迷う心の在り処   作:ユイトアクエリア

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酒を飲んだ勢いで書きました


Ⅸ:酔いムジカ

「碧...」

「碧くん...」

 

どうして。

 

「碧さん...」

「あおこ~...」

 

なんで。

 

「...どうしたんですの、碧...もっと、こちらへ...」

 

――なんでこうなった。

 


 

――数時間前。

 

「全国ツアー千秋楽、無事終了しましたわね。お疲れ様でした」

「お疲れ~...」

 

事務所の会議室でささやかな打ち上げをしている。

 

「それにしても、平日にライブをしているのには、少し違和感がありますね」

「2、3年前まで学生だったしな」

 

現在、メンバー全員が成人を超え、プロとして一層忙しくしている。

AveMujicaの人気はそこそこに落ち着いてきたが、今は睦が女優業を兼任し、初華もsumimiの傍ら、ドラマや映画のゲスト出演をしている。

海鈴は音声収録に多く駆り出され、にゃむはバラエティタレントをする中で、たまにテレビのチョイ役などで出演している。

祥子も、人気が落ち着いたからと言って楽になった訳でもない。

定期的に開催するライブ...マスカレードの台本や、新曲の作成を主に担当してる。

 

「...みんなやつれてんな」

「...碧くんは、なんか元気そう...?」

「俺はみんなと違って仕事ないし」

「嘘だ、あおこテレビで見たよ」

 

別にそこまで忙しいものじゃなかったし、カウントしてなかっただけ。

 

「というか、あおこが一番テレビ出てるじゃん!このまえむーこと一緒に映画出てた!!」

「楽しかった」

「...みんなと違って仕事ないから自由にやらせてもらってるだけだよ」

 

一旦「楽しかった」の理由はスルーする。

 

「というかさ~、みんな久々に集まってオフじゃん?どっか行って飲まない?」

 

にゃむがそう言うと、祥子の顔が少し歪む。

 

「打ち上げって意味でも、どっかみんなで夜飯とかはありかと思うんだけど、どう?」

「私は賛成」

「私もです」

「...祥ちゃん?」

 

無理もない。

AveMujica結成当時の祥子の気性が荒かった原因は、酒にあると言っても過言ではないから。

 

「祥子、別にいやならいやでもいいぞ」

「いえ、行きましょう。こういうコミュニケーションが大事だというのは、身に沁みていますから」

「さきこかたーい!でも神様の許可下りたから早速予約しちゃお~!」

「にゃむ、お待ちになって」

 

早速予約を入れようとするにゃむを、祥子が止める。

 

「え、なに?」

「...私たちは、有名人ですわ。いくらオフとはいえ、声をかけてくる輩がいないとも限りません」

「...それは、別に。アタシは対応できるし」

「にゃむはそうでも、他は違います。なので、豊川の力を使います」

「...使えるものは何でも使うって、そういうことなのか...?」

 


 

そして、今に至る。

 

「碧くーん...えへへ~...」

「碧...すき、ずっと、一緒」

「...唐揚げ食っていい?」

 

ムジカメンバー、アルコールに弱いことが判明。

これから先そういう場もあるだろうに、心配だな。

 

「...初音、睦、離れろ」

「やだ~」

「碧、すき、だいすき」

「...この状況見られたら死ぬのは俺なんだよ」

 

という心配事も、この場に限っては必要ない。

祥子が予約した豊川傘下の居酒屋で、なおかつ一番奥の個室だから。

そして今、誰も注文をしていないので、この個室の扉を開ける者はいない。

故に、俺はずっとこのまま。

 

「三角さんズルいです、わたしも」

「むーこどいてよぉ、アタシも~」

「神たる私に譲りなさいですわ~...」

「もうむちゃくちゃだよ」

 

俺どうしたらいいんだよ。

どう動こうとも俺が社会的に死ぬのは確定してるんですよね、すでに柔らかいのが両腕と背中に当たってるし。

で何か祥子はいつの間にか正面にいるし。

 

「碧、だいすきですわ」

「やめろ、後で殴られたくない」

「私を娶れば豊川を手中に収められますわよ?」

「...だったら、私も。若葉、自由に動かせる」

「そんな権力もちたくねえから離れてくれ、そろそろ限界だ」

 

色々と限界だ。

と、いうより。

 

「お前らさては酔ってねえな?いやなアルコールの匂い全然しねえ」

「ばれてしまっては仕方ありませんわね」

「碧、鋭い。そういうところも好き」

 

...いや待て。

酔ってなくてあの発言?

唐突に冷や汗がにじみ出る。

 

「さて碧、覚悟してくださる?」

「...一旦、退避...」

「初音!!出口をブロックですわ!!」

「う、うんっ!」

 

退路を断たれた。

 

「海鈴、にゃむ、碧の拘束を」

「はい」

「はーい」

「お前らなんで乗り気なんだよ!?」

「だって神様に逆らうのは良くないじゃん?」

 

男女の違いがある以上、力にも差がある。

当然俺が本気で抵抗すれば容易に拘束を解除できるのだが、その際のメンバーへの危害は予測できない。

 

「...はぁ。海鈴、にゃむ、離してくれ」

「嫌です」

「信用しろ、抵抗する気なんかねえよ」

「はい」

「うみこ!?」

 

故に、俺は無抵抗を選択した。

俺はどうなってもいい。

どうされようが、俺は。

 

「碧、もっと自分を大事にして」

「そうですわ。もっと自信を持っていいんですのよ」

 

先の二人に変わり、祥子と睦が俺の腕をホールドする。

 

「碧、いつもありがとう。感謝していますわ。私、もうあなたなしでは生きていけませんわ」

「碧、大好き。ずっと一緒。ムジカ、やめないでくれて、ありがとう」

「碧くん、私からもありがとう。あの時、背中押してくれて。私も、大好きだから」

「碧さん、信用へのお返しは信用、ということで。私も好きですよ」

「あおこはさ、もっと自分がかっこいいって自覚もちなよ」

 

...どうやら、俺は結構愛されてるようだ。

 

「...ありがとう」

 

 

 

 




こういうのはテンションに任せて書くと楽しい
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