全部が円満に解決したAveMujicaのその後の設定
1/14:若葉睦
「...ちょっと早く来すぎたか」
現在時刻、13時の少し前。
現在地、若葉邸。
正確には、その塀の前。
インターホンを押す手が震える。
人間は5分前行動が基本だというが、集合時間5分前に来るのもなんだかなぁと、俺はそう思うワケ。
「ふー...よし」
「何してるの?」
「ばっ!?」
インターホンを押すための心作りのために深呼吸してた俺の後ろから、本日の主役が話しかけてきた。
「なんで外にいんの!?」
「...碧なら、早く来ると思ったから。お出迎え」
「...ありがとう。でっかい家のインターホン鳴らすのは結構しんどいから助かったよ」
俺がそう言うと、睦は少し首を傾げた。
「碧、いつも来てるのに」
「いつもは俺だけじゃないからね」
何が違うんだろう、と言いたげな顔をしている。
「応対できる人物が俺か俺以外か」
「...よくわからない」
「分かんないならそれでいいよ。で、俺はなんで呼ばれたの?」
昨日の練習終わり、事務所の休憩室で休んでいた俺の所に小走りで来て、隣に座ったかと思えば、「明日、暇なら、ギターもって1時に家に来て」とだけ言われたので何が何やら、という感じである。
「...ギター、一緒にやりたくて」
「...俺より、初華の方が」
「碧と、やりたい」
「...分かった。いいよ」
睦の顔が明るくなるのを感じる。
だいぶ無理をしていたせいで、一時期は本当に血の気が失せていた顔をしていたが、だいぶ回復しているようだ。
「...家のスタジオでいいの?」
「うん。そのために来てもらった」
「...そっか」
門が開き、若葉の敷地内を歩く。
時々AveMujicaの練習場所に使うとはいえ、一人で入るとなると途端に緊張してくる。
いつもと同じ場所で、ギターを弾くだけなのに。
「碧。今日、何の日か知ってる?」
「1/14...なんかあったっけ」
脳内カレンダーを捲ってると、時間切れ、と声が聞こえる。
「正解は、私の誕生日」
「え、そうだったの?悪い、なにも用意してない」
「碧は、そうだと思った。だから、今日は私の言うこと、聞いてもらう」
「...何なりと」
睦の足が止まる。
「...そういうの、やめてほしい」
「ごめん、ふざけすぎたな」
「碧は、良い人だから」
「...それは違うよ。嫌われたくないだけ」
若葉邸の玄関を潜り、地下スタジオに向かう。
睦がパイプ椅子に、俺がソファに座って、ギターを構える。
「何弾くとかある?」
そう聞くと、睦は自分のギターを置いて、俺の横に来る。
「...碧のギター、聞いてていい?」
「え?いや、良いけどさ」
「碧のギター、好き」
「...褒めても、こいつは答えてくれないよ」
元の持ち主は俺ではない。
答えるはずもない。
「そんなことない。碧の音、私は好き」
「...そっか、ありがとう」
人からの褒め言葉は素直に受けておくべきだと、最近学んだ。
「ん...じゃあ、エレキだけど」
「碧?」
エレキで弾き語りしちゃいけないって法律は、きっとないはず。
暗黙のルールとかなら知らないけど。
真面目に誕生日のあれ、歌うこともそうそうないから。
「...睦、誕生日おめでとう」
「...ありがとう。嬉しい」
「多分だけど、どうせ後でメンバーがいっぱいくれるぞ」
「それでも、碧の歌が嬉しかった」
素直に受け取ったら受け取ったで、なんだか気恥ずかしい。
距離が近いのもあって、さらに恥ずかしい。
「碧、顔が赤いね」
「近づかれると恥ずかしいんだよ」
「ステージじゃ近づいてくるのに」
「あれは俺であって俺じゃない」
自己意識のなんたら、と言うやつだ、知らんけど。
「碧、ありがとう」
「...せめて1週間前とかに知ってれば、なんか用意できたんだけどな」
「この時間がプレゼントだよ。碧とギター弾けて、嬉しい」
「...そっか」
まぁ、主役の笑顔が見れたってことで、よしとしよう。
なんか知らんけど睦から碧への矢印が大きいね、なんでだろうね