It’sMyGO!!!!!13話<これ<AveMujica1話
前略、AveMujicaで写真集を出すことになった。
「なんでだよ」
「マスカレードの人形同士の絡みが意外と好評でして」
「...意外と?」
「えぇ、意外と」
豊川本人にも想定外だったらしい、ではなく。
「なんで俺まで出るんだよ」
「あなたもAveMujicaの一員でしょう?」
そう言われてしまえばそれまでなのだが、一旦ワンクッション挟ませてほしいい。
「いやでもさ。需要とか」
「ありありですわ」
「おいマジかよ」
ご丁寧にクラファンまでやってやがる、マジかよこのお嬢様。
「ということですので。他のメンバーの許諾は取れていますわ」
「...分かったよ。なるようになるだろ」
「うわぁ...ちゃんとしたスタジオ...」
通された控え室で衣装に着替え、仮面をつける。
ギターがないだけで、結構な不安感がある。
後は、まだ心がルイナスになりきってないあたりが、不安材料だったり。
そんな事を思いながら、スタジオに戻ると、すでにドロリスの撮影が始まっていた。
「...さすがというか、何と言うか」
「本職は違いますね」
「本職じゃないにしろ、場慣れはあるだろうな」
海鈴...ティモリスとドロリスのポージングや表情管理を見ながら談義する。
正直5人だけのカットで出した方が飛ぶように売れそうだけどな...。
「ルイナスのカットも稀少ですよ。何せいつも後ろか横顔しかないので」
「...そうだっけ」
確かに、幕間劇の時は横を向くことが多いし、演奏の時はドロリスの後ろにいる。
でも、そんなに正面顔なかったっけ。
「ないんですよ、これが。びっくりするぐらい」
「ライブレポートの記事を見させていただくときもありますが、ルイナスの正面顔はありませんわね」
オブリビオニスが後方から補足をしていく。
そっか、正面顔ないんだ。
「...もしかして、今日のメインそれ?」
「まぁ、4割ほどは」
「残りは?」
「もう4割は個人カット、後の2割は...」
言葉の代わりに差し出された紙の切れ端。
「...あー、人形劇の絡みってそういう」
「そういうこと、みたいですわ」
所謂、営業と呼ばれる類のものだ。
「...オブリビオニス的には、ありなの?」
「よほど過激でなければ、と考えています」
「...そっか」
そうだ、このバンドはプロなんだ。
求められてるものをお出しするんだから。
「おや、私の出番ですね」
「お、頑張って」
「はい、行ってきます」
いつの間にかモーティスの撮影まで終わり、次はティモリスのターン。
「...ルイナス」
「モーティス、お疲れ」
ティモリスと入れ替わりにモーティスが俺の横に座る。
「...疲れた?」
「...ん」
「そっか」
AveMujica加入当時よりは、仲良くなれたかな。
まだ若干、理解できない部分はあれど。
「...んぅ」
「...眠い?」
「...写真、あんまり」
「あぁ...」
写真を撮られるのに抵抗がある人間は少なからずいる。
仮面をつけていようが、人そのものが変わるわけじゃない。
多分、若葉もその系統。
「私の出番ですわね、モーティスを頼みます」
「はいよ、行ってらっしゃい」
ティモリス、アモーリスの撮影が終わったようで、オブリビオニスが撮影場所に向かっていく。
「ねぇ、ルイナス」
「動画なら撮らないよ、後仮面も」
「ケチだなぁ」
「ケチで結構、怒られるのはごめんだからな」
高校生にもなって怒られるのは普通に嫌だし、普通に精神が参る。
「...俺が動画出たところで、でしょうに」
「ん~...そういうことじゃないんだけど、そうなの?」
「別に有名人でもないので。あと仮に有名人だとして、それをバリューにはしたくないし」
仮に俺がビッグネームの息子だとして、その情報は隠し通しておいて欲しい。
バレるならバレるでいいが、きっとその世界の俺は、平穏な生活を望むはずだ。
下心で付き合うことのない、純粋な友人関係を、俺は欲しがるはずだ。
「終わりましたわ。ルイナス、出番ですわよ」
「ん、了解。行ってくるよ」
さて、ルイナスに代わろう。
人格の話ではなく、気持ちの入れようだ。
指定されたポーズをカメラの前で作り、それがシャッターに納めていく。
他のメンバーは振り向き画が多かったが、俺は正面が多いようだ。
理由としては、やっぱり正面画が異様に無いことだろうか。
「...ふぅ」
個人カットは終了。
ここからはペアカットらしい、それは良いんだけど。
「...ほとんど下なの?俺が?なんで?」
「支えられるだけの力と、構図的に。仕方ないことですわ」
「はぁ...わかった、手の位置とかは指定しろよ。殴られる覚悟はできてるけど、出来る限りない方がいい」
「...承知しておりますわ」
メンバー全員から1,2発、合計で10発前後ぐらいは覚悟しておくか。
「それから、これを」
「...穴抜きグローブ?」
「人形という設定上、関節を隠すのにはちょうどいいですわ」
グローブをはめて、指の関節を隠す。
「なるほどね。わかった...ドロリスの膝は良いんだ」
「あれはまぁ、出来が良かった人形ですので」
「...そっすか」
そんなこんなで撮影が始まった。
まずはドロリスと。
「...マジかよ」
「...すごい注文だね」
所謂顎クイと言うやつだ、それをやれと言われている。
俺が、ドロリスにやられる側で。
「なるようになるだろ」
「...ルイナス、ごめんね」
「謝るなよ。ちょっとアガってきた」
「...ダメなんじゃない?それ」
腕と足のポジションを確認してると、右手が絡んでくる。
「...受けはいいと思うけど、嫌だろ」
「ボクも、ちょっとアガってきたかも」
「...はいはい」
ドロリスに顎をつままれ、少し上げられる。
顔が近い、ただでさえ綺麗な顔が近づく。
直視してないのがカメラにバレないのは、俺のつけてる仮面のおかげ、といったところだろう。
「目開けてよ。ルイナス」
「馬鹿言え、顔が良いこと自覚しろ」
「照れるなぁ、ルイナスもかっこいいよ」
「...やりづれぇ」
仮面付けてないとふわふわしてんのに、ドロリスになった途端急にスイッチが入る。
本当にやりづらい。
カメラマンのOKです!が聞こえるまで、ひたすら耐えた。
「...メンタルが死ぬ」
「大丈夫ですか?」
深呼吸代わりに仮面の隙間からストローを突っ込み水を吸引。
「ダメに決まってんでしょ、これがあと4人あんの?きついって」
「弱音を吐いてるところ恐縮ですが、次は私です」
「勘弁してくれってお前も顔良いじゃんかよ」
本当にメンタルがもたない。
殴られないとしても綺麗な顔に見つめられ続けて目を合わせ続けろという方が無理な話だ。
羨ましいとか思ったそこのお前!遊びじゃねえんだぞ!散れ!!
「...本当に大丈夫ですか?」
「...何とかなるよ」
ティモリスに頭を抱かれ。
「ほら、手持って」
「...アンタが見下してくるの結構腹立つんすけど」
アモーリスに跪き。
「こう、それともこう...?」
「仮面が硬くてよかったな、今頃俺は顔ボコボコだよ」
「...すみません。あまり慣れてないもので」
オブリビオニスに仮面を付けられ(るふりをされ)た。
もうしんどい。
「最後、私」
「うん」
「ルイナス、平気?」
「うん」
「ルイナス、そっちじゃない」
「うん」
進む方向もおかしくなってきて、メンタルが底をつきそうだ。
なんで最後に若葉の令嬢なんだろう、本当に顔が綺麗で羨ましい。
仮面で隠れてるとはいえ、血色が薄いのがかえって神秘的に見えて...いや、もう考えたくない。
「ルイナスが上」
「...え?」
「ルイナスが、私を起こす」
「...なるほど」
それなら、多少顔を見ずに済むかも。
横抱きにし、肩を持って、という構図だ。
「...ラスト、気合入れよ」
「私も、頑張る」
「手の場所、嫌なら言えよ」
とりあえず正座の体制から始め、モーティスの背中に左腕を回し、左肩を軽く掴む。
余った右腕は一旦保留で、カメラの指示があれば動かす感じにしよう。
「ルイナス」
「大丈夫か?」
「うん。重くない?」
「軽い」
強がりではなく、本当に軽い。
体重の半分ほどを左腕で受け止めている計算だが、それにしても軽すぎる。
「ルイナスさん、右手をモーティスさんの顔の近くに」
「...だってさ、いいか?」
「うん。大丈夫」
右手をモーティスの頬のあたりで固定すると、良い構図だったのかシャッターが一枚切られる。
「ルイナスさん、笑いかけてみましょうか」
「はい」
まぁ、表情はほとんど見えないんだけど。
目元だけでも笑った感じにすれば、シャッター音が2回。
「最後に、モーティスさんを抱きしめてみましょうか」
「はい...はい?」
この体勢で...?
「ルイナス、平気?」
「...モーティスは」
「私は、平気。ルイナスのおかげ」
「...じゃあ、後でいくらでも殴ってくれ」
言って、左腕をモーティスの体ごと引き付け、右手をモーティスの頭にのせる。
お互いの顔は見えないが、それでもカメラはご満悦のようで、連続してシャッターが切られていく。
「OKです!お疲れさまでしたー!」
その声とともに、腕の中のモーティスを開放する。
「悪い、ちょっときつくし過ぎた」
「...ルイナス、大胆」
「...悪かったって」
「んで、どんな具合よ、売れ行きは」
「...こんな感じだそうです」
海鈴のタブレットには、線グラフが右肩上がりになっている図が映し出されている。
「コメントも多数寄せられています。満遍なく皆さんについて書かれていますが...やはり、ルイナスについての意見が多いですね」
「...なんて?」
聞きたくはなかったが、一応本人であるわけだし。
これで批判が寄せられたなら、次から俺が外れるだけだし。
「『正面画、めちゃくちゃイケてる』『どれもかっこいい』『抱かれたい』...など」
頭を抱えた。
盛況だし、何なら絶賛じゃないか。
「...最後はまぁ置いとくとして、一応成功ってことでいいんだな、豊川」
「えぇ。ありがとうございます、皆さん」
「よかったね、さきちゃん」
まぁ、創始者が喜んでるならいいんだろう。
第二回があったとして、やりたくないけど。
音楽売りしたい豊川さんが写真集なんてものを出すかって言ったら
多分出さない