現在時刻、3/12の午前10時。
現在地、自宅のキッチン。
目の前にはチョコレートの山。
さて、本日私が作りますのは、メンバーからバレンタインで頂いた物への返礼品でございます。
まず初めに、お金はないわけじゃない。
が、今回どうして手作りかって言うのは、感謝を念を込めるためです。
決して既製品に愛がないとかそういうわけではなく。
よくお返しは3倍と言われますが、その3倍とするのは果たして金額で良いのか、いいやよくないということで。
ここは感謝の気持ちを3倍にしていこうと思った次第です。
というより、手作りの品に値段付ける方が失礼だろってことで。
「さ、始まりましたn分クッキング、nは自然数とするって感じで」
料理はしたことないが、生クリームとチョコを溶かして混ぜて再形成するぐらいできらぁ。
「あっつ!あっつ!」
「固まるの早くない!?まだ流し切ってないけど!?」
「...なんか味にムラがあるな」
「だからあちぃって!!」
この始末☆...ではなく。
「は~...チョコ溶かして固めるだけで2時間かかった...さすがに料理下手...」
ではない、こっからがメインだ。
今回作るのはカップケーキ、inチョコ。
スイーツは分量通り、レシピに書いてある通りにやればいいっておばあちゃんが言ってた。
ちなみにレシピはC〇〇KPAD、ありがとう、いいレシピです。
「卵と砂糖をちょっと頑張って混ぜる...白身は?分けない?そう...」
「取っといたチョコとバターを混ぜる...溶けない...あ湯煎か、溶けないわけだ」
「頑張って混ぜたのと湯煎したのを混ぜる...まーぜる~まーぜる~...だれの動画だっけこれ」
「薄力粉をふるって...ええいめんどくさいってやったらひっぱたかれたっけ」
「薄力粉まで入れたやつをカップに半分入れて...さっき2時間かけたやつを置いて...上からかぶせて...180度に予熱した...予熱するって書いとけよ」
料理初心者程レシピを読まず、オリチャー*1を展開する。
俺ももう高校生だ、子供とはいえ善悪の判断はつく。
オリチャーがうまくいくのはニュータイプだけなんだよ、あの人もうまくいってなかったけど。
「気を取り直して...オーブンで14~16...15分強で行きますか」
トレーをオーブンに突っ込んで、15分強にセット、スタートボタンをぽちっとな。
少なめの時間で焼けたためしがない、餃子とかハンバーグとか。
料理において時間はケチってはいけない。
15分待ちましょう、チョコおいしい。
――15分後
オーブンが焼き上がりの音を鳴らした。
「できたかな...お、いい感じそう」
オーブンの窓から見えるカップケーキはそこそこいい見た目をしている。
耐熱手袋を使ってトレーを取り出す。
「なんでチョコ固めるのに2時間かかってカップケーキは一発でできんだよ...キッショ...」
見た目はいいからたぶんできてる、ヨシ!
「...飛び出していけしてない?」
なんでヨシなんて言ったんですか!?
まぁともかく、いったん完成ということで。
冷蔵庫に入れて明日持っていきましょ。
「おはよーございま~す...あら、俺だけ」
さすがに集合30分前にはいないか。
と思っていたが、すぐに足音。
「あ、碧くん。おはよう」
「碧、おはようございます」
「おはよ、初華、祥子。はいこれ」
名前が割れようと呼び名は変わらない。
「これは...」
「カップケーキ...?これ、碧くんが...?」
「苦労したんだ、味は保証するよ」
「ありがとうございます...でも、どうして...?」
祥子の問いにはカレンダーを見せることで答える。
「お返しは3倍返しって言ったの、忘れた?」
「わたくしは言ってませんが...」
「私も...でも、ありがとう。食べていい?」
「もちろん。感想をくれ。でも気をつけろよ、中身こぼれるかも」
初華の割と大きめな一口で、中身のチョコまでたどり着いたようだ。
「んっ!?」
「初華?」
「ん、んむ...大丈夫。すごいおいしいし、すごいねこれ、中にチョコ入ってる」
「あぁ、そういうことですの...ではわたくしも...」
初華より小さめな一口。
それだけでは中のチョコには届かない。
「ん...おいしい...あら?出てきませんわね」
「もうちょっと大きめに行くといいよ。気を付けて」
「えぇ。あむ...んっ...」
...年頃の男には毒な声しか出さねえな、この二人。
「...どう?」
「...これ、ほんとに碧が作ったんですの?売れますわよ?」
「売らないよ。中のチョコ作るのに2時間かかってんだ」
「なら、豊川の力で」
何がならなんだろうか。
「あんたが動かせるのはAveMujicaだけでしょうよ」
「...なら、若葉の力で」
「だからなにが『なら』なん...睦?」
「うん。おはよう」
ステルス入室、気づかなかった。
「おはよ...はい」
「碧が作ったの?」
「まぁ、ね」
「うれしい。飾るね」
「いや食えよ」
今のは芸人の血だろうか。
「冗談。はむ」
祥子の時も思ったけど、食べるの上手だな。
「...どう?」
「ん...おいしい。お店出せる。出そう」
「だから売らねえって。返礼なんだから」
どうして店に出したがるんだ。
「おはようございます。おや、それは」
「おはよう海鈴、これどうぞ」
「碧さんの手作りですか、ありがとうございます。いただきます」
一人ぐらい中のチョコ飛ばないかなとか思ったんだけど、みんな食うのうまいんだよ。
朝試食してテーブルベタベタにした俺がバカみたいじゃないか。
「...売れますね」
「売らねえよ、もう3回目だぞこのくだり」
「天丼でしたか。残念です」
もう何が何だか。
「おはにゃむ~...あれ、私が一番最後?」
「おはよ、にゃむ。これどーぞ」
「これ、あおこが作ったの?売れるよ?」
「作ったし売らない、このくだり4回目」
「えーケチ。いただきまーす、はむ」
...なんで誰も向こう側に飛ばさないんだよ。
「ん~!あおこ!これ売ろうよ!うますぎるって!」
「制作3時間、レシピはネットの引用、バレたら社会的に死だよ」
「じゃあだめか...」
なんでみんな売ろうとするんだ、お礼なのに。
「というか、売ったら返礼じゃなくなるじゃん。手作りじゃなくて既製品になるし」
「碧、照れてる。よしよし」
「...うっせ」
めちゃくちゃ馬鹿にされたけど、おいしいって言ってくれたし、まあいいか。
「ところで、どうやって飛び出させずに食うの?」
「ひゅーってやってひょい、だよ」
「センスなくて悪かったな」
ネタ多くてすまんかった