迷う心の在り処   作:ユイトアクエリア

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早い話が初期プロット時点の碧くんです
書きたくなっちゃったから...


Ⅷ:あなたはだれ?

――昔から、歌うことと真似ることは好きだった。

 

『弱い者いじめはよくないよ』『つえー奴いじめる馬鹿がどこにいんだよ』

『焦らないで、もっと自由になっていい』

 

昔から、見るものすべてを真似た。

 

『みんな~!元気~?』『もっと元気になってくれたらいいね』

『あっちの方が強そうじゃない...』『逃げたら一つ、進めば二つ』

 

声の出し方から、動きまで。

 

『mission accepted』『実に面白い』

 

アニメからドラマから、ありとあらゆる映像作品から。

真似て(コピー)真似て(インプット)

 

だから、いつしか演じることが素になった。

いくつもの役を使い分けて、適応する自分になった。

 

カラオケに誘われれば、引き立て役に。

声真似の披露の場では、少し崩してわざと下手に。

動きを真似する授業では、覚えられないフリをして。

 

そうしなければ、社会に馴染めないから。

 

完璧を見ると人は恐怖する、というのは、小さいころに学んだ唯一のこと。

だから、完璧にはしなかった。

何かを欠けさせ、あえて完璧じゃなくした。

 

...けれど。

 

『共に音楽を奏でる運命共同体となるのです』

『AveMujicaにふさわしい曲に仕上げて見せますわ!』

 

――お前は、そうなのか。

 

お前がそうするなら、俺もそうする。

完璧を、演じてやる。

 


 

最近、なんだか声が出しづらい。

特に無理をしてるわけでもない。

喉のケアだって怠ってない、なのに。

私はフロントなのに、ちゃんとしなくちゃいけないのに。

 

「あ~...ん...」

「『初華?』」

「あ、さきちゃ...あれ?」

 

確かにさきちゃんの声がしたのに。

 

「『初華らしくない』な、俺が祥子に見えたか?」

 

そう言いながら、のど飴をくれる碧くん。

 

「ううん。ただ、その、雰囲気が似てたなって」

「そうか。で、『何か悩み事』か?」

「え、っと...最近、ちょっと声が出しづらいなって」

 

今度は海鈴ちゃんの声だ...どうなってるんだろう。

 

「無理はだめだぞ。『ケンコウによくないっ!』からな」

 

睦ちゃん...?碧君、どうしたんだろう。

 

「碧くん、その」

「『なに?』」

「っ...なんか、意識してる?」

「『なにを?』」

 

立希、ちゃん?

 

「え、っと...誰かの真似、してる、とか」

「『雰囲気が似てた』か?」

 

今の、私?

なんで?

 

「やっぱり、真似してるよね」

「『君だってそうじゃないか』」

「え...」

 

ドロリスまで...いや、そうじゃない。

私が初華じゃないって、バレてる?

なんで?誰にも話してないのに?

 

「なんで、知ってるの」

「『聞こえな~い』」

「どこで知ったの」

「『どうでもいいじゃ~ん』」

「答え...っ」

「『初華!?』」

 

大声を出したせいでのどを痛めてしまった。

明日にはライブなのに。

 

「『僕の友達が好きな歌なんだ』」

「っ...やめて」

「『捨てられる、事』」

「やめて、やめて...!」

「『――我、悲しみを恐れるなかれ』」

「やめてっ!」

 

気づいたら碧くんを突き飛ばしていた。

 

「その場所まで、取らないで...お願い...」

「じゃ、早く喉直さないとな。お大事に」

 

何も気にしていない風に、碧くんはスタジオを出ていった。

いや、むしろ。

なんだか()()()()()ようにも見えた、気がする。

 

本当に、碧くんだったのかな。

 

 




没理由:すごく嫌な奴だから
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