ハイスクールD×D 眷属になれない部員の話 作:アルタイル10
兵藤が悪魔の仕事をするようにこなすようになっているらしい。なぜ、らしいって?それは、俺は人間だからだ。基本的には、俺は悪魔としての仕事はもらわずに放課後の数時間、勉強か話をしに行くぐらいしかしなくていい。俺が部活にいるのはそれくらいだ。
今日は帰って家でゆっくりするはずだったのだが、少し前から夜になるにつれて何か不穏な空気を感じたため、気になって、カードケースを腰につけて家を出た。また堕天使がまた何かやらかしていると思っているからだ。ついでに言う、俺の不穏な空気とは僅かな魔力の乱れである。地のことを把握するとその地に流れる魔力がだいたい分かる。ただ、教会や神社などのところは逆で魔力の流れが複雑で分かりにくい。これは神社や教会を建てる場所にわけがある。まあ、その辺の説明は省くとして俺は、魔力の乱れのある場所へと向かう。
向かう場所はどこだか分からないが町の中ではなく、町外れであった。人があまり来そうに無い場所で奥には廃屋が見える。そして、乱れがあるのはその中だ。警戒を強めてその廃屋の中に入る。中には、つい最近人が入ってきたと思われる足跡がある。ここは廃屋だから肝試しに入ってきたものだろう。だが、それを見て気付く。入ってきたものはあるが、出ていった形跡が無いのだ。予想して、この中で何かが起きているということだ。カードを取り出して、銃ではなく剣を取り出す。取り出したのはただの剣だが、俺が防御のルーンを刻み込んだ特別製である。
そして、あたりを警戒しながら奥に進んでいくと血の臭いが鼻を突くように臭ってきた。
「美味そうな臭いがするぞ。それも特上な獲物だ。どんな味がするのかな?甘いのかな?美味いのかな?」
不気味な声が奥の暗闇から聞こえてくる。
「誰かは知らないけど。魔力の乱れを見つけて来たと思えば、またはぐれ悪魔って所かな?」
そう呟いて、暗闇に視線を向ける。俺の目の前の暗闇から何かの姿がゆっくりと出てくるのが見える。出てきたのは上半身が裸の女性。だが、大きさがおかしい。体が俺の頭より上にあるのだ。しかし、理由はすぐに分かった。体の付け根を良く見ると獣の毛のようなものが見える。そしてその下には獣の体がついてるだろう。女性の上半身に獣の下半身。女性版ケンタウロスと予想した。そして相手の全貌が明らかになる。予想したとおり、ケンタウロスのような姿で五メートル以上の大きさがあり、両手には槍らしきものを一本ずつ所持している。
「とりあえず、あんたがこの魔力の乱れの原因みたいだね」
そのはぐれ悪魔の姿を見ながら言う。するとはぐれ悪魔はけたけたけたと独特な笑い声を上げる。
「よく喋る餌だ。すぐに料理してやるから、短い人生を悔やんでおけ」
そう言って、はぐれ悪魔は槍を俺に向けて振り下ろしてきた。だが俺はその場から動かない。体に魔力を流して、体中に刻まれたルーンを発動させる。発動させるルーンは体に刻まれた全ての力、活動、戦闘、防御、生命のルーン。すると俺の肌のあちこちにルーン文字が浮かび上がる。もちろん服の下にもびっしりと浮かび上がっている。そして、手に持っている剣にも魔力を流し込んで剣を強化すると、その剣で槍を受け止めた。
「正当防衛。先に攻撃してきたのはそっちだから、死んでも自己責任で」
「ほざけぇぇぇ!!雑魚がぁぁぁぁ!!」
「どっちが?」
そう言って剣で槍を弾いてはぐれ悪魔に向けて走る。とその時、入り口のほうから誰かが来たようで叫んだ。
「はぐれ悪魔バイザー!あなたを討伐ってコーキ!?あなたなんでここにいるの!?」
どうやら来たのは部長たちのようだ。
「俺はちょっと気になって来たんです!案の定なんかいましたけど」
バイザーと言う名前のはぐれ悪魔の攻撃をかわしたり、弾きながら部長に返事を返した。バイザーは部長が来たことにより焦りを覚えたのか両手の槍を使い始める。だが、この程度の速度の攻撃が増えた程度では、まだまだだ。
「おい、危ないぞ!」
兵藤が何か叫ぶと同時に素早く片手を腰に回してカードから銃を出すと振り向かずに引き金を引いた。すると、俺を食いちぎらんとばかりに迫っていた蛇のようなものが銃弾に当たると消し飛ばされた。
「二本の槍で攻撃している途中に背後からの奇襲。在り来たりなパターンすぎてあくびが出ながらでも対処が出来る」
「調子に乗るなぁぁぁ!小僧ぉぉぉぉ!」
そう言うと、バイザーは突進をしてくる。確かにあの巨体に当たったらただじゃすまないだろう。それが普通だったらの場合。今の俺はルーン魔術で身体強化された体。それもかなりの数を体に刻み、流している魔力の量を上げれば更に強化できるものだ。だが、それでも当たるという考えはない。たとえ、装甲が強固な物でも傷を負わせる道理はないからだ。素早く銃口を向けると連続で引き金を引く。弾丸はライザーの足を狙い、足を体から分断させる。
「クソガぁァァ!!殺されるくらいならお前を道ずれにしてやるぅぅぅ!!」
しかし、ライザーの執念はすごく、両手に持ってる槍を俺に向かって投げる。更に体を上手く動かして空中に跳んだ。どうやら押しつぶす気らしい。確かにあれほどの巨体は銃弾で貫通できないから、破壊のルーンを込めた弾丸を撃っても意味ないだろう。槍を剣で弾きながら考える。しかし、すでに俺の目の前にはライザーの巨体があり、そのまま押しつぶされた。
☆
部長にしかられた後にはぐれ悪魔バイザーの討伐に向かっている。部長が言うにははぐれ悪魔って言うのは、主を殺した、または主を裏切った悪魔のことを指すらしい。この前ドーナシークも俺をそのはぐれ悪魔と勘違いして殺そうとしたらしい。この存在はどの勢力にも危険視されているらしく、どの勢力も見つけ次第殺すらしい。なんとも恐ろしい世界だ。俺は絶対に部長を裏切ったりはしないから大丈夫だけど。
バイザーがいると思われる廃墟に着くと殺意とか敵意がハンパじゃない。足が震えて仲間がいなけりゃ間違いなく逃げてる。堂々と立っている部長がとても頼もしい。そして廃墟の中に部長たちの後を追うように入っていく。
「イッセー、いい機会だから悪魔としての戦いを経験しなさい」
マジですか!?ついこの前まで普通の男子高校生だった俺が戦闘!?
「俺、戦力にならないと思いますけど」
「そうね。それはまだ無理ね。でも悪魔の戦闘を見ることは出来るわ。今日は私たちの戦闘を良く見ておきなさい。ついでに、下僕の特性を説明してあげるわ」
「下僕の特性?説明?」
全くわけが分からない。そんな顔をしていた俺に部長が説明しようとした時、奥のほうから不気味な声音の声が響く。俺はその声を聞いてもう帰りたくなってきたが、部長たちの後を頑張って着いていく。そして、その中に入りざまに言った。
「はぐれ悪魔バイザー!あなたを討伐ってコーキ!?何であなたがここにいるの!?」
部長が驚いた声を上げると同時に剣が弾かれる音が聞こえた。その音源を見るとそこには昼間にしか部に参加していないはずの部員、桐谷がいた。片手には剣が握られている。本当に何であいつがこんなところにいるんだ?そして、さらにその音源の更に奥を見ると異形の化け物がいた。あれが部長の言っていたバイザーなのだろう。初めて悪魔と言う生物に恐怖を抱いたと思う。
「俺はちょっと気になって来たんです!案の定なんかいましたけど!」
しかし、その手前では桐谷がバイザーの攻撃を受け流したりかわしている。あれが人間の動きなのかと思う。どう見ても普通の人間ならあの攻撃を初撃か次でやられているはずだが、それをまるで慣れているかのように対処している。
「部長。そういえば桐谷って何者なんですか?悪魔じゃなくて人間って言うのは分かってるんですけど、それ以外はあまり知らないんで」
「彼はルーンの魔術師よ。それも、かなり強い」
そう言われて驚く。あいつは魔術師、つまり魔法が使えるのか。少しうらやましい。だが桐谷を見ていると、死角からバイザーの尻尾から伸びる蛇が桐谷を襲おうとしていた。
「おい、危ないぞ!」
俺が叫ぶのとほぼ同時だった。桐谷はどこからともなく取り出した銃のようなものを振り向かずに構えて撃った。弾丸は蛇に当たると同時に吹き飛んだかのように消し飛んだ。まるで慣れているかのような動きだ。部長たちはそれを見て、驚いている。もちろん俺もだ。悪魔を知っているただの部員でさっき知った魔術師だと思っていたのにあんな行動をしている。どちらかって言うと魔術師と言うよりは兵士って感じだ。
「二本の槍で攻撃している途中に背後からの奇襲。在り来たりなパターンすぎてあくびが出ながらでも対処が出来る」
「調子に乗るなぁぁぁ!小僧ぉぉぉぉ!」
そんなの関係なく桐谷はバイザーに向けて言うとバイザーはキレたのか、桐谷に向けて突進していく。だが、桐谷は落ち着いている。あんな巨体が突進してきたら普通なら体がばらばらになるだろ!桐谷に向かって避けろと叫ぼうとするが、四発の銃声が遮る。もちろん撃ったのは桐谷だ。銃を持っているのはあいつしかいないし。銃から放たれた弾丸はバイザーの膝上に当たるとバイザーの足が体とおさらばした。おさらばはそのままの意味だ。銃弾が当たった場所はまるで高速で飛ぶ巨大な大砲の玉で打ち抜いたかのように丸くえぐったような感じになっていた。あの銃にそんな威力があるのかと思うがこれを見ると自分に向けられただけで身震いする。味方で本当に良かった。しかし、バイザーの執念はものすごく、ほぼ瀕死といっていいような状態なのに体を動かしていた。
「クソガぁァァ!!殺されるくらいならお前を道ずれにしてやるぅぅぅ!!」
そう言うと両手に持っていた槍を桐谷に投げつけると体を器用に動かして桐谷の頭上に飛んだ。桐谷は槍の対処をしている間にバイザーに潰されてしまった。それを見た部長は叫ぶ。
「小猫!今すぐ、バイザーを殴り飛ばして頂戴!」
部長が言う前にすでに小猫ちゃんは動き出しており、バイザーに向けて拳を振りかざしていた。だが、急にバイザーの口から悲痛の叫びが上がったため、中断して小猫ちゃんは後退した。
「ああアアアアァッァァッァッァァ!!」
急な叫び声を上げたバイザーの体が浮いていく。足がないはずのバイザーが立てるはずもない。その正体を探るべくバイザーの下を見ると、そこには剣でバイザーの体を突き刺し、持ち上げている桐谷がいた。さすがに、これにはビックリだ。本当に桐谷は人間なのだろうか?あんな巨体を人間が持ち上げられるはずがないし。そんなことを考えていると桐谷はバイザーを投げ飛ばし、こちらに近寄ってきた。バイザーの血にぬれ、顔や手に浮かぶなにわからないタトゥーのようなもので桐谷に恐怖心を覚えるが、桐谷は近づくと、タトゥーが消える。
「すいません部長。勝手な判断をして」
急に謝る桐谷。すると部長は桐谷に顔を上げるように言うと桐谷が顔を上げる。その瞬間に部長の平手打ちが桐谷の頬に向けて振りぬかれた。
「ええ、あなたの勝手な判断で、あなた自身の命を危険に晒したのよ。あなたは眷属ではないにしろ、オカルト研究部の部員なの。勝手な判断で自分の命を捨てるような真似をしないこと」
「……すいませんでした」
素直に謝る桐谷。そんな桐谷を部長は抱きしめた。なんともうらやましいんだ!しかも抱きつかれているから部長のあのたわわに実ったやわらかいおっぱいが形を変えている!今すぐ俺とその場所を交代しろ!いや交代してください!
「でも、生きていてくれて本当に嬉しいわ。だけど、さっきのコーキについて聞きたい事があるから、この後話してもらうわよ」
「分かりました」
そう言うと部長は桐谷から離れてバイザーのところに行く。バイザーはすでに息絶えているらしく、全く動いていない。部長が手から何か出して、それを放つとバイザーのしたいが跡形もなく消え去った。
「じゃあ、皆帰るわよ。私たちはジャンプで帰るから、コーキは罰としてこの後走って部室に来なさい」
そう言って朱乃さんが出した魔法陣に乗って俺らは部室へと向かった。
☆
部長たちは俺を置いて魔方陣で
旧校舎に着き、部室に入る。部室には全員が待機していた。
「すこし、着替えるのに手間取ってまして遅れました」
「そう。でも、あなた、魔術師なんだから着替えも水も自分で用意できたんじゃないの?」
「魔力の無駄はなるべくなくしたいんですよ。魔力は多いほうですけど非常事態のときにないって言ったら元もこうもないのでというのが建前で塔城さんにはすでに説明してますが、俺は魔力変換などの芸当ができないからです」
「そう。じゃあ、あそこで言ったとおり何であなたがあそこにいたか教えてもらいましょうか?」
「俺がいたのはあっちでも言った通り、気になったからです」
「で、その気になった場所にバイザーがいたわけね」
「まあ、そうなりますね」
部長の質問に答えていく。
「では、あのときのコーキ君がバイザーと戦われてた時、顔の一部と手の甲に見えていたのはなんですの?」
「あれはルーン文字ですよ。自らの体に刻み込んで、魔力を流すことでその能力が発動して浮かび上がってくるんです。こんな風に」
姫島さんが聞いてきたので体に魔力を流す。すると、肌の見える部分にルーンが浮かび上がってくる。それを見ると少し驚いていた。
「なんで自分の体にルーンなんて刻んだんだい?」
「自分の身を守るためだよ。一応、片田舎で魔術を習得した後、俺は旅に出て何度も死にかけたからね。死にたくなかったから自分の体にルーンを刻んで身体能力を強化したわけ」
祐斗の質問に答える。旅の途中に何度も死に掛けた。そのために、何年もかけて体に刻んで行った結果がこれだ。
「……コーキ先輩、そのルーンはどんな効果があるんですか?」
「効果は複数、同じルーンも刻んでるから相乗効果もある。まあ、一番分かりやすいもは防御と力のルーン。名前の通り、防御力と力を上げる。それと戦闘のルーン、こっちは対魔力とかの体内への攻撃を防ぐものと、魔力の底上げ」
「ある意味悪魔の駒の
部長がそれを聞いて悪魔の駒の戦車に僧侶に似ているという。確かに戦車のようで僧侶のようだ。だけど、それってつまりクイーンじゃありませんか?というか、塔城さんが私のポジションとか呟いてる。仕方ないじゃないかルークの特性に似たのはいろいろなものと遭遇するからだよ。
「他にも活動のルーンと生命のルーンを刻んでます。活動のルーンは俺の細胞を活性化させて体の負荷を軽減させる役割を持っています。生命のルーンは俺の刻まれているルーンのいわば司令塔といっていいでしょう。コイツがあるおかげで魔力を流してルーンが起動します」
「なんで、生命のルーンが司令塔の役目を果たしているんだ?だって生命ってことは生きてるとかそういうことじゃないのか?」
「いい質問だ、兵藤。だけどそれだとルーンの意味を説明しなきゃならないから省くけど、生命のルーンには衝動、完全性、創造の意味があるんだ。刻んでいる生命のルーンに練りこんだ意味は完全性。刻みすぎて不完全なんだよ、俺のルーンは。この完全性があってこそ、俺の体に刻まれたルーンが安定しているんだ」
兵藤は分からないといった風に、頭を抱えていた。これは魔術を勉強して理解しなければ意味がないが、使わないのならそこまで深く考える必要はないことを伝える。だけど、もし使うのだったら聞くなりしてくれれば答えるとも伝える。
「なら、剣は?ただの剣にしか見えなかったんだけど、あの剣はなんだい?」
「あの剣は普通の剣だよ」
そう言って、剣をカードから出して祐斗に渡した。祐斗はそれを見るがただの剣と理解したみたいだ。だが、あることに気付いていた。
「柄のところに刻まれてる文字、それってルーンかい?」
祐斗は返しながら聞いてくる。
「そう。所有と防御のルーンを刻んでる」
「なんで所有と防御のルーン?普通、力とか攻撃系のルーンじゃないのかよ?所有は?」
「所有はこのカードに入れるため。それとただの剣に属性なんてつけようとすると剣が壊れるか簡単に折れてしまうんだ。特殊な鉱石か、魔力を込めて作ったのなら別だけどね」
「じゃあ何で力のルーンを刻まないんだ?」
「それは、剣自体に力を付与したところで意味がないからだよ。剣の力=攻撃力じゃないんだ。剣の力は使用者によって決まるから力は実際は剣とは相性が良くないんだ。それと違って防御のルーン。これは剣とは相性がいい。このルーンを刻んで魔力を流すだけでかなりの硬度になるんだ。刃こぼれもしにくくなるからとても助かる」
「ルーン魔術って言うのは奥深いものなんだなー」
兵藤は今の説明を理解したのかうんうんと頷いている。
「じゃあ、銃にもルーンが?」
「もちろん、銃にもあるよ」
マガジンを出して弾を一つ取り出すと机の上に置いた。そこにはNのような文字が刻まれている。
「N?」
「いや、これはハガルといって、英語にするならHだよ。で、これは俺がもっとも得意にしている破壊のルーン。もっとも俺がよく使うルーンで扱いを間違えば危険なものだよ」
そう言って弾をマガジンに籠めなおしてしまった。
「これで一通りは説明しました」
「ええ、だいぶわかったわ」
部長はそう言う。この前のように、これ以上は深入りしないところはありがたい。
「それじゃあ、自分は帰りますね。少しは眠っておかないと学校に支障をきたすので」
「いいわよ。だけど、今度からは今日みたいに勝手なことはしないでね」
「了解しました。それじゃあ、また午後の部室で」
俺は部長たちに別れを告げ家へと帰った。