迷う心の在り処   作:ユイトアクエリア

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6:記憶と感覚と野良猫

日曜日。

俺はどうしても、彼女らの顔が離れずにいた。

クラスメイト二人に似ていた、ギタボとベース。

昨日は先入観でそんな訳ないと決めつけたけれど、よく考えてみれば、彼女らがくれたチケットのライブに彼女たちに似た人間がいた、というのは、ほぼ確定なのではないか。

 

「ドロリス...ティモリス...」

 

先日上がったライブレポートを読みながら呟く。

どうやらラテン語で意味が振られているらしい。

ドロリスは悲しみ、ティモリスは恐れ。

今の二人には結びつける線がない。

 

「あーもう!イライラする!!」

 

ダメだ、思考がぐっちゃぐちゃで何をするにもムカつきそう。

 

「ギター弾き行くか...」

 

前の自主練の付き添い以降、ちょいちょい触るようにしている。

腕は衰えてないとは八幡談だが、そこまで自信は持てない。

適当なTAB譜を落としたタブレットと、スマホさ譜をカバンに入れ、ギターケースを持って家を出た。

 


 

「どうやってたっけ...?」

 

初華と八幡の自主練に付き合ってた時の感覚がまるっきり消えた。

どんな感じで手を動かして腕を動かして、という感覚がまるっきり飛んだ。

 

「ダメだ、余計にイライラしてきた」

 

人間思い通りに行かないとイライラするものだ。

かと言って何かに当たるほど子供ではない。

と、スタジオの扉が開く。

 

「あお」

「...え?」

 

借りてたスタジオに乱入者。

正体は(かなめ) 楽奈(らーな)、RiNGの野良猫。

 

「ギター、やらないの?」

「お前はいい加減人が使ってるとこ入ってくるのやめような?」

「...?」

「いやはてなじゃなくてさ」

 

何を考えてるか全くわからない。

凛々子さんが甘やかす理由もわからないし、やけに椎名が気にしてるのもわからないから、もうこいつに関して何もわからない。

 

「スコア、みせて」

「あ、おい...」

「んー...ん、やろ」

「いやお前ギターだろ...」

 

俺の制止も聞かず、楽奈はせっせと準備を始める。

ギターを構えてチューニングすると、すぐに好き勝手やり始める。

 

「おい、一応聞くけどパート分けどうするつもりだ?」

「あおはギターやっていい」

「いやお前は...まぁいいよ。始めるぞ」

 


 

スタジオのほぼすべての時間を楽奈とのセッションに費やし、楽奈と別れた俺は、RiNGを出てからも違和感を覚えていた。

 

「やっぱり、あの感覚は...」

 

楽奈と一緒に弾いた時でも、結局あの感覚は戻ってこなかった。

 

「楽しかった、のか?」

 

自分で分からないんじゃもう末期だなと自分を嘲笑い、近くに見えた公園の自販機でコーヒーを買い、ベンチに座る。

 

「はぁ...」

 

何が何だか分からない。

別に気にしなくてもいいような感覚のはずなのに、記憶から離れようとしない。

それに、気を抜くとすぐ右腕が震えだすんだ。

気にしない方が無理だろう。

 

「マジで、どうしちゃったんだろうな、俺」

 

コーヒーの缶をゴミ箱に投げ入れ、家に帰ってベッドに身を沈めても、その問いの答えが出ることは無かった。

 

 

 

 

 




最近はサブタイを付ける方に手間取ってる
結末を考えてないからどうしようか悩み中
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