A:うるせぇ書き終えたら上げんだよ
Ave Mujica、黒のバースデイ、新曲とカバーを織り交ぜだ3rd masqueradeが終了し、今は楽屋で一人きり。
「...はぁ」
水を飲んでから、正面の鏡に映る自分を見る。
「やっぱ、おれじゃねえや」
masqueradeをこなせばこなすほど、
この場ではルイナスを必要とされるのだから、別に気にすることは無い。
ない、のに。
「俺じゃなくても、成り立つよな」
きっと、あの場にいるのはルイナスでいい。
俺が中身じゃなくて、他の誰かがルイナスと言う仮面をかぶっていれば、それで。
「...それはきっとルイナスではありませんわ」
「...何だ、聞いてたのかオブリビオニス」
きっとそろそろ撤収時間だと呼びに来てくれたのだろう。
「悪い豊川。一人で帰る」
「...そうですの。お気をつけて」
「あぁ」
控室を出て行く豊川を見送ってから、荷物をまとめて部屋を出る。
ライブハウスを出て、少し離れた公園のベンチに座る。
「...人生、か」
勧誘時に言われた言葉。
『残りの人生を捧げろ』と。
「必要なのは、俺じゃない」
特に考えるでもなく口から出た言葉を、頭で反芻する。
自分で発した言葉で気持ちを病むなんて、俺の心はどうしてしまったのだろう。
「帰ろ」
これ以上意味不明な思考を繰り広げる前に、さっさと家に帰って寝よう。
「...熱い」
体が熱い。
なんだか頭も重い。
重心が安定してないような、なんだかふらふらする。
「風邪か...?」
ベッドがから起き上がるのもだるいが、どうにかして机の上にある体温計を取り、ベッドに座って脇に刺し、しばらく待つ。
小さくピーッと鳴って、体温計を見れば、「38.7℃」の文字。
「...熱だな。どうしよ」
少し考え、豊川にメッセージを送る。
『悪い、風邪ひいた』
これだけでも伝わればいいが、念のためだ。
「『今日明日は大事を取って休む、迷惑かけてすまない』...とりあえずこれで良し」
ベッドに再び倒れこめば、何もしたくなくなってしまう。
布団の魔力ではなく、俺の体の危険信号だと判断し、目を閉じて意識を飛ばした。
──夢を見た。
俺じゃない誰かが、
技術は俺より抜群に高く、それでいてパフォーマンスもいい。
背中を預けているドロリスはどこか安心した顔で歌っており、メンバーも安心して任せている。
それを俺は、ステージ袖から眺めている。
「(お前は、誰だ。そこに居るのは、俺のはずだ)」
違う。
あそこに立つのは「ルイナス」であり、中身は俺でなくて良い。
クロユリをあしらった仮面を着けて、ギターを弾いていれば、それがルイナスになりえるのだ。
「(違う、ちがう)」
それでも、あそこに立つのは俺でなくては。
俺じゃなくても、なんて言いたくない。
あの空間が好きで、あの世界観に魅入られて、それで俺はサポートを承認したんだ。
「(取られて、たまるか──!!)」
そいつに手を伸ばす。
届かなくても、足搔く。
ステージに一歩踏み出した瞬間に、視界が白くなる。
「(何も、見えな――)」
「ん...?」
目覚めると自室の天井。
「夢だったか...」
そうならないとは言い切れないけれど。
「...あれ、何だ...?」
携帯がひっきりなしに震えている。
画面を見るとメッセージの嵐。
ロックを開けてメッセージを見ようとすると、着信画面に切り替わる。
「...もしもし」
『ようやく出ましたわ!大丈夫なんですの!?』
「ごめん、さっきまで寝てた...」
『療養は大事ですが、心配になりましたわ...』
「悪い...」
ここまで親身に心配されてると、ちょっと浮かれてしまう。
『もしもし、碧さん。聞こえますか?』
「あれ、海鈴?...そうだわ、今日練習日だったね」
『はい。体調のほどは?』
「いまいち。熱は体感下がってるっぽいけど」
『その様子では食事もしていないのでは?寝るだけが治療法ではありませんよ』
「...はい」
クラスが同じだけに、心配してくれてるのだろう。
「明日は、あれだけど。月曜にはちゃんと行く」
『...では登校時に、ミルクコーヒーを2つ、奢ってください』
「了解、忘れなかったらね」
『メッセージに入れておきますよ』
メモメモ、忘れちゃいけないね。
『そういう訳ですので』
「どういう訳かさっぱりだが」
『...とにかく、きちんと熱は下げて、月曜からまた、よろしくお願いいたします』
「...了解」
『...あなたがいなければ、あの世界は作れませんわ』
「え?あ...切りやがった」
恥ずかしくなるなら最初から言わなきゃいいのにとか思いながら、朝よりは随分と軽くなった体を起こす。
「...とりあえず飯作ろ。おかゆおかゆー...」
アニメが始まったらこんなの書けないからね
どうやって碧くん絡ませるかって考えながらアニメ見たくないし()