迷う心の在り処   作:ユイトアクエリア

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さて、アニマイゴの陰鬱さから逃れたくて書き始めたこの小説も10話となりました


10:後悔と7弦と練習

後悔をしていない、と言えば嘘になる。

結果的に海鈴の救援を蹴ってしまったわけで、でもそんなことを考える頭はあの時の自分にはなくて。

 

「...ばっかじゃねえの」

 

何が世界観だ。

友人の頼みを蹴る言葉かよ、あれが。

 

「何もかも、クズヤロー...」

 

クズ野郎と言いたいのは俺ではなく向こう側のはずなのに。

何を言ってんだろうな、本当に。

 

「...碧」

「...あぇ?」

 

若葉の令嬢、何故ここに?

 

「忘れ物と、お届け物」

 

ギターケースとチケットを渡してくる。

 

「待って、このギター俺のじゃない」

「必要になるから。持ってて」

「...わかった。これも付けるってことは来いってことだな」

「...お願い」

 

それだけ言って帰っていった。

送ろうかの一言すら言えなかったのはちょっと後悔。

 

ギターケースを開けると、案の定俺のではないギターだったが、さっきの試奏で使ったギターでもない。

 

「...誰のだ?」

 


 

「...ただいま」

「お疲れ様ですわ、睦」

 

若葉家、ソファに座る祥子が睦を出迎える。

 

「正直、意外でした。豊川さんが自分の目で見たこともない人間をスカウトするなんて」

「誰でもいいわけではありませんでした。ですが、あの腕を逃したのは惜しい」

「...碧くん、受けてくれるかな」

 

初華は不安げに呟く。

 

「次のマスカレードまでにはどうにかしてこちら側に引き込む必要がありますが...ギターとチケットがあれば、否応なしに来てくださることでしょう」

「...碧、『わかった』って言ってた」

「...なら、心配ないですわね」

 

睦の答えを聞き、安堵の顔でつぶやく祥子。

 

「...一応、それとなく聞いておきます」

「助かりますわ」

 


 

「日曜、ね」

 

書かれている時刻は早め。

 

「...と、ギターね」

 

なんのモデルか全くわからないけど。

 

「...7弦、か」

 

自室に立てかけてあるギターは6弦。

 

「...おも」

 

ストラップを肩に引っ掛けて、軽く弾く。

音的に絶対高い。

7弦なんて弾いたことないけど。

 

「...これ、弾けって言うのか?」

 

でもまぁ託されたもんだし、と弾き方を調べようとしたところで、スマホの画面が暗転し、名前と緑アイコンと赤アイコンが表示される。

 

「...海鈴?」

 

とりあえず電話には出る。

 

「...もしもし」

『あぁ、碧さん。夜分遅くに失礼します。眠るところでしたか?』

「いや、さっきのギター弾こうと思ってたとこ。7弦なんて知らないし」

 

俺がそう言うと、海鈴は少し笑って、

 

『碧さんなら大丈夫、と信じていますので』

 

と言う。

なんで笑ったのかとか問い詰めたかったけど、別に今聞くことでもないからスルーしておく。

 

「...ありがと、ちょっとやる気でた」

『それは良かったです。では失礼します』

 

電話が切れる。

 

「...7弦の弾き方...と」

 

もう少しだけ、練習しよう。

あの世界に立っても、違和感がないように。

 

 

 

 

 

 

 




オチは決めた
後はそれに向かっていくだけ
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