ハイスクールD×D 眷属になれない部員の話   作:アルタイル10

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駒の拒絶

 目を開けると、いつもなら古くなってひび割れたコンクリートの天井や、コケの生えた木の板、挙句の果てどんよりとした曇り空が広がっていたのだが、今日は白い天井だ。昨晩、あのミノタウロスのような化け物を倒した後に出会った悪魔、リアス・グレモリーというらしい人?が条件を飲んでくれて、御馳走と寝床を提供してもらった。久々のベットで温もりを感じながら毛布の感触を堪能している。

 

 そして現在、俺はどこかのマンションの一室にいる。理由は提供されたのが大きなマンションの一室だったからだ。毛布の感触を堪能し終えたらすぐにベットから降りて、シャワー室に向かう。汗を流し、身体を洗う。シャワーを浴び終えて、これも頼んで提供された新しい服に着替える。そして、リビングのイスに座るとカードを取り出して枚数を数えるのと点検をしていく。カードの点検をする意味があるのかと聞かれると、これは結構重要と答える。意外にこのカードも繊細なため、インクが、僅かに剥がれているだけで魔術が発動しない時がある。他にも曲がっていたりしても同様に使えないことがある。

 

「……よし。全部異常なし。問題なく使えるな」

 

 全てのカードに魔力を通して反応があるのを確認するとカードをケースに収納する。そして常に近くに置いている、短剣を手に取る。刀身を抜き取だしてみると黒くくすんでいる。手入れをしていないため、硫化しているのだ。この短剣は教会の銀十字を溶かして作られた昔の悪魔祓いの持っていた武器らしい。だが、俺は悪魔祓いでも教会の人間ではない。それに俺はあることがあったためその手の類の存在はどちらかと言うと嫌いだ。でも何でこれを持っているかというと、こいつ腕にある鎖のブレスレットを身に着けると自分のあまり使いたくない力が抑えられることに気付いたからだ。ついでにこの短剣と鎖のブレスレットはある場所で手に入れた。

 

「よしと、点検も終わったし、何する」

 

 電子音が鳴る。その音の発生源の方を向くとマンションの入り口のところの呼び鈴が鳴っていた。こんな朝早くにだれだろうと思うが、知り合いはいないし勧誘などもかんな朝早くからは来ないだろう。それならグレモリーたちの中の誰かしかいないためその中の誰かだろうと思い、カメラでその人物を確認する。カメラに映し出されていたのは白い髪の少女。確か、搭城小猫という子だったな。自分の記憶から名前を引き出してマイクに向かって声を出す。

 

「どうしたの?」

「桐谷さん。部長がお呼びですので駒王学園までついてきてくれませんか?」

「はい?俺、その駒王学園?って所の生徒じゃないんだけど」

「大丈夫です。今は朝早くなのでほとんど生徒はいません」

「いや、教員がいるんじゃないの?それか警備員とか」

「そのあたりは問題ありません」

 

 塔城はそう言った。大丈夫なら別にいいだろう。特に今はやることもないから暇つぶしにもなるし、帰るときに飯でも食べに行けばいい。

 

「わかった。すぐに降りてくるよ」

 

 そう言って預かっている鍵を持ってそのまま外にでる。そしてマンションのエントランスに出ると塔城さんが待っていた。

 

「お待たせ。ゴメン。女の子を待たせちゃって」

「構いません。行きましょうか」

 

 そう言って先に塔城は先に歩き出した。そして、数分もしてから少し気まずい雰囲気になる。マンションのエントランスを出てからまだ一言も会話していないのだ。特に喋ることも無いのだが、なぜかこの沈黙した空気をなくさないと男が廃ると思った。思い切って話を振ってみた。

 

「今日はいい天気だね」

「そうですね」

「……」

「……」

 

 くそう、会話が続かない。というか今日はいい天気だねって普通は聞かないだろ、どう考えたって。会話をしようと考えていると搭城さんから話しかけてきた。

 

「桐谷さんは、どこから来たんですか?」

「ん?俺?」

 

 まさか、搭城さんから話しかけてきてくれるとは思わなかったが、この沈黙を無くせるだろうと思い、会話に乗った。

 

「北欧の片田舎からだよ。旅でとりあえず日本に来るって決めて、日本に着たんだ」

「?桐谷さんは日本人ですよね?帰ってきたとかじゃないんですか?」

「いいや。俺はノルウェー育ちだよ。日本に来たのはつい最近。一回も来たことは無いよ」

「にしては日本語がとても流暢ですね。悪魔は自分の解釈しやすい言語に変わるからいいのですが口の動きが完全に日本語の動きです」

「ああ、これもルーン魔術を応用しているおかげだよ。知恵のルーンを身体の一部に描いておいて僅かに身体から漏れる魔力に反応してくれるんだ。そのおかげである程度の言語は大抵理解して話すことが出来るんだ」

 

 そう言って袖をめくってシャツの下にある腕に書かれているルーンを見せる。それを見て納得する搭城さん。

 

「便利ですね。桐谷さんは魔術が得意なんですか?」

「いいや。得意なのはルーン魔術(これ)と少しの攻撃魔術だけと魔力制御くらい。あとは素人、良くて三流。師匠(ばあちゃん)はいろいろ教えてくれたけどこれだけしか俺は出来なかったよ。不器用なんだろうね」

「そうですね」

「意外にひどいね」

 

 苦笑して答える。こんな感じでしばらく会話しているとあまり高い建物が見えなくなってきた。そして、その低い建物の奥に大きな校舎が見えた。

 

「着きました」

「そうだね。じゃあ、グレモリーさんの所に行こうか」

 

 そう言うと搭城は目の前にある校舎とは別のほうに歩き出した。しばらくすると木造建築の少し古い建物のが見えてくる。古い建物だが手入れがちゃんと行き届いているようだ。それに結界も張られているみたいだ。中に入って搭城さんについていくと一つの教室の前に辿り着いた。そして教室の扉を開けた。

 

「部長、桐谷さんを連れてきました」

「ありがとう、小猫」

 

 中に入ると魔術(オカルト)系統の物がたくさんあった。中には興味深いのもある。だが、今は目的は目の前にいる、人物。リアス・グレモリーがなぜ、ここに呼び出したかを聞くためだ。

 

「で、俺に何の用でしょう。グレモリーさん」

「リアスで結構よ。私もこれからはコーキって呼ばせてもらうから」

「さん付けでもいいなら呼ばせていただきますよ。そちらもどうぞ好きなように呼んでください」

「そう。じゃあ、コーキ。あなた、私の眷属にならない?」

「眷属にですか?」

「ええ。昨日あなたの話を聞くかぎり、日本を目的に旅に出ていた感じだったのよね?」

「まあ、リアスさんの言うとおり俺はとりあえず、日本と言う目的地に行く予定で旅していて、着いてからはとりあえず占いで一日のご飯のお金を稼ぐ位しかしてませんからね」

「なら、目的を作る意味も兼ねて私の眷属にならない?」

「うーん、眷属か……自由とか無くならないんですか?」

「私の知っている眷族を持つ上級悪魔は眷属をこき使ったりしたのを見たことないわね」

「なら別にいいですよ」

「そう。その答えを期待していたわ」

 

 リアスさんは満足そうに頷くと、机の上にチェスの駒を置いた。形からして僧侶(ビショップ)だろう。眷属になるのに何の関係があるのだろう。

 

「これが悪魔の駒(イーヴィル・ピース)と言う眷族に使うためのアイテムよ。コーキ、眷属になるってことは悪魔に転生するってことだけど本当に大丈夫かしら?」

「……普通の人間と変わった部分とかあるんですか?」

「いいえ、人間と見た目は変わりないわ。ただ、寿命がものすごく長くなるわ」

「それくらいなら転生してもいい気がするな。別に今の種族に未練なんてありませんし。自分って言う個の概念が消えるわけじゃないみたいですからね」

「少しは考えると思ってたんだけど割り切ってるのね」

 

 そう言って、リアスさんはその駒を俺の胸にあて、呪文のようなものを唱え始める。

 

「我、リアス・グレモリーの名において命ず。汝、桐谷光輝よ。我の下僕となるために悪魔と成らん。汝、我が『僧侶』として、新たな生に歓喜せよ!」

 

 そして、その駒は俺の身体に溶けていくように身体の中に埋まっていく。と思っていたが、急に駒が自分の体から抜けていくような感覚がする。次の瞬間、自分の身体に電撃が走ったと思うと同時に後方に吹き飛んでいた。

 

「!?」

 

 反射的に俺の身体に魔力を流し身体に刻まれたルーンを発動させる。勢いよく壁に激突したが魔術で身体をで強化したおかげで傷一つ無いし、打ったところも痛みは無い。すぐに立ち上がり、何が起こったのかと周囲を確認する。リアスさんや、姫島さん、木場、搭城さんは驚いた表情を浮かべこちらを見ていた。どうやらこうなることが予想外だったらしい。

 

「悪魔の転生には失敗したみたいですね」

「ありえないわ……悪魔の駒が拒絶するなんて……」

 

 どうやらこのようなことが起きるのは初めてのようらしい。悪魔には転生できなかったてことは人間の状態で未練があるとでもいうのだろうか。だが、転生できなかった理由はもっと別のものだろう。自分のなかにあるアレらが邪魔をしているのだと思う。

 

「あなた……一体何者なの?」

 

 リアスさんが俺に向けて問いかける。どういわれても俺が返すことは一つしかない。

 

「昨日言った通り、流浪の魔術師ですよ」

「……なら別の駒で試してみましょう」

「いえ、もうあんな電撃を食らうのと吹き飛ばされるのは勘弁していただきたいんで」

 

 リアスさんは他の駒を出したが、またあんなのを食らうのはゴメンなので断る。すると、不満げにリアスさんは唸る。そんな子供みたいにしたって無理ですよ、と言おうとするが何か面倒になりそうなのでやめておく。

 

「なら、あなたを眷属は諦めましょう。でも、コーキ。私はあなたが欲しいの」

「その言い方はヘタしたら告白まがいに聞こえるんで相手を選んでから言ってください」

「そうかしら?」

 

 リアスさんはさっきより落ち着きを取り戻し、そういうが、自分はその言葉を誰にでも言いそうなので注意しておく。

 

「それなら彼をオカルト研究部に入部させればいいんじゃないんですか、部長?」

「ッ!ナイスアイデアよ!朱乃!」

 

 それだと言う風に姫島さんの発言を推した。

 

「でも、俺、この学園の生徒じゃないんですけど……というより、高校生ですらないんですけど……」

「なら、ここ編入すればいいじゃないかな」

 

 今まで喋っていなかった木場がそう言った。だが、学校に行くにしても編入なんて出来るのだろうか?この中の唯一の男の木場に聞いてみる。

 

「編入するって言ったって、俺の情報とかはどうするんだ?」

「そこら辺は大丈夫だよ。ですよね?部長」

「ええ、そのことなら私に任せておきなさい」

「はあ」

 

 なんか、自分のわからないようなことが室内で飛び交いながら飛んできた適当に相槌を打っていく。そして、話がついたのかようやく、リアスさんがこちらに本格的に話を振ってきた。

 

「コーキ、あなたを学園に編入するに当たってはこっちで何とかできるわ。あなたはどうしたい?さすがにここはあなたに決定権があるし、そこはちゃんと意思を尊重するわ。通わないとしてもあなたとはかかわりを持つけどね」

「……」

 

 まあ、結局はかかわりを持つんですねと、心の中で思った。しかし、学園か。俺はあることがあって高校どころか、小学校も通ったことがない。この年齢で初めて通うと言うのは少しばかりおかしな気もするが、一度きりの人生なんだし、歳相応の生活を満喫するのもいいかもしれない。

 

「行ってみたいです」

「よかったわ、その答えを待っていたの。これからよろしくね、コーキ。そして、改めて自己紹介するわ。私はリアス・グレモリー。この土地を管理している悪魔よ」

「ふふふ、なら私も。姫島朱乃、同じく悪魔ですわ」

「木場祐斗。同じく悪魔」

「搭城小猫。悪魔です」

 

 四人は昨日の夜同様に自己紹介を始めた。それに答えるように俺も言った。

 

「桐谷光輝。人間です。こちらこそよろしく」

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