迷う心の在り処   作:ユイトアクエリア

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CMでキャリーケース出てたからネタバレではないと思う
KiLLKiSS聞きながら書いた、ほんとは碧くんを発狂させたかった


ツムギユクセカイ:MyGO!!!!!
-1:死というものの認識


――小学生の頃に、生みの親が死んだ。

 

当時は「死」というものが理解できなかった。

祖父に聞いた。「どうしてお母さんは箱の中で寝ているの?」と。

祖父は何も答えなかった。

祖母に聞いた。「どうしてこんなにおいしいご飯があるのに、お父さんは来ないの?」と。

祖母は何も答えず、俺の頭を撫でた。

 

通夜から一晩経って、俺の両親が出棺された。

悲しみなんてものはなかった。

代わりに恐れがあった。

死の概念が希薄だった俺にとって、どうして寝ている人間を箱に入れ、それを燃やすのか。

小学生ながら、理解が出来なかった。

 

遺骨を骨壺に詰める時だって、俺はよくわかってなかったんだと思う。

どうしてこんなことをしているのだろうと、今になってその時を振り返れば、そう思っていたかもしれない。

けれど、あの時考えていたと確かに言えるのは、家に帰れば「おかえり」と笑顔で迎えてくれる両親がいるのだろうと思いと、もうあんな愛にあふれた生活は帰ってこないということ。

目の前で棺に詰められて火葬されたのを見ているとしても、認められなかった。

いや、違う。

何度も言うとおり、当時の俺には死の概念が全くと言っていいほどなかったから、本能で理解を拒んでいたのだと思う。

 

葬儀が終わって、墓石の下に骨壺を埋め、坊さんがお経を唱える。

手を合わせていろという祖父母の教えに従って手を合わせ、唱え終わるのを待つ。

普段朗らかで優しい祖父母が、この時に限っては語気が強かったから。

当時の俺には、この儀式に何の意味を持つのかわかっていないとしても、言うことに従うしかなかった。

 

しばらくして、進級したとき。

人間の体の仕組みを授業で習った。

その時、初めて明確に「死」という概念を理解した。

同時に、あの時行われていたものは全て死んだ者に対する儀式なのだと理解した。

人間は、容易く命を落とす。

その人間が、どんなに健康体で、恨み妬みを買わない善良な人間だとしても。

 

 

「...豊川?」

 

夜風に当たろうとコンビニに行った帰り、見たことある背中を見てそう呟いた。

よく見るとキャリーケースを持っている、何かの帰りだろうか。

 

「豊川」

 

近づいて呼びかけるが、反応がない。

もういちど呼びかけようと思ったところで、豊川の動きが止まった。

そして、ゆっくり体を90度右に回転させ、そちらに歩いていく。

そっちに道はない、というより、ここに分かれ道はなく。

歩道を歩いているだけ、けれど、何か危ういものを感じた。

この歩道は橋の様になっていて、下は川。

そして、豊川は確実に橋の淵の方に向かっている。

落下防止、あるいはデザインのための高欄に。

 

「豊川!」

 

直感的にまずいと感じた俺は、呼びながら腕を掴む。

 

「...碧、さん」

「そっち、道ないぞ。どうしたんだよ」

「分かり、ませんわ。私、どうしたのでしょうか」

「だからって、死ぬのは違うだろ」

 

勘違いならそれでいい。

俺が勘違いした馬鹿野郎ってだけ、それでいい。

 

「死...?」

「道のない方向に歩いていくからそう見えた、勘違いだったら悪いな」

「...いいえ。私は、もう終わりたいのかもしれませんわね」

 

そう呟く豊川は今までで一番小さく見えた。

 

「悲しむ人間がいるぞ」

「...けれど、その人たちが私を救ってくれるわけではないのでしょう...?」

「若葉は。あいつが一番悲しむ。あとは初華も」

「もう、ダメなのです。初華は私が無理をさせたせいで倒れてしまった。睦も、もう、私のことなど」

「いい加減にしろ。お前、人の人生貰っといて投げ出す気か?」

 

そう言うと、豊川の顔が怯えたものになった。

 

「随分と無責任なこと言いだすのな、お前」

「違い、ますわ、私は」

「何も違くないだろ。他人には人生を捧げろと言っておきながら、自分はそんな責任から逃げようとしてる。何が違うんだ」

「私は、そんな事」

「言ってないよ、確かに。でも、行動が示してる。もう限界なんだろ」

「もう、嫌なんですのよ...私のせいで、失われていくのが」

 

泣きながら吐き捨てる豊川。

 

「...やっと、ほんとっぽいこと言ったな」

「...え?」

「虚勢を張るのも疲れるよな。わかるよ」

「...貴方に、何が分かるんですの」

「分かるよ。俺もそうだから」

「え...?」

「頼ったらどうだよ、皆に。少なくとも俺は、人生を握られてる人間に反抗なんてしたくないけどね」

「...何もかも、お見通しなんですのね」

 

分かったような気になって、勝手に同情して。

そんな偽りの慰めでも、豊川は踏みとどまってくれたみたいだ。

 

「悩みは晴れた?」

「はい。ですが、全てを打ち明けるのはもう少し後、にしますわ」

「それがいい。多忙だからね」

「えぇ、本当に。ありがたいことですわね」

 

全てを打ち明けるのは、もう少し後。

その時、俺はどうしてるんだろうね。

 

 

 

 




なんでこいつ発狂しねえんだよ~
なんでだよ~
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