迷う心の在り処   作:ユイトアクエリア

37 / 94
ほんとはハロウィンネタにしようと思ったのに...
ほんとはもっと平和な回になるはずだったのに...
ほんとはもっとこう...軽い回になるはずだったんだ


13:俺と仮面と実力

「おはようございまー...あれ?」

 

音楽スタジオに来いと言われて来たのに、借りてると言われた部屋には誰もいない。

いつも使ってるギターやベースもないことから、まだ誰も来ていないようだ。

 

「早く来ちゃったかな...」

 

送られたメッセージには、確かに今スタジオ内にある時計と一致する時間が書かれている。

遅刻でもなければ、早く着きすぎたわけでもないようだ。

 

「まぁ、いいや。借りてるんだったらギターやってもいいだろ...」

 

荷物を端っこに置き、ギターを取り出す。

簡単にチューニングを済ませて、昨日貰ったスコアを読む。

 

「...よし」

 

俺が弾ければ、彼も弾ける。

俺にとって、仮面(ルイナス)は目標である。

ステージ外で使うことは無く、またステージ内の俺は俺ではなく彼である。

自分には勝てないという劣等感と、自分を目標にして続ける向上心とで、俺のギターはできてる。

 

「...っは」

 

脳内で再生した譜面が終わった。

物思いに耽りながらやってたせいで出来栄えはどうだったか分からないけど、たぶん一通り弾けてたとは思う。

置いといた水のペットボトルを開け、半分ぐらいまで一気に飲んでから一息。

まだまだ彼には程遠く、彼もまだまだ彼女らには及ばない。

中途半端な音は、いつか切り捨てられる日が来るのだろうか。

 

「...あれ、いつからいた?」

「...ようやく気付きましたのね」

 

目線を上げると豊川さんの姿。

 

「弾き始めた頃からいましたのに」

「だったら声かけてくれてよかったのに」

「...あまりにも集中しているものでしたので」

「...それでも、俺の音は中途半端だよ」

 

顔を背けると、足音が近づく。

もしかして殴られる?

 

「あなたのギターは、なくてはならないものになりました」

「...え?」

 

思わず豊川さんと目を合わせた。

 

「あなたのギターは、初華とは違う物。それに、まだ荒削りなら、『人形になりたて』というので理由づけできるでしょう?」

「...世界観は守れてるみたいだな」

「いいえ?」

「...え?」

「こちらを」

 

豊川さんはスマホを見せてくる。

2nd masqueradeの様子だ。

舞台袖から撮っていたのだろう。

 

「あなた、随分と楽しそうにギターを弾きますのね。顔が見えないのをいい事にこんなに暴れて...」

「いや、まさか好きな曲のカバーするとは思わなくてさ...」

 

体が勝手に動いていたんだ、俺の意思はそこに無い、と思ってる。

 

「まぁ、この際構いませんわ。それで、今日はベースの方を見させていただけたら、と思うのですが」

「...ん、持ってきてって言われたからね」

 

ギターを仕舞い、ベースを代わりに引っ掛ける。

 

「楽譜は同じでいい?」

「えぇ。最も、それは5弦用に作られてるので...あら?」

「あぁ、俺5弦使いだから問題ないよ」

 

5弦使い、という言葉があるのかと言えば多分ないが、まぁいいだろう。

 

「ふー...よし」

 

ギターの様に派手ではない、しかし狂えば音楽としての基礎を揺るがしかねない。

正確に、かつ慎重に弾かなければいけない。

 

「(海鈴はすごいな)」

 

ベーシストとして、また同じ5弦使いとして尊敬する。

練度が違う、きっと血のにじむような努力を重ねている。

俺のような、付け焼刃のモノじゃない。

 

「...っは、はぁ...」

「...やはり、素晴らしいですわね」

「...海鈴のとは違うし、俺のベースは褒められたものじゃない。現に後ろのドラマーさんも渋い顔してるし」

「いやぁ...にゃむ的にそのベースとは組みたくないなぁって」

 

事実だ。

これがルイナスとなれば話は変わるかもしれないが、少なくとも神崎碧としてのベースは良いものではない。

よくベースとドラムは夫婦と言うが、こんな夫婦であれば一月も経たずに離婚だろう。

 

「下手に海鈴から...ティモリスから変えない方がいいよ。俺は本来だったら傍観者なんだ。ドロリスの後ろで弾けるだけでも満足さ」

「...あなた、仮面を着けないと随分自分を卑下なさるのね」

「そりゃルイナスと俺は違うからな。ルイナスができることは俺にはできない」

 

これは完全に俺の主観だ。

仮面を着けていれば気分が上がってアドレナリンがどうこう...みたいな科学的な話は分からないが、少なくとも今言ったことで間違いはない。

 

「では、ルイナスと呼べば少しはその状態にはなれますか?」

「...まぁ、うん」

「では、始めましょうか。ちょうど、全員揃ったようなので」

 

いつの間にか全員いる。

 

『では参りましょう。新曲『ふたつの月』』

 




何を手癖で出してんだこいつ
楽器弾いたことないから描写は許してね!!!ね!!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。