特に行く当てもなく公園に寄って、そこで見かけたベンチに座ってダラーッとしていたところに、何かを食いながら寄ってくる人影を見た。
特に座っていいかなども聞かれなかったが、その人影に見覚えがあったのでスルーした。
「それ、うまいの?」
「うん」
「...そうか」
会話を続ける気はないのか、それともただの感想と判断してよいものか。
出会って半年になるが、いまだにこいつのことは全くわからない。
隣に座る彼女は
「もぐもぐ...」
「...気になってたけど、何食ってんの、それ」
「...抹茶」
「...よーく飽きないよなぁお前は」
楽奈はずっと抹茶系統の何かを食ってる。
ある時はパフェ、ある時はチョコ。
飲み物も抹茶ラテという凝りっぷり、ここまでくると中毒を疑うよ。
「ん...」
「...なんだよ」
「寝る」
「...猫か」
メンバーにも野良猫と言われてるらしいが、マジで猫だな、これ。
大丈夫かな、俺ここにいて。
「...あっ」
「あ」
最悪だ。
何でこう俺の運命力はクズなんだろうか。
「...どうした、
「散歩してたら、その、見かけたから」
「...そうか」
膝に楽奈、目の前に燈。
何も考えなければ顔がいいやつらに囲まれてるんだろうけど、メンタルが持たない。
「えー...なんだ、何も見なかったことにしてくれないか?」
「う、うん、わかった...何も、見なかった...」
とりあえず一難は去った、そうなると一難くるのは俺の専売特許なようで。
「あっ」
「...お前も散歩の口か
どうしよう、燈は良かったけど愛音はどうしようもない。
隠しとけって言っててどうせ言いふらすだろ、こいつは。
「黙っててくれって言ったら、黙るか?」
「え~?面白そうだから喋っちゃおうかなぁ」
「...マジで黙っててくれよ。今度好きな風に弄っていいからさ」
「え!?いいの!?」
「黙っててくれんならな」
「はーい!」
ウキウキな様子でどこかに行く愛音を横目で追いつつ、膝の上の楽奈をどうしようか思案する。
「あぁ...どうしよう...動けないわ...」
「...何してんの?」
「
「無理。面白いからそのままいてよ、写真撮るから」
「勘弁してくれ」
止めようにも立ち上がるわけにはいかないので、口だけ。
しかも無意識に膝上の
つまり立希側からしたらほぼ無抵抗に近い状態でパシャパシャ撮られまくった。
「じゃあね」
「...永眠してやる」
「え...そんなに?」
「そんなに。それ消してくれたらもうちょっと生きる」
「わ、わかった」
立希は物分かりが良くて助かる。
え、脅しだったろって?ナイナイ。
「はぁ...女難の相...」
そんなわけないだろうと即座に自分を否定して、視線を虚空に投げる。
「...眠くなってきたな」
背もたれに片腕を乗せて、それを枕にして目を閉じる。
夕飯時になると俺の腹時計が鳴ってくれるので、まあきっと起きれるだろう。
「...あら?」
少し冷える夕暮れ、とあるバンドのベーシストは、通りかかった公園で、とあるものを見た。
背もたれに腕を乗せ、それを枕にする少年と、その少年の膝を枕にするリードギタリスト。
「...ふふっ」
ベーシストは静かに携帯を取り出して、その様子をカメラに収めた。
そして、何もないかにように去っていった。