ソードアート・オンライン 黒の少年と紫の少女   作:天パのまっさん

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SAOの二次創作は初めてですが何卒、よろしくお願いいたします。


アインクラッド編
プロローグ


 

 

━━━ご覧下さい!この大行列を!

 

PCモニターの向こう、ネットニュース番組のアナウンサーが行列を前にしてマイクを握っている。

 

━━━今話題沸騰中のVRMMO『ソードアート・オンライン』の発売日を前に、早くも発売予定の店舗前ではコアなゲームファン達の行列が成しておりまして、中には3日も前から休暇を取得して列んでいると話す人も・・・・・・

 

映像には、野武士面にヘッドバンドを巻いた男を筆頭に男たちがゲームソフトを片手に肩を組んで映っている。

 

━━━ネット販売分の初期ロット5000本は数分で完売し・・・・・・

 

 

「お兄ちゃん、私部活行ってくるからね!ゲーム程々にしなよ!」

 

 

数日前のゲーム販売日のアーカイブ映像を伝えるニュース番組の雑音に紛れ、ドアの向こうから少女の声がした。

ゲーミングチェアに腰掛ける黒髪の少年の妹だ。

 

 

誰も居ない部屋の中、雑誌を開いて垂れ流しのニュースを聞いていた少年は、部屋の角に大きく設けられた窓から玄関を見た。

 

玄関からは制服にセーターを着込んだ少年の妹が、肩掛けカバンと筒状のケースを抱えて走り去って行く。

 

それを静かに見送った少年は、チェアーを90度回転させてベットに視線をやった。

そこにあったのはグレーのフルフェイスヘルメットのような機械だ。

 

機械(マシン)の名、それは《ナーヴギア》。

完全なる仮想現実(バーチャルリアリティ)を実現したこのマシンは、世界で初めて仮想空間に五感を接続してのゲームプレイを可能とした。開発、販売した大手電子機器メーカーの謳い文句は『完全(フル)ダイブ』。

 

VRマシンの究極形であり、そして全世界のコアゲーマーが夢見た世界がそこにはあった。

 

だが、蓋を開けてみればマシンのスペックに対して遊べるソフトが追いついていないことが露呈した。

 

数十メートル歩けば壁にあたり、段差に足をかけて壁の向こうを覗けば、プレイヤーに見られるのを想定していなかったのか所謂裏世界とやらが広がっていたりと散々だった。

 

おまけにリリースされるのは作成が簡単な環境系のゲームばかりである。

 

FPSに代表されるオンライン対戦ゲームやMMOなどはフルダイブゲームのサーバーが未発達なことや五感全てを電子上で表現し処理するゲームエンジンの開発遅延などでマシンのリリースからかなりの遅れをとって開発されることとなった。

 

コアなゲーマー達は肩を落とす。

往年のゲーマー達。ファミリーコンピュータの黎明期からゲームに興じ、バカゲーやエロゲー含めてゲーム業界の歴史に名を刻んだ名作達をやり込み尽くしてきた彼らがただ走ったり歩いたりが出来るだけのゲームで満足するはずが無かったのだ。

 

 

だが、そんな状況に光が指す。

 

ナーヴギアの基礎理論を開発した茅場(かやば)晶彦(あきひこ)がゲームデザイナーを務めた新作VRMMOの発売だ。

 

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茅場が発表当初のインタビューでマスコミに語り、後にSAOのゲームソフトのパッケージの裏面に記載された言葉だ。

 

 

幅10キロメートルの大地が100層。都市や村、街に草原、森に渓谷、洞窟に雪山と旧来のゲームの懐かしさを感じられるヨーロッパ風のゲームフィールドを舞台に行われる冒険RPG。

釣りに料理に食事や鍛冶、裁縫、と日常系シュミレーターに片足を突っ込んだのかと言いたくなるほどのやり込み要素豊かな非戦闘系要素に、戦闘面はナーヴギアの自らの体を動かすというゲームシステムを最大限活かすべく魔法や飛び道具の一切は排除され、必殺技であるソードスキルとそれ扱うための無数の種類の武器でモンスターやボスと戦う完全新規タイトルのVRMMOだ。

 

 

数ヶ月前の1000人限定で実施されたベータテストは好評に終わり、そして国内限定販売予定の『ソード()アート()オンライン()』初期1万本のロット、ネット販売分はニュース番組で報じられた通り数分で完売し、残りの店舗販売分もコアなゲームファンの魔の手によって即日完売となった。

 

 

垂れ流しのニュース番組のコメント欄勢いは未だ衰えない。

 

《仕事なけりゃなぁー》

 

《オークションじゃとんでもない額ついたらしいな》

 

《俺も欲しい!》

 

《カウントダウンまだかな?》

 

《くそブラックのせいで買いに行けんかった悲しみ》

 

《ソフトとマシン定価の3倍で誰か譲って》

 

《転売厨乙!》

 

などとたわいのないコメントが続く。

 

フッと鼻で笑い、少年が席を立つ。

時間にはまだ早い。だが、飲み物や間食の準備をしなければ。少年は恐らく寝食を忘れてゲームに没頭するだろう。

 

なんだって今日はこの少年、いや日本中の熱狂的なゲーマー達が待ちに待ち焦がれたVRMMORPG”ソード()アート()オンライン()”の正式サービス開始初日なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、横浜の街の一角にも少年と同じようにゲームのサービス開始を楽しみに待つ少女の姿があった。

 

 

木綿季(ゆうき)君、楽しそうですね」

 

 

「だって先生!フルダイブですよ!フルダイブ!」

 

 

ボク、フルダイブなんて初めてだなー!とマンションの居間に置かれたソファーに座る少女が、アイランド型のキッチンで弁当箱に調理した品々を詰める男に顔を向けて楽しそうに笑っている。

 

「えぇ、嬉しそうで何よりです。私も病院から貰った甲斐がありました」

 

 

先生と少女から呼ばれた男は医者であり、名を倉橋(くらはし)という。この賃貸のマンションの近くにある横浜港北統合病院に勤める第二内科の内科医だ。

 

 

「先生は楽しみじゃないんですか?」

 

 

「いえ、そんなことは無いですよ。私もこの休日当番が終われば」

 

 

休日の当番。病院自体は休診日だが、入院している患者が居る以上は病院での医者の仕事は終わることは無い。

 

だが、給与と待遇は良い。ひとり暮らしで都心駅近のマンションを借りられ、養子縁組を行える程には。

 

倉橋は自分の弁当箱の準備を一通り終えると、自らが左腕に巻いた腕時計に目をやった。

まだ12時手前、木綿季が楽しそうに待つSAOのサービス開始時刻では無い。だが仕事は昼休憩終わりの13時半頃からだ、病院での回診の準備の都合も考えればもうそろそろ家を出てもいいだろう。

 

 

「すいませんが木綿季くん、作り置きですが冷蔵庫に入れておくので夕方にでも食べておいてください。それと━━━」

 

 

冷蔵庫にラップをした料理を入れて、倉橋は木綿季に向き直る。

 

 

「私が居ないからとゲームのやり過ぎは駄目ですからね」

 

 

倉橋の台詞を聞いてか木綿季の背筋がスっと伸びる。アニメなら『ギクッ!』と擬音語が入りそうだ。

 

 

「アハハ、イヤだなー先生、ボクがそんなことするはずないじゃないですかー」

 

 

見透かされた。

先生の居ない夜中も全力で徹夜してでもと思っていた木綿季だが、倉橋先生に見透かされたように釘を打たれてアワアワと言い訳を並べる。

 

 

「それに勉強もしないとですしー」

 

 

「そうですか、なら良いのですが」

 

 

そして「するにしても結構ですが程々にお願いしますね」と倉橋は木綿季にさらに釘を差した

退院してまだ半年だ、病み上がりの人間がゲームで徹夜して身体を壊すなど論外である。ましてや担当医の管理下でなど。

 

倉橋の忠告に木綿季は元気よく「はーい」と答えた。

 

 

「では木綿季君、私は仕事に行くので明日まで留守はよろしくお願いしますね」

 

 

カッターシャツの上にコートを羽織った倉橋はリビングのドアに手をかけて木綿季へと向き直った。

木綿季はニコニコ顔で倉橋を見て返事をした。

 

 

「はーい!倉橋先生!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば木綿季ちゃん、最近どうです?」

 

 

倉橋がナースステーションのカウンターで患者のカルテを片手に看護婦との会話をしていると、不意に話題は木綿季のこととなった。

 

 

「え、木綿季君ですか?」

 

 

「えぇ、今は先生の家に住んでるんですよね?」

 

 

「まぁ、そうですね」

 

 

バインダーに挟んだカルテをカウンターの上に置いて、倉橋は頭を搔いた。

 

 

「最近テレビで話題のナーヴギアってあるじゃないですか」

 

 

「確か先生の所にも病院から貸出ありましたよね」

 

 

「えぇまぁ」

 

 

確かに病院から1台、倉橋にナーヴギアの貸出はあった。

目的はリハビリや各種治療目的でのフルダイブ使用の有効性の確認だ。

論文自体では有効性ありとされ、それを目的としたVR機器の開発も民間と厚生労働省との協力体制で進められているそうだが現状はまだ先行きが不透明な状態だ。

 

だが、もし治療に有効活用できれば患者の治癒率は格段とアップするはずだ。

 

体力を消耗させ、心身の状態や年齢によって死亡率が上昇する全身麻酔の代用。倉橋の分野で言えば、内科医療での痛みや副作用の伴う投薬時のカバー、患者の脳活性化やコミュニケーションに難のある患者との正確なコミュニケーション、そして終末期医療(ターミナルケア)でも。

 

 

使い道は考えうる限りは様々だ。だが、その有効性はまだ机上の空論でしかない。

 

国の正式な使用認可、実用試験に備えて病院側での有効性の確認はすべきだろう。

病院からの指示により各科で担当者を出すことになった。そうして矢面に立ったのが内科では倉橋だったのだ。

 

 

「実は、私はまだ試していなくてですね」

 

 

だが、未だ休みは取れていない。否、取れてはいるのだが仕事の疲れからか家に帰宅すればそのままダウンしてしまう。

木綿季が居なければ洗濯を筆頭に時間の要する家事をこなせていたのかすら怪しい。

 

 

「今日が終われば、明日は休み。それに木綿季君との約束もありますし」

 

 

「木綿季ちゃんと”約束”ですか?」

 

 

実は倉橋はナーヴギアを貸し出し分とは別に自費でもう1台購入していた。

 

 

「木綿季君が私とSAOをプレイしたいと言って聞かなくてですね」

 

 

「まさか、買えたんですか!?」

 

 

「えぇ、新しくマシンとソフトを両方」

 

 

看護婦が驚くのも無理は無い。マシン1台辺りの値段は十数万円、おいそれと買える値段では無い。

そして、SAOのパッケージも簡単に手に入る代物ではなかった。

 

 

「まさか列んで?」

 

 

「いやいやいやとんでもない。私なんかに3日も列べる体力と気力はありませんよ」

 

 

「じゃあ、通販で?」

 

 

「実は、ネット販売分は私が見た時にはもう」

 

 

ナーヴギア自体は電気量販店での購入は可能である。倉橋も仕事帰りに普段生活費以外で下ろすことの無い預貯金から出して購入した。だが、SAOの入手難易度は非常に困難と言えた。

 

販売時刻には通販サイトには数十万のアクセスが殺到し、サイトが落ちるほどだったという。無論、ソフトは販売サイトにアクセスできた猛者達によって数分とせずうちに完売した。

そんな状況で、ましてや倉橋に平日昼の販売時刻にかじりつけるほどの暇はなく、夕方の仕事休憩時に暇をみつけてサイトを覗けば軒並み『完売しました』や『SOLD OUT』の文字が並んでいた。

 

 

「じゃあ転売━━━「いやいやそんなことしませんよ!」」

 

 

看護婦の適当な邪推に、倉橋は言葉を遮って突っ込んだ。

 

 

「キャンペーンであったじゃないですか、SAOのプレゼント企画」

 

 

「あぁー!テレビのバラエティのですか?」

 

 

平日月曜午後7時のゴールデンタイムに放送されるバラエティー番組。関東のキー局が放送した先週の番組内容、それはSAOについての特集企画だった。

 

 

「けれどもあれって倍率相当でしたよね?」

 

 

「視聴者限定5本、応募は数万だったとか」

 

 

「で、当たったんですね?」

 

 

「えぇ、当たりました」

 

 

倉橋の分のソフトはあった。病院から貸し出されたナーヴギアには研究協力先のアーガスから送られたSAOのパッケージが付随していた。

 

だが、木綿季の約束通り2人でゲームをするとなればソフトが足らない。

だが、列んで買える程に倉橋も暇でなければコアゲーマー達の波をかき分けて初期ロットに手に入れられる程に木綿季も回復している訳では無いし、ゲームを買う為に未成年の女の子が3日も並ぶなど大人が許容できるはずがない。

 

ましてや木綿季は来年度からの復学に備えて無理が禁物な状態にある。

 

そんな時に現れたのがSAOプレゼント企画だった。

 

 

「私が仕事で居ない間に、木綿季君が番組を見たらしくて応募を」

 

 

メールでの応募。チャットアプリで番組のチャットルームを開いて応募するタイプのその方法で応募した木綿季は、数万の応募を捌く抽選コンピュータの目に留まり、運良く当選してしまったのだ。

 

 

「で、当たったと」

 

 

目を細めて疑うかのような目で見つめる看護婦。その表情に苦笑いしつつも倉橋は「はい、当たりました」と答えた。

その言葉に看護婦は今度こそ絶句した。

 

 

「私の妹も応募して当たらなかったのに・・・・・・」

 

 

カウンターに肘を着いて頭を垂れる看護婦に、倉橋はまたも苦笑いしつつもナースステーションに置かれた壁掛け時計を見た。

時刻は午後1時手前、SAOの正式サービス開始まであと数分で、今頃はカウントダウンに入っている頃だろう。

 

 

(楽しんでくださいね、木綿季君)

 

 

止めていた手を動かしてボールペンで書類にサインをした倉橋はナースに書類を手渡し、仕事へと戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

倉橋が白衣を纏い仕事に励み、黒髪の少年がナーヴギアを被ってベッドに横になっている頃。

『ソードアート・オンライン』正式サービス開始まであと数分だとカウントダウンが開始されて盛り上がる中で、横浜のマンションに居た少女は自らの寝室にいた。

 

ロフトのベッドと下に置かれた勉強机、漫画本や簡単な小説が詰まった本棚とクローゼット代わりの収納チェスト、そしてゲームモニター代わりの小さなテレビが部屋の角に台に載せられて置かれている。

その上には、転落防止の鉄柵付きの窓があり、マンションの角部屋故にキツい西日が差し込む。

部屋の所々は女の子っぽいキャラグッズやデザインの小物が置かれている、如何にも年頃の女の子部屋と言った感じだ。

 

そして、部屋の主である木綿季はテレビの台の下のゲーム機に挿さっていたLANケーブルを引き抜いて、流線型のフルフェイスヘルメットのようなマシンに接続していく。

 

先生と一緒にダンジョンを回る。勿論レベルは自分が上で、仕事で普段できない先生の代わりに先にSAOに先に潜って教えれるだけの知識と技術を習得しなければ。

 

 

「倉橋先生、喜ぶといいな」

 

 

フッフフと鼻歌を響かせ、時には眉間に皺を寄せて唸りながら説明書を片手に数分の睨み合いだ。

そしてとうとう電源を入れ、ナーヴギアをベットの上で被った木綿季はキャリブレーションなど諸々の設定を終えて、午後1時を待った。

 

 

「初めての、フルダイブ♪」

 

 

ウキウキと待つ少女。

そして、壁掛け時計が午後1時を知らせた時、少女は元気よくマシンの起動コールを叫んだ。

 

 

「リンク、スタート!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ご観覧ありがとうございます。筆者は専門学校生なので書き出し速度は亀以下ですが、頑張ってエタらない様にするつもりですのでよろしくお願いします。あと余裕があれば挿絵を描くかもしれないので是非お楽しみに。

タイトルは仮です。もしこれより良い案が浮かべば変更するかもしれないので悪しからず。
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