迷う心の在り処   作:ユイトアクエリア

100 / 100
復活/再誕


65:Renascentia/Renatus

ステージ袖。

会場に流れている3拍子の音楽に合わせ、オーディエンスのボルテージが上がっていくのを感じる。

 

「あー、あー、んんっ...あー...うん、よし」

「碧、平気?水飲む?」

「や...あー、うん、一応飲んどくか」

 

ストロー付きのペットボトルを受け取り、仮面の下から潜り込ませて口の半分ぐらいを液体で埋める。

 

「あんまり歌う前に咳払いするのよくないっていうんだけどね、ついやっちゃうよね」

「ん?んー、わかる」

 

初華...ドロリスがそういうのを、飲み干しながら答える。

現役の歌手でもついやっちゃうことを素人がやらないわけはない。

 

「さぁ、そろそろ出番ですわ。ルクシスは最後、いいですね?」

「OK。完璧に演り切ってやらぁ」

「では、行きましょう」

 

俺を除くメンバーの5人が、ステージへ出る。

少しすれば俺も出番だ。心構えをしなければ。

 


 

『...皆、揃っていますわね』

 

聖域:パラディーススにて、忘却神オブリビオニスが、自身の眼下に跪く騎士たちを一瞥する。

 

『アモーリス』『ここに』

『ティモリス』『ここに』

『モーティス』『...ここに』

『ドロリス』『はい、ここに』

 

騎士たちの確認を終えると、ドロリスが不意に『...足りない』と呟く。

 

『ドロリス、どうした?』

『もう一人、いるはずなんだ。ここをずっと守護っていた誰かが、いたはず』

 

ティモリスが、アモーリスとモーティスに『どうだ?』と聞くが、2人とも首を横に振った。

記憶にあるのは自分だけなのかと、呪詛のように『いたはずなんだ』と繰り返すドロリス。

瞬間、顔を勢いよく上げた。

 

『オブリビオニス様!!』

『何か?』

『あなたは、「ルイナス」という騎士のことを覚えていらっしゃいますか!?』

『いいえ。あるいは、そんな騎士は()()()()()()()()()()()のかもしれませんわね』

『そん、な』

 

ドロリスは頭を抱えた。

しかしふと、思い出したことがある。

ルイナスの言葉、「お前は忘却に耐性があるのかもしれない」と言ったこと。

 

『ボクだけしか、覚えていない...?』

『――そう、オ前だけが、覚えてイてくれた』

 

ドロリスの呟きに呼応するように、パラディーススに部外者がやってきた。

 

『あんた何者?』

『楽園を汚す者は、排除する...』

 

アモーリス、モーティスが剣を向けるが、部外者は動じない。

それどころか、腰に吊ってある剣と思しき物すら、抜く素振りも見せない。

 

『血気盛んダなぁ。剣は仕舞っテくれ』

『...お前は?』

 

ティモリスの問いに、部外者は騎士礼で応えた。

 

『俺はルイナス。君が覚えてイてくれて、俺は存在デきた。ありがとウ、ドロリス』

『...違う』

 

ルイナスが差し出した手を、ドロリスは払った。

 

『違う。そんな人じゃない...君は、そうじゃなかった...!』

『...殻が壊れているのね』

 

オブリビオニスが呟くと、ルイナスはわざとらしく大ぶりな、カーテシーとレヴェランス*1を混ぜたような動きで礼をする。

 

『やァ、忘却神!お久しゅうごザいます』

『いいえ、あなたなど知りません。()()()()()()()()()()()?』

 

そう聞けば、ルイナスの仮面が音もなく落ちた。

 

『...や、忘却神オブリビオニス。俺はルクシス。この閉塞した楽園に、光をもたらす人形さ』

 

*1
レッスン前後や、舞台で踊り終わったあとにするお辞儀




なんだかんだで累計100話ですって、ありがとうございます。
お気軽オブお気軽に感想など残してくれると舞い上がりますので。

率直に言って

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