Xenoblade2 ~世界樹と空と影と~   作:向井 光輝

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第三話 力と意志

 体中を清らかな風が吹き抜ける。

自らを照らす朝陽がいつもより眩しい。

外の世界は何も変わらないように見えて、とても輝いていた。

「......凄いな」

ソラは思わず声を漏らす。

「ほら、ぼうっとしてないで行きますよ、ソラ様」

ソラはシオリに外へと連れ出された。

今はまだ家から1歩出ただけなのだ。

「行きますよ。

私、外についてはソラ様より詳しいんですから」

シオリが自慢げに胸をはる。

その美貌も相まってソラは少し目を逸らした。

「お手柔らかに頼むよ」

ソラは立ち上がりシオリの手を取った。

 

 ソラはシオリに連れられるがままトリゴの街を回った。

露天では色々な商品をオマケされ、軍拡区では怪訝な目をされたこともあった。

空想でしか無かった景色が鮮やかに彩られていく。

一通り回った後、ソラ達はトリゴの街の真ん中、雲海を一望出来る場所へやってきた。

「ありがとう。外に出ることも自由に歩き回れるのもシオリのお陰だ。感謝してるよ」

流れる雲海を眺めながら言った。

「どういたしまして。......と言いたいところですが今の私では街の外までソラ様をお守りすることが出来ません......ルークさんの前で大見得切ったのに、情けないですね」

申し訳無さそうにシオリが呟く。

「いいさ。シオリがいなければボクは一生外に出ることも出来なかったよ。

この風を感じさせてくれただけでも......本当に感謝してる」

シオリを見つめながら感謝の意を述べた。

「そ、そんなかしこまらないで下さい。

 .........でも、ありがとうございます」

すこし照れたようにシオリが返す。

「......」

「.......」

 2人の間に静寂が流れる。

ただその静寂はけして気まずいものではなく、心地のよい静寂だった。

「...そろそろ帰りましょうか」

長い静寂をシオリが破った。辺りはすっかり暗くなり、夜の活気ももうまばらだ。

「もう少し......いや、もう遅いし、帰ろうか」

夜風が静かに2人を撫でる。

初めての”デート”はこれにて終わりを告げた。

 

 

 

 

 

 もう何度目かの2人の朝がやって来た。

小鳥の囀りにお茶の香り、いつもと変わらないゆったりとした時間が流れていた。

 だが、そんな中2人の元に1つの知らせが舞い込んだ。

『ヴァンダム団長が亡くなった』

それは以前ソラが世話になっていた傭兵団の団長の訃報だった。

「あの団長さんが死んだ!?どうして!」

「俺だって信じたく無かったさ。

だが事実だ。あの人も、こうなる覚悟はあったんだろう」

事を伝えに来たルークが言う。

沈黙が走る。2人にとって団長はそれぞれかけがえのない存在だったのだ。

「...団長さんのお墓はどこに?」

「フォンス・マイムのカラムの遺跡だ。

......お前まさか、行くつもりじゃないだろうな」

「シオリのおかげで外に出られるようになったんだ。インヴィディアまでは定期船があるし、街の外に出ることになっても傭兵団の人たちに頼めば大丈夫さ」

心配そうなルークをみてソラはそう言った。

もう、以前の自分とは違うんだと言いたげに。

「.........そうか、なら止めはしないさ。団員達によろしくな」

その言葉を聞き振り返った時には、ルークはもうそこにはいなかった。

 

 

 

 

 

 「もう一度聞きますけど、本当に行くんですね?」

玄関の前を塞ぐようにシオリがソラへ問いかける。

「ああ、団長さんには話したいことが沢山ある。勿論、シオリのことも」

「わかりました。でも、無茶だけはしないでくださいね」

「分かってる」

そういってソラは玄関を跨いだ。

 2度目の外。

吹き抜ける風がソラに此処が外であることを実感させる。

もう一生出る事も無いと思っていた外に、こうしてまた足を踏み入れている。

不思議な感慨に浸りながら、ソラ達はあくせくと動く人を横目に船着き場へと向かった。

 

 

 ------グーラの船着き場

居住区の間を流れる川の様な雲海に様々な巨神獣船が出入りしている。

インヴィディアへの定期船まではまだ少し時間があったため、2人は近くのカフェに入り時間を潰すことにした。

「うーんここのお茶、美味しいですね」

「シオリのには敵わないよ」

少し咳き込み、顔がカァッと赤くなる。

「そ、そんなこと、平気な顔して言わないで下さいよ!」

「ええ!?なんかご、ごめん」

ソラは顔を逸らす様にして辺りを見回した。

此処から見えるグーラは、自室から見える景色とは少し違う。

雲海に近いせいか、グーラをより立体的に見ることができ、ソラは改めてこの街の大きさを肌で感じた。

道行く人も家から見える人たちとは少し違う。

だが、ソラは少しの違和感を感じずにはいられなかった。

「軍人が多い...」

ここ数日、明らかに街に軍人を見ることが多くなった。

「ドライバー狩りのせいでしょうね...」

シオリが静かに答えた。

ソラもその言葉は耳にしたことはあった。

「ドライバーの殺害が、止まらないんです。

ドライバーを殺せるのはおそらくドライバー。

だから、巡回が多くなっているそうなんです。」

「被害者でもあり、容疑者でもあるって訳か...」

シオリの容姿からか視線を多く感じるが、それとは少し違う視線をソラも感じることが出来た。

「...さあ、そろそろ船の時間です。行きましょう、ソラ様」

シオリに手を引かれて船へ向かう。

 この日ソラは生まれて始めて生まれ故郷、グーラを離れた。

 

 

 

 

 「ううう~気持ち悪いです~」

少しの船旅の後、2人はアヴァリティア商会へと到着した。

道中は何の問題も無く...いや、シオリが少し...かなり乗り物に弱くものの数分で酔ってしまったが。

「シ、シオリ、頼むから少し離れてくれ!

船の中でずっと膝枕だなんてボクがどんな目で見られていたか...」

「もう船は嫌ですぅ~」

だがシオリは一向に離れようとしない。

「ま、まだインヴィディアにもついて無いじゃないか!

あーもう調子狂うなぁ...」

 ------アヴァリティア商会

このアルストの商業を仕切っているノポン族の拠点であり、

この商会自体が類を見ない巨大な巨神獣船になっている。

 2人がインヴィディアへ直行せず、ここを経由したのには2つの理由があった。

 1つはインヴィディアとスペルビアが対立関係にあるためだ。

この2国は今や戦争勃発寸前まで来ている。そのため、スペルビア領であるグーラからの直通便は現在休止されている。

「まったく....お、あそこかな」

ソラの視線の先には小さなカウンター、そしてその奥には様々な人種の傭兵とブレイドがいる。

「すいません、フレースヴェルグ傭兵団の支部ってここであってますか?」

「はい、ご依頼ですか?」

1人のインヴィディア人の女性がソラの問いに答えた。

 これが2つ目の理由、傭兵団支部への連絡だ。

ある程度の規模の傭兵団になると世界中から依頼を受けることになる。

そのために世界中からヒト、モノが集まるアヴァリティアは都合が良い。

世界中から、大小様々な傭兵団が支部を設けているのだ。

「フォンス・マイムから本部までの護衛をお願いしたいんですが...これを」

そう言ってソラはルークから受け取った紹介状を渡した。

「紹介状ですか、少々お待ち下さい」

そう言って女性は奥へと入っていった。

「正直ルークの紹介状があって助かったよ。お金も無限にあるわけじゃないし」

そう言ってソラは辺りを見回す。

流石は世界一の商会と言ったところか、様々な人種が絶え間なく行き交っている。

素材、食料......そして兵器。

開戦の兆しはソラでも感じることが出来た。

(また戦争が始まるのか...)

「お待たせしました」

いつの間にか奥から戻ってきていた受付の声がソラを現実へと引き戻した。

「紹介状は確かに受け取りました。当日はサラというドライバーが護衛にあたらせていただきます」

「そうですか。ありがとうございます」

そう言ってソラは礼を告げ、インヴィディア行きの船へと向かった。

「また船!?嫌ですぅ~~」

......嫌がるシオリを引きずって。

 

 

 

 

 1名のブレイドを除き、船は無事インヴィディアへと到着した。

「......凄い」

ソラはその眼前に広がる艶やかな景色に思わず声を漏らす。

 ------インヴィディア烈王国

草原広がるグーラとはほぼ反対の姿を見せる巨神獣。

巨神獣の中に国があるからか、1日を通してやや薄暗く、

その中で妖艶に光る木とのコントラストが、この国を唯一無二の景色へとさせている。

この景観の源こそ、この巨神獣に溢れるエーテルエネルギーだ。

光り輝く樹木の光はエーテルの光。

その肥沃なエーテルの元この国は発展してきた。

その肥沃なエーテルこそスペルビアとの対立の1つの原因でもあるのだが...

 ソラ達は街の中へ足を踏み入れる。

その歴史ある佇まいは最近開発が進んだトリゴとは全く違う様相を呈している。

入り口近くの広場でソラは護衛を探す。

すると1人の少女が目に入った。

ブレイドが傍らに控え、背は小さめ、そして短く切りそろえられた黒髪が辺りからは目立っていた。

「あの、君がサラさん...」

「んん?!グーラ人特有のフワフワとしたその耳!そして絶世の美女ブレイドを連れているってことは、あなたが依頼主のソラ!?アタシはサラ。こっちはアタシのブレイド、アマミだよ。アタシ達のことは呼び捨てで良いから!よろしくね!」

サラと名乗る少女はこちらへ向き直り話しかけてきた。

良く通る大きな声が辺りの注目を引いている。

「あ、ああ、ボクはソラこっちはブレイドのシオリだ。よろしく、サラさ...サラ、アマミ」

ソラが言葉を返すとシオリも無言で頭を下げた。まだ酔いが治まってないらしい。

「じゃあじゃあ、さっそく村に行こうか!」

「ちょっと待ってくれ」

意気揚々と街から出ようとするサラを呼び止める。

「村へ向かう前に寄っておきたい場所があるんだ」

 

 

 この首都、フォンス・マイムの中心には1つの遺跡がある。

長い階段を抜けた先に広がる巨大な劇場のような場所が広がっている。

だがその劇場は途中から崩れ、無くなっている。

これは元からそうなっていた訳では無い。

ヴァンダムが死んだ、その戦いの影響である。

 「そっか、ソラもヴァンダム団長に助けられたんだ」

長い長い階段を上りながらソラとサラは会話をしていた。

「も、ってことはサラも?」

「当たり前だよ!...あそこで団長に助けられて無い人なんていない。それくらい大きな存在だったんだ」

サラは昔を思い出すように目を細めた。

「アタシ、親に捨てられたんだ」

サラは階段を登りながら語り出した。

「よくは覚えてないんだけど、寒くて、心細くて、気づいたときには1人だった」

「どこに行っても何も出来るわけじゃ無く厄介者扱いの日々」

「......正直嫌になってた。いっそ死んだ方が楽かもって考えてた」

「でもそんなある日、ヴァンダム団長がアタシを見つけてくれた」

「養って、育ててくれた」

「そして、生きたいって思えるようになった。全部、団長のお陰だよ」

そういって、サラはこちらを向いて笑った。

その顔は後ろの光も合わさってとても輝いているように見えた。

「私とサラを繋げて下さいました。ヴァンダム様にはとても感謝しています」

アマミもサラに続いた。

「本当に、いい人だったんですね。私も一度会ってみたかったです」

「団長の想いはあの傭兵団に残ってる。

村に行けばそれがわかるはず......お、着いたよ」

そう言ってサラが指し示す先を見るとあれ程長かった階段も終わりが見えていた。

 階段を上りきり、遺跡に入るとそこには1つの墓石、

そして1人の人影があった。

「ルーク!?」「先輩!?」

ソラとサラが驚いた様に叫ぶ。

その声に応じて、人影------ルークはこちらへ振り返った。

「ソラ、そしてもう1人は......サラか」

「先輩!どうして!どうしていきなり傭兵団を」

「サラ」

サラの言葉を遮るようにルークが言葉を発する。

「その話はまた後でしよう。

ここは俺たちにとって神聖な場所だ。

...そんな話は似合わない」

ルークはそう言ってこのまま遺跡を去ろうとする。

「先輩!次ぎ合ったらちゃんと話して下さいよ!みんなも...あ、アタシも、先輩こと心配してたんですから!

約束ですからね!」

ルークは一度立ち止まり言葉を紡いだ。

「ああ、約束だ。......次会ったら、な」

ルークはそのまま階段を降りていった。

「サラ、今の話って......」

「あはは、大したことないよ。こっちの話、こっちの話」

少し困ったようにはにかむ。

「分かった。これ以上は聞かない。

.....でもいつか折り合いがついたら話してほしい。

あいつはボクの親友だから」

そう言って墓に向き直った。

 質素な墓だった。

それこそこの劇場に不釣り合いなほど。

だがそれも彼らしかった。

墓を見ているだけなのに彼の思いが伝わって来るようだ。

そんな不思議な想いがこもった墓だった。

「ヴァンダムさん、ボク、ドライバーになりました。

驚いたかもしれません、いや貴方の事だから予感していたのかもしれません。

シオリっていう、とってもかわいいブレイド(パートナー)です。

ヴァンダムさん言ってましたよね。

ブレイドとドライバーは一心同体。その絆こそがなにより重要だと。

ボク、この絆を大切にこれからの時間、大事に使っていきます。

本当にありがとうございました。」

 お参りを終え、顔を上げるとなにやらシオリがきまり悪そうに顔を背けていた。

「?」

ソラが不思議そうにしていると後ろから、

「全部言葉に出てましたよ~」「なかなか情熱的なのですね」

そう言われ急に気恥ずかしくなり、

「は、早く村に行こう!」

足早に遺跡を後にした。

 

 

 

 

 

 

 長い階段を下り街へ出る。

スペルビアと並ぶ大国なだけあって、街の大きさはかなりのものだ。

見たことのない景色に目を泳がせていると、人が集まっている1つの場所に目がとまった。

「ここは...」

シオリが興味ありげに足を止める。

「劇場だよ。バジュナ劇場。英雄アデルの話なんかが見れたりするけど、興味ある?」

 英雄アデル

ソラも......アルストに住んでいるものなら誰もが知る、伝説の英雄。

500年前、伝説のブレイド天の聖杯と共に世界を救ったとされている。

「少し、見てみたいです」

「う〜ん、新団長には今日中にすぐ行くって連絡してるけど、少しくらい遅れても...大丈夫だよね!

わかった、見に行こう!」

意気揚々と劇場に入ろうとしたサラは中から出てきた人に押し戻される。

「あれ、これって...」

「丁度公演がが終わったところだな」

後ろから老人がソラへ語りかけた。

「あなたは?」

「失礼、私はこの劇場の支配人のコールだ」

コールと名乗る老人はそう言いながら頭を下げた。

「!、でもなんでそんな人がボクに...」

「久しぶりに墓参りにでもと出たら、アイツの傭兵団が目に入ったのでな」

そう言ってコールは目を細めた。

「ヴァンダムさんのお知り合いだったんですか!...ヴァンダムさんにはお世話になりました」

「これこれ、そんなにいわんでくれ。

ワシは何もしていない」

そう言いつつコールはソラの瞳を見つめて続けた

「だがヴァンダム風に言えば

.........周りに流されるな、最後に信じられるのは己とブレイドだけだ。

......とでも言っておこう」

「?」

言葉の意味を飲み込めず、ソラは少し固まった。

「ささ、今日の公演はまだ予定があるから、良かったら見ていってくれ」

未だ固まっているソラを横目にコールは劇場へ消えていった。

 

 

 

 

 ソラ達は辺りで少し暇を潰し、次の公演を見ることにした。

内容は勿論、英雄伝説。

聞くところによると、この脚本はここの支配人......コールが書いているという。

精巧な舞台装置にトップレベルの演技、

そして、まるでその場に居合わせたかのような、臨場感のある脚本。

「凄かったですね!

あの雲海なんか本物みたいでしたよ!」

「そりゃアルスト随一の劇場だからね。ちょっとした自慢だよ!」

シオリ達は先程の感想を言い合っている。

「...ですよね!ソラ様!.........ソラ様?」

「あ、ああごめん。少しボーッとしてた」

公演を見ている最中もソラは先程のコールの言葉の事を考えていた。

(何故ボクにあんな言葉を......それにあの言葉の真意は...)

俯いているソラにサラがポンと肩を叩く。

「考えすぎだよ。団長と知り合いの人だし、きっと新しい劇のネタか何かだよ。...たぶん」

そう言って笑いながら外へ出る。インヴィディアは胎内に街があるためわかりずらいが、もう日が傾いて来てるようだ。

「結構時間掛かっちゃったね。フォンス・マイムで一泊するって選択もあるけど、どうする?」

「いや、大丈夫。このまま本部まで行こう。今日中に行くって連絡もしてあるんでしょ?」

「わかった。外での戦闘は任せて。こう見えても腕は確かだよ」

「まあ、初仕事なんですけどね」

サラとアヤメは同じポーズを取る。2人の連携も問題無さそうだ。

「ふふふ、頼もしいですね」

 

 

 

 「わぁ...すっごく綺麗...」

「これは...凄いや...」

街から少し歩けばインヴィディア特有の絶景が見られる。

「すごいでしょ、インヴィディアのサフロージュは」

サフロージュと呼ばれる淡い光を放つ樹木が辺り一面に広がっており、薄暗いインヴィディアの景観に合わさり何とも形容しがたい幻想的な風景が広がっていた。

そんな絶景の中を進んでいく。

道中モンスターも現れたが、サラとアヤメが慣れた手つきで倒していく。

「凄いです。私は戦闘が苦手なので

......ダメですよね、ブレイドなのに...」

「そんな事は無い。人には向き不向きがある。私とサラは戦いくらいしか取り柄が無いだけだ。ブレイドだからといって戦わなければいけないなんてことはない」

「オイ!アタシが戦いだけの無骨な女の様な言い草はやめろ!」

アヤメがシオリに言う。

「そうだよ。シオリがいなければボクはまだあのベッドで横のまま、この絶景を一生見ることも無く死んでいた。ブレイドは兵器なんかじゃ無いんだ。戦うだけが生きる道じゃないよ。

...自分の価値は自分で決めれば良い。ボクも見守っているから」

「ソラ様...」

そう言ってソラは昔の事を思い出す。小さい頃ソラに接する者はソラを病人扱い、どこか腫れ物扱いしていた。

だが、ルークは違った。対等に、1人の友人として見てくれたからこそ、ソラは自分の価値に気づけた。

(今度はボクの番だ。)

 「2人とも!危ない!」

そんなことを考えていると後ろから叫び声、気づいたときには2人はアヤメによって突き飛ばされていた。

「ってて...一体何が...!」

何とか起き上がり視線を向けるとそこには人の背丈を優に超えるスパイドがいた。

「一体何でこんな所にこんな大きなスパイドが......アヤメ!行くよ!」

サラとアヤメが散開しサラが武器を持ち正面から向かっていく。

「ハァッ!」

剣を振り下ろす振りをし、剣を投げる。

投げられた剣はスパイドを通り越し、背後に移動していたアヤメの手に収まる。

鮮やかな連携。

眼前のサラに目を取られていたスパイドはアヤメの攻撃を避ける事は出来ない。

「覚悟ッ!」

アヤメが背後から渾身のアーツを繰り出す。

しかし、その攻撃はガンッという鈍い音と共にはじき返される。

「!?馬鹿な、全く効いていないだと!」

「きゃぁぁぁぁ!」

前方から悲鳴が上がる。

見るとサラがスパイドにつかまれ身動きが取れなくなっている。

「サラ!!」

サラの元へ駆け寄ろうとするアヤメ、だがサラは無言でそれを制し、合図を送る。

(今のうちに攻撃を...!)

「クッ!」

助けに行きたい気持ちを堪え、再び攻撃の準備に入る。

「スパイド如きがァ!」

先程よりも力の籠った大振りの攻撃がスパイドを襲う。

だが、その時だった。

「!?.....ッァ!」

アヤメは吹き飛ばされ、その体は岩肌に叩き付けられる。

そこには一体のブレイドが立っていた。

「ブレイド...一体誰が...ァァッ!」

「サラ!」

スパイドがサラの体を締め付ける。見かねたソラがサラの元へ行こうとするがシオリが阻止する。

「ダメです!危険すぎます!」

「でもこのままだとサラが!......あ.......」

足に力が入らずその場に座り込んでしまう。

(一体どうすれば...助けを呼びに行きたいけど、ソラ様を置いていくわけには...)

「に、にげ.........き.ぁぁぁァァ!」

サラがこちらを向いて叫ぶ。その間にもスパイドの締め付けは強まっていく。声を出すのも苦しくなっていく。

(どうしてだ!立て!立つんだ!立ってサラを助けるんだ!)

ソラは必死に立とうとするが体が動かない。まるで金縛りに遭ったかのように体が言うことを聞かないのだ。

「じにだ......ない!いあ゛!たす...!ルークせ...................」

グシャッ。

聞きたくない、聞こえてはならない音がソラとシオリの耳に入る。

そして少し遅れて カラン という何かが地面に落ちた音。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「きゃあぁぁぁぁぁぁ!」

甲高い悲鳴でソラは意識を取り戻す。

その側にはボロボロになったシオリの姿が。

「!?シオリ、一体どうしたんだ!一体何があったんだ!」

立ち上がりシオリに駆け寄る。その姿を見てシオリは少し頬を緩ませる。

「良かった......

早く.....逃げて、下さい....

これを...持って...」

シオリはそう言ってソラに1つのコアクリスタルを渡す。

「?これは...」

カラン 、手を滑らせコアクリスタルが地面へと落ちる。

何処かで聞いた音、聞きたくなかった音、思い出したくない音。

ソラは恐る恐る視線を動かす。

       そこには 

               横たわったまま 

 動かない 

        一人の少女の

死 体 が

 

 

 

「あ、あ、あああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁァァァァァァァァァァァァァァ゛!!!!」

何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ!!

頭の中でその言葉が延々繰り返される。

何故動けなかった?何故助けられ無かった?何故何もしなかった?

後悔の念だけが嵐のように襲いかかってくる。

「早く...逃げて!」

シオリがスパイドに向かい攻撃する。

だがそんな攻撃など軽くあしらわれ、吹き飛ばされる。

 

 目の前にはシオリの剣がある。

  これは武器だ。

   ブレイドの武器だ。

    ブレイドはブキだ。

     武器は敵を倒すもの。

      ブキはテキを殺すもの。

       ブレイドはテキをコロスもの。

 

 これさえあれば

                  アイツを

−−−−−−コ ロ せ る!

「.........!ソ、ソラ様...ダメです....」

シオリの静止など耳に入らない。

ソラは剣を取り、真っ直ぐ走って行く。

アーツも知らない。戦い方も知らない。そもそも剣を持ったことすら無い。

今ソラを動かしているのは憎悪、悲しみ、怒りのみ。

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ゛!!」

ただ愚直に振りかぶった剣。その動きは素人そのもの。

否、それ以下のもの。

それをカバー出来る力も奇跡も、

ソラには........................無い。

「....がはッ!」

 剣はスパイドに届くことは無かった。

気がつけばソラは宙に舞っていた。

そして遅れてやって来る信じられないほどの鈍い痛み。

そして、地面に叩き付けられる体。

体中の全てがかつてないの悲鳴を上げる。

意識が遠のいていく。

感覚が無くなり、朦朧としていく意識。

燃え上がる様な灼熱の死の奔流。

その中で1つの幻想を見た。

 --------眩い程の真っ赤な(ヒカリ)を。

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