ハイスクールD×D 眷属になれない部員の話 作:アルタイル10
俺はあれからどれくらい眠っていたんだろうか。目が覚めると、グレイフィアさんがいるだけで他には誰もいない。そして、俺はグレイフィアさんから、部長が
「あの俺ってどの位眠ったんですか?」
「あれからだいたい二日間眠っていました」
「そうですか……」
俺はライザーを倒せなかった。部長が勝つって宣言して、俺らはあんなに頑張って修行を積んだのに。あれだけ頑張ったのに。勝つことが出来なかった。
コーキは俺に殴り方やけり方なんかの戦闘技術を教えてくれたのに。最初はなんとかやれていた。だが、ライザーと戦う時の俺はどうだ?体を酷使しすぎた結果、体が持たずにほとんどやられっ放しだった。これじゃあ、アイツに見せれる顔もない。あいつは、俺らのために頑張ってくれたのに。
そう思うと自然に手に力が入り、目には熱いものがこみ上げてくる。
クソっ!何で俺はあんなにも弱いんだ!部長たちと一緒に頑張って強くなったはずなのにライザーのあの不死身の再生能力に手も足も出ずに負けた。
くやしい!今まで生きた中で一番悔しい!
ついに耐え切れなくなったのか、目から涙がこぼれてきてしまう。
「ちくしょう!なんで!俺らは強くなったはずなのに!あんなに頑張ってきたのに!こんな結果あるかよ!俺たちがあそこで頑張ってきたのは意味ないことなのかよ!」
そう叫ぶように言った。だが、ここで感情を爆発させても今だけの発散に過ぎない。俺は目から出る涙を拭い、今の状況をグレイフィアさんに聞く。
「……木場たちは無事なんですか?」
「はい。お嬢様の眷属は一誠様とアーシア様以外は全員式に出席している状況です。アーシア様は今、下の階にタオルを取りに行かれているのでいません」
「そうですか……」
「納得できませんか?」
その言葉を聞いた俺は叫ぶように言った。
「納得できるはずがないじゃないですか!たとえ、他の全員が納得しようと俺は絶対にこんなこと納得できません!」
「お嬢様は御家の決定に従ったのですよ?」
「解ってます!解っているんです!でも俺は!」
最後の朦朧とした意識の中で見た部長の涙。あんなものを見せられて俺は納得できるはずがない!あんないけ好かない野郎との結婚、親たちが認めても俺は絶対に認めない!
そんな中、俺を見て小さく笑うグレイフィアさん。この人が笑うところを見たのは初めてな気がする。やはり、美人が笑うと絵になる。
「ふふふ。やはりあなたは面白い方ですね。いろいろな悪魔を見てきましたがあなたのように、思ったことを顔に出してそれを実行するような方はあなたが初めてです。私の主サーゼクス様もあなたの活躍を見ていて、『面白い』とおっしゃったのですよ?」
それは光栄だ。魔王様じきじきにそんなこと言ってくれるなんて。でも、どうしたら良いかよく解らない。だって、魔王様だぜ?反応に困る。
そしてグレイフィアさんは懐から一枚の紙を出して俺に差し出す。紙には魔方陣が書かれていた。
「この魔方陣はグレモリー家とフェニックス家の婚約パーティーの会場に転移できるものです」
「なんでそんなもの!」
「サーゼクス様からのお言葉をあなたにお伝えします」
グレイフィアさんは一泊おいて真剣な面持ちで言った。
「『妹を助けたいなら会場に
どう返していいか分からない。だが、会場には二人と聞こえた。つまり、俺のほかに誰かを連れて行けということだろう。パーティーに行ってないのは俺とアーシア。つまり、アーシアを連れて行けということだろうか?
「一誠様が寝られている間、あなたの中で強大な意思を感じました。ドラゴンは、どの勢力とも手を結ばなかった存在です。その力ならばあるいは……」
そう言ってグレイフィアさんは部屋を後にした。
「あっ、待ってください!」
しかし、グレイフィアさんが部屋に戻ってくる気配はなかった。もう考えていても仕方ない。俺は机の上においてある新品の制服を取った。誰が用意してくれたかはわからないがありがとう。俺はすぐに着替えを終わらせた。
「っ!イッセーさん!」
ドアの方から聞きなれた少女の声が聞こえてくる。そちらを向くとアーシアがいて俺の胸に飛び込んできた。少し照れくさい。
「よかった。本当に良かったです。怪我の治療をしたのにずっと眠ったままで……。もう目を覚まさないんじゃないかって……。イッセーさん本当に良かったです……」
アーシアが俺の胸で泣きはじめた。また泣かせてしまった。泣かせないようにしていたのにな。頭を撫でながらアーシアが泣き止むのを待つ。
そして涙を拭って落ち着いたアーシアに向けて言った。
「アーシア、俺はこれから部長のところに行く。もちろん、お祝いなんかじゃない。部長を取り戻しに行ってくる」
「それなら私も行きます!」
アーシアはそう言ってくる。ふと、先ほどの言葉を思い出すが、もしあっちでアーシアに何かあったら部長を取り返したとしても意味がない。だから、アーシアは連れて行けない。
「駄目だ。悪いけど、アーシアはここに残ってくれ」
「嫌です!私もイッセーさんと戦います!魔力だって使えるようになりましたし、もしものことがあれば回復の役に立ちます!もう、守られているだけの存在じゃ嫌なんです!」
「駄目だ。アーシアはここに残るんだ。部長は俺が無事に取り戻してくる。ほら、ブーステッド・ギアはそういうの専門だからさ。大丈夫だって。軽くライザーを殴って倒して」
「大丈夫なんかじゃありません!」
俺が言い終える前にアーシアは声を張り上げる。アーシアを見るとまた目には涙が浮かんでいた。ぽろぽろと涙を流しながら、そしてとても哀しそうな表情だ。それを見て心がちくりと痛んだ。
「また……また、血だらけで、ボロボロになって、グシャグシャになって……。また、たくさん一人だけ痛い思いをするんですか……?私、もうそんなイッセーさんを見たくありません……」
アーシアの気持ちは痛いほどわかる。堕天使の時だってそうだ。あのとき、アーシアの治療がなかったら俺は死んでいたかもしれない。その時の彼女はとても哀しそうだった。それを見て俺はこの子を悲しませたくないって思ったのに。俺はこの子を悲しませ続けてしまうのだろうか?
そんな未来を想像するだけで気分はブルーになっていく。だから、俺はアーシアの手を握り、ぎこちない笑みを浮かべた。
「大丈夫。俺は死なない。これだけは絶対に言える。アーシアを助けた時だって生きてただろう?だから心配すんなって。俺は死なない。生きて、アーシアと一緒にこれからも過ごすよ」
アーシアに向けて言った。もう、この子を悲しませたくない。
それを聞いたアーシアは涙を拭って、小さく頷いた。
「それならもう一つ約束してください」
「約束?」
「必ず、部長さんといっしょに帰ってきてください。そしたら、またみんなであの場所で、オカルト研究部でパーティーをしましょう。みんなで食べ物を持ち寄って楽しくやりましょう」
「ああ、部長と一緒に帰ってきてまたみんなで騒ごう」
俺はアーシアと約束する。
そう答えるとアーシアは微笑んで頷いた。
「話は終わったみたいだね」
またドアから、声が聞こえる。こちらも聞いたことがある声。
「早く準備して、殴りこみに行くよ、イッセー」
そこには、今このときに俺は最も頼れると思える人間、桐谷光輝がそこにいた。
☆
魔方陣で俺とイッセーはどこか城のような場所に来ていた。もちろん部長を取り戻すためだ。どこか解らないがとりあえず人の騒いでいるほうに行く。
進んでいく扉があり、その中からたくさんの人がいるかのように騒ぎ声が聞こえる。たぶんこの中にいるんだろう。扉の前には人がいないことをしっかりと確認しておく。
イッセーが手を掛ける前に俺がそのドアを勢いよく蹴り開けた。
「うおっ!危ねえだろ!」
「こういうのは出だしが肝心なんだよ」
そう言って扉の中に入っていく。そこにはたくさんの悪魔がいて、奥には部長とライザーがいた。静かな会場の中部長を見たイッセーは叫んだ。
「部長ォォォォォォォォ!」
静かな会場にイッセーの声が響く。
「ここにいる上級悪魔の皆さん!それに部長のお兄さんの魔王様!俺は駒王学園オカルト研究部の兵藤一誠です!部長のリアス・グレモリー様を横にいる桐谷光輝とともに取り戻しにきました!」
それを聞いた悪魔たちはがやがやと、騒ぎ始める。そしてイッセーはライザーと部長のいる奥まで歩き始める。俺はその後を着いていく。
「おい、貴様あぶふぉ!」
魔力球を作り、防御のルーンを刻み込んでそいつに向けて高速で顔面へと叩きつけた。あまりの衝撃で兵士らしきそいつは壁まで吹っ飛んで行った。それを引き金にたくさんの兵士が現れる。しかし、そいつらが襲いかかろうとした瞬間、雷と剣撃、殴る蹴るによって吹き飛ばされていった。
「イッセー君、コーキ君!ここは僕たちに任せて!」
「先輩方、遅いです」
「あらあら、待ちくたびれましたわ」
三人が前にいた兵士を吹き飛ばしたりして前の道を作ってくれた。そして、どんどんライザーと部長へとの距離はもうまじかになった。だがその前に十人以上の女の子たちが俺たちの目の前に立ち塞がる。もちろん、この十人以上の女の子は全員ライザーの眷属だ。だが、イッセーはそんなの関係無しに叫んだ。
「部長、リアス・グレモリーの処女は俺のもんだー!」
あまりの衝撃的発現で俺は声もでない。前にいる眷属たちも絶句している、というか引いているぞ。ライザーも形容しがたい表情を浮かべ目を引きつらせている。
「どういうことだ、ライザー?」
「リアス殿、これは一体?」
部長の身内らしき人物らも混乱している。
「みなさん、これは私が用意した余興ですよ」
そう言って部長たちより、更に奥にいた赤髪の青年で部長の兄。そして魔王であるサーゼクスさんが歩み寄ってきた。イッセーは初めて会うらしく少し戸惑い気味だ。
「ドラゴンの力、それとリアスが肩入れしている魔術師の腕をどうしても見たくて、ドラゴンにはグレイフィアが、魔術師には私が頼んできました」
それを聞いた悪魔たちは慌て始める。
「サーゼクス様!そのような勝手なことは!それに、魔術師のほうは人間ですよね!?」
「そうです。彼は人間です。しかし、魔力だけなら私と同格、またはそれ以上の素質を持っています」
それを聞いて更に会場がどよめいた。まあ、魔王様がそういうなら驚く。というか、俺も驚いている。正直魔王様にそんなことを言われるとは思わなかったからだ。
「いいではないですか。この間のゲームはとても楽しかった。しかしながらゲーム経験もない妹がフェニックス家の才児であるライザー君と戦うのは少々分が悪かった」
「……サーゼクス様は、この間の戦いが解せないと?」
「いえいえ、そのようなことは。魔王の私があれこれ言ってしまったら、旧家の顔が立ちますまい。上級悪魔同士の交流は大切なものですからね」
「では、サーゼクス。お主はどうしたいのかな?」
部長やサーゼクスさんと同じ紅の髪の中年男性がそう言った。たぶん、感じからしてお父さんあたりだろう。
「父上。私は可愛い妹の婚約パーティーは派手にやりたいのですよ。ドラゴン対フェニックス。そして、魔力だけなら同格の魔術師とその眷属。伝説の生き物同士とその下僕と魔術師。少しばかり納得できない部分もあろうと思いますが最高の催しだと思いませんか?私はこれ以上の演出は考え付きません」
魔王様の一言で会場は一気に静かになる。それを見るや、俺たちのほうを向いた。
「さあ、ドラゴン使い君、魔術師君。お許しが出たよ。ライザー君、リアスと私にその力をもう一度見せてくれるかな?それに眷属の方々も?魔術師の君もその力を存分に使ってくれたまえ」
サーゼクスさんがそう言うとライザーは不敵な笑みを浮かべた。
「いいでしょう。サーゼクス様の頼みなら断れるわけもない。このライザーと下僕悪魔たちが身を固める前に最後の炎とわが眷属の力をお見せしましょう!」
どうやらライザーもヤル気のようだ。眷属たちは俺を睨みながら牽制してくる。
「ドラゴン使い君と魔術師君。君たちが勝った場合の対価は何がいい?」
その言葉に各所から非難の声が上がる。
「悪魔なのですから、何かやる以上はこちらも相応のものを払わなければならないでしょう?さあ、君たち。何でも上げるよ?爵位かい?それとも絶世の美女かい?」
それはそれはなんともすごい報酬だ。といっても俺が今ほしいものなんてあるわけでもない。部長はイッセーが願うとしても俺は特に無い。
と思っていたが、今思えば武器の流通ルートが付近にないからそれを作ってもらおう。
「リアス・グレモリーを返してください」
「わかった。君が勝った場合、リアスを連れて行けば良い。魔術師はどうする?」
「俺は駒王学園付近に武器、銃や弾の流通ルートを作ってほしい」
「そんなので良いのかい?」
「ええ。特に今はこれ以上ほしいと思うものは浮かばなかったので。それに脇役がそれ以上の対価をいただくのもあれでしょう?」
「はは、そうかい。それじゃあ二人の願いは勝った場合しっかりと聞き届けよう」
「ありがとうございます!」
俺とイッセーはサーゼクスさんに向けて頭を深く下げた。
こっからが勝負だ。
「イッセー、絶対に勝って来い」
「ああ。おまえこそまけんじゃねぇぞ」
そう言って俺らは用意された舞台へと足を運んだ。