書きたくなっちゃったから...
――昔から、歌うことと真似ることは好きだった。
『弱い者いじめはよくないよ』『つえー奴いじめる馬鹿がどこにいんだよ』
『焦らないで、もっと自由になっていい』
昔から、見るものすべてを真似た。
『みんな~!元気~?』『もっと元気になってくれたらいいね』
『あっちの方が強そうじゃない...』『逃げたら一つ、進めば二つ』
声の出し方から、動きまで。
『mission accepted』『実に面白い』
アニメからドラマから、ありとあらゆる映像作品から。
だから、いつしか演じることが素になった。
いくつもの役を使い分けて、適応する自分になった。
カラオケに誘われれば、引き立て役に。
声真似の披露の場では、少し崩してわざと下手に。
動きを真似する授業では、覚えられないフリをして。
そうしなければ、社会に馴染めないから。
完璧を見ると人は恐怖する、というのは、小さいころに学んだ唯一のこと。
だから、完璧にはしなかった。
何かを欠けさせ、あえて完璧じゃなくした。
...けれど。
『共に音楽を奏でる運命共同体となるのです』
『AveMujicaにふさわしい曲に仕上げて見せますわ!』
――お前は、そうなのか。
お前がそうするなら、俺もそうする。
完璧を、演じてやる。
最近、なんだか声が出しづらい。
特に無理をしてるわけでもない。
喉のケアだって怠ってない、なのに。
私はフロントなのに、ちゃんとしなくちゃいけないのに。
「あ~...ん...」
「『初華?』」
「あ、さきちゃ...あれ?」
確かにさきちゃんの声がしたのに。
「『初華らしくない』な、俺が祥子に見えたか?」
そう言いながら、のど飴をくれる碧くん。
「ううん。ただ、その、雰囲気が似てたなって」
「そうか。で、『何か悩み事』か?」
「え、っと...最近、ちょっと声が出しづらいなって」
今度は海鈴ちゃんの声だ...どうなってるんだろう。
「無理はだめだぞ。『ケンコウによくないっ!』からな」
睦ちゃん...?碧君、どうしたんだろう。
「碧くん、その」
「『なに?』」
「っ...なんか、意識してる?」
「『なにを?』」
立希、ちゃん?
「え、っと...誰かの真似、してる、とか」
「『雰囲気が似てた』か?」
今の、私?
なんで?
「やっぱり、真似してるよね」
「『君だってそうじゃないか』」
「え...」
ドロリスまで...いや、そうじゃない。
私が初華じゃないって、バレてる?
なんで?誰にも話してないのに?
「なんで、知ってるの」
「『聞こえな~い』」
「どこで知ったの」
「『どうでもいいじゃ~ん』」
「答え...っ」
「『初華!?』」
大声を出したせいでのどを痛めてしまった。
明日にはライブなのに。
「『僕の友達が好きな歌なんだ』」
「っ...やめて」
「『捨てられる、事』」
「やめて、やめて...!」
「『――我、悲しみを恐れるなかれ』」
「やめてっ!」
気づいたら碧くんを突き飛ばしていた。
「その場所まで、取らないで...お願い...」
「じゃ、早く喉直さないとな。お大事に」
何も気にしていない風に、碧くんはスタジオを出ていった。
いや、むしろ。
なんだか
本当に、碧くんだったのかな。
没理由:すごく嫌な奴だから