めにナデシコから退去してもらった方が良いと思います。救難信号つけておけば、連合の艦が見つけてくれるでしょう」

「確かに。不確定要素になりそうな方々にはナデシコに長時間、いてほしくはありませんなぁ……手間をかけて申し訳ありませんが、皆さん、お願いできますかな?」

「了解だ、ミスター」

「はい」

「あいよ。んじゃあ、あんたら。すぐ、コンテナに移ってもらうぜー」

 

 話を横で聞いていたプロスペクターの許可も得られた。こうして、軍人達は救助用バルーンを付けたコンテナに詰められて大海原に放流される事となった。

 

「覚えてらっしゃい! あんた達! 連合宇宙軍を敵に回してタダで済むと思ってんの!? アタシは地球連合宇宙軍少将ムネタケ・サダアキなのよぉ!」

 

 ムネタケがそんな捨て台詞を吐いていたが。民間人に一方的に銃を突き付けて、強引に要求を吞ませようとしておいて何を言っているのか。ムネタケの叫びは誰の耳にも届きはしなかった。

 

 

 

 

 

「ふー、これで一段落……」

「そうですね、お疲れ様です。ミナヅキさん」

「わっ! ホ、ホシノっ!? いつの間にこっちに来たんだ!?」

「ついさっきです。あ、ナデシコの制御は心配ありません。オモイカネが見てくれてますので。それよりも食堂行かなくていいんですか? お腹、そろそろ限界なんじゃないですか?」

「そ、そういえば……ああ〜、自覚したら余計に腹減ってきた。目が回りそうだ……」

 

 ――ミナヅキさん、お腹を右手で押さえてガックリと項垂れてしまいました。やっぱり、卵スープ一杯じゃ満足できないよね。

 

「じゃ、食堂まで行きましょう。そろそろお昼ですし、私もなんか食べてみようと思います。正直、自販機で買って食べるハンバーガーと栄養剤で必要充分な栄養は取れますけど……」

「いや、流石にそれだけじゃ味気無さすぎるし、逆に身体の成長に悪いと思うが……ま、まぁ、ここでとやかく言うより直接、調理されたモノ食べた方が分かりやすいか。百聞は一見にしかずって言葉もあるし。それじゃ、一緒に食堂に行こう」

「ハイ」

 

 そうして私達は並んで食堂に向かう事にしました。ミナヅキさんは何を頼むつもりなのかな?

 

「おや? さっき、艦長にテンカワと一緒に連れられてったボーヤじゃないか。ルリ坊と一緒にどうしたんだい? ……ああ、いよいよお腹が空いてきたんだね。いいよ、なんでも作ってやるから言ってみな」

「改めて初めまして、ミナヅキ・ユキヤといいます。先程はお騒がせしてしまってすみませんでした。ええと、ホウメイさん。で、よろしいですよね?」

「そうだよ。このナデシコ食堂を預かる料理長のリュウ・ホウメイだ。よろしくな、ミナヅキ。

 さて、何にする? さっきの様子だともうお腹ペコペコなんだろう?」

「はい。それじゃぁ、まずは……カツ丼大盛り。それとサラダも大盛りで。後、味噌汁の代わりにラーメンもください」

 

 思わずミナヅキさんを見上げてしまいました。随分と食べるんですね、そんなにお腹空いてたのかな。ラーメンが味噌汁代わりなんて。ラーメンは副菜じゃなくて主菜のはずなんだけどな。ホウメイさんもチョット驚いてます。でもみるみる笑顔になると大笑いし始めてしまいました。

 

「ハッハッハッハッ!! そんなに食べるのかい!? 分かった。すぐ用意してあげるよ。で、ルリ坊はどうするんだい? ここに来たって事は何か注文していくんだろう?」

「そうだな、ホシノは何にする……って、どうした? 不思議そうな顔して。なんかあったか?」

「あ、いえ、なんでもありません。そうですね……私はチキンライス大盛りでお願いします」

「分かったよ、すーぐに作ってやるから二人とも、仲良く待っていな」

 

 そしてホウメイさんは私達に背を向けると厨房の奥にある冷蔵庫からそれぞれ材料をひょいひょいと取り出し始めました。ホウメイさんは和洋中華ありとあらゆる料理を作れる一流のコックだとプロスさんから聞いています。クルーの士気に直結する食堂を預かるので、この人選となったのでしょうね。

 ホウメイさんはコックのテンカワさん、同じく女性スタッフの皆さんに指示を出してます。その間も決して調理の手は止まっていません。

 女性スタッフの五人の皆さんはホウメイガールズとクルーの間で呼ばれてます。

 リーダー格で髪型をポニーテールにしてるテラサキ・サユリさん。三つ編みにしているのがタナカ・ハルミさん。紺の髪をボブカットにしているミズハラ・ジュンコさん。何故か自分をボクと呼んでるウエムラ・エリさん。五人の中で一番小柄なサトウ・ミカコさん。ちなみに、皆さん例外なく美人です。

 

「それじゃ、言われた通り、席に着いて待ってようか」

「ええ、そうですね」

 

 私達は空いたテーブルへと足を動かした。私はミナヅキさんの向かい合わせの席に座る事にしました。

 

「たくさん注文しましたね。いつもそんなに食べるんですか?」

「ん? まあ、朝昼兼用だしね。それにパイロットとして強い身体作っておく為にも食える時にしっかり食っとかないとな。

 特にアルトはさっきも言った通り加速Gによる負荷がかなりキツいからな。身体が柔なままだと怪我しちまうし」

「……ケガ、しちゃった事あるんですか?」

「アルトに乗り始めたばかりの頃、ブースターの加減が分からなくて急加速、急停止をやった拍子に首を痛めてね。一週間、首ギプス嵌める羽目になっちまったよ。まぁ、俺の操作技術が未熟だったせいなんだが」

「……大丈夫だったんですか。ソレ?」

 

 ミナヅキさん、首をさする仕草をしながら苦笑いしてますけど、それってあんまり笑えません。作戦中に首やら身体やらを痛める事態になったら目も当てられません。

 

「ああ。あれから、すぐにトレーニングを見直してしっかり首周りの筋肉鍛えて怪我予防したし、ブースト操作にも磨きをかけたからな」

「確かに、アルトアイゼンって重たそうであまり速く動けなさそうな見た目なのに時々、すごい勢いですっ飛んでいっちゃう時ありますもんね」

「機体が重いから挙動はノーマルエステよりどうしても落ちる。その分、装甲が厚いから多少の被弾は問題無いんだが……

 機体後方にバーニアスラスターを集中配置してあるから突進速度だけなら亜音速まで持っていける。その代わり、左右後ろに動くのは苦手だな」

「なんか、話聞いてるととっても癖がある機体みたいですね……」

「実際、扱いづらい。俺もアルトにはもう一年乗ってるんだけど、未だに持て余してるし」

「そうなんですか? 充分、実戦に則した動きが出来てると思いますけど。さっきもチューリップの触手を見事に斬ってみせたじゃないですか」

「うーん……アルトの性能に頼りきりなんだよ、今の俺は。機体性能を引き出せているとはお世辞にも言えない……あっ!」

 

 腕を組んで難しい表情しちゃってるミナヅキさん。まぁ、実戦でアルトを運用してるのはミナヅキさんなので、この人が言うならそうなんでしょう。けど、急にハッとした様な顔を私に向けてきました。

 ……? なんでしょう。何か気になるトコあったかな?

 

「悪い、ホシノ。俺、喋りすぎてるかな? 女の子にとってメカの話なんてひょっとして退屈なんじゃ……」

「え、どうしてですか? 聞いてるのは私ですし、そんなコト思いませんよ。それに作戦行動中、正確なオペレーションを行う為にもアルトの性能は私も把握しておきたいですし。

 仕事を円滑に進める為にもしっかり聞かせてください」

「あ、そうか。それもそうだな。でも、俺ばかり話してるのもな……そうだ! 俺からもホシノのオペレーターとしての仕事について聞かせてくれよ。

 確か、ナデシコは自律型超AIのオモイカネコンピューターが搭載されてるんだろ? 実際、コンタクトしてみてどんな感じだった? 上手くやっていけそうだったか?」

「ハイ、オモイカネはいいコですよ。素直でとっても論理的です。ただ、削除したデータを残してしまう変なクセがありますけど……」

「そっか。機会があれば、俺もオモイカネとアクセスしてみたいな。ネルガルの超AIには俺も興味あるし、それに自律型だというなら意識も持っているんだろうから、ちゃんと挨拶しておきたいな」

「ええ、オモイカネもミナヅキさんに興味を持っているみたいですし、良ければ今度、ブリッジに来てください」

 

 その後も私はミナヅキさんと色々話し込んじゃいました。真面目でしっかりとした受け答えをしてくれるので私もとても話しやすいです。

 ……それにミナヅキさんは私を『少女』として見てくれますし。

 

「ユキヤ君、ルリちゃん。楽しく話してる所、ごめんね。ご注文の料理持ってきたよ~」

「ああ、テンカワさん。ありがとうございます」

「二人とも、なんか随分と話し込んでたね? 仕事のことかい?」

「はい、今後のナデシコの航海の為に。私はミナヅキさんのアルトについて、私からはオモイカネについてお互い話してました」

「オモイカネ?」

「ナデシコの中枢コンピュータである自律型超AIの事です。独自の意識を持っていて、ホシノはIFSを介してオモイカネと会話しながらナデシコを操作してるんですよ」

「へぇ〜、ルリちゃん凄いね。こんなにでっかい戦艦を動かしてるなんて! 俺なんてエステの操作だけでてんてこ舞いになっちゃってるのに……」

「私は人間開発センターで長い間、訓練してましたから」

「それにしたって実戦のプレッシャーが掛かってくる中で淀み無く操作してのけるのは大したものだよ。俺だって緒戦は力み過ぎて無駄に被弾しちまったんだぜ」

「……そ、そんなコトないです。テンカワさんもミナヅキさんも頑張ってくれてます。私と比べる必要なんかありません」

 

 二人して私の事を褒めてくれてます。嬉しいけどチョット恥ずかしいです……

 

「ホウメイさん。先程はアキトを、食堂のスタッフを私の勝手で連れ出してしまって本当に申し訳ありませんでした!」

 

 その時、食堂から艦長の謝罪が聞こえてきました。

 そちらに目を向けてみると頭を深く下げている艦長とホウメイさんが向かい合ってます。

 

「ああ。さっき、テンカワから話は聞いたよ。それにプロスさんと提督からも話し合いは解決してるって報告を受けてる。私もしっかり話がついてるってんなら、これ以上とやかく言うつもりはないよ」

「お気遣いありがとうございます。ホウメイさん」

「ん。さて、せっかく昼時に食堂に来たんだし、艦長も何か食べていくかい? ミナヅキとルリ坊はもう、注文してったけど」

「はい、それじゃ私は〜スパゲッティナポリタンをお願いします!」

「はいよ! テンカワ! いつまでも話してないで厨房に戻りな。そろそろお客さんが増えてくる時間帯だよ!」

「は、はーーい!! じゃあ、またね。ユキヤ君、ルリちゃん」

「ハイ、テンカワさんもお仕事頑張ってください」

「引き止めてしまったみたいですみません。テンカワさん、食堂での仕事が終わったら俺のコミュニケに連絡を頼みます。訓練、早速始めましょう」

「分かった。頼むよ、ユキヤ君」

 

 テンカワさんは踵を返すと厨房に戻って行きました。

 途中、艦長がテンカワさんを見て顔を輝かせてましたけど、流石にこれ以上、テンカワさんに迷惑をかけるわけにいかないと思ったのか、顔を潜めると「アキト、仕事頑張って」と小声で応援してました。テンカワさんは少し意外そうな顔をしましたが、艦長に小さく手を振って厨房に戻っていきました。艦長も自重する事にしたみたいです。

 さて、私も頂きましょうか。向かいでミナヅキさんが頂きます! と手を合わせてカツ丼、ラーメン、サラダの攻略にかかってます。私も同じく手を合わせて、頂きますしてからチキンライスをスプーンですくって頬張りました。

 ……美味しいです。食事なんて栄養補給の手段でしかないと軽く見てましたけど、これからは食堂を利用してみるのもアリ、かも。

 

「カツ丼もいいけど、ラーメンも絶品だな! 箸が止まらないよ。今度、単品でもじっくり食ってみようっと」

 

 ごっくんと食べたものを飲み込んだミナヅキさんは笑顔一杯です。ホントに美味しそうに食べるなぁ、この人。きっと、食事が好きなんでしょうね。こっちまで嬉しくなってくるような笑顔してます。

 

「そうですね。私、食事なんてなんでもいいやって思ってましたけど、これからは食堂で食べてみようかな……」

「やっぱり人の手で料理されたものの方が美味しいし、元気が出るよ。仕事のモチベーションにも直結するしさ。そうしなよ」

「ほぇ〜〜、ユキヤ君、いっぱい食べるんだねぇ〜。あっ、隣り座らせてもらうね」

「あ、艦長。ええ、構いません。それで、これからナデシコはどう動いていく予定なんですか?」

「うん、艦体やエステバリスの整備が完了次第、地球大気圏突破を目指すつもりだよ。明朝から作戦開始の予定だから二人とも、備えておいてね」

「ハイ」

「了解です、艦長」

 

 艦長の言葉に一つ頷いて返したミナヅキさんは食事を再開しました。私も手を止めていたチキンライスを食べる事に集中しました。……料理が冷めてしまったら勿体ないです。

 艦長は私とミナヅキさんを見比べながらニコニコと笑顔を浮かべています。

 

「ふふっ、ユキヤ君とルリちゃん、すっかり仲良くなったみたいだね? 良かった~♪」

「そ、そうでしょうか……?」

「うん! ミナトさんの言う通りだったね。それにルリちゃん、ユキヤ君の話してる時、とっても楽しそうだったから」

「……」

「そう……見えますか? 同じ艦で仕事しているんだし、ホシノに信用してもらえたなら俺もありがたいです」

 

 は、恥ずかしいです。対面に座っているミナヅキさんは微笑みながら私を見てくれてます。……もちろん、ミナヅキさんの事は信用してます。口に出す事は出来ませんが。

 残りのチキンライス、早く食べてしまいましょう。それからはお喋りせずに、私達は食事を終えました。艦長が注文してたスパゲッティをサユリさんが運んできたのは丁度、その時でした。

 

「艦長、それじゃ、俺達はお先に失礼します」

「艦長、お先に失礼します」

「うん、二人ともまた後でね〜」

 

 私達はご馳走様と手を合わせて席を立ちました。艦長は小さく手を振ってくれてます。軽く会釈して返して二人で食堂から廊下に出ました。

 

「私はブリッジに戻りますけど、ミナヅキさんはこれからどうするんですか?」

「うん? そうだな、自室でアルトの実戦データを見直しして機体バランスの調整しとかないと。

 それからテンカワさんの訓練メニューも考えないとな。明日もきっとエステの出番はあるだろうから。と、いっても時間が全然足りないから、とにかく戦場で生き残れる動き方を教えていくつもりだ。……ホシノはどうする?」

「私も明日に備えて、ナデシコが連合軍にこれから明朝まで捕捉されない為の航路データの算出。それと大気圏突破に向けた事前のシミュレーションをオモイカネとやっておきます」

「大事な仕事だな。ホシノ、頑張れよ」

「ハイ、ミナヅキさんもお仕事頑張って下さい」

 

 それから私達はブリッジとミナヅキさんの自室がある分岐路でお別れしました。

 今日はミナヅキさんと沢山、お喋りできました。とっても満足です。

 

 ……変ですね。研究所にいた頃の私ならこんな風に他人と話すのになんて拘ったりしなかった。ハイハイと、大人から言われたコト、提示された結果を示し続けるだけで良かった。

 ミナヅキさんが私と歳が近いから? 同年代の人間だからこんなに話が弾むのだろうか? ミナトさんがいってくれた友達という関係はこういうものなのかな?




執筆が遅れに遅れてしまい、申し訳ありません。そしてまだ書いていきます。
次回、ナデシコは地球脱出を目指していきます。そして、あの騒がしい男も……
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