ソードアート・オンライン 黒の少年と紫の少女   作:天パのまっさん

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長くなりましたが、SAOの続編です。


第1話 剣の世界の始まり

身体が生成される。

 

青く発光するポリゴンが組み合わさって石畳の広場に生み出されたのは、紫のボブカットに中性的な男顔をしたアバターだった。

 

そのアバターの中身、ユウキは自らの手を開いては握ってと感触を確認する。

現実と同じ程の肌の繊細さは描写されてはいないが、肌と肌の触れ合いや着ている服が肌と擦れる感触は現実のそれと全く同じだ。

 

 

「これが、フルダイブ・・・・・・」

 

 

ボソリと呟いた彼女、その視界に広がるのは目の前には石造りと石畳で構成された中世のヨーロッパをモチーフとした街並みだ。

視界の端には《Yuuki》とローマ字表記で書かれたユーザーネームとHP(ヒットポイント)バーの表記が並び、そしてその向こうには彼女と同じように広場に生み落とされていくアバター達の姿があった。

 

「わぁ~、すごいや!」

 

活気の溢れる街並み、それはまるで祭りの日のような賑わいだった。

中には「帰ってきた、この世界に!」などと呟いて拳を握るプレイヤーも居るほどだ。

 

ユウキも、その熱気に呑まれた人間のうちのひとりだ。

腰にぶら下がる短剣に手を添え、目指すは街の外に広がる広大なフィールドだ。

MMORPGにおいて、強さはレベルによって決まる。

SAO内を明日、倉橋と遊び尽くすと約束しているユウキにとっては彼に教える為に自分のレベルが初期値では話にならない。

ましてや、あまりプレイ出来ない倉橋と遊ぶ為には、率先して自らがこのゲーム内のソードスキルなどのシステムを含めた遊び方が分かっていなければならない。

 

ユウキは人混みを掻き分け、始まりの街の外へと駆け出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「━━━━ぬぉっ!・・・・・・とりゃぁ!」

 

 

気の抜けるような奇妙な掛け声とともに矢鱈滅多らに振り回された剣が空気を斬る。

 

突進攻撃を行う青いイノシシの数十センチ上を横薙ぎに空振っただけで、攻撃は当たりもしない。

よしんば、当たるような位置への攻撃でも狙いが甘く、その大柄な図体に似合わない回避で避けられてしまう。

 

何十回と空振り続け、とうとう突進攻撃を腹に受けて草原に転がっていく男を見て、指南役の少年が笑い声を上げた。

 

 

「ははは・・・・・・、そうじゃないよ。重要なのは初動のモーションだ、クライン」

 

 

「いっててて、こんにゃろうが」

 

 

毒を吐きながら立ち上がった男、少年のパーティメンバーであるクラインは起き上がりと共に情けない声で少年に言葉を投げた。

 

 

「んな事言ったってよ、キリト。アイツあの図体の癖して動きやがるしよ」

 

 

情けないことを言うこの赤髪をバンダナで逆立てた長身痩躯の皮鎧の男、クラインとキリトと呼ばれた指南役の少年が出会ったのはつい数時間前のことである。

 

ゲーム開始後、人混みを抜け裏路地に隠れた武器屋へとキリトが足を運ぼうとして、クラインが声を掛けてきたのである。

いきなりの「ちょいとレクチャーしてくれよ!」の声掛けに、キリトはなし崩れ的に「じゃあ、とりあえず武器屋いく?」などと言ってパーティを組んでしまったのだ。

 

しかし、あいつホントに初心者なんだな。とキリトは心の中で思った。

イノシシの突進で草原を転がったクラインの足元がふらついていた。どうやら少し目を回した様だ。

 

キリトは足元の小石を拾い上げ、肩の上でピタりと構えた。小石が淡いグリーンに輝いた。剣技(ソードスキル)の初期モーションをシステムが検知したのだ。

そして自動的に投擲された小石が、青いイノシシ<フレンジーボア>の眉間に直撃した。

 

眉間の傷跡に赤いヒットエフェクトを残したフレンジーボアは『プギーッ!』と怒りの叫びを上げてキリトにヘイトを向けた。

 

 

「動くのは当たり前だ、訓練用のカカシじゃないんだぞ。でも、ちゃんとモーションを起こしてソードスキルを発動すればあとはシステムが自動で命中させてくれるよ」

 

 

「モーション、モーション・・・・・・」

 

 

呪文のように繰り返し呟くクラインは、右手の海賊刀(カトラス)を振り上げて振りかざした。

 

だが、スキルは発動されない。

 

 

「こう、なんて言ったらいいのかなぁ・・・。ただ振りかざすだけじゃなくて、初動でタメを入れてスキルが立ち上がるのを感じたらこうズバーッ!と打ち込む感じ」

 

 

「ズバーッ!、てよう」

 

 

赤毛の男の整った顔が崩れる。

(大阪のオバチャンじゃねーんだからよ)

 

首を傾げながら、クラインは曲刀を中段に構えた。体力は既にHPバーの半分辺り、攻防もあと1回が限界だろうとキリトが考えた。

 

ふー、と深呼吸をしたクラインが腰を落とし、右肩に担ぐように刀を構えた。

すると、今まで感じなかった何かを感じ、曲刀がオレンジ色に輝いた。今度こそ、システムがソードスキルの初動モーションを検知したのだ。

 

 

「ほらよ!」

 

 

ヘイトを受けてイノシシの攻撃をいなし続けていたキリトが、イノシシをクラインに向けて押しやった。

青いイノシシは目の前に目立つ赤い男が見えてヘイトタグを変更し、突進を開始した。

 

それに合わせて、クラインもオレンジに輝く曲刀を手に鮮やかに地面を蹴った。

刃が空を斬る心地の良いサウンドエフェクトが響き、刀が炎を伴って軌跡を描く。

 

そして、片手曲刀用の基本技《リーパー》が猪突猛進のフレンジーボアの首を斬り裂いた。

 

赤いヒットエフェクトを撒き散らしてフレンジーボアの半分程あった体力が全損する。

そして、またもや『プギーッ!』と断末魔を響かせたイノシシの巨体が青いガラス辺のように砕け散って消えた。

 

彼ら2人の視界には、紫色のフォントの加算経験値が表示された。

 

 

「おっしゃあああ!!」

 

 

派手にガッツポーズを決めたクラインは、そのままキリトにハイタッチした。

その様子に、思わずキリトは苦笑いしてしまった。

 

 

「初勝利おめでとう。といっても、こいつは他のゲームのスライム相当だけどな」

 

 

「えぇ、おれぁてっきり中ボスかなんかだと」

 

 

「なわけあるか」

 

 

フレンジーボアはレベル1の、それも始まりの街周辺に多く分布する雑魚敵だ。

 

しかし、その喜びと感動はキリトもかつて経験したのだから理解出来る。

今の戦闘まで、知識と経験で2ヵ月分先に行くキリトが全て倒してきたのだから、その中で自らの剣で敵を倒した爽快感をようやく彼は味わったのだから。

 

キリトは剣を鞘に戻して、周囲を見渡した。

 

クラインは嬉しさのあまり、おさらいのようにソードスキルの初動モーションを繰り返している。

それ以外に人影はいない。ほのかに赤みを帯びる空の下、鋼鉄城の壁の向こうの雲は悠々と流れ、草原の草は風になびいている。

 

 

「あ、ちょ、えぇ〜っ!」

 

 

満足したクラインが、刀を鞘に戻して戻ってくる。そして、キリトと同じように周りに視線を巡らした。

 

 

「あれ、いまどっかで声がしなかったか?キリト」

 

 

「声?誰かがこの辺りでモンスターと戦ってるんじゃないのか?」

 

 

察知スキルも何も持っていないキリトとクラインには、視覚と聴覚以外でのプレイヤーやエネミーの察知方法はない。であるから、聞こえる範囲に誰かが居るのだとキリトは思ったのだが。

 

 

「いやでもよ、モンスターと戦ってる感じの声じゃなかったぜ。こう、驚きと戸惑いって感じの」

 

 

「お前なぁ」

 

 

「いやでも、聞こえたんだぜ。「いやぁぁ!止まってぇぇぇ〜!!」そうそうこんな感じの・・・・・・ん?」

 

 

「んん?」

 

 

突然の声に、2人は背後を振り返った。

 

 

「と、止まってよぉ!!」

 

 

青いイノシシ<フレンジーボア>の背中に紫の髪に川の胸当て防具を付けた幼い少年が、短剣を片手に暴れ馬の如く振り回されていた。

 

キリトが遠目に見ると、エネミーのHPに対してプレイヤーのHPは大して削れていないが、このままだとあの少年は闘牛よろしく吹き飛ばされて始まりの街にデスペナルティ付きで送り返されることになるだろう。

 

 

「そ、そこのお兄さん達!どいてぇぇーッ!」

 

 

勢いそのまま、丘の下からイノシシと共に突っ込んでくる少年。

 

 

「クライン」

 

 

「あぁ」

 

 

キリトは再び、足元に転がっていた程よいサイズの小石を拾い上げる。そしてクラインは、鞘から曲刀を抜いて再び構えた。

 

「━━━フンッ!」

 

 

先程よりタメを長く込めて、ソードスキルに乗せた小石を投擲した。

放たれた小石は淡いグリーンの軌跡共に空中を飛翔し、フレンジーボアの右前脚に命中した。

 

赤いヒットエフェクトとともに、痛みを訴える叫び声を上げたフレンジーボアは前のめりに転け、紫髪の少年は草原に投げ出された。

 

 

「クライン!」

 

 

「おうよ!」

 

 

先程のように、右肩に刀を掲げたクラインが地面を蹴る。

 

刀はオレンジから赤い炎へ。そして、首を振ってこちらを向き直ったフレンジーボアに向けて、刀が振り下ろされた。

 

 

「とりぁぁ━━━っ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、ボク死んじゃうかと思ったよ。助けてくれてありがとね!お兄さん達!」

 

 

紫の髪ボブカット、幼さの中に中性的な美しさが残るアバターの少年が、地面に胡座を組んで朗らかに言った。

 

聞けば彼は他のコンシューマーゲームは経験があれど、このゲームは初心者だそうだ。

とくに、フルダイブは初めてだという。

 

 

「ボク、ユウキっていうんだ!よろしくねッ!」

 

 

「あ、あぁ。キリトだ、よろしく」

 

 

「オレはクライン、よろしく頼むぜユウキ」

 

 

「うん!!」

 

 

元気な声の少年に、思わずキリトは眼前に表示されたパーティメンバーの追加承諾を受け入れてしまった。

 

 

「にしてもよ、あのイノシシって背中に乗れるんだな」

 

 

「うん、ボクもそう思って試したんだけど」

 

 

ユウキの隣で、クラインが顎に手を当てて言った。どうやら何か企んでいるらしい。だが。

 

 

「やめた方がいいぞクライン。ベータの時のままなら背中に乗って少ししたら大ダメージの攻撃を喰らう」

 

 

ボスなら即死攻撃、雑魚敵であろうと同レベル帯の敵なら体力の3分の2は持っていかれる。

 

 

「俺も前のベータテストの時に試したけど、後脚で蹴り飛ばされてリスポーンしたよ」

 

 

「なんだよ、対策済みかよ」

 

 

「上に乗って攻撃出来ちゃえば、敵モンスターをハメれちゃうもんね」

 

 

「ああ、その手のハメ技は基本的に対策されてると考えた方がいい」

 

 

彼らの考える事は、ほとんどベータテスト時の酔狂な職人プレイヤー集団によって試されているのだ。

そして、彼らの1ヶ月のベータテスト期間で行われた試みの結果をキリトは知っている。

 

 

「ズルは出来ないってか、流石だなぁ」

 

 

「スゴイよね、ボクがしてた他のゲームはバグとか悪用する人とかですごいことになってたのに」

 

 

「ああチクショウ、オレの青春時代を思い出すぜ」

 

 

「ははは、コンシューマーは少し民度がな」

 

 

笑いながら、キリトは気付いた。人との会話で自然と楽しめている事に。

 

(この2人はなんだかな)

 

キリトは人付き合いが苦手だ。現実では数える程に友人は居らず、ゲーム内においても現実並に人付き合いはない。

ベータテストでも知り合いと呼べる関係は幾人ものテスター達と築けど、友人と呼べる関係まで繋がっている人はひとりもいない。

 

しかし、この場で出会った2人は違った。

 

クラインという男は懐に潜り込んでくるような距離だが、不快感はない。

 

ユウキという名の少年も付き合いはクライン以上に短くまだ少し話しただけだが、口数が少なく少し陰気なキリトと正反対の朗らかさと口数の多さを持っているが、どちらかと言えば隣に居て楽しいタイプの人間だ。

 

こいつらとなら、長く付き合えるかもしれないな。とキリトは考えながら口を開いた。

 

 

「さて、どうする?このまま2人が勘を掴めるまで狩り続けるか?」

 

 

「あたりめぇよ!と言いたいところだがよ」

 

 

クラインの視線が視界の少し右上に動いた。時刻を確認したのだろう。

 

 

「そろそろ一旦落ちてメシ食わねぇとなんだよな。ピザの宅配、5時半指定にしてっからよ」

 

 

「準備万端だな」

 

 

呆れた顔をするキリトに胸を張るクライン、その隣でユウキが何かを思い出したかのような顔で驚きの声を上げた。

 

 

「あ!ボクもご飯食べなくちゃ!先生の作り置きと仕掛けたご飯が炊けてる筈だから」

 

 

どうやら2人とも、準備万端だったようだ。

 

 

「あ、んでよ。オレそのあと他のゲームで知り合った奴らと《始まりの街》で落ち合う約束してるんだよな。どうだ?アイツらともフレンド登録しねぇか?いつでもメッセージ飛ばせて便利だしよ」

 

 

「そうだ!ボクも明日先生とSAOするからキリトも一緒に」

 

 

「え・・・・・・うーん」

 

 

キリトは思わず口篭った。

 

今はこの2人と自然に楽しく付き合えている。だが、だからと言ってクラインの知り合いやユウキの先生という人物と彼らのようになれるかというと分からない。

むしろ、仲良くなれないことでクラインやユウキと気まずくなることの方がありそうな気がした。

 

 

「いや、無理にとは言わねぇ。そのうち紹介する機会もあるだろうしよ」

 

 

ゲーマー歴の長いクラインは何となくキリトの考えている事を察したのだらう。

 

 

「うん。先生も普段は忙しいけど、ボクと一緒にするときもあるから多分会えると思うしね」

 

 

「あぁ、2人とも悪いな」

 

 

「そんな謝らないでよキリト、始まりの街にリスポーンしてないのはキリトのおかげなのだからさ」

 

 

「そうだぜ、ユウキの言う通り礼を言うのはこっちのほうだぜ。いずれこの借りは精神的にな!」

 

 

ユウキとクラインはログアウトすべく、左手の人差し指と中指を真っ直ぐ揃えて掲げ、振り下ろす。

この動作はソードアート・オンラインのメニューウィンドウを呼び出すためのモーションだ。

 

そうすると、鈴のようなSEと共に半透明のメニューアイコンが縦一列に並んだ。

 

彼らがログアウトする傍らでキリトは手近な岩に腰掛けた。ウィンドウを広げ、獲得したアイテムを整理する為だ。

 

その直後だった。

 

 

「あれ?」

 

 

クラインが間抜けた声を響かせた。

 

 

「・・・・・・━━━()()()()()()()()()()()

 

 




大変お待たせしました。小生、専門学生ということと課題の山に埋もれていたということもあって更新が置かれていました。
プロットはあるのです、プロット(脳みその中に)。

次回、更新は未定ですが末永くお待ちください。
課題を片付け次第、順次書き上げて行くつもりです。
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