「碧さん、少しいいですか」
練習終わり、海鈴に呼び止められる。
「ん、どうした」
「明日、お時間ありますか?」
「明日はオフだし...あるよ」
「では、私の用事に付き合ってください」
と、いうわけで来たのはRiNG。
持ち物はベースのみ、まさかとは言うまい。
「おや、早かったですね」
「待たせるのもあれでしょ」
「いい心がけです、では行きましょうか」
ふと気になって、わざわざ事務所のスタジオではなく、RiNGを使った意味を聞いてみた。
「この方が、お忍びデート感が出るでしょう?」
「ベース背負ってるパンクな女の子は海鈴しかいないんだよ」
「AveMujicaファッションが流行ってるとか聞きました。にゃむこから」
「それはあくまでステージ衣装の話な、あとにゃむちだぞ」
距離感が近いと言われれば返す余地もないのだが、クラスメートで同じバンドだとそうなってもおかしくはない。
何よりスタジオ内ならだれも見てない。
「ところで、今日が何の日がご存じですか?」
「4/7...誕生日?」
「正解です。ところでそうだとわかっているなら、何かプレゼントの1個でもあるということですか?」
「...や、ごめん。ない。というより、何あげて喜ぶかわかんなくて」
「碧さんならそんなことだろうと思って、今日は前もってRiNGに来たんです。正解でしたね」
この2手3手先を読んでる風に見せてるのは何なんだ、信用のためのサポート撤退すらライブ感で決めてただろうに。
「要は俺の時間をくれってこと?」
「さすが碧さん。学年5位は伊達じゃないですね」
「読心術は教育外だよ」
「まぁ、細かいことはいいですね。早速始めましょう。ハイパーベーシストによるベースティーチングです」
「...うっす」
もう、どうなってもいいか。
「とはいっても、碧さんは一通りギターが弾けるのでそこまで躓くことはないと思います」
「まぁ、ギターができりゃみたいなことは聞くけどさ。ほんとかそれ。逆の方が楽って聞くぞ」
「信用してください」
「できねえよこればっかりは」
すっかりメンバーからの信用を気にするようになってしまった海鈴だが、ベースの腕は落ちない、どころか上がってるまである。
祥子が直談判したのもわかるな、顔がよくてうまいベーシスト、そうそういない。
「まぁ、きれいな顔してるので」
「そうだな、逆によくMVであそこまで歪められたのかは気になるよ」
「知りたいですか?」
「いやいい。ただでさえいい顔に囲まれてるのに歪ませたら批判卒倒だ」
「碧さんもいい顔してますよ」
忘れてたわけじゃないが、海鈴はイケメンフェイスだ。
近づかれるとドキドキする。
「2時間もあればできるものですね。合格です」
「...それ、は、光栄だね」
「ドキドキしましたか?」
「...そういうとこだぞ、信用なくすの」
ギターほど多いわけではないが、ベースにもコードがあって、一通りそれを弾けるようになった、というところで、利用時間制限が来たようだ。
「おや、時間ですか。もう少し教えたかったのですが」
「結構基本は身についたよ、ありがとう」
「いえ、礼には及びません。先ほど言ったとおり、碧さんの時間をいただいたので」
「俺はもうちょっと付き合えるけど」
「ならもう少し...とはいけないんです。急用が入ったので」
少し顔が綻んでいるところから、立希かと思ったが言わないでおいた。
「了解、じゃまた...明日?」
「そうですね。また明日。たまにベースセッションもしましょう。今日はありがとうございました」
「はいよ」
――後日、ちょっといいハンドクリームをあげた。
肌荒れしたとこは見てないから、多分肌に合ったんだと思う。
よかった。
(足)長ぇって!!
うみりんはつかず離れずの距離感だと思ってるけど
多分ライン超えたら信用モンスターになるんやろな